サーミスタとPt100の違い|原理・温度範囲・配線と使い分け

金属保護管と白いケーブルを持つ温度プローブ

サーミスタと白金測温抵抗体Pt100は、どちらも温度による電気抵抗の変化を使う温度センサーです。温度検出用のNTCサーミスタは温度が上がると抵抗が下がり、Pt100は温度が上がると抵抗が上がります。

小さな温度変化を捉える電子機器にはサーミスタ、幅広い温度で規格に沿った測定をする工業設備にはPt100が候補になります。ただし応答の速さと測定精度は、素子の名前だけでなく構造や測定回路にも左右されます。

現場で取り替えるときに見る入力設定と、配線抵抗による誤差の計算例も含めて整理します。

目次

サーミスタとは

サーミスタは、温度で抵抗値が大きく変わる半導体の特性を利用した素子です。温度検出用のNTCでは、マンガンやニッケル、コバルトなどの金属酸化物を組み合わせたセラミックスが使われます。

材料の組成はB定数に、素子の寸法は基準抵抗値に関わります。同じ「25℃で10kΩのサーミスタ」でも、B定数が違えば25℃以外で示す抵抗値が異なります。

図1:温度で抵抗が変わる材料が異なる

サーミスタは半導体、Pt100は白金の抵抗変化を読み取ります。

NTCサーミスタの素子例
被覆半導体リード線

粒状、チップ、リード付きなど。被覆や封止方法は製品により異なる。

Pt100の薄膜素子例
白金薄膜基板端子の取出し

薄膜形のほか、白金線を巻く巻線形もある。Pt100は巻線構造だけの名称ではない。

構造の違いを示す非縮尺の模式図です。製品の内部構造図を転載したものではありません。

NTC・PTC・CTRの違い

NTCは負の温度係数を持ち、温度の上昇とともに抵抗値が下がるタイプです。変化は直線ではなく曲線になるため、抵抗値を温度へ換算するときには、対応表や近似式を使って補正します。

PTCは正の温度係数を持つタイプで、ある温度付近で抵抗が急に増えるものは過電流保護などに使われます。CTRはある温度付近で抵抗が急減する特性を持ち、温度警報などの用途に使われる種類です。

図2:サーミスタは抵抗の変わり方で分かれる

縦軸は抵抗、横軸は温度。曲線は傾向を示し、製品の数値特性ではありません。

NTC:温度上昇で低下
R温度

温度の連続測定に利用。換算では曲線の補正が必要。

PTC:急増するタイプ
R温度

過電流保護などに利用。すべてのPTCが同じ急変特性ではない。

CTR:急減するタイプ
R温度

温度警報などに利用。NTCの滑らかな低下と区別する。

本記事のPt100との比較は、主に連続的な温度検出に使うNTCを対象とします。

温度検出用のNTCにも、ガラス封止、樹脂被覆、チップ形などがあります。被覆は耐熱性や絶縁性、応答にも関わるため、抵抗温度特性と併せて使用環境に合う構造を選びます。

抵抗値とB定数を組み合わせて読む

NTCの仕様では、例えば25℃における抵抗値と、温度による抵抗変化の割合を表すB定数が使われます。基準抵抗値が同じでもB定数が違えば、基準温度から離れたときの抵抗値に差が出ます。

さらにB定数には、どの二つの温度から求めた値かという条件があります。交換用の部品を選ぶときは、抵抗値の数字だけでなく、B定数の温度条件と抵抗値・B定数それぞれの許容差を対応させます。

抵抗を電圧へ変える方法には、一定電流を流して電圧を測る方法や、固定抵抗と組み合わせる分圧回路があります。電圧を読んだ後にも、センサーに合う温度換算をする処理が必要です。

測定した抵抗から温度へ換算する考え方は、リニアライザの補正とつながります。また、センサーを直接つなぐ入力と、変換器で4-20mA信号に変えた入力は区別して扱います。

白金測温抵抗体Pt100とは

Pt100は、0℃で100Ωとなる白金測温抵抗体です。白金線を巻く巻線形だけでなく、絶縁基板へ白金の薄膜を形成する薄膜形もあり、どちらも温度に伴う白金の抵抗変化を利用します。

白金の抵抗は温度とともに増加し、NTCより直線に近い特性を持ちます。ただし完全な直線ではなく、正確な温度換算には、JIS C 1604などに基づく基準抵抗値や基準関数を使います。

温度Pt100の基準抵抗値
0℃100.00Ω
50℃119.40Ω
100℃138.51Ω
オムロン・チノーの公開基準抵抗値表で照合した例。単純な直線補間の値ではありません。

Pt100という名前は、測れる温度の上限が100℃という意味ではありません。測定温度範囲は素子の構造や保護管、引き出す電線などで決まるため、温度計一式の仕様として選びます。

古い設備ではJPt100という別の温度特性を持つセンサーも見られます。0℃の抵抗値だけではPt100と区別できないため、交換時はセンサーと表示器の型式・入力設定を調べてから対応を決めます。

2線式・3線式・4線式と導線抵抗

2線式では、測温抵抗体へ流す電流と電圧の測定に同じ二本の導線を使います。入力側から見た抵抗には往復の導線抵抗も加わり、その分が素子の抵抗変化として読み取られると、温度を高く表示する原因になります。

図3:配線本数は導線抵抗の扱いを変える

右側がPt100の二端子。3線式と4線式は、対応する入力回路と組み合わせます。

入力導線抵抗Pt100
2線式:往復分が加わる

短い配線や許容誤差に余裕のある用途で検討。導線の影響を計算へ含める。

入力同じ側へ2本Pt100
3線式:同じ導線抵抗を前提に補償

各線の抵抗差や接触不良は残る。三本にすれば任意の入力で補償できるわけではない。

入力電流用電圧検出用電流用Pt100
4線式:電流と電圧検出を分ける

精密測定で用いる方式。対応する計測器と正しい端子接続が必要。

入力回路内部の測定方式を省略した接続概念図です。実機の端子番号・色は取扱説明書に従います。

3線式は、導線抵抗がそろっていることを前提に、対応する測定回路で影響を補償します。長さや太さの異なる線を継ぎ足すと抵抗が不均衡になり、補償した後にも誤差が残るため、延長方法をそろえます。

4線式は電流を流す線と電圧を検出する線を分け、導線抵抗の影響を小さくします。工業用の3線入力へ4線の素子をつなぐ場合も、使わない線を含めて接続方法が決まるので、本数だけで結線を判断しません。

2線式と3線式の使い分けは、測温抵抗体の配線方式でも説明しています。配線方式とは別に、一つの保護管へ素子を二つ収めるダブルエレメントという構造もあります。

許容差のクラスと温度計全体の誤差

白金測温抵抗体には、JIS C 1604:2013に基づくクラスAA・A・B・Cなどの許容差区分があります。クラスは素子や温度計の規定された条件での許容差を表し、表示器の誤差や据付状態まで一括して保証するものではありません。

同じクラスでも、巻線形と薄膜形ではそのクラスを適用できる温度範囲が異なります。「クラスAだから全温度で同じ精度」と扱わず、使用する温度帯でクラスの保証範囲に入るかを仕様で照合します。

計測全体の誤差には、センサーの許容差に加え、導線抵抗、表示器、取り付けによる熱の逃げなどが関わります。最も高いクラスの素子を買っても、配線や据付の誤差が大きければ測定の改善につながりません。

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サーミスタと白金測温抵抗体Pt100との違い

二本のリードを持つ粒状と角形の温度センサー素子
温度センサー素子の形状イメージ。外観だけで材料・抵抗値・温度特性は判定できません。

二つを選ぶときは、まず測定温度と必要な精度、応答時間を決めます。そのうえで、取り付ける空間や配線距離、使用する表示器の入力方式を合わせると、素子の特長を実際の測定へつなげられます。

比較する点温度検出用NTCサーミスタPt100
材料と抵抗変化半導体。温度上昇で抵抗が下がる白金。温度上昇で抵抗が上がる
温度との関係非線形性が大きく、品種ごとの換算が必要比較的直線に近いが、正確な換算は基準特性を使う
温度範囲例として−40〜150℃級の製品など。製品別に選ぶ規格の特性範囲は−200〜850℃。個別製品やクラスの保証範囲は別
応答小さい素子は速い応答を得やすい細径・薄膜形などもあり、構造と取付条件で変わる
導線抵抗高い素子抵抗に対して相対的な影響を小さくしやすい100Ω級なので影響が出やすく、3線式・4線式で対処
価格と置換低コスト化しやすいが、R-T特性の一致が必要材料・構造のコストに加え、入力や配線も含めて比較
範囲・応答・費用を素子名だけで決めず、温度計一式の仕様で比較します。

応答性は素子と保護構造を分けて比べる

サーミスタは小さな素子をつくりやすく、温度変化を速く捉えたい場面に向いています。一方、Pt100にも小形で応答の速い製品があり、材質だけで常にサーミスタの方が速いと順位を付けることはできません。

図4:温度が素子まで伝わる経路を見る

むき出しに近い小素子と、厚い保護管に収めた温度計では、周囲から素子までの経路が違います。

小素子が測定対象に近い
周囲の熱感温部

素子が小さいと温度が変わりやすい。封止や取付けで実際の応答が変わる。

保護管を通じて熱が伝わる
管壁内部感温部

壁厚や内部の熱伝達、素子の位置も応答へ影響。保護の必要性と合わせて選ぶ。

二つは構造の比較であり、左がサーミスタ専用、右がPt100専用という分類ではありません。

応答時間を比較するときは、空気中か液中か、対象が流れているか、どの割合まで変化した時間かをそろえます。同じ「数秒」という表示でも試験条件が違えば、そのまま実設備での速さを比べる値にはなりません。

取り付け位置も重要で、感温部が十分に対象へ入っていなければ、配管外や周囲の温度の影響が増えます。温度計の方式を横断した誤差は、温度計の種類と測定原理でも整理しています。

導線抵抗と自己発熱を見積もる

NTCは、基準温度で数kΩなどの高い抵抗値を持つ製品を選べるため、同じ導線抵抗でも相対的な影響を小さくできます。ただし高温で抵抗値が下がると影響の割合が変わり、導線の影響が完全にゼロになるわけではありません。

例えばPt100の2線式で、一方の導線抵抗が1Ω、もう一方も1Ωなら、合計2Ωが加わります。0〜100℃の平均的な抵抗変化約0.385Ω/℃で割ると、温度換算では約5.2℃の上乗せに相当します。

2線式Pt100の導線抵抗による誤差の概算
ΔR = r1 + r2 = 1 + 1 = 2 Ω
Δt ≈ ΔR0.385 = 20.385
Δt ≈ +5.2 ℃
r1・r2:各導線の抵抗[Ω] ΔR:加わる抵抗[Ω] Δt:温度誤差[℃]。0.385Ω/℃は0〜100℃の平均に基づく概算で、厳密な温度換算は基準特性を使います。

これは導線抵抗だけを取り出した例であり、Pt100のクラスや表示器の誤差を加えた値ではありません。配線が長い設備では、導線の太さや距離と入力方式をセットで決める必要があることが分かります。

一方、抵抗を読むために電流を流すと、素子自身も電力を消費して発熱します。この自己発熱は、測りたい対象の温度と素子の温度をずらす原因になるため、感度を上げる目的で測定電流をむやみに増やしません。

図5:表示のずれを三つの経路で分ける

同じ温度のずれでも、電気的な原因と熱の伝わり方の原因では対策が異なります。

長い往復導線
導線の抵抗が加わる

配線方式と線の不均衡を調べる。端子の接触抵抗も影響する。

素子の自己発熱
電流で素子が温まる

推奨測定電流と放熱条件を照合。サーミスタにもPt100にも関わる。

浅い取付け
測定対象以外の熱を拾う

挿入位置と接触状態を点検。入力の数値調整だけで済ませない。

自己発熱の大きさは、電流と抵抗だけでなく、素子から周囲へ熱が逃げる条件でも変わります。同じ素子でも静止空気と流れる液体では放熱が違うため、データシートの測定条件と使用環境を対応させます。

交換時はセンサーと入力設定を一緒に見る

交換時は、最初に測定点の温度範囲と入力の種類を図面で調べます。センサーの直接入力か変換器経由かが分かれば、配線の途中にある機器を飛ばして、表示器だけを変更する取り違えを防げます。

サーミスタなら基準抵抗値とR-T特性、Pt100なら規格特性と配線方式を合わせます。保護管の長さや径、取付ねじも別に照合し、同じ端子数や同じ外観だけを理由に代替品を取り付けないようにします。

温度のずれを調べる抵抗測定は、対象回路の電源を切り、残留電荷の放電と無電圧を確認して、素子を回路から分離して進めます。通電回路へ抵抗レンジを当てず、テスターで抵抗を測る手順に沿って作業します。

値が不安定な場合は、センサーの断線だけでなく、端子の緩みやノイズの混入も調べます。配線ルートと接地の条件は、シールドケーブルの使い方と合わせ、現場の接続図に基づいて点検します。

表示が一見もっともらしい値でも、入力設定の違いは見逃せません。交換後は既知の温度や基準器との比較で測定系を点検し、抵抗値・表示温度・測定条件を組にして記録すると、換算と据付の問題を切り分けられます。

サーミスタとPt100のよくある質問

サーミスタは温度が上がると抵抗が下がりますか?

温度検出によく使うNTCは、温度が上がると抵抗が非線形に下がります。PTCのように抵抗が上がる種類もあるため、サーミスタという名称だけで判定せず、品種と抵抗温度特性を見ます。

Pt100は0℃で100Ωなのに100℃では何Ωですか?

Pt100の100℃の基準抵抗値は138.51Ωです。100Ωという数字は0℃における公称値であり、測定温度の上限や、全温度での一定抵抗を示す数字ではありません。

サーミスタとPt100はそのまま交換できますか?

温度と抵抗の関係も抵抗の大きさも異なるため、同じ入力設定のまま交換することはできません。入力機器が交換後のセンサーに対応するかを調べ、配線方式と温度換算、使用温度範囲を合わせます。

サーミスタは導線抵抗の影響を受けませんか?

高い素子抵抗に対して相対的な影響が小さくなりやすい、という意味です。高温での抵抗低下や長い配線、必要な精度によって影響が現れるため、無条件にゼロとせず測定回路と合わせて評価します。

熱電対も同じ抵抗変化を使う温度計ですか?

熱電対は、異種金属の接点の温度差に応じた熱起電力を使うため、サーミスタやPt100とは原理が異なります。温度差が電圧へ変わるゼーベック効果と、抵抗の温度変化を区別すると整理できます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 二つとも抵抗の温度変化を使うが、NTCは温度上昇で抵抗が下がり、Pt100は上がる
  • サーミスタは品種ごとの抵抗温度特性を使い、Pt100も完全な直線として扱わない
  • Pt100は0℃で100Ω。使用温度範囲と許容差クラスは製品の保証条件で選ぶ
  • 導線抵抗は2線式Pt100で影響しやすく、対応回路で3線式・4線式を使う
  • 応答・精度・費用は素子だけでなく、保護構造・配線・入力機器を含めて比べる

センサーを選ぶときは、抵抗の特性と測定回路を一つの組合せとして扱います。接点の温度差から電圧を得る方式も候補になる場合は、熱電対と測温抵抗体の違いも比較してください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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