アボガドロの分子説と法則とは?具体例と22.4 L・22.7 Lの違い

屋外のラックに鎖で固定された高圧ガスボンベと集合配管

アボガドロの法則は、同じ温度・同じ圧力・同じ体積の気体には、気体の種類によらず同じ数の分子が入っているという法則です。0℃・1気圧(101.325 kPa)なら、どの気体も1 mol、つまり 6.022×1023 個の分子がおよそ22.4 Lを占めます。

この法則のもとになったのは、1811年にアボガドロが出した分子説で、水素や塩素の気体を原子2個が結びついた「分子」と考えて、気体の体積の比の謎を解きました。燃焼に要る空気量やガス濃度の ppm も、いまはこの法則を前提に計算されています。

目次

アボガドロの分子説とは?気体は原子が結びついた「分子」でできている

アボガドロの分子説は、イタリアの科学者アメデオ・アボガドロが1811年にフランスの学術誌 Journal de Physique に発表した仮説です。内容は次の2つにまとめられます。

  • 気体は、何個かの原子が結びついた「分子」という粒子からできている
  • すべての気体は、同じ温度・同じ圧力のとき、同じ体積の中に同じ数の分子を含む

1つ目が「分子」という単位の導入で、2つ目がのちのアボガドロの法則です。当時は、水素・酸素・窒素・塩素のように1種類の元素でできた気体は原子が1個ずつ飛んでいると考えられており、同じ元素の原子どうしが結びついた粒子という発想は新しいものでした。

原子説と気体反応の法則の矛盾:水素+塩素で体積が2倍になる

分子説が必要になった背景には、ドルトンの原子説と気体反応の法則の食い違いがありました。原子説は、元素ごとに決まった質量の原子があり、化合物は原子が結びついてできるという考え方で、詳しい中身はドルトンの原子説の記事にまとめています。

気体反応の法則は1808年にゲーリュサックが示したもので、反応する気体と生じる気体の体積は、同じ温度・圧力で比べると簡単な整数の比になります。問題は、この法則に「同じ体積には同じ数の粒子が入っている」という見方を重ねたときに起きました。

水素と塩素から塩化水素ができる反応で考えます。粒子を原子のままだと考えると、水素原子4個と塩素原子4個からは塩化水素が4個しかできず、体積比は4:4:4、つまり1:1:1になるはずです。ところが実際に測ると、水素4体積と塩素4体積から塩化水素が8体積でき、比は1:1:2でした。

図1:水素+塩素→塩化水素で「体積が2倍」になる理由

原子1個ずつが結びつくなら塩化水素は4粒しかできませんが、実験では8体積できました。水素も塩素も原子2個の分子だと考えると、数が合います。

水素塩素塩化水素原子説の予想体積比 4:4:4(1:1:1)+→実験の結果体積比 4:4:8(1:1:2)+→分子説の説明体積比 4:4:8(1:1:2)+→原子説の予想 1:1:1水素塩素塩化水素実験の結果 1:1:2水素塩素塩化水素分子説の説明 1:1:2水素塩素塩化水素

※薄い円が水素原子、濃い円が塩素原子。中段の点線の円は「1体積分」を表し、中身の粒の数は実験からは見えません。同温・同圧で比べた体積です。

体積を2倍にするには、塩化水素の粒子が8個できなければなりません。そのためには水素や塩素の原子を半分に割る必要があり、「原子はそれ以上分けられない」という原子説と正面からぶつかります。ドルトン自身もこの点を受け入れず、ゲーリュサックの結果を退けました。

分子説で矛盾が解ける:H2+Cl2→2HCl

アボガドロは、水素と塩素の気体の1粒は原子1個ではなく、原子2個が結びついた分子だと考えました。反応で分かれるのは原子ではなく分子で、水素分子1個と塩素分子1個から塩化水素の分子が2個できます。

水素と塩素から塩化水素ができる反応
H2 + Cl2 → 2HCl
体積比 1 : 1 : 2
原子の数:左辺 H 2・Cl 2、右辺 H 2・Cl 2 で一致。分子の数は 1 + 1 → 2 と増えるので、同温・同圧で体積が2倍になる

こう考えると、水素4分子と塩素4分子から塩化水素が8分子でき、4:4:8という実験結果とそのまま一致します。原子は割れずに組み替わるだけなので原子説も守られ、2つの法則の矛盾がなくなりました。

アボガドロが論文で挙げた例には、水素と酸素から水蒸気ができる反応もあります。水素2体積と酸素1体積から水蒸気が2体積できるのは、酸素の分子が半分ずつに分かれて2個の水分子に入るからだと説明しました。

水素と酸素から水蒸気ができる反応
2H2 + O2 → 2H2O(気体)
体積比 2 : 1 : 2
原子の数:左辺 H 4・O 2、右辺 H 4・O 2 で一致。原子のままだと O 1個から H2O は1個しかできず、2体積にならない

分子説が約50年認められなかった理由

分子説は筋の通った説明でしたが、発表から半世紀ほどはほとんど顧みられませんでした。当時有力だったベルセリウスの二元論は、化合物をプラスとマイナスの電気を帯びた部分の引き合いで説明しており、同じ原子どうしが2個で結びつく理由がありませんでした。

アボガドロがトリノで研究していて、フランスやドイツ、イギリスなど化学の中心から離れていたことも、広まらなかった理由に挙げられます。仮説を直接確かめる実験の方法もなかったため、原子量の値は研究者によってばらばらのまま使われていました。

流れを変えたのは同じイタリアのカニッツァーロで、1858年の講義の概要で、分子説を使えば気体の密度から分子量をそろえて決められると示しました。

1860年にドイツのカールスルーエで開かれた初の国際化学会議は合意なしで終わりましたが、会場で配られたこの論文が広く読まれ、原子量が1つの体系にそろうきっかけになりました。

10年ほどでメイヤーやメンデレーエフがこの原子量を採用し、メンデレーエフは自分の周期表がカニッツァーロの仕事に触発されたと認めています。アボガドロは1856年に亡くなっており、分子説が受け入れられるのを見届けることはありませんでした。

図2:分子説が受け入れられるまでの流れ

分子説は1811年に出ましたが、原子量の混乱を解く道具として広まったのは約50年後です。その後の周期表と、いまの mol の定義につながっています。

1803年ごろドルトンの原子説元素ごとに決まった質量の原子があり、化合物は原子の結びつきでできる
1808年ゲーリュサックの気体反応の法則反応する気体と生じる気体の体積は簡単な整数比になる
1811年アボガドロの分子説気体は原子が結びついた分子でできる。同温・同圧・同体積なら分子の数は同じ
1858〜1860年カニッツァーロとカールスルーエ会議分子説で原子量をそろえる考え方が、会議で配られた論文から広まる
1869年メンデレーエフの周期表そろった原子量をもとに元素を並べた。カニッツァーロの仕事に触発されたと本人が認めている
2019年アボガドロ定数が定義値に1 mol = 6.022 140 76×1023 個と、数で mol を決めた

※ドルトンの原子説の発表は1803〜1808年にかけて行われました。分子説が無視された理由は本文で説明します。

アボガドロの法則の現在:同温・同圧なら体積は分子の数に比例する

分子説の2つ目の内容は、いまはアボガドロの法則として気体の計算の土台になっています。式で書くと、理想気体の状態方程式 PV=nRT で温度 T と圧力 P を一定にしたとき、体積 V は物質量 n に比例するという関係です。

状態方程式からアボガドロの法則を読む
PV = nRT
V = RTP × n
P:圧力[Pa] V:体積[m3] n:物質量[mol] R:気体定数 8.314 J/(mol·K) T:温度[K]。T と P が同じなら RT/P は気体の種類によらない定数になる

RT/P には気体の種類を表す値が入っていないので、窒素でも二酸化炭素でも、同じ条件なら1 molの体積は同じです。混合気体でも同じで、成分ごとの体積の割合はそのまま物質量の割合になります。分圧やモル分率への使い方は、平均分子量の記事で計算例を挙げています。

図3:同じ体積なら分子の数は同じ、質量はモル質量で決まる

容器の大きさと温度・圧力をそろえると、中の分子の数は気体の種類によりません。重さが違うのは、分子1個の質量が違うからです。

水素 H₂2.0 g酸素 O₂32.0 g二酸化炭素 CO₂44.0 gどれも 0℃・1 atm で 22.4 L、中の分子は 6.022×10²³ 個0℃・1 atm・22.4 L の容器中の分子はどれも 6.022×10²³ 個水素 H₂2.0 g酸素 O₂32.0 g二酸化炭素 CO₂44.0 g

※分子の数と並びは模式です。質量はモル質量(H₂ 2.016、O₂ 31.998、CO₂ 44.009 g/mol)を丸めた値で、理想気体として計算しています。

気体の種類が関係しないのは、気体の分子どうしの間隔が分子そのものの大きさよりずっと広いからです。0℃・1気圧で分子1個が使える空間を立方体とみなすと一辺は約3.3 nmで、分子がほぼ接している液体窒素の約0.39 nmと比べて9倍近く離れています。

気体の分子1個あたりの空間(0℃・1 atm)
22.414×10−3 m3/mol6.022×1023 /mol = 3.72×10−26 m3
一辺 = 3.3 nm
液体窒素(−196℃)の1個あたり
34.7×10−6 m3/mol6.022×1023 /mol = 5.76×10−29 m3
一辺 = 0.39 nm
液体窒素のモル体積は NIST Chemistry WebBook(77 K・1 atm)の値。気体の体積は液体の約650倍

同じ理由で、アボガドロの法則は液体や固体には当てはまりません。液体や固体では分子が接して並ぶので、1 molの体積は分子の大きさで決まり、水は約18 mL、液体窒素は約35 mLと物質ごとに違います。

モル体積 22.4 L と 22.7 L の違い:基準の圧力が違う

22.4 Lと22.7 Lの違いは、どちらも0℃の値で、基準にする圧力が1気圧か100 kPaかだけです。圧力が1.3%低い100 kPaを基準にすると、同じ1 molの気体は1.3%ふくらんで22.7 Lになります。

0℃(273.15 K)のモル体積を計算する
1 atm のとき
8.314 462 618 × 273.15101 325 = 0.022 414 m3/mol
= 22.414 L/mol
100 kPa のとき
8.314 462 618 × 273.15100 000 = 0.022 711 m3/mol
= 22.711 L/mol
R はアボガドロ定数とボルツマン定数の積で、2019年から誤差のない定義値。NIST の CODATA 推奨値(22.413 969 54…L、22.710 954 64…L)と一致

教科書でなじみのある22.4 Lは、0℃・1気圧を「標準状態」とする昔からの決め方です。IUPAC(国際純正・応用化学連合)は1982年から、気体の標準状態の圧力を切りのよい100 kPa(1 bar)にすることを勧めており、そちらの値が22.7 Lです。

基準の条件1 molの体積(理想気体)主に使われる場面
0℃・101.325 kPa(1 atm)22.414 L高校・大学の教科書、Nm³(ノルマル立方メートル)
0℃・100 kPa(1 bar)22.711 LIUPAC が1982年から勧める気体の標準状態
15℃・101.325 kPa23.645 L天然ガスの取引などの基準
20℃・101.325 kPa24.055 L常温(20℃)の体積で見積もるときの目安
25℃・101.325 kPa24.465 L作業環境の ppm と mg/m³ の換算
25℃・100 kPa24.790 L熱力学データの表の温度・圧力
表1:基準の温度・圧力ごとの理想気体のモル体積(V=RT/P、R=8.314 462 618 J/(mol·K)で計算)

工場で使うガス流量の Nm3(ノルマル立方メートル)は、0℃・1気圧に直した体積なので22.414の側です。実際の温度・圧力の体積との換算式と早見表は、Nm3とm3の違いの記事にまとめています。圧力の単位の換算は圧力の単位換算表が便利です。

アボガドロ定数とアボガドロの法則は別もの

名前が似ていますが、アボガドロ定数は1 molに含まれる粒子の数そのもので、アボガドロの法則は「同温・同圧・同体積なら数が同じ」という気体の性質です。法則は数の値を言っておらず、定数のほうは気体以外の液体や固体、イオンにも使います。

アボガドロ定数 NA は、2019年5月の国際単位系(SI)の改定で誤差のない定義値になりました。それまでは「炭素12の0.012 kgに含まれる原子の数」と決めていたので、実験で測る値でした。

いまは数のほうを先に決めて mol を定義しており、詳しくはモル質量の記事で扱っています。

アボガドロ定数(2019年からの定義値)
NA = 6.022 140 76×1023 mol−1
1 mol は、ちょうどこの個数の粒子(原子・分子・イオン・電子など)を含む物質量(BIPM)。単位のない「アボガドロ数」は、この数値の部分を指す呼び方

実際の工場では:体積比=モル比で気体を扱う

化学工場や燃焼設備では、ガスの量を体積(Nm3)で測ることがほとんどです。アボガドロの法則があるので、同じ基準に直した体積どうしなら、反応式の係数とそのまま比べられます。基準をそろえれば、圧力が数気圧までの一般的な燃料ガスや空気では、この扱いで設計や運転の計算に足ります。

図4:体積の比を分子の数の比として使う4つの場面

温度と圧力がそろっている気体どうしなら、流量計や検知器の読みをそのまま反応式の係数と比べられます。

燃焼空気燃料の Nm³ に係数の比を掛け、酸素21%で割って空気量を決める
原料ガスの供給反応式の係数どおりの体積比で流量を合わせる(N₂:H₂=1:3 など)
混合ガスvol% はモル%。質量%とは分子の重さの分だけ違う
ガス濃度ppm や % は体積の比=分子の数の比。温度・圧力が変わっても値は同じ

燃焼に要る空気量:メタン 1 Nm3 の例

メタンが燃える反応式は CH4+2O2→CO2+2H2O で、係数からメタン1 Nm3 に酸素が2 Nm3 要ると読めます。空気中の酸素はおよそ21%なので、酸素2 Nm3 を含む空気は9.52 Nm3 で、これがちょうど燃え切る量の理論空気量です。

メタン 1 Nm3 あたりの空気量
理論空気量 = 2 Nm30.21 = 9.52 Nm3
実際の空気量(空気比1.2)= 9.52 × 1.2
= 11.4 Nm3
空気比:実際に送る空気量 ÷ 理論空気量。燃え残りを防ぐため1より大きくする。体積はすべて 0℃・1 atm 基準で、燃料と空気の基準をそろえて使う
燃焼空気ダクトとガス配管がつながったボイラーのバーナー

ボイラーや炉では理論空気量より多く送り、その割合を空気比で管理します。メタン100 Nm3/hを空気比1.2で燃やすなら、送る空気は1,143 Nm3/hです。空気比の決め方と排ガスの酸素濃度の関係は空気比、燃焼ガスの量の出し方は排ガス量の計算方法で取り上げています。

図5:メタン 1 Nm³ を燃やすのに要る空気

反応式の係数は分子の数の比で、気体どうしならそのまま体積の比として読めます。酸素の量が分かれば、空気中の割合で割るだけで空気量が出ます。

CH₄ 1メタン(Nm³)O₂ 2酸素(Nm³)CO₂ 1 + H₂O 2燃焼ガス(Nm³)+空気 9.52理論空気量(Nm³)=2÷0.21空気 11.4空気比1.2のとき(Nm³)係数の比(1:2)が、そのまま体積の比になるCH₄ 1 + O₂ 2メタンと酸素(Nm³)CO₂ 1 + H₂O 2燃焼ガス(Nm³)空気 9.52理論空気量 = 2÷0.21(Nm³)空気 11.4空気比1.2のとき(Nm³)係数の比が、そのまま体積の比

※体積はすべて 0℃・1 atm に直した値(Nm³)。空気中の酸素を21%として計算しています。水蒸気は燃焼ガス中では気体として数えます。

原料ガスの供給量:アンモニア 1 t に要る水素と窒素

反応器に原料ガスを送る量も、係数の比から体積で決められます。ハーバー・ボッシュ法の N2+3H2→2NH3 では、窒素と水素を体積で1:3の割合で混ぜて合成塔に送ります。

アンモニア 1 t に要る原料ガス(理論量)
NH3:1,000 kg17.031 kg/kmol = 58.72 kmol
H2:58.72 × 32 = 88.07 kmol
→ 88.07 × 22.414 = 1,974 Nm3
N2:58.72 × 12 = 29.36 kmol
→ 29.36 × 22.414 = 658 Nm3
1 kmol = 22.414 Nm3(0℃・1 atm)。収率100%の理論量で、未反応のガスを循環させる実際のプラントでは合成塔を通る量はこれより多い

質量で見ると水素は約178 kg、窒素は約822 kgで、比べると水素はわずかですが、体積では3倍です。計算の途中は kmol で考え、最後に流量計の単位(Nm3/h)か質量(kg/h)に直すと取り違えが減ります。

混合ガスとガス検知器の ppm:体積の比は分子の数の比

ガスの濃度を表す vol%(体積%)や ppm も、アボガドロの法則のおかげで分子の数の割合として読めます。たとえば窒素に水素を4 vol%混ぜたガスは、分子100個のうち4個が水素という意味です。ところが水素の分子は軽いので、質量で表すと0.3%しかありません。

水素 4 vol%・窒素 96 vol% の混合ガスを質量%に直す
水素の質量% = 4 × 2.0164 × 2.016 + 96 × 28.013 × 100
= 8.062,697 × 100
= 0.30 mass%
2.016・28.013:水素・窒素のモル質量[g/mol]。体積の比(=物質量の比)にモル質量を掛けると質量の比になる

作業環境のガス濃度も体積の比で決められています。酸素欠乏症等防止規則は、空気中の酸素が18%未満の状態を酸素欠乏とし、硫化水素は「百万分の十」、つまり10 ppmを超えないよう換気することを求めています。10 ppmは、空気の分子100万個のうち10個が硫化水素という割合です。

ppmや%は比なので、温度や圧力が変わっても値は変わりません。一方で mg/m3 は1 m3 あたりの質量なので、気体の体積が変わる温度・圧力によって値が動きます。ppmから mg/m3 への換算は、モル質量の記事で一酸化炭素を例に計算しています。

実際の工場では:22.4 L からずれる気体と条件

ここまでの計算は、気体を理想気体として扱っています。実在の気体は分子どうしが引き合い、分子自体にも大きさがあるので、1 molの体積は22.414 Lからわずかにずれます。0℃・1気圧でのずれは、水素や窒素では0.1%以下ですが、液化しやすい気体ほど大きくなります。

図6:実在の気体の1 molの体積(0℃・1 atm)

理想気体の 22.414 L に近いのは水素・窒素・酸素で、液化しやすいアンモニアやプロパンは1.5〜2%小さくなります。

単位:L/mol(かっこ内は22.414 Lとの差)

水素 H₂

22.428(+0.06%)

窒素 N₂

22.404(-0.04%)

酸素 O₂

22.392(-0.10%)

メタン CH₄

22.361(-0.24%)

二酸化炭素 CO₂

22.263(-0.67%)

アンモニア NH₃

22.073(-1.52%)

プロパン C₃H₈

21.933(-2.15%)

※NIST Chemistry WebBook(Thermophysical Properties of Fluid Systems)の 273.15 K・101.325 kPa の値。差を見やすくするため、棒は 21.5 L を起点にしています。

プロパンで2%、アンモニアで1.5%の差は、燃料ガスの取引や在庫の計算では無視できない大きさです。都市ガスや LPG の熱量・密度は、こうした実在気体の値を使って決められています。ガスの種類ごとの性質はLNG・LPG・都市ガスの違いで整理しています。

圧力が高くなると、ずれはさらに大きくなります。実在気体では PV=ZnRT と書き、理想気体からのずれを圧縮係数 Z で表します。

実在気体の状態方程式と圧縮係数
PV = ZnRT
Z = 実際の体積理想気体として計算した体積
(例)水素 70 MPa・20℃
理想気体なら 28.7 mol/L、実際は 19.7 mol/L
Z = 28.7 ÷ 19.7 = 1.46
Z=1 なら理想気体と同じ。値は NIST Chemistry WebBook の密度から計算(20℃で水素 70 MPa 1.46、メタン 20 MPa 0.81、窒素 15 MPa 1.02)

燃料電池車の水素タンクに使われる70 MPaでは、水素は理想気体の計算より3割ほど少ない量しか入りません。逆にメタンを20 MPaまで押し込むと、分子どうしの引き合いで理想気体より約2割多く入ります。

高圧ガスの在庫や充塡量を22.4 Lのまま計算すると、ガスの種類によって多くも少なくも外れるので、圧縮係数を使って補正します。流量計の密度補正や貯槽の在庫計算でも、高圧側では同じ補正を入れます。

気体を精密に扱う分析の現場では、混合ガスの濃度を体積の比ではなく物質量の比(mol/mol)で表します。

ISO 14912 は、物質量分率・質量分率・体積分率の換算を定めており、体積分率が使えるのは成分が完全に気体のときに限るとしています。理想気体ならモル%と体積%は同じでも、精密な値では実在気体の補正の分だけずれるからです。

気体の量をどの単位で表すかは、どの物理量を測っているかの話でもあります。体積・温度・圧力といった状態を表す量の考え方は状態量、気体が液体に溶ける量を圧力で決める法則はヘンリーの法則の記事で扱っています。

アボガドロの法則のよくある質問

アボガドロはどんな人ですか?

アメデオ・アボガドロ(1776〜1856年)はイタリアのトリノ生まれで、トリノ大学で教えた科学者です。分子説の論文は1811年に発表され、法則と定数に名前が残りましたが、生前に分子説が認められることはありませんでした。

アボガドロ数とアボガドロ定数はどう違いますか?

アボガドロ定数は単位 mol−1 を持つ量で、6.022 140 76×1023 mol−1 です。アボガドロ数は、その数値の部分 6.022 140 76×1023 を単位なしで呼ぶときの言い方で、数としては同じものです。

ボイル・シャルルの法則とアボガドロの法則はどう関係しますか?

ボイル・シャルルの法則は、物質量が一定のとき PV/T が一定になるという関係で、量の違う気体どうしは比べられません。アボガドロの法則で「同じ条件なら体積は物質量に比例する」を足すと、どの気体にも使える状態方程式 PV=nRT にまとまります。

電気分解で出てくる気体の体積比もアボガドロの法則で説明できますか?

説明できます。水を電気分解すると陰極の水素と陽極の酸素が体積比2:1で出てきますが、これは 2H2O→2H2+O2 の分子の数の比です。両極の反応式と電子の数の関係は電気分解の記事で説明しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • アボガドロの法則:同温・同圧・同体積の気体には、種類によらず同じ数の分子が入る
  • 1811年の分子説は、気体の単体を原子2個の分子と考え、H2+Cl2→2HCl の1:1:2を説明した
  • 分子説は二元論と合わず約50年埋もれ、1860年のカールスルーエ会議の後に原子量の統一とともに広まった
  • モル体積は0℃・1 atmで22.414 L、0℃・100 kPaで22.711 L。違いは基準の圧力だけ
  • 工場では燃焼空気・原料ガス・ガス濃度を体積比=モル比で計算し、高圧や液化しやすい気体は圧縮係数で補正する

分子説は歴史の話に見えますが、いまの気体の計算はこの「同じ体積に同じ数の分子」を前提にしており、大事なのは反応式の係数をガスの体積の比として読み替えて使えることです。

単位と基準のそろえ方はSI基本単位と組立単位、塩化水素そのものの性質や製法は塩化水素(HCl)の記事も参考になります。

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