化学式とは?分子式・組成式・示性式など5種類の違いと一覧、SDSでの読み方

品質管理ラボの薬品棚に並ぶ試薬びんと粉末の容器

化学式は、元素記号と数字を組み合わせて物質やイオンを表す式の総称で、分子式・組成式・イオン式・示性式・構造式の5種類があります。式の種類によって読み取れる情報が違い、原子の数、原子の数の比、電荷、原子のつながりのどれを伝えたいかで使い分けます。

たとえばエタノールは分子式で C2H6O、示性式で C2H5OH と書き、食塩は組成式 NaCl で表します。工場では SDS(安全データシート)の分子式が教科書と違う並びだったり、同じ分子式の別の物質があったりするため、化学式は CAS 番号や濃度と一緒に読みます。

目次

化学式とは?分子式・組成式・イオン式・示性式・構造式の5種類

化学式は、物質を構成する元素の種類と、その数や数の比を元素記号で表した式です。何を表したいかで5種類のどれを使うかが決まり、分子をつくる物質には分子式・示性式・構造式、分子をつくらないイオン結晶や金属には組成式を使います。

分子式 C2H6O からは原子の数しか分かりませんが、示性式 C2H5OH にするとアルコールの性質を決める OH 基(ヒドロキシ基)が見えます。塩化ナトリウムは分子という区切りがないので、組成式 NaCl とイオン式 Na+・Cl− で表します。

図1:エタノールと塩化ナトリウムを化学式で表す

分子をつくる物質は4つの式で書き分けられ、イオン結晶は組成式とイオン式で表します。

エタノール(分子をつくる物質)分子式C2H6O1分子の原子の数組成式C2H6O最も簡単な比(ここでは同じ)示性式C2H5OHOH 基を分けて書く構造式HCCOHHHHH原子のつながり塩化ナトリウム(イオン結晶)組成式NaClイオン式Na+​ Cl−​分子式なし小さい円 Na⁺ 大きい円 Cl⁻分子の区切りがなく、数は 1:1

※塩化ナトリウムの結晶は Na+ と Cl− が交互に並んだ模式図。灰色の欄は、その物質では使わない表し方。

5種類の違いを表にまとめると次のとおりです。右下の小さな数字はその原子の数で、1のときは書きません。

種類表すもの例よく使う場面
分子式分子1個に含まれる原子の種類と数H2O、C2H6O、C6H12O6分子量の計算、SDS の成分欄
組成式原子の数の最も簡単な整数比NaCl、SiO2、Fe、CH2Oイオン結晶・金属・共有結合の結晶、元素分析の結果
イオン式イオンの元素と電荷Na+、Ca2+、SO42−イオン反応式、水質分析の項目
示性式官能基を分けて書いた式C2H5OH、CH3COOH有機物の性質を伝えたいとき
構造式原子のつながりを線(価標)で書いた式H−O−H、O=C=O異性体の区別、反応のしくみの説明
表1:化学式の5種類。構造式は線で結合を表し、二重結合は=、三重結合は≡で書く

組成式と分子式は数字だけが違うことも多く、グルコースの分子式 C6H12O6 を約分すると組成式 CH2O になります。SiO2 がなぜ組成式で書かれるのか、元素分析の結果から分子式を決める手順は組成式と分子式の違いで詳しく扱っています。

化学式の読み方:後ろの元素から「〜化」と読む

2種類の元素からなる化合物は、後ろの元素から「〜化〜」と読み、原子の数は漢数字で付けます。CO2 は二酸化炭素、N2O4 は四酸化二窒素で、前の元素が1個のときは「一」を付けませんが、CO の一酸化炭素のように後ろの元素の「一」は残します。

イオン結晶は陰イオンの名前から読み、NaCl は塩化ナトリウム、CaCO3 は炭酸カルシウムです。結晶に水を含む物質は CuSO4・5H2O を硫酸銅(II)五水和物と読み、点のあとの数字が結晶1単位あたりの水の数を表します。

覚える化学式と組み立てる化学式:よく使う化学式の一覧

化学式は分子式・イオン式・構造式まで含むため、全部を一覧にするときりがありません。覚えておくのは小さな分子と主なイオンだけで、組成式や二糖のように部品から組み立てられる式は、作り方を知っていれば十分です。

下の一覧は、化学の説明や反応式に繰り返し出てくる物質と、式の書き分けが分かる代表例に絞りました。現場で使う薬品は、覚えた式と照らすだけでなく、SDS で物質名・CAS 番号・濃度を必ず確かめます。

図2:覚える化学式と組み立てる化学式

覚えるのは部品になる式で、組成式や二糖はそれを組み合わせて書けます。

単体と小さな分子H2、O2、H2O、NH3、CO2、C6H6 など。反応式の基本になる覚える
主なイオンNa+、Ca2+、OH−、SO42− など。電荷の数(価数)まで覚える覚える
イオンからなる物質の組成式陽イオンと陰イオンの電荷を釣り合わせて書く。Al2(SO4)3 など組み立てる
二糖・高分子単糖や単量体から水が抜けてつながる数で決まる。C12H22O11 など組み立てる

よく使う分子の分子式と構造式の一覧

分子式や構造式は電子配置から考えて作ることもできますが、よく使う小さな分子は覚えたほうが早く確実です。1種類の元素だけでできた単体と、2種類以上の元素でできた化合物に分けると次のようになります。

区分名称分子式構造式
単体水素H2H−H
単体窒素N2N≡N
単体酸素O2O=O
単体塩素Cl2Cl−Cl
化合物水H2OH−O−H(折れ線形)
化合物アンモニアNH3N に H が3本(三角錐形)
化合物二酸化炭素CO2O=C=O(直線形)
化合物メタンCH4C に H が4本(正四面体形)
化合物ベンゼンC6H6炭素6個の環(亀の甲)
表2:よく使う分子の分子式と構造式。かっこ内は分子の形

水が折れ線形、二酸化炭素が直線形という形の違いは、分子全体に電気の偏りが残るかどうかを決めます。分子の形から極性を見分ける方法は極性分子と無極性分子の見分け方にまとめています。

ベンゼンは分子式 C6H6 で、構造式では単結合と二重結合が交互に並ぶ六角形で書きますが、ふだんは H を省いた六角形の略記を使います。六角形の中に○を描く書き方の意味はベンゼン環の構造式の書き方で解説しています。

硫酸・硝酸・リン酸は、化学工業で使う量が多い代表的な酸で、どれもオキソ酸に分類されます。オキソ酸は中心の原子に酸素が結合し、その酸素に水素イオンとして離れる H が付いた酸で、この3つは構造式の OH の数が電離できる H の数と一致しています。

図3:硫酸・硝酸・リン酸の構造式

中心の原子に O と OH が結合した形で、OH の H が水素イオンとして離れます。

SOOOHOH硫酸H2SO4​NOOOH硝酸HNO3​POOHOHOHリン酸H3PO4​

※硝酸の N と O の結合は、実際には二重結合と単結合が入れ替わった形(共鳴)の平均で、N は+、片方の O は−の電荷をもつ形で書くこともある。

硫酸は H2SO4、硝酸は HNO3、リン酸は H3PO4 で、分子式の H の数がそのまま2価・1価・3価の酸であることを表します。硫酸を工業的につくる流れは接触法で、同じ塩素でも酸素の数でオキソ酸の強さが変わる例は塩素のオキソ酸の違いで扱っています。

糖では、グルコース・ガラクトース・フルクトースがどれも分子式 C6H12O6 の単糖です。グルコースとガラクトースの違いは4番目の炭素についた OH の向きだけで、分子式では区別できず、構造式で初めて別の物質だと分かります。

単糖の立体の向きを平面で書き分けるには、縦横の線で表すフィッシャー投影式が便利です。二糖は単糖2個から水1分子が抜けてつながった物質なので、改めて覚えなくても次の式から分子式を出せます。

二糖の分子式(単糖2個から水が1個とれる)
2 C6H12O6 − H2O = C12H22O11
C:6×2=12、H:12×2−2=22、O:6×2−1=11。分子量は 180.16×2 − 18.02 = 342.30

図4:単糖2個から二糖ができる

どの単糖の組み合わせでも分子式は C12H22O11 で、組み合わせで名前が変わります。

C6H12O6​単糖+C6H12O6​単糖縮合OC12H22O11​二糖+H2O水が1個とれるグルコース+グルコース→ マルトースグルコース+フルクトース→ スクロースグルコース+ガラクトース→ ラクトース

単糖どうしをつなぐ結合の名前と、マルトース・スクロースで性質が違う理由はグリコシド結合の記事で説明しています。

イオン式の一覧と読み方

イオン式は、元素記号の右上に電荷の数(価数)と符号を書きます。1族の元素は1価、2族の元素は2価の陽イオンになると周期表から決められますが、遷移元素と多原子イオンは価数ごと覚える必要があります。

陽イオンイオン式価数
水素イオンH+1
ナトリウムイオンNa+1
カリウムイオンK+1
銅(I)イオンCu+1
アンモニウムイオンNH4+1
マグネシウムイオンMg2+2
カルシウムイオンCa2+2
銅(II)イオンCu2+2
亜鉛イオンZn2+2
鉄(II)イオンFe2+2
鉄(III)イオンFe3+3
アルミニウムイオンAl3+3
表3:主な陽イオン。(I)(II)(III) はローマ数字で価数を表し、「どういち」「どうに」のように読む
陰イオンイオン式価数
フッ化物イオンF−1
塩化物イオンCl−1
ヨウ化物イオンI−1
水酸化物イオンOH−1
硝酸イオンNO3−1
炭酸水素イオンHCO3−1
酢酸イオンCH3COO−1
硫化物イオンS2−2
硫酸イオンSO42−2
炭酸イオンCO32−2
リン酸イオンPO43−3
表4:主な陰イオン。1種類の元素だけの陰イオンは「〜化物イオン」と読む

銅や鉄のように価数が2通り以上ある元素は、名前にローマ数字を付けて区別します。価数が変わる理由は典型元素と遷移元素の違いで、NH4+ の4本目の N−H 結合ができるしくみは配位結合で説明しています。

イオンからなる物質の組成式は、イオン式から組み立てる

イオンからなる物質の組成式は、新しく覚えなくてもイオン式から作れます。陽イオンと陰イオンの電荷の合計がゼロになる個数の比を求め、陽イオンを先、陰イオンを後に並べて、多原子イオンが2個以上ならかっこでくくります。

図5:硫酸アルミニウムの組成式を組み立てる

価数の最小公倍数で電荷をそろえると、イオンの個数の比が決まります。

STEP 1イオン式を書くアルミニウムイオン Al3+ と硫酸イオン SO42−
STEP 2電荷を釣り合わせる3と2の最小公倍数は6。Al3+ が2個で+6、SO42− が3個で−6
STEP 3陽イオンを先に並べるAl2(SO4)3。読みは陰イオンから「硫酸アルミニウム」

逆に、組成式からは元の分子を決められません。グルコース C6H12O6、ホルムアルデヒド HCHO、酢酸 CH3COOH はどれも組成式が CH2O になるため、分子の物質では組成式に分子量の情報を足して分子式を決めます。

水溶液中ではイオン式のまま反応を書くほうが分かりやすく、沈殿や中和は反応に関わるイオンだけを残して表します。組成式のままの化学反応式をイオンに分けて書き直す手順はイオン反応式の書き方にあります。

広告

実際の工場では:SDS の化学式と CAS 番号を照らし合わせる

工場や品質管理の現場で化学式を最もよく目にするのは、薬品の SDS です。SDS は JIS Z 7253 で16項目の書き方が決められた書類で、化学式は3項「組成及び成分情報」に、化学名・別名・CAS 番号・濃度と並んで載っています。

一方、容器に貼る GHS ラベルに載るのは製品名、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書き、供給者で、化学式は必須の項目ではありません。ラベルで製品と危険性を確かめ、化学式や成分は SDS で確かめるという役割分担です。

SDS の3項に並ぶ分子式・CAS 番号・官報公示整理番号

厚生労働省が公開しているモデル SDS では、エタノールの3項に次の欄が並びます。安衛法の通知事項では成分の名称と含有量が必須で、CAS 番号と別名も書くことが望ましいとされています。

  • 化学名又は一般名:エタノール(別名 エチルアルコール)
  • 濃度又は濃度範囲:100%
  • 分子式(分子量):C2H6O(46.069)
  • 化学特性(示性式又は構造式)
  • CAS 番号:64-17-5
  • 官報公示整理番号:化審法 (2)-202、安衛法 既存

同じモデル SDS で、水酸化ナトリウムの分子式は HNaO、水酸化カルシウムは CaH2O2 と書かれています。教科書の NaOH・Ca(OH)2 と見た目は違っても、元素を決まった順(Hill 方式)に並べ直しただけで同じ物質です。

図6:SDS で薬品を確かめる順番

化学式は見た目が変わりやすいので、名前と番号で物質を決めてから量の情報を読みます。

STEP 1化学名と別名苛性ソーダ=水酸化ナトリウムのように、現場の呼び名と化学名を結びつける
STEP 2CAS 番号物質ごとに1つ。化学式が同じ別の物質や、水和物と無水物もここで区別する
STEP 3分子式と分子量「・5H2O」が付いているか、分子量が無水物の値かを見る
STEP 4濃度と換算の基準水溶液の濃度、何の物質に換算した含有率かを確かめてから量を計算する

官報公示整理番号は、日本の化審法や安衛法で既存の物質として扱われているかを表す番号です。新しい化学物質を製造・輸入するときの届出は新規化学物質の電子申請の記事で紹介しています。

化学式だけでは物質が決まらない:CAS 番号で確かめる

分子式が同じでも原子のつながりが違う物質(異性体)は、性質がまったく違います。C2H6O にはエタノールとジメチルエーテル、C3H8O には 1-プロパノールと 2-プロパノールがあり、CAS 番号は物質ごとに別の番号が付いているので取り違えを防げます。

図7:分子式が同じで別の物質

示性式と CAS 番号を見れば、同じ分子式の物質を区別できます。

C2H6O分子式は1つエタノールCH3CH2OHCAS 番号64-17-5常温で液体ジメチルエーテルCH3OCH3​CAS 番号115-10-6常温で気体C3H8O分子式は1つ1-プロパノールCH3CH2CH2OHCAS 番号71-23-8溶剤・原料2-プロパノール(IPA)(CH3)2CHOHCAS 番号67-63-0洗浄・消毒

※CAS 番号は NIST Chemistry WebBook で確認。用途は代表的なもの。

CAS 番号は、米国化学会の一部門 CAS(Chemical Abstracts Service)が物質ごとに付ける登録番号です。試薬の発注では CAS 番号・グレード・容量まで指定し、受け入れのときに SDS の番号が注文と合うかを照合します。

同じ物質でも水和物と無水物は別の番号で、硫酸銅(II)は無水物が 7758-98-7、五水和物が 7758-99-8 です。CAS 番号が1桁でも違えば別の品物として扱い、化学式の見た目が似ていても代わりに使わないのが原則です。

薬品の呼び名と化学式の対応

工場では、化学名ではなく工業界の呼び名で薬品を呼ぶことが多く、発注書や日報にもその名前で書かれます。苛性ソーダ・ソーダ灰・消石灰などはモデル SDS の別名欄にも載っています。主な呼び名を、化学名・化学式・CAS 番号と並べると次のとおりです。

現場での呼び名化学名化学式CAS 番号
苛性ソーダ水酸化ナトリウムNaOH1310-73-2
ソーダ灰炭酸ナトリウムNa2CO3497-19-8
重曹炭酸水素ナトリウムNaHCO3144-55-8
消石灰水酸化カルシウムCa(OH)21305-62-0
生石灰酸化カルシウムCaO1305-78-8
次亜塩素酸ソーダ(次亜)次亜塩素酸ナトリウム(水溶液)NaClO7681-52-9
IPA2-プロパノール(CH3)2CHOH67-63-0
硫酸バンド硫酸アルミニウムAl2(SO4)310043-01-3
表5:薬品の呼び名と化学式。CAS 番号は無水物・純物質のもので、製品の SDS で確かめる

苛性ソーダとソーダ灰は名前が似ていますが、強い塩基の NaOH と、それより弱い Na2CO3 で、取り違えると中和に要る量も危険性も変わります。苛性ソーダの潮解性や工場での扱いは水酸化ナトリウムの性質、ソーダ灰をつくる工程はソルベー法(アンモニアソーダ法)で扱っています。

実際の工場では:水和物と換算表記で量を間違えない

化学式の読み違いがそのまま量の間違いになるのが、水和物と換算表記です。物質名と CAS 番号を確かめても、結晶の中の水を含む重さか、別の物質に換算した含有率かを見落とすと、仕込み量が2倍以上ずれます。

透明な結晶と白い粉末を秤量皿に分けて量る手元

「・10H2O」は結晶の中に入っている水

Na2CO3・10H2O の「・10H2O」は、炭酸ナトリウム1単位あたり水10分子が結晶の中に組み込まれていることを表します。見た目は乾いた結晶でも、この水は重さに含まれるため、同じ1 kg でも無水物と十水和物では炭酸ナトリウムの量が違います。

水和物は湿気を吸ったり、乾いた空気中で水を失ったりして重さが変わることもあります。結晶の水がイオンを取り囲むしくみや、医薬品で水和物と無水物を別の結晶として扱う理由は水和と水和物の記事で解説しています。

計算例:炭酸ナトリウムの無水物と十水和物

レシピに「炭酸ナトリウム 1.00 kg」と書かれていて、手元に十水和物しかない場面で考えます。原子量(H 1.008、C 12.011、O 15.999、Na 22.990)から式量を出し、その比で量を直します。

式量
Na2CO3 = 22.990×2 + 12.011 + 15.999×3 = 105.99
Na2CO3・10H2O = 105.99 + 18.015×10 = 286.14
無水物 1.00 kg 分に要る十水和物
1.00 kg × 286.14105.99 = 2.70 kg
十水和物 1.00 kg に含まれる炭酸ナトリウム
1.00 kg × 105.99286.14 = 0.370 kg(37.0%)
18.015 は水 H2O の式量。湿気の出入りや純度は含まない理想値で、実際は試験成績書の含量で補正する。

図8:炭酸ナトリウム十水和物 1 kg の中身

重さの6割以上は結晶の中の水で、無水物と同じ量を入れるには2.7倍を量ります。

炭酸ナトリウム十水和物 1 kg の中身Na2CO3​370 g結晶の中の水630 g同じ量の炭酸ナトリウムを入れるときに量る重さ無水物 1.00 kg十水和物 2.70 kg(2.7倍)

十水和物を無水物のつもりで 1 kg 入れると、炭酸ナトリウムは計画の37%しか入りません。量った重さが全部目的の物質ではないという考え方は、純度やファクターの補正と同じで、試薬の純度を含めた配合計算はモル質量と式量の換算で扱っています。

液体の硫酸アルミニウムは Al2O3 換算で書かれる

浄水場で凝集剤に使う液体の硫酸アルミニウムは、含有率を Al2(SO4)3 ではなく、酸化アルミニウム Al2O3 に換算した値で表します。静岡県企業局の工業用水道の購入仕様書では、水道用硫酸アルミニウム(液体)の品質を「酸化アルミニウム 8.0〜8.2%」と定めています。

Al2O3 換算の 8.1% を硫酸アルミニウム(無水物)に直す
Al2(SO4)3 = 342.13 Al2O3 = 101.96
8.1% × 342.13101.96 = 約27.2%
どちらも Al を2個ずつ含むので、式量の比だけで換算できる。8.0〜8.2% は硫酸アルミニウムで約26.8〜27.5%。

同じ液を「Al2O3 8%」と読むか「硫酸アルミニウム 27%」と読むかで、数字は3倍以上違います。含有率を見たら、何の化学式に換算した値かを必ず確かめるのが、注入量の計算や受け入れ検査の前提です。

化学式・CAS 番号・換算基準の確認は、薬品を新しく使うときのリスクアセスメントでも最初の手順になります。SDS の情報から危険性を見積もる流れはリスクアセスメントのやり方でまとめています。

化学式のよくある質問

化学式と化学反応式はどう違いますか?

化学式は1つの物質やイオンを表す式で、化学反応式は反応する物質と生じる物質の化学式を矢印でつないだ式です。反応式では、両辺の原子の数がそろうように化学式の前に係数を付けます。

化学式の右下の数字と前の大きな数字の違いは何ですか?

右下の小さな数字はその物質1単位に含まれる原子の数で、変えると別の物質になります。前の大きな数字は反応式の係数で、物質の個数(物質量)を表すので、2H2O は水分子が2個という意味です。

CAS 番号はどこで調べられますか?

無料で引けるものに、CAS が公開する CAS Common Chemistry や、製品評価技術基盤機構(NITE)の化学物質総合情報提供システム NITE-CHRIP があります。NITE-CHRIP では CAS 番号から日本の法令の対象かどうかも一緒に確かめられます。

元素記号と化学式は何が違いますか?

元素記号は1種類の元素(原子の種類)を表す記号で、化学式は元素記号を組み合わせて物質を表した式です。Fe や C のように元素記号1文字がそのまま金属や黒鉛の組成式になる物質もあります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 化学式は元素記号で物質やイオンを表す式の総称で、分子式・組成式・イオン式・示性式・構造式の5種類がある
  • 分子をつくる物質は分子式・示性式・構造式、イオン結晶や金属は組成式で表し、読み方は後ろの元素から「〜化」
  • 覚えるのは小さな分子と主なイオンで、イオンからなる物質の組成式や二糖はそこから組み立てられる
  • SDS の3項では分子式が Hill 方式で並ぶことがあり、同じ分子式の別の物質もあるので、化学名と CAS 番号で物質を決める
  • 水和物は結晶の水を含む重さ、含有率は換算の基準を確かめる。十水和物の炭酸ナトリウムは37%、Al2O3 8.1% は硫酸アルミニウムで約27%

化学式は、教科書では物質を表す記号の約束ごとですが、工場では薬品を正しく選んで正しい量を入れるための確認項目になります。物質の量の単位やモル計算の土台は平均分子量の求め方でも扱っています。

出典

出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

品質保証・品質管理・化学・樹脂・ゴムの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品

週刊MONOSCOPEの見本(品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

品質保証・品質管理を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次