超音波流量計は音波の伝わり方から、電磁流量計は導電性液体に生じる電圧から流量を測ります。配管外側から測りたいのか、導電性のある液体を常設で測りたいのかが、使い分けの入口です。
どちらも流路を大きく妨げない方式ですが、測れる流体と設置条件が異なります。気泡、導電率、配管の材質、満水状態を調べず、精度や価格の数字だけで選ぶと、現場で安定した測定ができません。
冷却水や工程液の流量計を検討する際の確認項目もまとめます。
超音波流量計とは
超音波流量計は、流体中を伝わる超音波を使って流速を検出し、管の断面積などから体積流量へ換算する計器です。伝搬時間差式やドップラー式があり、測定対象に合わせて原理と構造を選びます。
超音波は一般に人の可聴域より高い周波数の音を指し、その目安は20kHzです。産業では「聞くことを目的としない音波」と広く扱う場合もあり、計測で使用する周波数は流体や装置によって異なります。
伝搬時間差式は、流れに沿う向きと逆らう向きで、同じ音路を進む時間が変わることを利用します。上流のセンサから下流へ送信する測定と、下流から上流へ送信する測定を交互に行います。
一方のセンサが出した音を、相手がただ反射して送り返すという説明では不十分です。基本となるのは両方向の送受信であり、流れ方向の伝搬が速く、逆方向が遅くなる差を検出します。
図1:同じ音路でも、流れに乗る方向が早く届く
AとBが交互に送受信します。灰色が管壁、青線が流体中を直接横断する一音路です。
音速に軸方向流速の音路方向成分が加わり、
伝搬時間が短くなる。
流れに逆らうため、
伝搬時間が長くなる。
センサは管外面に接触。管壁やくさび内の屈折・音路は省略し、流体内の部分だけを青線で示します。実機の取り付け方向を指定する図ではありません。
伝搬時間から流速を求める
流体内の音路長をL、音路と流れ方向の角度をθ、流体中の音速をcとします。流速を一様なvとみなす基本モデルでは、流れの音路方向の成分はvcosθです。
両方向の時間の逆数を差し引くと、上式では音速cが消えます。ただし、実機で音速や温度の条件が何も関係しなくなる意味ではありません。管壁での屈折や音路、流体物性、信号の伝わりやすさも測定に関わります。
管を直径方向に一度横断する音路なら、Lは内径Dをsinθで割った長さです。流速が音速に比べて十分小さいとき、到達時間差ΔTと無流速時の流体内伝搬時間τを使い、次の近似形にも整理できます。
クランプオンでは、管の外径、肉厚、材質、ライニングなどを入力し、センサ間隔と音路を決めます。呼び径だけで内径を決めたり、管壁を流体として扱ったりすると、演算が合っていても流量がずれます。
音路に沿って平均した軸方向流速と、断面全体の平均流速は異なる量です。実機では流速分布や音路配置を考慮し、断面平均流速へ換算します。層流・乱流とレイノルズ数は、この違いを理解する基礎です。
例えば円管の十分に発達した層流では、中心ほど速い放物線状の流速分布になります。管の中心を通る音路では速い部分の比重が面積平均より大きくなるため、音路平均値をそのままQ=Avのvへ代入できません。
図2:内径D、音路L、角度θは別の量
角度は流れ軸を基準に統一。管の中心を通る流体内の一横断だけを示しています。
Dは灰色の管壁の内面間です。θは流れ軸と流体内音路の角度で、センサ外面の角度や管壁法線からの入射角とは区別します。
流速から体積流量へ換算する例
内径100mmの円管に、断面平均2.0m/sで液体が流れる例を考えます。体積流量は内径から求めた断面積と平均流速の積です。流量の単位をm³/hにするには、m³/sの値に3,600を掛けます。
同じ内径・一様流速2.0m/sで、音速1,500m/s、θ=45度を仮定すると、流体中の音路は約0.1414mです。下流方向の時間は約94.192μs、上流方向は約94.370μsとなり、差は約178nsです。
内径の誤りも流量へ影響します。流速を別に正しく与えた面積換算だけで考えると、内径を1%大きく設定した場合、面積は約2.01%大きくなります。超音波実機では音路や流速演算にも内径が関わるため、最終誤差をこの値だけで決めません。
呼び径100の管でも、規格や肉厚が違えば内径は同じではありません。図面の値と現物の仕様をそろえ、外径から肉厚の2倍を引く際には、ライニングや付着物による流路の変化も区別します。
この時間差は小さいため、センサの取り付けや受信状態が重要になります。上の値は原理を確認する理想計算で、実機の生信号をそのまま表した値でも、達成精度の保証でもありません。
ドップラー式と外付け構造の違い
ドップラー式は、流体とともに移動する粒子や気泡などから返る音の周波数変化を利用します。透明で反射体がほとんどない流体と、適切な反射体を含む流体では、利用しやすい原理が異なります。
伝搬時間差式は、音が十分に届く均一な流体に向く一方、多量の気泡や固形物による減衰が問題になります。ドップラー式にも反射体の性状や分布の条件があり、常にどちらが高精度とは決められません。
クランプオンは配管の外側へセンサを付ける構造であり、超音波という原理そのものと同義ではありません。配管へ組み込む構造の超音波流量計もあり、液体用と気体用のセンサを無条件に共用することもできません。
外付け型は、配管を切断せずに調査へ使える点が利点です。ただし保温材の処理、表面状態、接触媒質、センサ固定、作業場所への接近が必要で、どんな配管にも外から置くだけで測れるものではありません。
国内ではキーエンスやオーバルなども超音波式を取り扱っています。同じメーカーでも液体用・気体用、外付け・組込と製品の構成が異なるため、会社名ではなく対象製品の仕様を比較します。
電磁流量計とは
電磁流量計は、磁界を横切って導電性の液体が流れると、流れと磁界の両方に直角な方向へ起電力が生じる原理を使います。一般的な構造では励磁コイルで磁界を作り、対向する電極で電圧を検出します。
流体が導体の役割を果たすため、導電率が選定条件になります。通常の電磁式を、絶縁性の油や気体へそのまま適用することはできません。低導電率に対応する容量式などもあり、必要な下限値は機種の仕様で判断します。
検出器の内面にはライニングがあり、液体の性状に合わせて電極とともに材質を選びます。腐食性、摩耗性、付着性を無視して原理だけを合わせると、測定の不安定化や接液部の損傷につながります。
図3:流れ・磁界・検出電圧は互いに直交する
管を上から見た概念。右向き流れと紙面の奥向き磁界に対し、図の上下の電極間に電圧が生じます。
2本の検出線は電圧検出器の別端子へ接続し、電極同士を短絡しません。図の上下は鉛直方向を指定せず、励磁コイル形状と実機配線は省略。極性は示した流れと磁界の向きに対応します。
電圧と流量の関係を式で見る
一様な磁界と円管の基本モデルでは、起電力Eは磁束密度B、電極間距離に対応する内径D、平均流速vの積です。体積流量の式を代入すれば、内径が一定のとき流量と起電力が比例することが分かります。
例えばB=0.10T、内径0.100m、平均流速2.0m/sなら、起電力は0.020V、つまり20mVです。この理想例の体積流量は先ほどの56.55m³/hと同じで、流速を測る原理が違っても換算する断面積は共通です。
磁束密度と流量だけを掛けても起電力にはなりません。Qから流速へ直す際のD²と、E=BDvのDを整理すると分母に残るのはDです。単位と式変形を追うことが、計算の取り違えを防ぎます。
電磁式は長い産業利用の実績があり、横河電機やアズビルなど多くのメーカーが取り扱います。ただし、原理が共通でも導電率、電極方式、耐食性、出力、診断機能は機種ごとに異なります。
満水と電極の状態が測定を左右する
一般的な満水管用の電磁流量計は、測定管が液で満たされ、電極が液へ適切に接する状態を必要とします。液面が下がって空気が入ると、管断面積全体へ流速を掛ける前提も崩れます。
気泡が多い、電極へ付着物がある、導電率が仕様外、といった状態では、ゼロ点や指示が不安定になることがあります。電磁式だから気泡の影響を受けない、という選び方はできません。
設置では、管内を満水にできる位置、電極の向き、接地や等電位化などの指定条件を守ります。非接液電極方式もあるため、接地リングや取り付けの要否を全機種に一律で決めず、仕様書と取扱説明書を照合します。
超音波式と電磁式の使い分け
最初に、流体が何か、どの温度・圧力で流れ、測定中に性状が変わるかを整理します。その上で、配管を止めて工事できるか、必要な測定範囲と不確かさ、常設か調査用かを比較します。
両方式とも可動部や流路の障害物を避けやすく、絞りを使う方式のような付加的な圧力損失を抑えられます。ただし配管摩擦そのものがなくなるわけではなく、縮径や取り付け形状の影響は別に評価します。
密度や粘度を流量の直接の検出量にしない点も共通ですが、物性の変化に無関係という意味ではありません。粘度は流速分布に関係し、超音波の伝わりやすさや電磁式の導電率など、各原理の適用条件は残ります。
図4:流体と設置条件から候補を絞る
満たすべき条件の比較です。範囲・精度・価格は機種と工事条件で比較します。
| 確認点 | 超音波式 | 電磁式 |
|---|---|---|
| 測定の手掛かり | 音波の時間差や周波数変化 | 導電性液体の起電力 |
| 外から付けたい | クランプオン型が候補 | 一般的な測定管は配管へ組込 |
| 導電性の低い液 | 音が通るかを評価 | 機種の下限・電極方式を評価 |
| 気泡・粒子 | 伝搬/反射の方式ごとに評価 | 満水・電極・気泡の状態を評価 |
| 保全 | 固定、接触媒質、受信状態 | 接液材、付着、接地、診断 |
例えば、既設の冷却水配管を止めずに流量の傾向を調べたいなら、取り付け可能なクランプオン型が候補です。流量だけでなく温度差も測れば、積算熱量計の考え方で熱の使用状況へつなげられます。
一方、導電性のある工程液を常時測るなら、電磁式の接液材と測定条件を検討できます。スラリーや低導電率液に対応する専用方式もあるため、「汚れた液は全て測れる」「純水は全て不可」といった二択にはしません。
直管長と満水位置を先に調べる
曲がり、分岐、弁、ポンプの直後では、流速分布の偏りや旋回が残る場合があります。必要な直管長は方式だけで一定ではなく、上流側機器とセンサ構成に合わせて機種の指定値を使います。

流量調整弁を絞った直後を安易に測定点へ選ぶと、流れや圧力が不安定になることがあります。流量制御の構成と合わせ、計測点と操作端の位置を検討します。
図5:センサを置く前に、音と流れの条件を見る
満水と受信の概念比較です。必要な直管長、センサの周方向位置は取扱説明書で決めます。
管仕様、接触媒質、固定、受信診断をそろえる。
液面や気泡の状態を先に改善し、方式の適用を再評価。
左図は音路を追うための模式図です。水平管の頂部・底部を推奨取り付け位置として示すものではありません。
ポンプの運転点が変わると、測りたい流量の範囲も変わります。設計上の最大流量だけでなく、通常、最低、起動停止時の流れを整理し、ポンプの流量と圧力の関係から運転条件をそろえます。
流量を減らす運用では、測定の下限だけでなく設備自体の運転下限も別に考えます。ポンプのミニマムフローを守ることと、流量計が低流量を検出できることは、それぞれ満たすべき条件です。
常設計器の値と可搬式の値を比べるときは、同じ運転状態と時刻を使います。違う配管枝の値や、積算値と瞬時値を混ぜると、流量計の誤差と運転変化を区別できません。
精度とレンジアビリティは仕様の条件で比べる
測定範囲が広いことと、全範囲で同じ相対精度があることは別です。指示値に対する割合なのか、フルスケールに対する割合なのか、最低流速で加算誤差があるのかを読みます。
仮に精度がフルスケールの±1%なら、最大100m³/hの計器では±1m³/hです。10m³/hを測っているときには読み値の±10%に相当します。この数値は仕様の読み方を示す例で、両方式の一般精度ではありません。
表示の桁が多くても、その桁まで正確とはいえません。繰返し性、校正条件、流速分布、設置状態を含めて必要な不確かさを検討します。超音波式が電磁式より常に高精度、という方式名だけの順位付けは避けます。
必要流量が低い場合には、流量計の口径と測定範囲の整合が特に大切です。別原理も候補に含めるなら、面積式流量計や容積式流量計の特徴と比較できます。
工事費と出力信号まで含めて導入する
本体価格だけでなく、配管切断、停止、支持、配線、保温の復旧、試運転、校正や点検の費用まで比べます。クランプオン型でも取り付け場所の作業が必要で、電磁式でも口径や材質によって費用は変わります。
導入前には、正常な運転状態での基準値と、そのときの受信診断や電極診断を保存します。後から指示が変化したとき、実際の流れの変化か、センサの接触・付着・設定の変化かを切り分ける資料になります。
ゼロ点を点検するときは、本当に流れが止まっているかを先に調べます。閉じたつもりの弁に漏れがあると、計器のゼロ点を動かして実際の小流量を消してしまいます。満水を保った無流動状態など、機種指定の条件で確認することが基本です。
可搬式で常設計器を点検するときも、2台の差がそのまま常設計器の誤差とはいえません。双方の校正条件、取り付け、表示の平均化時間をそろえ、必要な精度に対して差が意味を持つかを評価します。結果には測定日時と運転状態も残します。
計器の表示が正しくても、制御盤へ送る信号の設定が違えば設備の値はずれます。4-20mAのスケーリングでは、流量のゼロ点と最大値、正逆流、異常時出力を受け側と合わせます。
積算には単位パルスや通信なども使われます。瞬時値の単位、積算パルスの重み、ダンピング、ローカットの設定を記録し、導入後に実際の運転で確認します。数値の安定化設定が小流量を消していないかも点検します。
高温配管、薬液、加圧流体への作業は、外付けでも危険がなくなるわけではありません。設備の管理手順と担当者の作業範囲に従い、配管を開放する工事では隔離・残圧・排液などを含めた安全な計画が必要です。
超音波式と電磁式のよくある質問
超音波流量計は配管を切らずに測れますか?
クランプオン型なら、適用する管と流体の条件を満たす場所で外側から測れます。管材、肉厚、ライニング、満水状態、表面、センサの接触条件が必要です。超音波式の全製品が外付け構造という意味ではありません。
純水や油はどちらで測りますか?
超音波式では音の伝搬と管の条件、電磁式では導電率と電極方式を評価します。低導電率へ対応した電磁式もあるため、純水という名前だけで一律に除外しません。絶縁性の油へ通常の電磁式を適用することはできません。
気泡があるなら電磁式で大丈夫ですか?
電磁式も、多量の気泡や電極の接液状態によって指示が不安定になります。超音波式は伝搬時間差式とドップラー式でも条件が違います。気泡の量、分布、満水状態を調べ、機種の適用条件で判断します。
超音波式の方が必ず精度は高いですか?
精度は原理だけでなく機種、流速範囲、校正、設置条件によって決まります。読み値基準かフルスケール基準かもそろえて比較します。必要な測定条件を指定した上で、両方式の仕様を比較することが大切です。
密度が変わっても質量流量を測れますか?
ここで扱った基本式は体積流量を求めます。質量流量へ換算するには、対応する密度の情報が必要です。体積の計測原理が密度を直接使わないことと、質量への換算で密度が不要なことは別です。
まとめ
- 超音波式は音の伝搬や反射、電磁式は導電性液体の起電力を利用する
- 外付けできるクランプオン型は配管と流体、受信状態の条件を満たして使う
- 電磁式は導電率、満水、電極やライニングの適合が重要
- 精度・気泡への強さ・価格は方式名だけで順位を決めず仕様と設置条件で比較する
- 本体だけでなく工事・信号設定・点検まで含めて導入を考える
選定の順序は、流体と管、運転範囲、設置場所、必要精度、導入費用です。原理式で流速と流量のつながりを理解し、実設備では機種の適用条件を満たすことで、役立つ測定値を得られます。
出典
出典・参考資料(12件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 日本電気計測器工業会:超音波流量計(時間差・ドップラー・構成)
- 富士電機:超音波流量計の測定原理(両方向の送受信)
- 富士電機:ポータブル形超音波流量計(クランプオン・音路・適用条件)
- オーバル:超音波流量計の計測原理(音路平均から断面平均への補正)
- カイジョーソニック:技術ガイド(時間差式、流速分布、レイノルズ数による補正)
- カイジョーソニック:用語集(超音波の定義と20kHzの目安)
- キーエンス:流量センサ・流量計/オーバル:カタログ・一般仕様書(超音波式の製品構成)
- 日本電気計測器工業会:電磁流量計(電磁誘導・構成)
- 横河電機:電磁流量計取扱説明書 第3章 原理(E=BDvと流量換算、本文8ページ)
- Endress+Hauser:電磁流量計の基礎知識(導電率と測定原理)
- 横河電機:容量式電磁流量計取扱説明書(満水、気泡、接地、保守)
- 横河電機:電磁流量計(電極方式・導電率条件・歴史)
TOOLS & SERVICES
製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介
これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。
CAREER社外の仕事を知りたい転職・キャリアガイド今の会社で続けるか、社外にも目を向けるか。考える視点と転職サービスの紹介。仕事と働き方を考える ›
LICENSE仕事に関わる資格を学びたいSAT電験三種・エネ管・QC検定など。職種から資格を選べる表と受講料の比較。SATの対象資格を見る ›
RECORD打合せを記録したいPLAUD録音から文字起こし・要約まで。3機種の選び方と業務で使う前の確認表。PLAUDの使い方を見る ›
NEWSLETTER
設備保全・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
設備保全を選んだ状態で登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
