ボイラー整備士は、運転を止めたボイラーや第一種圧力容器を開けて、内部の掃除や附属品の分解・点検をするための国家資格(労働安全衛生法の免許)です。動かすのはボイラー技士、止めて開けるのはボイラー整備士と役割が分かれており、免許が必要なのは一定の大きさを超える設備の整備に限られます。
試験に受験資格はなく、令和7年度の合格率は63.5%と、ボイラー技士の各級より高めでした。ただし試験に受かっただけでは免許は交付されず、整備の補助などで6か月以上の実務経験が別に必要になります。
ボイラー整備士とは|資格が必要になる整備の範囲
ボイラー整備士は、労働安全衛生法で「就業制限」がかかる免許の一つです。事業者は、免許のない人を対象設備の整備につかせてはならないと、ボイラー及び圧力容器安全規則の第35条(ボイラー)と第70条(第一種圧力容器)が定めています。
第一種圧力容器は、蒸気などで中の液体を加熱する容器や、内部の反応で蒸気が発生する容器を指し、工場の熱交換器や反応釜の一部が当てはまります。整備士の免許はボイラーとこれらの容器の両方をカバーしており、どちらか一方だけの区分はありません。

同じボイラーでも、動いている間と止めて開けたあとで、必要な免許が変わります。
※ボイラー技士は運転(取扱い)、ボイラー整備士は整備の就業制限にそれぞれ対応する免許です。
整備士がいなくてもよい小さなボイラー
整備士の免許が必要なのは、一定の大きさを超える設備だけです。労働安全衛生法施行令の第20条第5号は、小型ボイラーに加えて、次の図の大きさ以下のボイラーを整備の就業制限から外しています。
この範囲以下なら、整備の就業制限はかかりません(労働安全衛生法施行令 第20条第5号)。
※第一種圧力容器は、施行令 第6条第17号の容器の整備が対象です。判断に迷う設備は、所轄の労働基準監督署に確認します。
自分の職場の設備が対象かどうかは、ボイラーの種類と伝熱面積、胴の寸法で決まります。ボイラー明細書や検査証に書かれた種類と伝熱面積を、図2の基準と照らし合わせるのが確実な確かめ方です。
この判断は1台ごとの大きさで決まり、ボイラー取扱作業主任者のように伝熱面積を合計しません。そのため小型貫流ボイラーを何台並べても、1台ずつが基準以下なら整備の就業制限はかからない計算になります。
ボイラー整備士の仕事内容

整備の仕事は、ボイラーを止めて冷やし、他の設備との配管をしゃ断するところから始まります。マンホールや掃除穴を開けたら、水側にたまったスケール(給水中の成分が固まった付着物)や燃焼側のすすを落とし、弁や水面計などの附属品を分解して傷みを確かめます。
止めて開け、掃除と分解をして、元どおりに組み立てるまでが整備士の範囲です。
※作業の範囲や順番は、ボイラーの形式と保守契約の内容によって変わります。
試験科目に「整備の作業に使用する器材、薬品等に関する知識」があるとおり、仕事では工具だけでなく薬品も扱います。固いスケールを酸などの薬品で溶かす化学洗浄はその代表例で、洗浄後の中和や水洗いまでを含めて一つの作業になります。
スケールがたまる量は給水の質に左右されるため、整備で見つけた付着の状態は、ボイラー水の水処理を見直す手がかりにもなります。運転側に付着の写真や厚さを伝えることも、整備士に期待される役割です。
内部に入るときの4つの措置
ボイラーや煙道の内部での作業には、高温、酸素不足、感電、使用中の他のボイラーから蒸気が流れ込む事故といった危険があります。そこで規則第34条は、そうじや修繕のために労働者が内部に入るとき、事業者がとるべき措置を4つ定めています。
4つがそろってから中に入ります(ボイラー及び圧力容器安全規則 第34条)。
※第一種圧力容器の内部に入るときも、第69条で同じ趣旨の措置が定められています。
管のしゃ断は、弁を閉めるだけでなく、施錠と札で誤って開けられないようにする方法がよく使われます。ロックアウト・タグアウトと同じ考え方で、整備士は準備が済んでいるかを自分の目で確かめてから中に入ります。
性能検査と整備の時期
整備の仕事が集中しやすいのは、年に1回の性能検査の前です。ボイラーと第一種圧力容器の検査証は有効期間が1年で(規則第37条・第72条)、使い続けるには登録性能検査機関の性能検査を受けて検査証を更新します。
規則第40条は、性能検査を受ける側にボイラーと煙道を冷却し、掃除し、検査に必要な準備をすることを求めています。止めて開け、掃除して検査員が中を見られる状態にするこの準備が、整備士の仕事の中心になります。
法令が定める1年ごとの検査の前後に、整備士の出番があります。
※ボイラー及び圧力容器安全規則 第25条・第37条・第38条・第40条をもとに作成。
ただし、これは法令が定める検査の周期であり、実際の整備の頻度は設備の台数と保守契約で変わります。故障の修理や定期の清掃が別に入る職場もあり、保守会社の整備士なら、顧客ごとの検査時期に合わせて現場を回る働き方になります。

ボイラー整備士試験の内容と難易度

受験資格と試験科目
試験は公益財団法人 安全衛生技術試験協会が全国の安全衛生技術センターで実施し、受験資格はありません。学歴や実務経験を問わず申し込め、学科試験の受験手数料は8,800円です。
令和8年度は6月・10月・翌年2月の年3回が基本の日程で、九州のように年2回のセンターもあります。試験は4科目・計30問の学科試験だけで実技はなく、試験時間は2時間30分です。
100点のうち60点を、整備の作業とボイラー・圧力容器の知識の2科目が占めます。
※合格基準は科目ごとに40%以上、かつ合計60%以上。出典:安全衛生技術試験協会「ボイラー整備士 資格の紹介」。
合格には科目ごとに40%以上、合計で60%以上の得点が必要です。配点20点の器材・薬品と関係法令でも8点を下回るとその時点で不合格になるため、得意な科目で稼いで苦手な科目を捨てる作戦はとれません。
合格率から見た難易度
令和7年度の学科試験は受験者2,730人のうち1,733人が合格し、合格率は63.5%でした。同じ年度のボイラー技士は二級52.9%、一級50.5%、特級34.0%で、整備士は3つの級のどれよりも合格率が高い結果でした。
令和7年度のボイラー整備士試験(学科)の合格率63.5%を、10人に置き換えて示します。
10人中6人が合格(合格率63.5%、令和7年度、安全衛生技術試験協会)
※いずれも令和7年度の免許試験(学科)の合格率。合格基準は4区分とも科目ごと40%以上・合計60%以上。
とはいえ合格率は受験者の顔ぶれにも左右されるので、数字だけで易しい試験とは言い切れません。整備の作業と器材・薬品の科目は現場の手順や道具を問う内容で、ボイラーを開けた経験がない人には覚えにくい分野になりやすいところです。
ボイラー技士は1科目が免除になる
特級・一級・二級いずれかのボイラー技士免許を持つ人は、「ボイラー及び第一種圧力容器に関する知識」(10問・30点)が免除され、試験時間も1時間40分に短くなります。二級ボイラー技士を取ってから整備士を受ける順番なら、構造の勉強を二度せずに済みます。
試験合格から免許交付まで
ボイラー整備士は、試験に受かっただけでは免許を受けられない資格です。規則第113条は、試験の合格に加えて、次のどれかに当てはまることを免許の条件にしています。
- ボイラー・第一種圧力容器の整備の業務の補助に、6か月以上従事した
- 就業制限の対象外になる大きさのボイラー(小型ボイラーを除く)や、一部の第一種圧力容器の整備に、6か月以上従事した
- 普通職業訓練のボイラー運転科を修了した
合格と実務経験の両方がそろって、はじめて免許を申請できます。
※ボイラー及び圧力容器安全規則 第113条・第114条をもとに作成。申請に必要な書類は申請先の案内で確認します。
補助の経験は、ボイラー保守会社や工場の設備部門で、整備士の作業を手伝いながら積むのが現実的です。どの作業を何か月したかを申請でどう示すかは、申請前に労働局や試験協会の案内で確かめておくと手戻りを防げます。
ボイラー技士との違い
ボイラー技士とボイラー整備士は同じボイラーを扱いますが、担う場面が別の資格で、上下関係はありません。運転の系列と整備の系列が並んでいると考えると、違いがはっきりします。
| 項目 | ボイラー技士 | ボイラー整備士 |
|---|---|---|
| 担う業務 | ボイラーの取扱い(運転・監視) | ボイラー・第一種圧力容器の整備 |
| 根拠の条文 | 規則第23条(就業制限)・第24条(作業主任者) | 規則第35条・第70条(就業制限) |
| 等級 | 特級・一級・二級 | なし |
| 受験資格 | 二級はなし。一級は二級免許、特級は一級免許などが必要 | なし |
| 試験の形 | 二級は4科目40問・3時間 | 4科目30問・2時間30分 |
| 免許の条件(合格以外) | 二級は実地修習6か月(ボイラー学科の卒業者は3か月)、技能講習の修了後に4か月の取扱い経験、実技講習の修了など | 整備の補助などで6か月以上の実務、または職業訓練の修了 |
| 要否の決まり方 | 作業主任者の級は伝熱面積の合計で決まる | 1台ごとの大きさで決まる |
運転側では伝熱面積の合計で作業主任者の級が決まり、25㎡未満なら二級、500㎡未満は一級以上、500㎡以上は特級が必要です。貫流ボイラーは伝熱面積を10分の1にして数える決まりもあるため、小型貫流ボイラーを並べた構成では合計が小さく数えられます。
運転の系列は3段階、整備の系列は1区分で、互いの仕事は代われません。
運転の系列(ボイラー技士)
整備の系列(ボイラー整備士)
※ボイラー及び圧力容器安全規則 第24条・第97条・第117条をもとに作成。
どちらか一方の免許では、もう一方の就業制限がかかる仕事はできません。運転と整備の両方を自社で受け持つ職場では、二級ボイラー技士とボイラー整備士の2つをそろえる人もいます。
ボイラー技士の免許もあわせて取りたい方は、受講料と学び方を通信講座 SAT の紹介ページで比べられます。
ボイラー整備士が活きる職場と、取るべき人

整備士の免許が活きるのは、ボイラーや圧力容器を止めて開ける作業が仕事に含まれる職場です。代表的なのは次の4つで、自社設備を整備するか、他社の設備を請け負うかで働き方が分かれます。
他社の設備を請け負う職場と、自社の設備を守る職場があります。
※整備を外部に委託している職場では、免許を自社で持たない場合もあります。
工場で働くなら、整備士の知識は設備保全の仕事と直結します。ボイラーの効率や燃料の使い方まで担当を広げたい人には、エネルギー管理士の仕事が次の目標になります。
取るべきかを3つのケースで考える
- 設備保全の新人:担当設備に就業制限の対象となるボイラーや第一種圧力容器があり、整備を自社でするなら優先度は高い。整備を外部に委託しているなら、運転に必要な二級ボイラー技士から取る
- 二級ボイラー技士を持っている人:1科目免除で受けられ、運転と整備の両方を任されやすくなる。免許の条件になる整備補助の6か月を、今の職場で積めるかを先に確かめる
- 求人で見かけた転職検討者:応募前に、対象設備の種類と台数、整備の補助から始められるか、免許の取得を支援する制度があるかを確かめる
求人に「ボイラー整備士」とあっても、実際の仕事が運転中心か整備中心かは会社によって違います。面接では、年に何回くらい開放整備に入るのかを具体的に聞くと、入社後の仕事の中身を見誤りません。
ボイラー整備士のよくある質問
ボイラー取扱技能講習とボイラー整備士は何が違いますか?
ボイラー取扱技能講習は、伝熱面積が小さい一部のボイラーを運転するための講習で、運転側の資格です(規則第23条第2項)。整備の就業制限とは別の決まりなので、技能講習を修了していても対象設備の整備はできません。
独学で合格できますか?
学科試験だけで実技がないため、市販のテキストと過去問で独学する人もいます。安全衛生技術試験協会は過去の試験問題の一部を公表しているので、出題の形式と傾向はそこで確かめられます。
職場に整備士がいない場合、対象のボイラーはどう整備すればよいですか?
免許を持つ社員がいなければ、整備士の在籍する保守会社やメーカーに整備を委託するのが一般的です。委託する場合も、内部に入るときの冷却や管のしゃ断がされているかは、設備を持つ事業者の側で確認します。
まとめ
- ボイラー整備士は、一定の大きさを超えるボイラーと第一種圧力容器の整備に必要な免許
- 運転はボイラー技士、停止・開放・掃除・分解はボイラー整備士と役割が分かれる
- 試験は受験資格なし・4科目30問の学科のみで、令和7年度の合格率は63.5%
- 免許の交付には、合格に加えて整備の補助などで6か月以上の実務経験が必要
- ボイラー技士は1科目免除で受験でき、運転と整備の両方を担えるようになる
ボイラー整備士の知識は、設備保全の職種で毎年の検査対応に生きます。ボイラーと並んで工場で役立つほかの免許は、製造業で役立つ資格一覧で職種別に比べられます。
出典
出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 試験科目・配点・試験時間・合格基準・免除:安全衛生技術試験協会「ボイラー整備士 資格の紹介・受験資格」
- 試験日程:安全衛生技術試験協会「ボイラー整備士 試験の日程」
- 受験手数料:安全衛生技術試験協会「試験手数料」
- 合格率(令和7年度):安全衛生技術試験協会「統計」
- 過去の試験問題:安全衛生技術試験協会「公表試験問題」
- 二級ボイラー技士の試験:安全衛生技術試験協会「二級ボイラー技士 資格の紹介・受験資格」
- 就業制限・作業主任者・性能検査・免許の条件:e-Gov法令検索「ボイラー及び圧力容器安全規則」
- 整備の就業制限の対象外となるボイラー・小型ボイラーの定義:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
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