高温の水に冷水を直接混ぜるときの冷却水量は、高温水量に「高温側の温度差÷冷水側の温度差」を掛けて求めます。80℃の水1,000kgを20℃の水で40℃にするなら、加える冷水は2,000kgです。
この計算では、高温水が失う熱と冷水が受け取る熱を等しくします。混ぜた後は水量も増えるため、必要な冷水量と、排水やタンクで受ける合計量を分けて考えるのがポイントです。
冷却水量の計算方法
工場で高温の水を冷ます方法には、冷水を混ぜる方法と、壁を介して熱だけを渡す方法があります。ここで最初に求めるのは、高温水と一緒になって排出される追加の水量です。
図1:水も熱も合流する直接混合
冷水2,000kgを加えると、取り出す40℃の水は合計3,000kgになります。
断面は質量・熱の収支を示す模式図で、実機の容量や配管寸法を表すものではありません。
高温水の熱と冷水の熱をそろえる
同じ水どうしを混ぜる場合は、温度差と質量から熱の移動量を計算できます。水の比熱を一定とし、容器や周囲との熱のやり取り、蒸発を無視すると、熱収支は次の式になります。
Th:高温水温度 Tc:冷水温度 Tm:混合後温度[℃]
c:水の比熱[kJ/(kg・K)]。同じ値で近似し、Tc<Tm<Thとします。
比熱は、1kgの物質の温度を1K変えるのに必要な熱量です。両側を同じ水の比熱で近似すれば式から消えるため、必要な冷水量は3つの温度と高温水量だけで求まります。
温度差では1℃の差と1Kの差は同じ大きさなので、ここでは℃の数値を使えます。気体の圧縮や状態方程式で絶対温度を使う場面とは区別し、定圧比熱と定容比熱の違いも押さえておくと計算を整理できます。
液体の種類や濃度が違えば比熱も変わるので、水と油などの混合へそのまま使うことはできません。温度による物性変化まで含める計算では、比エンタルピーを使い、各入口と出口の熱量をそろえます。
80℃の水1,000kgを40℃にする例
80℃の高温水1,000kgに、20℃の冷水を加えて40℃にする条件を考えます。高温水は40K下がり、冷水は20K上がるため、式へ代入すると次の答えになります。
受け槽や後段の排水処理は、混合後の3,000kgを受けられる容量が必要です。元の1,000kgだけを基準にすると、温度計算が合っていても水を受けきれません。
別の解き方として、混合後の温度を質量で重み付けした平均で表せます。冷水量をx[kg]と置くと、次の方程式を解いて同じ2,000kgを得られます。
温度を単純に足して2で割れるのは、両者の質量と比熱が等しい場合です。80℃と20℃の単純平均50℃は、今回の冷水2,000kgという条件には対応していません。
検算では、80×1,000と20×2,000の和を合計3,000で割ると40になります。求めた冷水量を加重平均の式へ戻し、目標温度と一致することを確かめます。
連続運転ではkgをkg/hに置き換える
高温水が連続して流れる設備でも、入口温度と流量が安定していれば同じ比率が使えます。80℃の水が1,000kg/hなら、20℃の冷水は2,000kg/h、出口は3,000kg/hです。
バッチ槽のkgは一度に扱う量、kg/hは1時間当たりの流量という違いがあります。計器の数字を読む前に、瞬時流量と積算流量のどちらを使っているかをそろえます。
質量流量を体積流量へ直すには、水の密度で割ります。密度を1,000kg/m³と置く概算なら、冷水2,000kg/hは2m³/h、約33.3L/minに相当します。
密度は温度によって変わるため、異なる温度の体積をそのまま足す方法より質量で整理するほうが確実です。配管径を検討するときは、体積流量から配管流速へ進み、供給圧力や弁の能力も合わせて見ます。
冷却水量を比で計算する
温度差の逆比を使えば、方程式を展開せずに必要な水量を求められます。大きく温度が変わる側ほど、同じ熱をやり取りするための質量は少なくなると考えると、比の向きを取り違えにくくなります。
図2:温度差40:20に対して、水量は1:2
高温水は40K冷え、冷水は20K温まるため、冷水を2倍入れます。
温度差の比と質量の比は逆向きです。色付き帯は同じ質量の区画で、容積比を表すものではありません。
高温水80℃と目標40℃の差は40、目標40℃と冷水20℃の差は20です。温度差が高温側:冷水側=2:1なので、質量は高温水:冷水=1:2になります。
「逆比だから2倍」と覚えるだけでは、どちらの水が2倍かを迷いやすくなります。比を出した後に、高温水1,000kgが40K下がる熱を、冷水2,000kgが20K上がって受け取る、と言葉へ戻すと確かめられます。
冷水の追加割合と、混合後に占める割合は違う
今回の冷水量は高温水量の200%ですが、混合後の全体に占める冷水の割合は約66.7%です。分母が高温水1,000kgなのか、合計3,000kgなのかで割合の意味が変わります。
混合後の総量を指定する場合は、その総量を1:2に分けます。40℃の水を合計3,000kgつくるなら高温水1,000kgと冷水2,000kgですが、合計1,000kgなら約333kgと約667kgです。
一方、既に高温水が1,000kgある槽へ冷水を足す場合は、合計量を自由には固定できません。温度の目標と槽の空き容量を同時に満たせるかを、投入前の計算で判断します。
夏場の冷水温度ほど必要量が増える
必要水量を大きく変えるのは、目標温度と冷水温度との差です。高温水80℃・1,000kg、目標40℃を固定すると、冷水温度が上がるほど受け取れる熱が減り、必要な質量が増えます。
図3:冷水温度による追加水量の変化
高温水80℃・1,000kgを40℃へ冷却する、同じ条件で比べています。
| 冷水温度 | 冷水の温度上昇 | 必要冷水量 | 混合後総量 |
|---|---|---|---|
| 10℃ | 30K | 約1,333kg | 約2,333kg |
| 20℃ | 20K | 2,000kg | 3,000kg |
| 25℃ | 15K | 約2,667kg | 約3,667kg |
| 30℃ | 10K | 4,000kg | 5,000kg |
| 35℃ | 5K | 8,000kg | 9,000kg |
同じ比熱・放熱なしの計算値。端数はkg単位に丸めています。循環冷却水量や冷却塔の補給水量を示す表ではありません。
20℃で2,000kgだった冷水量は、30℃では4,000kgへ倍増します。冬の給水温度だけで設備を決めると、夏に供給能力や排水容量が足りなくなるため、使用場所での最高水温を計算条件へ入れます。
冷水温度が目標40℃へ近づくと、式の分母が小さくなり必要量は急増します。40℃の水をいくら加えても、80℃の水を有限量の混合だけでちょうど40℃にはできず、40℃より冷たい水が必要です。
冷却水として冷却塔の循環水を考える場合も、温度と使い方を先に区別します。循環水量は熱を運ぶ量であり、蒸発やブローを補う量は冷却塔の濃縮倍数と補給水量に基づく別の収支です。
熱交換器の冷却水量と取り違えない
混合で冷やすと高温水の量と成分濃度が変わりますが、熱交換器なら壁を介して熱を移せます。排水量を増やしたくない場合や、工程の水へ別の水を混ぜられない場合の比較対象になります。
図4:直接混合と間接冷却では、冷水出口が違う
直接混合は40℃で一つの流れになり、間接冷却は二つの流体が分かれたままです。
間接冷却の20→30℃は説明用の設計条件です。水量の計算と、面積・温度差による熱交換器の能力確認は別に行います。
高温水1,000kg/hを80℃から40℃へ冷やす熱負荷は、比熱4.18kJ/(kg・K)なら約46.4kWです。熱交換器の冷却水を20℃から30℃へ温めて戻す条件では、冷却水の上昇温度差は10Kになります。
混合の場合の冷水2,000kg/hと、間接冷却の4,000kg/hは、熱を受けた後の冷水温度が違う結果です。冷水入口20℃だけを見て同じ計算にせず、冷水出口が40℃なのか30℃なのかを式へ入れます。
循環水は戻して再利用するため、4,000kg/hがそのまま毎時の購入水量になるわけではありません。一方、必要量が流れても伝熱面積が不足すれば冷えないので、熱交換器の伝熱面積の計算まで進めます。
同じ熱負荷でも、流れの向きや入口温度によって達成できる出口温度は変わります。低い温度まで冷やしたい設計では、熱交換器の最大交換熱量と端部の温度差を合わせて検討します。
実測値と槽容量から、投入条件を決める

計算に入れる温度は、供給元の仕様値よりも、実際に混ざる入口での値が基本です。長い配管や滞留した枝管では水温が変わるため、高温水と冷水を同じ運転条件で測って記録します。
混合直後は温度むらが残るので、冷水が当たる一点の温度だけでは槽全体を代表できません。計器の方式と挿入位置は、温度計の種類と測定誤差を踏まえて決め、十分に混ざった場所の温度を使います。
図5:入口温度、混合後温度、液位を分けて測る
冷水の噴流付近を避け、混合後の代表温度と槽の空き容量を管理します。
高温水の飛散・やけどを防ぐ設備と作業手順が前提です。槽へ近づいて手持ち温度計を差し込む操作を勧める図ではありません。
バッチ操作では、初期水量と必要冷水量を足し、槽の有効容量を超えない計画にします。槽内に水が蓄積しない定常運転では、入口二流量の和が出口流量となるため、後段設備の処理能力もその合計量で照合します。
冷水を1,000kgしか加えられないなら、元の条件で混合温度は50℃です。目標40℃へ届かないことを先に把握し、冷水を低温にする方法や、予備冷却を組み合わせる方法を比較します。
自動制御する場合は、入口の比率計算を初期設定に使い、混合後の温度を見て冷水弁を調整します。温度計の応答と槽の混合遅れを考える点は、調節計のPV・SV・MVの関係とつながります。
排水の温度を下げる計算と、水質や放流条件への適合判断は別に扱います。水を足すと濃度や排水量も変わるため、温度だけを達成する操作にせず、事業場の排水管理条件に組み込みます。
冷却水量のよくある質問
冷水の量を半分にすると、混合温度も半分になりますか?
なりません。混合後の温度は両方の質量を分母にした加重平均で決まり、80℃の水1,000kgに20℃の冷水1,000kgを混ぜると50℃です。水量の変化だけを温度へ比例させず、収支式へ戻して求めます。
目標温度が冷水温度より低い場合も計算できますか?
相変化や外部への放熱がない二つの水の混合では、両入口の低いほうより冷たい水は得られません。式で冷水量が負になる条件は、追加水だけでは目標へ届かないことを意味し、低温の熱源が必要です。
kgではなくLで水量を入れてよいですか?
水の密度を同じ一定値と置く概算なら、両方をLに統一して同じ比率を使えます。温度の違いによる密度差や計量精度が効く場合は、入口それぞれの密度で質量へ直し、kgを基準に熱収支を取ります。
タンクや配管が冷たい場合はどう扱いますか?
水以外に槽や配管が熱を受け取るため、その熱容量と初期温度も収支へ加えます。短時間の大量混合では水だけの式が出発点になりますが、少量バッチや大きな金属槽では、水以外に移る熱の割合も見積もります。
計算どおりに水を入れても温度が合わない原因は何ですか?
入口水温の変化、流量の読み違い、槽内の温度むら、温度計の応答遅れが主な確認点です。同じ時刻の入口温度・二流量・出口温度を記録すると、計算条件の違いと混合状態の問題を切り分けやすくなります。
まとめ
- 同じ比熱で近似する水どうしなら、冷水量=高温水量×高温側温度差/冷水側温度差
- 80℃・1,000kgを20℃の水で40℃へ冷やすなら、冷水2,000kg、合計3,000kg
- 質量の比は、各水の温度変化の逆比。追加割合と合計に占める割合を分ける
- 冷水温度が目標へ近づくほど必要量が増え、目標と同じ温度の冷水では有限量で到達しない
- 直接混合の追加水量、熱交換器の循環水量、冷却塔の補給水量は別の収支で求める
冷水を大量に使う工程では、水を加える費用だけでなく、増えた排水を処理する負担も含めて比べます。回収できる温度の熱を先に利用する案も、工場の省エネとエネルギー管理の検討に入れると、冷却前から改善の選択肢が広がります。
出典
出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 混合時の質量・温度測定と容器熱容量:Institute of Physics「Mixing hot and cold water」
- 比熱・熱量・単位換算:Spirax Sarco「Engineering Units」
- 水の比熱4.18kJ/(kg・K):ユニコントロールズ「熱量計算」
- 比熱の意味:東京農業大学「食品温度の精密な管理・制御を」
- 冷水・冷却水・循環利用の用語:ダイキン工業「用語集」
NEWSLETTER
設備保全・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
設備保全を選んだ状態で登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
