粘度とポンプの関係は、液体内部の摩擦が、必要な動力と吸い込みやすさを変えることにあります。高粘度の液体には、ダイヤフラム・チューブ・ギア・ねじなど、一定の空間に液を取り込んで押し出す容積式ポンプが候補になります。
水用のポンプで粘度の高い油やシロップを送ると、流量不足や電動機の過負荷が起こりやすくなります。粘度の単位から4形式の特徴、配管と温度の条件まで順に押さえると、選定時にメーカーへ渡す情報が明確になります。
粘度とは

粘度とは、流体の層どうしがずれるときの抵抗の大きさを表す物性値です。一般に記号μ(ミュー)を使い、SI単位はPa・s(パスカル秒)で表します。同じ条件で流そうとすると、粘度が高い液体ほど大きな力が必要です。
液体を2枚の平行な板の間に入れ、片方を動かす場面を考えます。板の間隔が同じなら、板を速く動かすほどせん断応力が大きくなります。ニュートン流体では、この速度勾配とせん断応力を結ぶ比例定数が粘度です。
図1:粘度は液体の層をずらす抵抗
下の板を固定し、上の板を右へ動かした模式図。液体の速度は下から上へ増えます。
速度差を板の間隔で割ったものが速度勾配。粘度が大きいほど、同じ速度勾配に必要なせん断応力が増えます。
動粘度ν(ニュー)は、粘度μを密度ρで割った値です。単位はm²/sで、実務の仕様書ではmm²/sやcStも使います。粘度と動粘度は別の量なので、数値を転記するときは単位と密度を一組にします。
1 Pa・s=1,000 mPa・s、1 mPa・s=1 cP、1 mm²/s=1 cSt
たとえば、ある温度で粘度0.50Pa・s、密度1,000kg/m³の液体を仮定します。動粘度は0.00050m²/s、すなわち500mm²/sです。「500」という数値だけでは粘度か動粘度か分からず、ポンプの補正条件を取り違えます。
単位と代表的な物性の整理は、粘度を表す単位と比較も参考になります。流れの状態を判断するときは、動粘度を使うレイノルズ数と層流・乱流につなげると、配管の圧力損失まで考えられます。
温度とせん断条件を合わせて粘度を読む
液体の粘度は温度で変わり、多くの油は冷えると粘くなります。通常運転の液温だけで選ぶと、冬の始動時に必要なトルクや吸込抵抗を見落とします。仕様書には常用温度に加えて、起動時と最低温度の粘度を記載します。
塗料、ペースト、汚泥などには、かき混ぜる強さや時間で見かけの粘度が変わる液体もあります。このような非ニュートン流体では、測定温度だけでなく測定方法やせん断速度も必要です。粘度計の値だけを水の物性表と同じ扱いにしないことが要点です。
粘度が高い液体の場合
高粘度になると、ポンプ内部の粘性摩擦と配管抵抗が増えます。渦巻ポンプでは流量・揚程・効率に粘度の影響が出るため、水で測った性能曲線をそのまま使えません。必要な運転点に対して性能を補正し、軸動力と電動機容量を選びます。
このとき「粘度が2倍なら電動機容量も2倍」という単純な関係にはなりません。実際の流量や回転数も変わるからです。まず流量と圧力の関係で運転点を押さえ、ポンプ効率と合わせて必要動力を求めます。
加温によって粘度を下げる方法もありますが、液質の変化や揮発、配管保温、停止後の冷却も検討に入ります。加温設備を追加するなら、その熱源と運転費も選定の一部です。食品や薬品では品質上許される温度範囲を先に決めます。
図2:高粘度では「吸い込める配置」が重要
液面より低い位置にポンプを置き、吸込管を太く短くすると、吸込側の抵抗を減らせます。
配置は概念図です。押込圧力が各ポンプの許容値を超えないよう、機種の仕様に合わせます。
高粘度液は吸込管での圧力低下が大きく、ポンプ入口まで液が十分に届かなくなるおそれがあります。回転数だけ上げても供給が追いつかなければ流量は増えません。配管を太く短くする、曲がりを減らす、タンク液位を確保するといった対策を先に検討します。
吸込側にフィルターがあれば、汚れや低温時の抵抗も増えます。異物除去の条件はストレーナーのメッシュと目開きと合わせて決めます。高粘度に対応したポンプ本体だけを交換しても、入口の抵抗を残したままでは性能を生かせません。
ダイヤフラムポンプ
ダイヤフラムポンプは、膜を往復させて液室の容積を変え、逆止弁を通して液を吸入・吐出します。エア駆動の二連式では、左右の膜が交互に動き、一方が吸い込む間にもう一方が押し出します。薬液や塗料などの移送に使われます。
接液部を耐食性のある樹脂や金属から選べること、回転軸の液側シールを持たない構造が特徴です。膜と逆止弁は液の性状に合う材質を選ぶ消耗部品であり、固形物を含む液では弁を通過できる粒径も選定条件になります。
往復動に伴って吐出量は周期的に変化します。一定流量が必要な工程では脈動ダンパーや配管を含めて検討します。エア駆動の場合は液側の条件に加え、供給空気圧と空気量をそろえないと、必要な流量を得られません。
圧縮空気を強くすれば高粘度液が必ず多く出る、という選び方は避けます。粘度と吸込配管によって液室への充填量が減るためです。ヤマダの性能曲線も清水条件を基準としており、実液条件による流量の低下を見込む必要があります。
チューブポンプ
チューブポンプは、弾性のあるチューブやホースをローラーなどで押しつぶし、閉じた部分を移動させて液を送ります。つぶれた部分が元の形に戻るときに次の液を吸い込みます。産業用の薬液や食品のほか、医療分野でも使われる原理です。
図3:チューブを押す位置が進むと液が送られる
チューブ内部だけが接液します。押し終わった部分の復元が、次の液を取り込む働きをします。
内壁が接する部分では流路が閉じます。壁厚は省略し、受け面を離して示した模式図。実機は円弧状の経路などを使って連続的に押します。
液がポンプの金属部分や軸封に触れず、チューブ内に収まることが利点です。品種替えの多い工程では、接液部を交換しやすい構造が役立ちます。チューブ材質は耐薬品性だけでなく、液温、圧力、繰返し変形の寿命から選びます。
高粘度液ではチューブが復元しても、次の液の充填が遅れがちです。過度に速度を上げるより、低速化や口径拡大で吸込を確保する方が有効です。定量供給に使う場合は、交換直後と使用後の流量変化を実液で測ります。
ギアポンプ
ギアポンプは歯車の歯溝とケーシングの間に液を取り込み、外周に沿って吸込側から吐出側へ運ぶ容積式ポンプです。内接型と外接型があり、潤滑油や樹脂などの移送に使われます。回転数を変えて流量を調節する方式にも向いています。
図4:外接ギアでは液は外周を通る
かみ合う中心部を液が貫通するのではなく、歯溝に入った液が上下の外周を回って吐出側へ運ばれます。
歯形を省略した原理図。中心のかみ合いが、吐出側から吸込側への戻りを抑えます。
適度な粘度はすき間からの内部漏れを減らしますが、粘度が高くなるほど駆動トルクや吸込抵抗も増えます。高粘度の油を扱える形式でも、許容回転数を下げて使う例があります。歯車が回せることと、十分な量を吸い込めることは分けて検討します。
歯車とケーシングのすき間が小さいため、硬い異物や摩耗性粒子が多い液では損傷が問題になります。油圧ポンプや容積式流量計にも歯車の原理が使われますが、機器の役割と使用条件は異なります。移送用の選定では液の潤滑性やシールの相性も必要です。
ねじポンプ
ねじポンプは、ねじ状の回転体で液を軸方向に送る方式の総称です。ここで高粘度液やスラリーの候補となる代表例が、一軸偏心ねじポンプです。雄ねじ状のローターと雌ねじ状のステーターの間にできる密閉空間が、回転とともに進みます。
密閉空間に取り込んだ液を連続的に送るため、脈動が小さく、定量移送に使いやすい構造です。食品、汚泥、薬液などが用途になります。ねじ式には複数の構造があるので、「ねじポンプならすべて固形物に強い」とまとめず、扱う粒子や液に合う形式を選びます。
一軸偏心ねじ式では、ローターと接するステーターの材質が重要です。耐薬品性、液温、摩耗性を合わせ、液切れによる空運転を防ぐ構成にします。回転速度は流量と関係しますが、粘度や固形分による充填不足と摩耗も考慮して決めます。
高粘度ポンプを選ぶ手順
まず必要流量と吐出圧力を決め、次に液の性状で形式を絞ります。圧力は出口側の圧力だけではなく、高低差と配管損失、供給タンクの圧力を含めて整理します。揚程と吐出圧力の換算を使う場合も、密度の条件をそろえます。
図5:4形式を粘度以外の条件で絞る
粘度の数値だけで順位を付けず、液をどこに閉じ込めるかと、消耗する部分を比較します。
| 形式 | 液を動かす部分 | 選定で重視する条件 |
|---|---|---|
| ダイヤフラム | 膜と逆止弁 | 膜・弁の材質、脈動、駆動源 |
| チューブ | 弾性管の押しつぶし | 耐薬品性、復元性、交換周期 |
| ギア | 歯溝とケーシング | 潤滑性、硬い異物、駆動トルク |
| 一軸偏心ねじ | ローターとステーター | 粒子、ゴム材質、空運転防止 |
全形式共通で、最低液温時の粘度・吸込条件・必要圧力を提示します。
メーカーへ渡す条件は、液名、濃度、密度、温度別粘度、固形分の粒径と含有量です。さらに流量の常用値と最大値、連続運転か間欠運転か、吸込・吐出配管の口径と長さをまとめます。使用条件が変わる範囲まで示すと、過大な機器の選定を防げます。
食品や医薬品では、液を送れる能力と洗浄しやすさを一緒に評価します。チューブだけが接液する構造でも、継手や配管に液だまりがあれば洗浄の問題は残ります。材質の適合、分解洗浄の手間、洗浄液の温度まで運用条件に含めます。
電動機は、ポンプの軸動力の計算を基に選び、冷間起動時のトルクも調べます。回転数を変える場合はrpmとポンプ性能の関係を押さえつつ、容積式を渦巻式の相似則だけで計算しないことが大切です。
配管損失の計算で粘度の影響を見る
粘度の影響は、ニュートン流体が円管内を十分発達した層流で流れる例なら明確です。直管の圧力損失は粘度と流量に比例し、管内径の4乗に反比例します。実際の選定では、継手・弁・入口部の損失も加えて必要圧力を求めます。
仮定値。密度1,000kg/m³では平均流速約0.0509m/s、Re約5.09で層流です。
この条件で粘度だけが1.0Pa・sへ上がると、直管損失は約6.52kPaへ倍増します。同じ流量を維持するには、その分の圧力が必要です。この2倍という関係は上記の層流計算の話で、ポンプ全体の軸動力や電動機容量が常に2倍になるという意味ではありません。
運転後に流量が出ないときの調べ方
試運転では、タンクから一定量を送り出す時間を測り、実際の吐出量を確かめます。高粘度液の流量計を使う場合は、その測定方式が液の性状に合っていることも必要です。回転数の表示だけで流量を決めず、実測値と対応させて記録します。
洗浄後の水と製品液では、ポンプ内の漏れや吸込管の抵抗が異なります。水で所定量が出たという結果は、粘い製品でも同じ量が出る根拠にはなりません。製品の最低温度と最大粘度に近い条件で、起動と連続運転を分けて評価します。
ポンプの大きさを増やす前には、運転の目的も見直します。一定時間内にタンクを空にする移送と、工程へ少量を安定供給する定量注入では、求める性能が違います。最小流量での安定性、品種切替時の残液、洗浄に必要な液量を含めて選ぶと、運用に合った形式を絞れます。
消耗部品の交換では、取り外した部品の状態を運転時間や液条件と一緒に記録します。チューブの割れ、膜の傷み、歯車やステーターの摩耗は、それぞれ調べる場所が異なります。予備品の材質と交換手順まで決めておくと、液漏れや急な停止後の復旧を早められます。
流量低下があれば、液温、タンク液位、回転数、吸込側の詰まりや空気の吸込みを順に見ます。特に低温時だけ発生するなら、常用温度の粘度で選んでいないかが着眼点です。点検は停止・隔離・残圧除去を行い、機器の取扱説明書に従って実施します。
電動機の電流値が上がる原因と流量・圧力を一緒に記録すると、負荷増大か液の供給不足かを切り分けやすくなります。機器の摩耗だけを疑う前に、変更した液や濃度、配管、回転数を運転開始時の条件と比較します。
電動のギアポンプや一軸偏心ねじポンプは、吐出側を閉じたまま回すと圧力が急上昇する危険があります。機種と配管に合う逃がし弁や停止保護を設け、渦巻ポンプの流量調節と同じ感覚で出口弁を絞らないようにします。異音や過負荷が出た場合は、原因を調べてから再起動します。
粘度とポンプのよくある質問
高粘度ポンプは何Pa・sから必要ですか?
全形式に共通する境界値はありません。必要流量、回転数、配管、液の性状によって選べる範囲が変わります。渦巻式の粘度補正後の性能と容積式の実液性能を比べ、必要圧力と吸込条件を満たす組み合わせを選びます。
粘度と動粘度の違いは何ですか?
粘度は流体層がずれるときの抵抗を表し、動粘度は粘度を密度で割った値です。Pa・sとm²/sは互いにそのまま読み替えられません。仕様書にcPやcStの値がある場合は、単位と測定温度を保ったまま伝えます。
粘度が上がったら回転数を上げればよいですか?
吸込が不足している場合、回転数を上げても充填が追いつかず、性能が悪化します。まず液温と吸込配管、タンク液位を調べます。回転数の変更は実液条件の許容範囲内で行い、必要流量だけでなくトルクや消耗部品の寿命も評価します。
スラリーならギアポンプでも送れますか?
スラリーは固体を含む液体の総称なので、粒子の硬さと大きさ、含有量が判断材料です。ギア式は小さいすき間に硬い粒子が入ると摩耗やかみ込みの問題が出ます。膜式や一軸偏心ねじ式も含め、粒子条件に適合する機種を比較します。
ポンプを加温すれば高粘度液を送れますか?
加温で粘度が下がる液では有効な対策です。ただしタンク内だけ温かく、吸込管や停止中の本体が冷えていると起動時の抵抗が残ります。品質を保てる液温範囲を決めたうえで、保温・加温する範囲と起動手順をまとめます。
まとめ
- 粘度は液体内部の摩擦、動粘度は粘度を密度で割った値
- 粘度は温度と測定条件を添えて指定する
- 高粘度では内部損失と吸込配管の抵抗が問題になる
- 膜・チューブ・ギア・ねじを材質や液の性状で使い分ける
- 必要流量だけでなく駆動動力・洗浄・消耗部品も選定する
粘度は液体内部のずれに対する抵抗を表し、動粘度はそれを密度で割った値です。高粘度液ではポンプ内部の損失と吸込管の抵抗が増えるため、液温別の粘度を基に、必要流量・圧力・駆動動力をそろえて選びます。
膜式、チューブ式、ギア式、ねじ式は、高粘度液を扱う主な候補です。液の粒子やせん断への弱さ、接液材質、洗浄性まで比較すると、運転と保守を含めた使い分けができます。形式の選択と吸込配置を一組で考えることが、流量不足を防ぐ近道です。
出典
出典・参考資料(12件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 兵神装備「構造と原理」:一軸偏心ねじポンプの密閉空間と連続移送。
- 兵神装備「よくあるご質問」:流量不足、運転上の点検事項。
- ヤマダコーポレーション「ダイアフラムポンプ」、同製品カタログ:膜の駆動、材質、粘度と吸込条件。
- Verder Liquids「How Does a Peristaltic Pump Work?」:チューブの圧縮、復元、接液部。
- Masterflex「6 Tips for Pumping Viscous Fluids」:高粘度液での速度とチューブ径。
- サンコー「ポンプ選定時の確認事項」:液温・粘度・比重・異物の指定。
- KSB「Viscosity」:粘度の定義、温度・せん断条件、渦巻ポンプの性能補正。
- NIST「SI Guide Appendix B.9」:粘度・動粘度の単位換算。
- M. Galal Rabie『Fluid Power Engineering』(マレーシア工科大学公開):円管内の層流損失式(式2B.14〜2B.15)。
- Viking Pump「Frequently Asked Questions」:ギアポンプの構造と過圧保護。
- Hydraulic Institute「Pump FAQs」:容積式ポンプの粘度と内部漏れ・摩擦損失。
- Viking Pump「TSM 1600」:点検前の圧力除去と駆動源の隔離。
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