トヨタ中間決算2026|営業利益2.2兆円と通期3.9兆円上方修正の中身

ブレーキディスクやばね、歯車などの自動車部品の俯瞰

トヨタ自動車は2026年11月5日、2027年3月期の中間決算(2026年4〜9月)を発表し、営業利益は2兆1,911億円と前年同期から9.2%増えました。あわせて通期の営業利益見通しを3兆4,000億円から3兆9,000億円へ引き上げました。

ただし増益を支えたのは円安による6,850億円の押し上げで、為替とスワップ等の影響を除くと営業利益は1,950億円減っています。中東情勢を含む資材価格の高騰は、上期だけで4,650億円の減益要因になりました。

この記事の内容は、動画でも解説しています。

目次

トヨタ中間決算の主な数字(2026年4〜9月)

グラフが印刷された資料とノートパソコンが置かれた机

上期の営業収益(売上高にあたる)は26兆9,624億円で、前年同期より2兆3,317億円、9.5%増えました。営業利益の伸びも9.2%と売上とほぼ同じペースで、営業利益率は8.1%と前年同期から横ばいです。

図1:トヨタ中間決算の主な数字(2026年4〜9月)

増収増益で、純利益の伸びが営業利益の伸びを大きく上回りました。

営業収益 26兆9,624億円前年同期比 +9.5%
営業利益 2兆1,911億円前年同期比 +9.2%(利益率8.1%)
中間利益 2兆2,364億円親会社の所有者に帰属。前年同期比 +26.1%
連結販売台数 475万8千台前年同期比 −0.5%(日野の非連結化の影響)

※出典:トヨタ自動車「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」。販売台数は連結ベースで、トヨタ・レクサスの小売台数とは数え方が異なります。

純利益(親会社の所有者に帰属する中間利益)は26.1%増の2兆2,364億円でした。営業利益の伸びより大きいのは、営業外損益が2,908億円、持分法による投資損益が857億円増えたためで、本業の稼ぎだけで26%伸びたわけではありません。

連結販売台数は475万8千台と2万5千台減りましたが、これは日野自動車とその連結子会社70社が連結から外れた影響です。日野の分を除いて比べると、日本と欧州を中心に2万6千台増えています。

営業利益が1,854億円増えた理由

前年同期の2兆56億円から今期の2兆1,911億円までの差を、トヨタは5つの要因に分けて説明しています。大きく押し上げたのは円安で、資材価格の高騰と「その他」の項目が大きく押し下げました。

図2:営業利益の増減要因(2026年4〜9月、前年同期比)

前年同期の2兆56億円から、円安で大きく上がり、資材高と「その他」で押し戻されました。

20,056+6,850△3,400+1,650△200△3,04621,911前年同期為替変動原価改善の努力営業面の努力諸経費その他今期

※単位は億円。縦軸は1兆5,000億円付近から描いており、棒の長さは増減の大きさを比べるためのものです。原価改善の努力△3,400億円の内訳は、資材価格△4,650億円(中東影響△1,250億円を含む)と原価改善+1,250億円。出典:トヨタ自動車 2027年3月期第2四半期決算説明資料。

5つの要因から為替とスワップ等の評価損益の影響を除くと、営業利益は前年同期より1,950億円少ない計算になります。見出しの「増益」は、円安の追い風が資材高と費用増を上回った結果です。

円安で6,850億円の押し上げ

上期の平均レートは1ドル159円で、前年同期の146円から13円の円安でした。ユーロも168円から184円へ16円動き、為替変動の影響は合計で6,850億円のプラスです。

内訳は輸出入などの外貨取引が5,900億円、海外子会社の利益を円に換算した差などが950億円です。日本でつくって海外へ輸出する台数が多いトヨタは、円安の恩恵を受けやすい構造をしています。

資材高を原価改善で一部吸収

滝グラフの「原価改善の努力」は△3,400億円とマイナスですが、改善活動そのものが悪化したわけではありません。資材価格の上昇が4,650億円の減益要因になり、それを原価改善1,250億円で一部打ち返した差し引きです。

この資材価格の上昇には、中東情勢による1,250億円も含まれます。決算説明では「仕入先と一体となった原価改善」を挙げており、トヨタ生産方式とカイゼンの考え方で、仕入先と組んで原価を下げる取り組みとして説明されています。

営業面の努力と費用

営業面の努力は1,650億円のプラスでした。台数・構成は1,150億円のマイナスでしたが、補給部品や中古車、コネクティッドなどのバリューチェーン収益が700億円、「その他」が2,100億円増えています。この項目にも中東影響の△850億円が含まれます。

諸経費は労務費1,050億円、研究開発費950億円、減価償却費750億円が増えた一方、経費の削減などで2,550億円を減らし、差し引き200億円のマイナスに抑えました。「その他」の△3,046億円は、大半が未実現損益の調整(△2,363億円)という会計上の項目です。

地域別の営業利益|北米は黒字化、アジアは微減益

地域別では、最も大きく動いたのは北米で、前年同期の678億円の赤字から1,661億円の黒字に転じました。日本も為替の追い風と台数の増加で、営業利益が1,362億円増えています。

図3:所在地別の販売台数と営業利益(2026年4〜9月、前年同期比)

日本と北米が増益をけん引し、アジアとその他の地域は横ばい圏でした。

連結販売台数
営業利益
会社が挙げた主な理由
日本
102万4千台(+5.6%)
1兆2,533億円(+1,362億円)
為替変動の影響、台数増など
北米
153万台(−0.2%)
1,661億円(前年同期△678億円)
関税影響の軽減、価格改定など
欧州
58万9千台(+2.8%)
2,192億円(+184億円)
価格改定、バリューチェーン収益の増加など
アジア
85万7千台(+0.5%)
4,371億円(△71億円)
諸経費の増加など
その他
75万8千台(−11.2%)
2,009億円(△9億円)
販売面での影響など

※営業利益は金利スワップ取引などの評価損益を含む。その他は中南米・オセアニア・アフリカ・中東など。出典:決算短信、決算説明資料。

トヨタは北米の改善理由に、関税影響の軽減と価格改定を挙げています。前年の上期は、米国の関税が9,000億円の減益要因になっていました(MONOist 2025年11月の報道)。北米は2026年3月期通期でも関税の影響で赤字でしたが、この第2四半期に黒字へ戻ったと説明しています。

今期上期の関税影響額は、決算資料では独立した数字として示されていません。自動車関税15%が部品メーカーに与える影響は別の記事で整理していますが、関税の負担が前年より軽くなったことが北米の黒字化を後押しした、という読み方になります。

アジアは71億円の微減益で、中国事業は連結子会社の営業利益が914億円から685億円へ、持分法投資損益が480億円から286億円へ減りました。中東を含む「その他」の地域は、販売台数が1割以上減っています。

トヨタ・レクサスの販売は電動車が55.6%に

試験台に置かれたハイブリッド車用の電池モジュール

ここからは連結販売台数ではなく、トヨタ・レクサスブランドの小売台数の話です。上期の小売台数は505万9千台と前年同期の96.0%にとどまり、中国での需要の減退と中東情勢の影響が出ました。

図4:トヨタ・レクサス販売に占める電動車(2026年4〜9月)

小売で売れた10台のうち、およそ6台がHEV・PHEV・BEVなどの電動車でした。

10台中6台が電動車(電動車比率55.6%、前年同期は46.7%)

※トヨタ・レクサスの小売台数ベース。電動車281万1千台のうちHEV 245万台、BEV 23万1千台、PHEV 13万台。出典:決算説明資料。

全体の台数が減る中でも、電動車は281万1千台と前年同期の114.2%に増えました。中心はHEV(ハイブリッド車)の245万台で、BEV(電池だけで走る電気自動車)は23万1千台と前年同期の2.3倍に伸びています。

決算説明では、北米と欧州のBEV・HEVが比率を押し上げたとしています。HEVはバックオーダー(受注残)を多く抱えており、トヨタはHEVを中心に生産能力の増強を進める方針です。

EVシフトで増える部品・なくなる部品を考えるうえでも、HEVの比率が高いまま電動化が進んでいる点は押さえておきたい数字です。

通期3兆9,000億円への上方修正の中身

通期(2026年4月〜2027年3月)の見通しは、利益を上げて売上を下げる、向きの違う修正になりました。営業利益は5,000億円上方修正の3兆9,000億円、営業収益は5,000億円下方修正の53兆5,000億円です。

図5:通期見通しの修正(前回予想→今回予想)

利益は上方修正、売上と台数の一部は下方修正です。前期実績は参考として並べています。

前回予想
今回予想
(参考)前期実績
営業収益
54兆円
53兆5,000億円
50兆6,849億円
営業利益
3兆4,000億円
3兆9,000億円(利益率7.3%)
3兆7,662億円
当期利益
3兆2,500億円
3兆5,700億円
3兆8,480億円
為替前提
160円/ドル・181円/ユーロ
157円/ドル・182円/ユーロ
151円/ドル・175円/ユーロ
連結販売台数
970万台
970万台(据え置き)
959万5千台
トヨタ・レクサス販売
1,050万台
1,030万台
1,047万7千台

※当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。前期実績の販売台数には日野ブランド車を含む。出典:決算短信、決算説明資料。

売上の下方修正にあたり、為替の前提は1ドル160円から157円へ円高方向に見直され、トヨタ・レクサスの販売見通しは1,050万台から1,030万台へ減っています。地域別では、日本の堅調な需要を上乗せする一方、中国市場の減速とタイの洪水の影響をアジアに織り込みました。

当期利益の3兆5,700億円は前回予想より3,200億円多いものの、前期の3兆8,480億円と比べると7.2%減る見通しです。営業利益は前期比で増益、純利益は減益と、利益の段階によって向きが分かれます。

資材高1兆円近くを改善努力で打ち返す

トヨタは通期の見通しについても、前期実績からの増減要因を示しました。上期の図2は前年同期との比較でしたが、こちらは前期(2026年3月期)通期の3兆7,662億円を起点にした比較です。

図6:通期営業利益見通しの増減要因(前期比)

前期実績3兆7,662億円から、マイナスとプラスがほぼ打ち消し合い、3兆9,000億円(+1,338億円)になる見通しです。

中東影響△5,050資材価格△9,800改善努力+10,850為替変動+7,350諸経費+1,250その他△3,262

※単位は億円。改善努力の内訳は営業面の努力+8,600億円、原価改善+2,250億円。出典:決算説明資料「連結営業利益見通し増減要因(前期差)」。

通期では資材価格の高騰が9,800億円、中東影響が5,050億円の減益要因として見込まれています。それを営業面の努力8,600億円と原価改善2,250億円、合わせて1兆850億円の改善で打ち返し、為替の7,350億円が上乗せされる設計です。

決算説明でも「1兆円規模の資材価格高騰」を営業面の努力と原価改善で打ち返すと述べています。上方修正の幅は5,000億円で、決算説明では関税負担の軽減とバリューチェーン収益の拡大などの積み上げが理由として挙げられています。

部品メーカー・製造業にとっての意味

アルミ製の自動車部品をノギスで測る検査の手元

取引先の立場で決算資料を読むときは、利益の総額より、どの項目で何が起きているかを見るほうが役に立ちます。今回の資料で目を引くのは、資材高の吸収を「仕入先と一体となった原価改善」と「価格改定」で進めている点です。

図7:資材高を吸収する3つの手段

上期の資材高4,650億円に対し、トヨタは原価改善、価格改定、バリューチェーン収益の3つで打ち返しています。

資材価格の高騰仕入先と原価改善価格改定・VC利益を確保上期△4,650億円上期+1,250億円営業面+1,650億円2兆1,911億円

※VCはバリューチェーン(補給部品・中古車・金融・コネクティッドなど)。営業面の努力には台数・構成の△1,150億円も含まれます。出典:決算説明資料。

資材高は原価改善と価格の話し合いに出てくる

資材価格の上昇は、トヨタ1社で通期9,800億円と見込まれる規模です。同じ鋼材・樹脂・非鉄金属を買う部品メーカーにも同じ方向の負担がかかっているため、原価改善の提案と、上がった材料費の扱いが同時に話題になりやすい局面です。

トヨタは完成車の側で価格改定を進めており、北米と欧州の増益理由にも挙げています。自社の材料費や労務費の上昇をどう示すかは、取適法のもとでの価格交渉の進め方が参考になります。鋼材については2026年10月の鋼材値上げの動きも重なります。

ただし、決算資料から読み取れるのは全社の合計額までです。個々の取引でどの部品にどれだけ価格が反映されるかは、資料からは分からないので、自社の契約と商談の中で確かめる必要があります。

中東・震災・洪水と供給の備え

決算説明では、資材高に加えて震災や洪水の影響を、現場の挽回とグローバルでの最適供給で小さくするとしています。通期見通しではタイの洪水をアジアの台数に織り込み、連結販売台数970万台は維持しました。

生産が止まった後の挽回は、部品メーカーにとって短期間の増産要請として来ることが多くなります。2026年8月の自動車生産の減少と部品メーカーの備えでも触れたとおり、在庫の置き方や代替生産の段取りを事前に決めておくと、急な要請にも対応しやすくなります。

ロボット導入40万台の想定と設備需要

同じ決算説明では、2027年1月に全社直轄の組織「トヨタロボティクス」を立ち上げると発表しました。2028〜2040年に、トヨタ・グループで15万台、仕入先で25万台、合計40万台のロボット導入ニーズを見込んでいます。

あわせて、老朽設備の更新投資を年1兆円規模と想定し、まずはこのグループ・仕入先の需要で技術を磨いてから外販に広げる方針です。仕入先の工場も自動化投資の対象として数に入っているため、FA機器や生産設備のメーカーにとっては、今後の需要を考える材料になります。

トヨタ中間決算のよくある質問

トヨタの配当はいくらですか?

2027年3月期の中間配当は1株あたり50円で、前期より5円増えました。年間の配当予想は100円(前期は95円)で、期初の予想から変わっていません。

日野自動車の非連結化で何が変わりましたか?

日野自動車とその連結子会社70社が、今期からトヨタの連結の範囲から外れました。前年同期の連結販売台数には日野ブランド車5万1千台が含まれていたため、連結販売台数を前年と比べるときは、この差を除いて見る必要があります。

自社株買いはどのくらい行いますか?

自己株式の取得枠を3,000億円増やし、今期の上限を1兆3,000億円にしました。自己株式の消却も10億株を追加して今期累計12億株とし、総還元性向は69.4%になる見込みです。

決算の数字はどこで確認できますか?

トヨタの投資家情報サイトの「決算情報」に、決算要旨(決算短信)と決算報告プレゼンテーション資料が載っています。増減要因の内訳はプレゼンテーション資料の滝グラフにあり、スクリプト付きの版では説明者の発言も読めます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 2026年4〜9月の営業利益は2兆1,911億円(+9.2%)、純利益は2兆2,364億円(+26.1%)
  • 円安が6,850億円押し上げ、為替・スワップ等を除くと1,950億円の減益
  • 資材高△4,650億円を原価改善+1,250億円で一部吸収し、北米は関税負担の軽減などで黒字化
  • 通期の営業利益見通しは3兆9,000億円へ上方修正、営業収益は53兆5,000億円へ下方修正
  • 資材高・価格改定・ロボット導入の想定は、部品メーカーや設備メーカーの商談にも関わる

トヨタと取引先の関係や、完成車メーカーを頂点とする部品の流れは自動車業界の構造で、ほかの完成車メーカーとの比較は自動車業界の主要企業と勢力図で整理しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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