サイゼリヤはなぜ安い?7つの自社工場と「製造直販」を製造業の目で読む

トマト・レタス・米・オリーブオイルを並べた食材の俯瞰

サイゼリヤの2026年8月期の連結売上高は3,014億円で、前の期から17.4%伸び、初めて3,000億円を超えました。ミラノ風ドリアをはじめとする低価格のメニューを保ったまま、売上の規模は2年で大きく広がっています。

安さの理由をひとことで言えば、サイゼリヤは原料の調達から加工・配送までを自社で持ち、店で手間のかかる工程を工場へ移した「工場を持つ外食」だからです。国内5つ・海外2つの自社工場が品目を分けて作り、店は届いた食材を仕上げて出す後工程の役割を受け持ちます。

この記事の内容は、動画でも解説しています。

目次
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サイゼリヤが安い理由は「工場を持つ外食」だから

サイゼリヤの低価格は、1つの値下げ策ではなく、製造業の会社がコストを下げるときの定石を外食に持ち込んだ組み合わせで成り立っています。会社は自社の方式を「製造直販」と呼び、素材開発・原料調達から加工、配送、店舗での提供までを自社で一貫して行うと説明しています。

仕組みは次の4つです。

  • 中間の業者を挟まない:問屋などを通さないので、受け渡しのたびに乗る費用が減る
  • 品目ごとに工場を分けて作る:トマトソースは千葉、ご飯は福島のように1か所で大量に作り、設備を効率よく回す
  • 定番を計画生産する:長く売れている商品が中心なので需要を読みやすく、原料も生産も前もって手配できる
  • 店の工程を工場へ移す:使える状態で届けるので、店の調理・片づけ・保管の手間が減る

図1:サイゼリヤの安さを支える4つの仕組み

流通・工場・計画・店舗の4か所の仕組みを重ねて、価格を支えています。

中間を挟まない問屋を通さず、自社で調達・配送
品目別の工場同じ品目を1か所でまとめて作る
定番の計画生産売れ方が安定し、先に手配できる
店の工程を工場へ店は仕上げて出すことに集中

※会社サイト「自社工場の取り組み」の説明をもとに MONOSCOPE が4つに分けて整理。

決算で見る今のサイゼリヤ(2026年8月期)

売上高に続いて、営業利益も164億円(前期比5.9%増)と増収増益でした。売上高営業利益率は5.4%で、前の期の6.0%から0.6ポイント下がっています。

売上の伸びに比べて利益の伸びは小さく、親会社株主に帰属する当期純利益は110億円と前期をわずかに下回りました。会社は2027年8月期に売上高3,337億円、営業利益212億円を見込み、年間配当は前期の30円から35円に増やしています。

項目2025年8月期2026年8月期2027年8月期(会社予想)
売上高2,567億円(+14.3%)3,014億円(+17.4%)3,337億円(+10.7%)
営業利益154億円(+4.3%)164億円(+5.9%)212億円(+29.1%)
経常利益158億円168億円(+6.5%)208億円
親会社株主に帰属する当期純利益111億円110億円(−1.1%)134億円
売上高営業利益率6.0%5.4%—
年間配当30円35円35円
出典:サイゼリヤ「2026年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月14日)。億円未満は切り捨て

図2:売上高と営業利益の前期比較

売上高は447億円増えた一方、営業利益の増加は約9億円(920百万円)にとどまりました。

売上高

前期 2,567億円
当期 3,014億円

営業利益

前期 154億円
当期 164億円

※売上高と営業利益は縮尺が違います(項目ごとに当期を同じ長さにしています)。出典:同社 決算短信(2026年10月14日)。

利益率が下がった理由について、短信の要約は内訳を示していません。現金の流れを見ると、営業キャッシュ・フロー286億円に対して投資キャッシュ・フローは−223億円で、投資を本業で稼いだ現金の範囲に収めながら規模を広げていることが分かります。

製造直販とは?ふつうの外食チェーンとの違い

製造直販とは、食材を作る工場と、それを売る店を同じ会社が持ち、間の流通も自社で担う方式です。衣料品でいう製造小売(SPA)に近い形で、原料から店までのつなぎ目を社内に取り込むので、価格と品質を自社で決めやすくなります。

図3:製造直販で食材が店に届くまで

原料の調達から店への配送までを1社で持つので、受け渡しの費用と手間が減ります。

原料を調達自社工場で加工自社で配送店で仕上げここまでを1社で持つ

※会社サイトの説明「素材開発・原料調達から加工、配送、店舗での提供まで自社で一貫」をもとに作図。

一般的な外食チェーンでも工場(セントラルキッチン)を持つ会社は多いのですが、サイゼリヤは海外の工場や契約農家との連携、物流の仕分けまで含めて自社で組んでいる点が特徴です。会社は、間に人や問屋を挟まないことで無駄なコストを省けると説明しています。

図4:仕入れ中心の外食と、製造直販の違い

違いは「誰が作り、誰が運び、どこで手間をかけるか」に出ます。

仕入れ中心の外食(一般的な形)
サイゼリヤの製造直販
食材の作り手
食品メーカー・問屋から仕入れる
自社工場で作る(国内5・海外2)
店までの流通
問屋や物流会社を通る
自社工場で仕分けし、店へ配送する
店の仕事
下ごしらえから調理まで店で行う部分が大きい
工場で加工済みの食材を仕上げて出す
価格を決める範囲
仕入れ値に左右される
原料から店までの費用を自社で見直せる

※左の列は比較のための一般的な形で、特定の会社を指すものではありません。

サイゼリヤの7つの自社工場と分業

スコップに盛った白米と、奥の黄色い米の接写

サイゼリヤの工場は国内に5つ、海外に2つあり、「全店向けの品目を1か所で作る工場」と「地域の店に生鮮品を届ける工場」に役割が分かれています。トマトソースは千葉、ご飯の大部分は福島が全店分を受け持ち、サラダなどの生鮮品は東日本を神奈川、西日本を兵庫が担当します。

工場建設・稼働主に作るもの・役割供給先
吉川工場1997年コーンスープ・サラダなどの店舗食材、店舗配送用の仕分け、メニュー開発のテストキッチン店舗(最初の工場)
神奈川工場2001年サラダなどの生鮮品、食材の一次加工、イタリア直輸入のオリーブオイル缶の小分け東日本の店舗
福島工場2001年ドリア用ターメリックライスと白米の精米・炊飯の大部分、契約農家向けレタスの育苗と集荷・出荷全店
兵庫工場2003年生鮮品からピザ・パスタまで幅広い品目、配送の拠点九州〜愛知の西日本の店舗
千葉工場2013年トマトソース。自動倉庫で効率化と省人化全店
オーストラリア工場2003年稼働現地のミルクと牛肉でホワイトソース・ミートソース・ハンバーグ日本の店舗(海を越えて輸送)
広州工場(中国)2013年稼働ピザやソース。新工場を建設中中国国内の店舗
出典:サイゼリヤ「自社工場の取り組み」、有価証券報告書(第53期)

工場ができた時期を並べると、店舗数か看板商品の販売量が一段上がるたびに工場を足してきたことが分かります。神奈川工場は500店舗、兵庫工場は700店舗の時期に建てられ、福島工場はミラノ風ドリアの販売量が増えたことに合わせて建てられました。

図5:店舗数の節目と工場の建設

店と商品が増えるのに合わせて、工場を足してきました。

1997吉川工場店の作業負担を減らすための最初の工場
2001神奈川・福島工場500店舗の時期。ドリアの販売増に福島で対応
2003兵庫・オーストラリア工場兵庫は700店舗の時期に建設。豪州は稼働を開始
20111,000店舗を超える全店向けの品目の量がさらに増える
2013千葉・広州工場トマトソースを集約、自動倉庫で省人化
いま国内5・海外2工場広州では新工場を建設中

※店舗数の節目は会社サイト「自社工場の取り組み」の記述による。

品目ごとに作る場所を1つに絞ると、同じ設備で同じものを長く作れるため、段取り替えが減り、設備の稼働率を上げやすくなります。全店のトマトソースを千葉で、ご飯の大部分を福島で作るのは、量のまとまりを工場のコストに変える工夫です。

一方で、サラダなどの生鮮品は東日本を神奈川、西日本を兵庫と、東西の2拠点が分けて担当しています。全店向けの集中と地域向けの分散を品目の性質で使い分けている点は、食品業界のサプライチェーンを考えるうえでも分かりやすい例です。

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オーストラリアに工場があるのはなぜ?

グラスに注がれる牛乳と、紙の上の牛ひき肉

オーストラリアに工場があるのは、ホワイトソースやハンバーグの主な原料であるミルクと牛肉を、産地で調達してその場で加工するためです。会社は、現地で高品質で安全なミルクと牛肉を調達し、ホワイトソース・ミートソース・ハンバーグを作っていると説明しています。

図6:原料の産地で加工する「原料立地」

重くて傷みやすい原料ではなく、加工後のソースやハンバーグを運びます。

現地のミルク・牛肉現地工場で加工海を越えて輸送店舗へ

※作るものはホワイトソース・ミートソース・ハンバーグ(会社サイト)。製造子会社 SAIZERIYA AUSTRALIA PTY.LTD. は2000年設立、工場は2003年稼働。

原料の産地のそばに工場を置く考え方は、製造業では「原料立地」と呼ばれ、製鉄やセメントのように原料が重い産業でよく見られます。生乳や生肉のまま長い距離を運ぶより、産地で加工してから運ぶほうが、鮮度と輸送の両方で扱いやすくなります。

会社は、必要な分だけ作るので長期保存が要らず、素材の味を生かせるとも説明しています。ただし海外で作る以上、為替の影響は受けるので、原料立地は「いつでも安い」仕組みではなく、原料の質・価格と輸送・為替を比べたうえでの選択と見るのが自然です。

計画生産と在庫:定番中心のメニューが工場を楽にする

サイゼリヤが計画生産をしやすいのは、長く売っている人気商品を中心に品ぞろえしていて、販売数が安定しているからです。会社は、売れ方を予測しやすいので原料の調達や食材の生産を前もって計画でき、大量に売れる商品は工場で効率よく作れると説明しています。

図7:定番メニューから計画生産までの流れ

メニューを大きく変えないことが、需要の予測と工場の計画を安定させます。

定番の人気商品が中心長く売っている商品なので、売れる数のぶれが小さい
だから
需要を予測しやすい店ごとの販売数の見込みを立てやすい
前もって
原料を手配調達量と時期を先に決める
工場で計画生産まとまった量を効率よく作る
必要な量を配送必要なタイミングで店へ

※会社サイトの表現は「必要な量を、必要なタイミングでつくる」。

メニューを頻繁に入れ替える店では、新しい食材の調達先探しや試作、作りすぎた在庫の処分が毎回発生します。定番を軸にすると、工場は同じ品目を同じ設備で繰り返し作れ、原料の買い方もまとめられるので、在庫と段取りの両方の負担が軽くなります。

「必要な量を、必要なタイミングで」という考え方は、製造業でいうトヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムと同じ方向を向いています。予測が外れたときの欠品と作りすぎをどう抑えるかは、製造業の安全在庫の考え方や需要予測から出荷までの生産管理と共通する課題です。

店を「工場の後工程」にする:店舗の工程を工場へ移す効果

サイゼリヤの店は、工場で加工された食材を受け取り、仕上げの調理と盛り付けをして出す「後工程」として設計されています。最初の吉川工場がそもそも店舗作業の負担を減らすために作られたことからも、工場と店を1本のラインとして考えてきたことが分かります。

図8:工場と店の工程分担

手間のかかる工程ほど工場に寄せ、店には短い仕上げの工程を残します。

工場が受け持つ工程
店が受け持つ工程
ソース・スープ
トマトソース(千葉)、ホワイトソース(豪州)、コーンスープ(吉川)を作る
受け取って料理に使う
ご飯
ドリア用ターメリックライスと白米の精米・炊飯の大部分(福島)
料理に合わせて仕上げる
生鮮品
サラダなどの生鮮品と食材の一次加工(神奈川・兵庫)
盛り付けて出す
油などの資材
大容量のオリーブオイル缶を小分けして配送(神奈川)
必要な分だけ受け取って使う

※工場側は会社サイトの記述。店側の作業は MONOSCOPE による整理で、店で行う作業をすべて示したものではありません。

工程を前に寄せると、食材を切る・炊く・ソースを作るといった店の作業の多くを工場が受け持ち、店の片づけや保管も楽になります。会社が挙げる効果は、調理の手間が減ること、品質が安定すること、提供時間が短くなることの3つです。

図9:工程を工場へ移したときの店の変化

店で起きる変化は、手間・保管・品質・時間の4つに分けられます。

調理の手間が減る店で調理しやすい形に工場で加工する
片づけ・保管が楽使える状態・使う量で届く
品質が安定味を決める工程を工場で管理
提供が早い注文から出すまでの時間が短い

※効果の内容は会社サイト「自社工場の取り組み」の記述による。数値の公表はありません。

報道では、調理工程の一部を工場に集めたことでキッチンの面積を小さくでき、浮いた面積を客席に回せると紹介されています。店の工程が短く標準化されているほど、店ごとの腕の差が出にくく、新しい店も同じ手順で立ち上げやすいので、工場の量のまとまりと出店のしやすさが互いを支える形です。

製造業の会社がサイゼリヤから学べること

生産計画の表と電卓、パスタ・米・トマトの見本

製造業の会社が持ち帰れるのは、「どこまでを自社で持ち、どの品目をどこに集め、顧客の手間をどこまで引き受けるか」を、価格から逆算して決める考え方です。

図10:サイゼリヤの仕組みを自社に当てはめる4つの視点

それぞれ、向いている条件と、先に確かめることを並べました。

内製の範囲を決める向く:外注の受け渡しで費用や品質のぶれが大きい工程。確かめる:内製後に設備を回せる量があるか
品目別に集中生産する向く:品種が多く段取り替えが多い工場。確かめる:拠点を絞ったときの輸送費と納期
定番を計画生産にする向く:売れ方が安定した主力品がある。確かめる:主力品の比率と、需要のぶれの大きさ
顧客の手間を引き受ける向く:納品先で加工・小分けが発生している。確かめる:その手間に払ってもらえる価値があるか

※MONOSCOPE による整理。サイゼリヤの事例を製造業の一般的な判断に置き換えたもの。

中でも部品・素材メーカーにとって示唆が大きいのは、顧客側の手間を減らす納め方です。オリーブオイルの大容量缶を工場で小分けして届けるように、納品先で発生している切断・小分け・組み付けを自社の工程に取り込めば、価格以外の理由で選ばれる余地が生まれます。

千葉工場の自動倉庫のように、集めた量を省人化の投資に回す流れも参考になります。どの工程から自動化するかは工場の省人化の始め方で整理していますが、量がまとまっている工程ほど投資を回収しやすい点はサイゼリヤの工場配置と同じ理屈です。

こうした計画生産や工場の分業を動かしているのは、生産管理や設備保全、品質管理といった工場の仕事です。仕事の選び方は製造業で働く人の転職・キャリアガイドで整理しています。

サイゼリヤの低価格についてのよくある質問

サイゼリヤのオリーブオイルは工場で作っているのですか?

作っているのではなく、小分けしています。店で販売している瓶入りのオリーブオイルは、現地で瓶詰めしたイタリア直輸入品です。神奈川工場で小分けするのは調理用の大容量缶で、必要な分だけを店に配送しています。

円安や原材料高の中でも低価格を続けられるのはなぜですか?

決算の数字から言えるのは、売上が大きく伸びた一方で営業利益率は下がった点までです。リスクとしては、有価証券報告書が、豪州で生産し食材を外貨建てで輸入しているため、為替変動が購入価格と業績に影響すると挙げています。

サイゼリヤの工場ではどんな仕事がありますか?

サイゼリヤの採用ページは、工場の仕事を「店舗で使用する食材の加工、調理、配送」と案内しています。そのほか吉川工場にはメニュー開発のテストキッチン、千葉工場には省人化を担う自動倉庫があり、設備と物流を動かす仕事が工場にあります。

まとめ

この記事のまとめ
  • サイゼリヤは原料調達から加工・配送までを自社で持つ「製造直販」で、店の工程を工場に移している
  • 2026年8月期は売上高3,014億円で初の3,000億円超、営業利益率は5.4%
  • 国内5・海外2の工場が、全店向けの集中生産と地域向けの生鮮品に役割を分けている
  • オーストラリア工場はミルクと牛肉の産地で加工する原料立地の考え方
  • 定番中心の品ぞろえが計画生産を支え、店は工場の後工程として仕上げに集中する

食品工場の設備投資の動きは食品業界の設備投資2026、原価の分け方は製造原価の内訳と計算の流れで詳しく扱っています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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