3Dプリンティングとは?仕組みと基本原理を図解でわかりやすく解説

産業用3Dプリンターで造形した部品を確認する技術者

3Dプリンティングとは、3Dデータ(立体の形を表すデータ)をもとに材料を1層ずつ積み重ねて、立体物をつくる加工技術です。材料を削ったり型に流し込んだりせず、必要な場所にだけ材料を足していく点が、従来の加工との最も大きな違いです。

製造業では、金属や樹脂の部品を造形する産業用の装置が使われ、試作だけでなく航空機エンジンや自動車の部品づくりにも広がっています。工業分野では「付加製造(AM)」とも呼ばれる加工技術です。

目次
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3Dプリンティングとは

層を積み重ねて造形している3Dプリンターの内部

改めて定義すると、3Dプリンティングは3Dデータをもとに材料を1層ずつ積み重ねて、立体物をつくる加工技術です。規格上の名前は「付加製造(AM:Additive Manufacturing)」で、日本産業規格のJIS B 9441(2020年制定)に定義があります。

その定義は、3Dモデルデータを基に材料を結合して造形物を実体化する加工法です。呼び方は一般には「3Dプリンター」「3Dプリンティング」、工業の現場や規格では「AM」「積層造形」が多いものの、指すものはほぼ同じなので、この記事では区別せずに使います。

対象となる範囲は広く、樹脂を使う試作用の装置から、金属部品を造形する産業用の装置、鋳造用の砂型をつくる大型装置まで含まれます。家庭用の3Dプリンターと産業用のAM装置は、原理は同じでも用途と価格帯が大きく異なると考えておくとよいでしょう。

そのうち産業用の装置も着実に増えており、矢野経済研究所の調査によると、本体価格100万円以上の産業用3Dプリンタの世界出荷台数は、2023年に約3万台(前年比113.2%)でした。同社は2025年に3万5,000台に達すると予測しています。

冒頭で触れたとおり、従来の加工との最も大きな違いは必要な場所にだけ材料を足していく点です。そのため、金型を使わずに複雑な形をつくれる一方で、大量生産の速さやコストでは従来の工法に及ばない場面も多くあります。

図1:除去加工と3Dプリンティングの違い

同じ部品をつくる場合でも、材料の扱い方と得意な場面が異なります。

除去加工(切削など)
3Dプリンティング(付加製造)
つくり方
材料のかたまりから不要な部分を削る
何もない状態から材料を1層ずつ足す
金型・治具
治具や刃物の準備が必要
基本的に不要。3Dデータがあれば造形できる
得意な形
平面・穴・円筒など単純な形
内部の空洞や格子など複雑な形
材料の無駄
削りくずが多く出る
使う分だけで済みやすい
向く生産量
中量〜大量生産
試作や1個〜少量の生産

※実際には、3Dプリンティングで造形したあとに切削で仕上げるなど、両者を組み合わせることも多くあります。

3Dプリンティングの仕組み

光造形方式の3Dプリンターの造形部

3Dプリンティングは、装置だけで完結する技術ではありません。データ、装置、材料、後処理という4つの要素がそろって、はじめて使える部品になります。

紙のプリンターにたとえると、3Dデータが原稿、装置が印刷機、材料がインクや用紙にあたります。ただし、3Dプリンティングでは印刷したあとの仕上げ作業が品質を大きく左右する点が異なります。

図2:3Dプリンティングを構成する要素

データから装置、材料、後処理までがひとつながりになっています。

3Dデータ3D CADで設計したモデルを、造形用の形式に変換する
スライスして造形指示
エネルギー源・ヘッド熱、レーザー、紫外線、接着剤などで材料を固める
材料供給樹脂の糸、液体樹脂、金属粉末などを送り込む
造形ステージ1層ごとに上下して、層を積み重ねていく
造形物を取り出す
後処理サポート除去、熱処理、研磨、切削などで仕上げる

※装置の構成は方式によって異なります。ここでは共通する要素を単純化して示しています。

3Dデータ

出発点は、3D CADなどでつくった立体の設計データです。造形するときには、STLや3MFといった形式に変換し、専用のソフトで装置が読める指示に置き換えます。

図面がなくても、3Dスキャナーで現物を読み取ってデータにすることもできます。データさえあれば同じものを何度でも再現できることが、3Dプリンティングの大きな特徴です。

装置(3Dプリンター)

装置は、材料を固めるエネルギー源やノズル、材料を送り込む仕組み、造形物を支えるステージなどで構成されます。どのように材料を固めるかによって、後で紹介する方式に分かれます。

産業用の装置では、造形室の温度や雰囲気を管理する機能、造形中の状態を監視するカメラやセンサーを備えたものも増えています。こうした機能で毎回同じ条件を保ち、安定して造形できることが、部品の品質を支える土台になります。

家庭用の小型機は数万円から手に入りますが、産業用、特に金属用の装置は大型で高価になり、設置する環境や安全対策にも配慮が必要です。

材料

主な材料は次のとおりです。

  • ABSやナイロンなどの熱可塑性樹脂
  • 光で固まる液体樹脂
  • チタン合金やアルミ合金、ステンレスなどの金属粉末
  • 砂やセラミックス

同じ名前の材料でも、通常の成形品とは粒の大きさや配合が異なる専用品を使うのが一般的です。材料と方式の組み合わせで、つくれる部品の性能がほぼ決まると考えておくとよいでしょう。

後処理

造形が終わった直後の部品はそのままでは使えないことがほとんどで、主に次のような後処理が必要になります。

  • 形を支えるために付けたサポートの除去
  • 洗浄
  • 硬化
  • 熱処理
  • 表面の研磨

金属部品では、精度が必要な面だけを切削で仕上げることもあります。後処理にかかる時間とコストは見落とされやすく、導入前に確認しておきたいポイントです。

3Dプリンティングの基本原理

さまざまな方式で造形された試作品や部品

3Dプリンティングの原理は、薄くスライスした形を下から順に重ねていくという、ごく単純なものです。料理でいえば、薄切りにしたハムを1枚ずつ積み上げて元の形に戻すイメージに近いでしょう。

図3:3Dプリンティングでものができるまで

準備、造形、仕上げの3つの段階に分かれます。

準備
013Dモデル作成3D CADやスキャナーで立体の形をデータにする
02スライス形を薄い層に切り分け、各層の形を計算する
03造形条件の設定向き、サポート、層の厚さ、温度などを決める
造形
041層を形成材料を置き、熱や光などで1層分を固める
05ステージ移動1層分だけステージを動かし、次の層に備える
06積層の繰り返し数百〜数千回くり返して立体を完成させる
仕上げ
07取り出し冷却や洗浄を行い、装置から造形物を取り出す
08サポート除去形を支えていた補助の部分を取り除く
09後処理・検査熱処理や研磨を行い、寸法や強度を確認する

※方式によって、造形中にヘッドが動くもの、ステージが動くものなど細部は異なります。

図のように、実際に装置が動いている「造形」の段階は全体の一部にすぎません。前後の準備と仕上げまで含めて1つの工程として捉えることが、3Dプリンティングを理解するうえでの出発点になります。

形を薄い層に分けて考える

最初の工程は「スライス」です。立体の3Dデータを0.1mm前後から数十μm程度の薄い層に切り分け、それぞれの層でどこに材料を置くかを計算します。

層が薄いほど表面はなめらかになりますが、層の数が増えるぶん造形時間は長くなります。品質と時間のどちらを優先するかは、この段階の設定で大きく変わります。

材料を1層ずつ固める

次に1層分の材料を置いて固めます。固め方は方式によって異なり、たとえば次のような違いがあります。

  • 溶かした樹脂を冷やして固める
  • 紫外線で液体樹脂を硬化させる
  • レーザーで金属粉末を溶かして結合させる

どの方式でも共通するのは、下の層としっかり結合させながら次の層を重ねていくことです。層どうしの結合が弱いと、積層方向に割れやすい部品になってしまいます。

積み重ねて立体にする

1層が終わるとステージが1層分だけ動き、また次の層を固めます。この作業を数百回から数千回くり返すことで、ようやく立体ができあがります。

注意が必要なのは、空中に張り出した部分です。下に支えがないと材料が垂れてしまうため、サポートと呼ばれる補助の構造を一緒に造形するのが一般的で、その量や付け方が仕上がりや後処理の手間を左右します。

造形にかかる時間は、部品の大きさや方式、層の厚さによって大きく変わります。小さな部品でも数時間、大きな部品では丸1日以上かかることも珍しくなく、夜間や休日に装置を動かし続ける運用がよく見られるのはこのためです。

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3Dプリンティングの種類・方式

金属粉末をレーザーで溶かす金属3Dプリンター

3Dプリンティングにはさまざまな方式があり、国際規格のISO/ASTM 52900とJIS B 9441では、材料の固め方によって7つのカテゴリに分類しています。まずは全体像を図で確認しましょう。

図4:3Dプリンティングの7つの方式

材料をどのように置き、どう固めるかで分類されています。

主な材料
仕組みと特徴
材料押出(MEX)
熱可塑性樹脂
溶かした樹脂をノズルから押し出して積む。装置が手ごろ
液槽光重合(VPP)
光硬化性樹脂
液体樹脂に光を当てて固める。表面がなめらか
粉末床溶融結合(PBF)
樹脂粉末・金属粉末
敷いた粉末をレーザー等で溶かす。強度の高い部品向き
材料噴射(MJT)
光硬化性樹脂など
インクジェットで材料を吹き付けて固める。多色も可能
結合剤噴射(BJT)
砂・金属・セラミックス粉末
粉末に接着剤を吹き付けて固める。大型の砂型に強い
指向性エネルギー堆積(DED)
金属粉末・金属ワイヤ
材料を送りながら溶かして盛る。補修や大型部品向き
シート積層(SHL)
紙・樹脂・金属のシート
薄いシートを切って貼り重ねる

※括弧内はISO/ASTM 52900で使われる略称です。装置メーカーによって独自の呼び名が使われることもあります。

方式を選ぶときは、つくりたい部品の材料、求める強度や精度、大きさ、数量から逆算するのが基本です。1台ですべての用途をまかなえる万能な方式はないため、用途に応じて使い分けたり、外部の造形サービスを利用したりする企業も多くあります。

材料押出(熱溶解積層)

最も身近な方式で、樹脂の糸(フィラメント)を加熱したノズルで溶かし、線を描くように積み重ねていきます。FDMやFFFとも呼ばれ、家庭用から業務用まで幅広い装置があります。

装置と材料が比較的安く、手軽に使えるのが強みで、治具や試作品によく使われます。一方で、表面に積層の段差が残りやすく、層と層の間で強度が落ちやすい点には注意が必要です。

液槽光重合(光造形)

液体の光硬化性樹脂に紫外線やレーザーを当て、1層ずつ固めていく方式です。3Dプリンティングの中でも最も早く実用化された方式で、光造形やSLAとも呼ばれます。

光造形の原理は、名古屋市工業研究所に在籍していた小玉秀男氏が、米国で実用化されるより前に考案・発表したことでも知られ、日本とも縁の深い方式です。現在は、プロジェクターのように1層分の面全体に一度に光を当てるタイプの装置も広く使われています。

細かな形状や、なめらかな表面を再現しやすいのが特徴です。外観を確認するデザイン試作や、歯科の模型、精密な小物部品などに使われています。

粉末床溶融結合

薄く敷き詰めた粉末に、レーザーや電子ビームを当てて必要な部分だけを溶かし、固めていく方式です。PBFとも呼ばれ、樹脂粉末用と金属粉末用の装置があります。

金属3Dプリンターの多くがこの方式で、航空機エンジンや医療用インプラントなど、強度が求められる最終製品にも使われています。周りの粉末が支えになるため、樹脂用ではサポートを少なくできるのも利点です。

そのほかの方式

インクジェットで材料を吹き付ける材料噴射、粉末に接着剤を吹き付ける結合剤噴射のほか、金属を溶かしながら盛り付ける指向性エネルギー堆積、シートを貼り重ねるシート積層もあります。

なかでも結合剤噴射は鋳造用の砂型づくりに、指向性エネルギー堆積は金型や大型部品の補修に使われるなど、方式ごとに得意な用途がはっきり分かれているのが実情です。

3Dプリンティングを理解するための基本用語

3Dデータと造形部品を見ながら話し合う技術者たち

3Dプリンティングの資料や打ち合わせでよく出てくる用語を整理しておきます。意味を押さえておくと、装置メーカーや造形サービス会社との会話がスムーズになります。

  • AM(Additive Manufacturing:付加製造。材料を付け加えて形をつくる加工の総称)
  • STL・3MF(造形に使われる3Dデータの形式。STLは表面を三角形の集まりで表す)
  • スライサー(3Dデータを層に切り分け、装置への指示をつくるソフト)
  • 積層ピッチ(1層の厚さ。細かいほどなめらかだが時間がかかる)
  • サポート(張り出した部分を支えるための補助の構造。造形後に取り除く)
  • 造形方向(部品をどの向きで積むか。強度や仕上がり、時間が変わる)
  • 異方性(積層方向によって強度などの性質が異なること)
  • 造形時間(1回の造形にかかる時間。部品の高さや層の数に大きく左右される)
  • ポストプロセス(後処理のこと。サポート除去、熱処理、研磨、切削などを含む)
  • DfAM(Design for AMの略。3Dプリンティングの特長を生かすための設計の考え方)

このなかでも、実務で特に意識したいのが異方性とDfAMです。同じ部品でも、積む向きによって強さが変わるため、どの方向に力がかかる部品なのかを考えながら造形方向を決めることが大切です。

従来の加工を前提にした図面をそのまま造形しても、3Dプリンティングの良さは生かしきれません。そこで一体化や軽量化など、積層ならではの形を最初から設計に織り込むのがDfAMの考え方で、設計者に求められるスキルとして注目されています。

3Dプリンティングのよくある質問

3Dプリンターで部品を量産することはできますか?

航空機エンジンの部品のように量産に使われる例もありますが、大量生産の速さやコストでは従来の工法に及ばない場面が多くあります。少量の部品や、金型ではつくれない複雑な形の部品で強みを発揮すると考えておくとよいでしょう。

家庭用と産業用の3Dプリンターは何が違いますか?

材料を積み重ねる原理は同じですが、用途と価格帯が大きく異なります。産業用、特に金属用の装置は大型で高価になり、造形室の温度や雰囲気の管理に加え、設置する環境や安全対策にも配慮が必要です。

3Dプリンターでつくった部品は強度が弱いのですか?

積層方向によって強度が変わる異方性があり、層どうしの結合が弱いと積層方向に割れやすくなります。どの方向に力がかかる部品かを考えて造形方向を決め、方式や材料、後処理を選べば最終製品に使える強度も得られます。

金属の部品も3Dプリンターで造形できますか?

金属粉末をレーザーなどで溶かす粉末床溶融結合や、材料を送りながら溶かして盛る指向性エネルギー堆積で造形できます。航空機エンジンや医療用インプラントにも使われていますが、精度が必要な面は切削で仕上げることもあります。

3Dプリンターで使うデータはどうやって用意しますか?

3D CADで設計したモデルをSTLや3MFといった形式に変換し、スライサーで層ごとの造形指示に置き換えるのが一般的です。図面がない部品でも、3Dスキャナーで現物を読み取ってデータにする方法があります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 3Dプリンティングとは、3Dデータをもとに材料を1層ずつ積み重ねて立体をつくる加工技術
  • 工業分野では付加製造(AM)と呼ばれ、JIS B 9441で用語と概念が定められている
  • データ・装置・材料・後処理の4つがそろって、はじめて使える部品になる
  • 原理はスライス、1層の固化、積層のくり返しで、層の厚さやサポートが品質を左右する
  • 方式は7つに分類され、樹脂の試作から金属の最終製品まで得意分野が異なる

3Dプリンティングが注目される理由や、切削・成形との違いは3Dプリンティングが注目される背景と従来技術との違いで解説しています。具体的な使い道や企業の事例は3Dプリンティングの主な用途と導入事例をご覧ください。

設計データについてはCAD・CAE、造形に使う素材については材料技術の技術ページも参考になります。

3Dプリンティングの最新動向や関連記事については、3Dプリンティングの技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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