省人化が注目される背景と従来技術との違い|メリット・課題も解説

協働ロボットや搬送車が稼働する工場で稼働状況を確認する技術者

省人化とは、ロボットや機械、システムを使って、人を増やさずに生産を続ける方法をつくることですが、言葉自体は以前からあり、いまは多くの工場で最優先の課題になっています。

背景にあるのは、人件費の問題より、働き手そのものの減少です。15〜64歳の生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減り、2024年には7,373万人になりました。採用しようにも人が集まらないなかで、省人化が求められています。

目次
広告

省人化が注目される背景

人手が限られた組立ラインで作業するベテラン作業者

省人化への関心が高まっている背景には、いくつかの変化が同時に進んでおり、ここでは主な4つを取り上げます。

図1:省人化が注目される4つの背景

働き手の減少と、技術・制度の変化が重なっています。

働き手が減っている生産年齢人口は1995年をピークに減少が続いている
採用が難しい正社員が不足している企業は5割を超える
技能の継承が難しい熟練者の引退で、勘と経験に頼る工程が維持しにくい
導入しやすくなった協働ロボットの普及や国の支援策で、中小企業も取り組みやすい

働き手そのものが減っている

最も大きな要因は、働く世代の人口の減少です。内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、15〜64歳の生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減り続け、2024年には7,373万人となりました。

製造業も例外ではなく、2025年版ものづくり白書では、製造業の就業者数は2024年に1,046万人と、前年から約9万人減っています。人口が減る以上、人を増やして生産量を保つ方法には限界があるというのが、省人化の出発点です。

採用しても人が集まらない

人手不足は多くの企業で実感されています。帝国データバンクが2026年4月に行った調査では、正社員が不足していると答えた企業は50.6%、非正社員が不足している企業は28.3%でした。

中小の製造業でも状況は同じです。ものづくり白書では、中小企業の製造業の従業員数過不足DI(「過剰」と答えた企業の割合から「不足」の割合を引いた値)が2024年にマイナス18.2となりました。コロナ禍前の2019年と同じ水準まで、不足感が強まったとしています。

熟練者の技能を引き継ぎにくい

製造業の現場には、溶接や仕上げ、目視検査など、熟練者の勘と経験に支えられてきた工程が数多くあります。こうした人材が定年を迎える一方、若手の採用が進まないと、技能を引き継ぐ相手がいなくなります。

そこで、熟練者の動きや判断基準を機械やデータに置き換えることで、経験の浅い人でも同じ品質を出せるようにする取り組みが増えています。省人化は、人数を減らすだけでなく、技能を残す手段でもあるのです。

例えば、熟練者が手の感覚で行っていた仕上げ作業を、ロボットの動きとして記録して再現する方法があります。検査でも、熟練者が良品と不良品を見分けた画像を集め、AIの判定基準として使う方法が広がっています。

技術と制度の面で導入しやすくなった

かつてのロボットは高価で、柵で囲う広いスペースも必要だったため、導入できるのは大企業の量産ラインが中心でした。現在は、人の隣で使える協働ロボットや、レイアウト変更に強いAMRが普及し、中小企業でも使える選択肢が増えています。

国の支援も広がっています。例えば、中小企業省力化投資補助金には、カタログから製品を選ぶ「カタログ注文型」と、現場に合わせた設備導入を支援する「一般型」があります。補助金などの支援策を活用すれば、初期投資の負担を抑えられる場合があります。

世界的にもロボットの活用は広がっており、国際ロボット連盟(IFR)によると、2024年に世界で新たに設置された産業用ロボットは約54万2,000台でした。日本は4万4,500台と世界で2番目に大きな市場で、製造業の従業員1万人あたりのロボット台数(ロボット密度)を見ると、446台で世界4位です。

図2:製造業のロボット密度(2024年)

製造業の従業員1万人あたりに、何台のロボットが使われているかを示します。

韓国1,220台
シンガポール818台
ドイツ449台
日本446台
米国307台
世界平均132台

※出典:International Federation of Robotics(IFR)、2026年4月発表。2024年のデータ。

省人化の歴史と進化

手作業のラインと自動化されたラインが並ぶ工場

機械で人の作業を置き換える取り組みは今に始まったものではありません。省人化の考え方は、日本の産業用ロボットの歩みとともに変わってきました。

図3:省人化を支える技術の歩み

導入期、普及期、協働・データ活用期の3つの段階に分かれます。

導入期
01国産ロボットの誕生1969年、国産初の産業用ロボットが完成
02溶接ラインへの導入1973年、自動車のスポット溶接にロボットが入る
03電動ロボットの登場1970年代半ば、電動のアーク溶接ロボットが登場
普及期
04ロボット普及元年1980年、量産工場へのロボット導入が本格化
05工場の自動化加工・組立・搬送を自動化したライン化が進む
06品質の安定人による品質のばらつきを減らす目的でも使われる
協働・データ活用期
07人と協働するロボット2013年の通達で、柵なしで人と作業する道が開く
08自律走行する搬送地図をつくって走るAMRが工場や倉庫に広がる
09データとAIの活用稼働データや画像AIで、監視や検査も自動化する

※年は、国産初の産業用ロボットの完成など主な出来事の目安です。

導入期:大量生産の現場から始まった

発明協会の「戦後日本のイノベーション100選」によると、1969年に川崎重工業が国産初の産業用ロボット「川崎ユニメート2000」を完成させました。1973年には自動車メーカーの生産ラインにスポット溶接ロボットが納入されています。

当初の目的は、危険できつい作業や、同じ動作を大量に繰り返す作業を機械に任せることで、大量生産の工程を高速化することが自動化の中心だった時代です。

普及期:量産工場に広がった

1980年は「ロボット普及元年」と呼ばれ、ロボットは自動車や電機の量産工場に広く入っていきました。加工や組立だけでなく、工程間の搬送まで含めてラインを自動化する取り組みも進みました。

この時期には、人による品質のばらつきを減らす目的でも自動化が使われるようになりました。ただし、対象は同じ製品を大量につくる工程が中心で、多品種少量の現場や中小企業にはまだ導入しにくいものでした。

ロボットを入れるには、広い設置スペースと柵の工事、専門の技術者が必要で、自動化は「大企業の量産ラインのもの」という認識が、長く続いていたと言えます。

協働・データ活用期:人の隣へ、工場全体へ

2013年に厚生労働省が通達を改正し、リスクアセスメントによって安全が確認できれば、柵がなくても人と同じ空間でロボットを使えることが明確になりました。これを機に、協働ロボットが多品種の工程でも使われ始めます。

あわせて、自律走行で運ぶAMRや、設備の稼働データを集めるIoT、画像検査のAIなども実用化され、単体の作業から、工場全体の人の時間を減らす方向へと、省人化の範囲は広がっています。

従来技術との違い

協働ロボットと作業者が分担して組立作業を行う様子

現在の省人化は、かつての大量生産向けの自動化と比べると、対象となる現場も進め方も大きく異なります。

図4:従来の自動化と現在の省人化の違い

目的と対象が変わり、使われる技術も変わってきました。

従来の自動化
現在の省人化
主な目的
大量生産の高速化・コスト低減
人手不足の中で生産を続ける
対象の現場
大企業の量産ライン
多品種少量の現場、中小企業にも広がる
人との関係
柵で分け、人を工程から遠ざける
人の隣で作業を分け合う
範囲
溶接・塗装など個別の工程
搬送・検査・事務まで工場全体
変更への強さ
製品が変わると大きな改造が必要
段取り替えやレイアウト変更に対応しやすい

※現在も大量生産の工程では、従来型の自動化が主力として使われています。

従来の自動化と現在の省人化の違いを、導入を考える目線で観点ごとに表で整理すると次のとおりです。

観点従来の自動化現在の省人化
主な目的大量生産の高速化・コスト低減人手不足の中で生産を続ける
向いている現場大企業の量産ライン多品種少量の現場や中小企業
人との関係柵で囲い、人を遠ざける人の隣で作業を分け合う
主な技術専用設備、柵付きのロボット協働ロボット、AMR、IoT、画像AI
製品が変わったとき設備の大きな改造が必要プログラムや治具の切り替えで対応
※現在も大量生産の工程では、従来型の自動化が主力として使われています。

大量生産から多品種少量へ

従来の自動化は、同じ製品を長期間つくり続けることを前提に、専用の設備を組み上げる方式が中心でした。製品が変われば設備の改造が必要になるため、生産量が少ない工程では投資を回収できませんでした。

現在は、プログラムや治具の切り替えだけで複数の製品に対応できる設備が増えており、多品種少量の現場でも投資を回収できるようになったことが、省人化の対象を大きく広げました。

柵の中から人の隣へ

従来の産業用ロボットは、人との接触事故を防ぐために柵で囲い、人を作業空間から遠ざけるのが原則だったため、人とロボットの作業を細かく分け合うことは難しかったのです。

協働ロボットは、人と同じ作業台で部品の受け渡しなどを行え、人がすべてを担うか、機械がすべてを担うかの二択ではなく、1つの工程の中で人と機械が役割を分け合えるようになった点が大きな違いです。

単体の機械から工場全体へ

以前の自動化は、溶接や塗装といった個別の工程を機械化することが中心でした。現在は、工程間の搬送や検査、生産管理の事務作業まで含めて、工場全体の人の時間を減らす考え方が主流になりつつあります。

その土台になっているのが、設備の稼働状況を集めて見える化するIoTの技術です。詳しくはスマートファクトリー・IoTの技術ページで解説しています。

広告

省人化のメリット

改善活動について打ち合わせる現場の作業者たち

省人化の効果は人数が減ることだけではなく、現場にとって大きい3つのメリットを紹介します。

人が増えなくても生産を続けられる

最大のメリットは、人を確保できなくても生産量を維持・拡大できることで、作業の一部を機械に任せれば、同じ人数でより多くの製品をつくれるようになります。

夜間に設備を無人で動かせるようになれば、日中の人員はそのままに生産時間を延ばすこともでき、採用に左右されにくい生産体制をつくれる点は、経営面でも大きな意味があります。

品質が安定する

機械は同じ動作を同じ精度で繰り返せるため、作業者による品質のばらつきが減り、目視検査を画像検査に置き換えれば、判定基準がそろい、見逃しも減らせます。

作業の条件や結果がデータとして残るため、不良が起きたときの原因も追いやすくなります。人の感覚に頼っていた工程を数値で管理できるようになり、改善のスピードも上がるため、品質の面から見ても、省人化は有効な手段です。

安全で働きやすい職場になる

次のような作業を機械に任せることで、働く人の負担が軽くなります。

  • 重い部品の持ち運び
  • 高温・粉じんの中での作業
  • 単調な繰り返し作業

けがや腰痛のリスクも下げられます。浮いた時間を段取り改善や設備の管理など、判断が必要な仕事に振り向ければ、人がより付加価値の高い仕事に集中できるようになります。職場の魅力が高まり、採用や定着によい影響を与えることも期待できます。

省人化の課題と導入時の注意点

自動化設備の前で導入計画を検討する技術者と現場リーダー

一方で、省人化には特有の難しさもあります。導入してから「思ったほど効果が出ない」とならないよう、次の3点は事前に押さえておきたいところです。

図5:導入前に押さえたい3つの注意点

失敗の多くは、機械そのものより準備の段階で生まれます。

1費用対効果本体だけでなく周辺装置や工事の費用も含めて試算する
2例外への対応段取り替えやトラブル時に人がどう関わるかを決めておく
3人材と安全運用・保全を担う人を育て、リスクアセスメントを行う
「何人分の作業を減らすか」を最初に決め、効果を数字で確かめながら進めることが大切。

初期投資と費用対効果

ロボットや搬送車は、本体だけでなく、次のような周辺の費用もかかります。

  • ハンドや治具
  • 安全装置
  • 据付工事
  • プログラムの作成

本体価格だけで判断すると、想定より大きな投資になりがちです。そのため、削減できる工数と投資額から投資回収期間を試算することが欠かせません。補助金を使う場合も、採択や交付の時期を計画に織り込んでおく必要があります。

段取り替えや例外への対応

機械は決められた作業は得意ですが、部品の向きが毎回違う、材料の寸法がばらつくといった例外には弱い面があります。例外が起きるたびに人が呼ばれるようでは、期待した省人化になりません。

導入前に、部品の供給方法や段取り替えの手順まで含めて工程を見直すことが大切で、自動化しやすい形に工程や製品を整えることが、成功の近道になります。設計の段階から、ロボットがつかみやすい形状や、向きをそろえやすい部品を選ぶといった工夫も効果的です。

運用する人材と安全の確保

導入した設備を使いこなし、止まったときに復旧させるには、ロボットや制御の知識を持つ人材が必要です。導入を外部のSIerに任せきりにすると、現場で手が出せない設備になってしまうことがあります。

社内で運用と保全を担える人を育てることは導入と同じくらい重要で、止まった設備をすぐに復旧できなければ、無人運転の効果も半減してしまいます。

また、協働ロボットであっても使い方によっては危険が生じるため、導入時にはリスクアセスメントを行い、必要な安全対策と作業ルールを決めておくことが前提になります。

省人化のよくある質問

省人化と省力化はどう違いますか?

省力化は作業の負担や手間を軽くすることを指し、省人化はその結果として人を増やさずに生産を続けられる状態をつくることに重きがあります。現場では重なる部分が多く、補助金の名称のように両方の言葉が同じ文脈で使われることも少なくありません。

省人化は中小企業でも取り組めますか?

協働ロボットやAMRが普及し、広い柵のスペースがなくても導入できる選択肢が増えたため、中小企業でも取り組みやすくなっています。中小企業省力化投資補助金のような国の支援策を使えば、初期投資の負担を抑えられる場合もあります。

省人化を進めると人の仕事はなくなりますか?

省人化の狙いは人を減らすことより、限られた人数で生産を続けることにあり、仕事がすべて機械に置き換わるわけではありません。重い物の運搬や単調な作業を機械に任せ、浮いた時間を段取り改善や設備管理など判断が必要な仕事に回す考え方が中心です。

省人化はどの工程から始めるのがよいですか?

まずは何人分の作業を減らすかを決め、搬送や検査、単調な繰り返し作業など効果を数字で測りやすい工程から試すのが進めやすい方法です。部品の向きがそろわないなど例外の多い工程は、先に工程や部品の形を見直してから自動化を考えると失敗を減らせます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 省人化は、働き手の減少と採用難を背景に、人を増やさず生産を続ける手段として注目されている
  • 生産年齢人口は1995年をピークに減り、2024年は7,373万人となった
  • 自動化は大量生産の工程から始まり、協働ロボットやAMRで人の隣・工場全体へ広がった
  • 人手不足への対応、品質の安定、安全で働きやすい職場づくりがメリット
  • 費用対効果の試算、例外への対応、運用人材と安全の確保が導入時の注意点

省人化の考え方や方式の基本は省人化とは?仕組みと基本原理で、現場での使われ方や実際の導入例は省人化の主な用途と導入事例で詳しく解説しています。

ロボットそのものについては産業用ロボットの技術ページ、推進役となる職種については生産技術とはも参考になります。

人手不足への技術的な対策については、人手不足・省人化の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

製造・オペレーションの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

製造・オペレーションを選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次