材料技術とは?仕組みと基本原理を図解でわかりやすく解説

金属・樹脂・セラミックスのサンプルを見比べる技術者

部品が強いか、軽いか、長持ちするかは、何で決まるのか。その答えの多くは、どの材料を選び、その性質をどう引き出すかにあり、それを扱うのが材料技術です。

対象は新しい素材の開発に限らず、材料の評価や選び方、熱処理(熱を加えて硬さなどを変える処理)も含むため、設計者や品質保証(製品の品質を確かめて保証する仕事)の担当者にも関わる分野です。

目次

材料技術とは

さまざまな材料の試験片を観察する若手技術者

材料技術とは、材料の性質を理解し、目的に合った材料を選び、その性質を引き出して製品に生かすための技術の総称です。新しい材料をつくる開発だけでなく、材料の評価、選定、熱処理や加工による性質の調整までが含まれます。

ものづくりで使われる材料は、大きく金属、樹脂(プラスチック)、セラミックス、そしてそれらを組み合わせた複合材料の4つに分けられます。部品の強さや重さ、寿命、コストの多くは、このうちどの材料を選ぶかで大きく左右されます。

材料技術に関わる立場は大きく2つに分かれ、一つは鉄鋼メーカーや化学メーカーのように材料そのものをつくる側、もう一つは部品メーカーや完成品メーカーのように材料を選んで使う側です。

つくる側は新しい材料や品質の安定に、使う側は材料選定や評価、不具合の原因調査に力を入れます。立場は違っても、材料の性質を正しく理解するという土台は共通しています。

材料をつくる側の産業の大きさは、国内の生産量からもわかります。日本鉄鋼連盟の発表によると、2025年の粗鋼生産量は約8,067万トンで、同じ2025年のプラスチック(樹脂)の生産量は約847万トンと集計されています。

セラミックスの中でも、電子部品や半導体製造装置に使われるファインセラミックスは、日本ファインセラミックス協会によると2024年度の総生産額が3.8兆円の見込みです。日本は世界の約40%のシェアを持つとされ、得意分野の一つになっています。

図1:ものづくりで使われる4つの材料

材料は、原子の結びつき方や成り立ちによって大きく4つに分かれます。

金属材料鉄鋼、アルミ、銅など。強くて粘り、加工しやすい
樹脂材料プラスチック・ゴム。軽くて成形しやすく、錆びない
セラミックスアルミナ、窒化ケイ素など。硬く、熱と摩耗に強い
複合材料CFRPなど。異なる材料を組み合わせ長所を引き出す

※ガラスやセメントもセラミックスの一種です。木材や繊維なども材料ですが、ここでは工業材料の代表的な分類を示しています。

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材料技術の仕組み

引張試験機で金属試験片の強度を試験する技術者

材料技術は、「何でできているか(組成)」「内部がどうなっているか(組織)」「どうやってつくったか(プロセス)」の3つの要素と、そこから生まれる特性の関係を扱います。材料の世界では、この関係を理解することが出発点になります。

まず組成は、材料に含まれる元素の種類と割合です。同じ鉄でも炭素がわずかに増えるだけで硬さや粘りが大きく変わり、ステンレスが錆びにくいのも、クロムなどを加えて組成を変えているためです。

次に組織は材料の内部の構造で、金属は小さな結晶の粒が集まってできており、この粒の大きさや並び方によって性質が変わります。同じ組成でも、組織が違えば別の材料と言えるほど性質が変わることがあります。

そして組織を決めるのが、溶かす、固める、圧延する、焼く、熱処理するといったプロセスです。つまり材料技術は、プロセスで組織をつくり込み、狙いの特性を引き出す技術だと言えます。

図2:材料の特性を決める3つの要素

組成・組織・プロセスの組み合わせで、強さや硬さなどの特性が決まります。

CComposition/組成含まれる元素の種類と割合。炭素量やクロム量など
SStructure/組織結晶の粒の大きさや並び方、内部の欠陥の状態
PProcess/プロセス溶解・圧延・焼成・熱処理など、組織をつくる工程
材料の特性は、この3つの要素の掛け合わせで決まる。材料を選ぶときは、材料名だけでなく、どう処理された材料かまで確認することが大切である。

たとえば鉄鋼の焼入れは、高温に加熱した鋼を水や油で急に冷やす熱処理です。組成は同じでも、冷やし方を変えるだけで組織が変わり、刃物のように硬くなります。

樹脂にも同じ考え方が当てはまり、分子の鎖の長さや、鎖がそろって並ぶ結晶部分の割合によって、強さや耐熱性、透明さが変わります。成形時の温度や冷やし方で性質が変わるのも、この内部の構造が変わるためです。

こうしてつくり込んだ特性は、引張試験や硬さ試験、顕微鏡による組織観察などで確かめます。「つくる」「確かめる」を繰り返しながら、狙いの特性に近づけていくのが材料技術の基本的な進め方です。

材料技術の基本原理

電子顕微鏡で材料の微細組織を観察する研究者

材料技術を理解するうえで押さえておきたい原理は、主に次の4つです。いずれも、目に見えない原子や分子の世界の話を、身近な例えに置き換えるとイメージしやすくなります。

原子の結びつき方で性質の大枠が決まる

材料の性質の大枠は、原子どうしがどう結びついているかで決まります。金属は、原子のまわりを自由に動ける電子が「のり」のように全体をつなぎ止めているため、力を受けても原子がずれながら粘り強く変形します。

セラミックスは原子どうしががっちり手を握り合っているため、硬くて熱に強い反面、ずれることができず、限界を超えると一気に割れます。樹脂は長い分子の鎖がからみ合った構造で、軽くて柔軟だが熱に弱いという性質はここから生まれます。

力を受けたときの振る舞い

金属に少しずつ力を加えていくと、はじめはばねのように伸び、力を抜けば元に戻ります。この元に戻る変形を弾性変形と呼び、さらに力を加えると、原子の並びがずれて元に戻らなくなる塑性変形が始まります。

プレス加工や曲げ加工は、この塑性変形を利用して形をつくる方法です。一方、部品として使う場合は塑性変形が始まる手前の範囲で使うのが設計の基本になります。

図3:金属に力を加えたときの変化

弾性変形、塑性変形、破断の3つの段階に分かれます。

弾性変形
01力を加える引っ張ると、力に比例して少しずつ伸びる
02原子の間隔が広がる原子の並びは崩れず、間隔だけが広がる
03力を抜くと戻るばねのように元の長さに戻る
塑性変形
04降伏ある力を超えると、元に戻らない変形が始まる
05原子の並びがずれる結晶の中で原子の列がすべるように動く
06加工硬化変形が進むほど硬くなり、さらに力が必要になる
破断
07くびれ一部が細くなり、そこに変形が集中する
08破断内部にできた小さな空洞がつながり、切れる

※セラミックスはほとんど塑性変形せず、弾性変形のあとすぐに割れます。樹脂は温度や力を加える速さによって振る舞いが大きく変わります。

組み合わせて長所を引き出す

一つの材料ですべての要求を満たせるとは限らないため、異なる材料を組み合わせ、それぞれの長所を引き出すのが複合化の考え方です。

鉄筋コンクリートは、圧縮に強いコンクリートと引張りに強い鉄筋を組み合わせた身近な例です。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)も、細くて強い炭素繊維を樹脂で固め、軽さと強さを両立させています。

温度によって性質が変わる

材料の性質は、使う温度によっても変わります。多くの金属は高温になると柔らかくなり、低温では粘りを失って割れやすくなるものもあります。樹脂は温度の影響がさらに大きく、少し温度が上がるだけで柔らかくなるものもあります。

温度は大きさにも影響し、材料は温度が上がると伸び、下がると縮みます。この伸び縮みの大きさは材料ごとに違うため、異なる材料を組み合わせると、温度変化で内部に力が生まれることがあります。はんだ付けした電子部品の割れなどは、この原理で起こる代表的な不具合です。

材料の種類と特徴

鋼材や樹脂ペレット、セラミックス部品が並ぶ材料倉庫

どの材料にも得意なことと苦手なことがあり、それを知ることが材料選定の第一歩です。

図4:材料ごとの得意なことと苦手なこと

長所と短所は表裏一体です。用途に合わせて使い分けます。

得意なこと
苦手なこと
金属材料
強さと粘りを両立。加工・溶接しやすい
重い。鉄鋼は錆びやすい
樹脂材料
軽い。複雑な形を一度に成形できる
熱に弱い。強さや剛性は金属に劣る
セラミックス
硬い。高温・摩耗・腐食に強い
衝撃で割れやすい。加工が難しい
複合材料
軽くて強い。向きによって強さを設計できる
材料費が高い。リサイクルが難しい

※同じ分類の中でも、材料の種類や処理によって特性は大きく異なります。

金属材料

金属材料は、鉄鋼と、それ以外の非鉄金属に分けられます。鉄鋼は強さ、加工のしやすさ、価格のバランスがよく、自動車の車体から建物、機械部品まで最も多く使われている材料です。鉄鋼の中にも、次のように多くの種類があります。

  • 炭素の量で性質を調整した炭素鋼
  • クロムやモリブデンなどを加えて強さや焼入れのしやすさを高めた合金鋼
  • 錆びにくいステンレス鋼

鉄鋼の種類はJISなどの規格で記号が決められており、図面ではその記号で材料を指定します。鉄鋼以外の非鉄金属では、次のようなものが代表的です。

  • 軽いアルミニウム
  • 電気を通しやすい銅
  • 軽くて錆びにくいチタン

日本アルミニウム協会によると、アルミニウムの比重は2.7で、鉄(7.8)の約3分の1です。この軽さを生かし、自動車や鉄道車両、航空機に使われています。

樹脂材料

樹脂材料は、加熱すると柔らかくなり冷やすと固まる熱可塑性樹脂と、一度固まると加熱しても溶けない熱硬化性樹脂に分けられます。射出成形で大量生産できるのは主に熱可塑性樹脂です。

生産量の多い樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂の順で、容器や包装、配管、自動車部品などに使われます。耐熱性や強さを高めたものはエンジニアリングプラスチックと呼ばれ、金属部品の置き換えに使われています。

図5:主な樹脂の国内生産量(2025年)

汎用的な樹脂が生産量の大半を占めています。

ポリプロピレン(PP)203.7万t
ポリエチレン(PE)199.1万t
塩化ビニル樹脂(PVC)148.1万t
スチレン系樹脂89.7万t
熱硬化性樹脂72.4万t
PET樹脂26.3万t

※出典:塩ビ工業・環境協会「プラスチックの種類別生産量」(日本プラスチック工業連盟、経済産業省 生産動態統計より)。合計は847.2万トン。

セラミックス

セラミックスは、陶磁器やガラス、セメントのような伝統的なものと、原料や製法を精密に管理したファインセラミックスに分けられます。ファインセラミックスには、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素などがあります。

伝統的なセラミックスが天然の粘土やけい石などを主な原料とするのに対し、ファインセラミックスは純度を高めた人工の原料粉末を使います。粉の粒の大きさや焼き方を細かく管理することで、狙った性質を安定して引き出せるのが特徴です。

硬さ、耐熱性、電気を通さない性質などを生かし、主に次のような用途に使われます。

  • 電子部品の基板
  • 切削工具
  • 軸受の転動体
  • 半導体製造装置の部品

弱点の割れやすさを補うため、形状の工夫や、欠陥を減らす製法の改良が続けられてきました。

複合材料

複合材料は、2種類以上の材料を組み合わせたものです。代表的なのは、樹脂を繊維で補強した繊維強化プラスチックで、ガラス繊維を使うGFRPと、炭素繊維を使うCFRPがあります。

樹脂をベースにしたもののほか、金属をベースにした金属基複合材料や、セラミックスどうしを組み合わせたセラミックス基複合材料もあります。いずれも、ベースとなる材料の弱点を、組み合わせる相手で補うという考え方は共通しています。

CFRPは軽くて強く、航空機や自動車、スポーツ用品などに使われています。ただし、繊維の向きによって強さが大きく変わるため、金属とは違う設計の考え方が必要です。

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材料技術を理解するための基本用語

物性データと試験片を見ながら打ち合わせる技術者たち

材料の資料やカタログを読むときによく出てくる用語を整理しておきます。似た言葉でも意味が違うものが多く、「強い」の中身を言葉で区別できるようになると、材料選定の会話がぐっと楽になります。

  • 強度(材料がどれだけの力に耐えられるか。引張強さや降伏強さで表す)
  • 剛性・弾性率(変形のしにくさ。たわみにくさに直結する)
  • 靱性(じんせい。粘り強さ。衝撃を受けても割れにくい性質)
  • 硬さ(表面の傷つきにくさ、へこみにくさ。耐摩耗性の目安になる)
  • 比強度(強さを重さで割ったもの。軽量化の検討で使う)
  • 疲労(小さな力が繰り返しかかることで、いずれ壊れる現象)
  • クリープ(高温で一定の力がかかり続け、少しずつ変形が進む現象)
  • 熱膨張(温度が上がると伸びる性質。異なる材料を組み合わせるときに重要)

このうち、特に混同しやすいのが強度と剛性です。強度は「どこまで力に耐えて壊れないか」、剛性は「どれだけたわみにくいか」を示します。

たとえばアルミニウム合金には、鉄鋼に近い強度を持つものもあります。それでも剛性(弾性率)は鉄鋼よりかなり低いため、同じ形でつくると大きくたわみます。材料を置き換えるときに形状の見直しが必要になるのは、このためです。

硬さと靱性(粘り強さ)も両立が難しい組み合わせで、一般に、硬くするほど粘りは失われ、衝撃で欠けやすくなります。そのため刃物や金型では、表面は硬く、内部は粘り強くなるように熱処理や表面処理で使い分けます。

もう一つ重要なのが疲労です。機械部品の破損の多くは、一度の大きな力ではなく、繰り返しの力による疲労が原因と言われるため、カタログの強度だけで安全かどうかは判断できない点は押さえておきたいところです。

材料技術のよくある質問

材料工学と材料技術は何が違いますか?

一般に材料工学は大学などで学ぶ学問の分野を、材料技術はその知識を製品づくりに生かす技術を表すことが多い言葉です。材料をつくる側でも使う側でも、材料の性質を正しく理解するという土台は共通しています。

材料技術を学ぶには何から始めればよいですか?

まずは金属・樹脂・セラミックス・複合材料の特徴と、強度や剛性などの基本用語を押さえるのが近道です。そのうえで組成・組織・プロセスの関係を学ぶと、材料が選ばれる理由がつかみやすくなります。

強度と硬さは同じ意味ですか?

強度はどれだけの力に耐えて壊れないかを、硬さは表面の傷つきにくさやへこみにくさを表す別の言葉です。一般に硬くするほど粘りが失われ、衝撃で欠けやすくなる点にも注意が必要です。

アルミニウムは鉄よりどれくらい軽いですか?

日本アルミニウム協会によると、アルミニウムの比重は2.7で、鉄の7.8と比べて約3分の1の重さです。ただし剛性は鉄鋼よりかなり低いため、鉄の部品をアルミに置き換えるときは形状の見直しが欠かせません。

まとめ

この記事のまとめ
  • 材料技術は、材料の性質を理解し、選び、性質を引き出して製品に生かす技術
  • 工業材料は、金属・樹脂・セラミックス・複合材料の4つに大きく分かれる
  • 特性は組成・組織・プロセスの3要素の掛け合わせで決まる
  • 原子の結びつき方で性質の大枠が決まり、力を受けると弾性→塑性→破断と進む
  • 強度・剛性・靱性・疲労など、用語の違いを押さえることが材料選定の第一歩

材料技術が今なぜ注目されているのかは材料技術が注目される背景と従来技術との違いで、実際の使われ方は材料技術の主な用途と導入事例で詳しく解説しています。

材料をつくる側の仕事を知るには鉄鋼・非鉄金属業界、化学・樹脂業界、窯業・セラミックス業界の記事が、材料の性質を引き出す加工については表面処理の技術ページも参考になります。材料技術については、材料技術の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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