自己保持回路とは?回路図の書き方と停止b接点、ブザー・ポンプの使い方

ポンプ設備の閉じた操作盤と始動停止ボタンのイメージ

自己保持回路は、リレーや電磁接触器が自分の接点を使って動作状態を保つ回路です。始動ボタンから手を離しても運転を続け、停止ボタンで保持を解除する仕組みは、ポンプの発停や警報で使われます。[1]

押しボタンの状態と、リレーが動作している状態は必ずしも同じではありません。この記事ではランプの回路を出発点に、保持する接点の描き方、停止が効く位置、警報とポンプへの使い方を順に説明します。

目次

自己保持回路とは?

ボタンを押している間だけランプが点く回路には、状態を覚える働きがありません。手を離すと接点が開き、ランプへの電流が途切れるため、ボタンの操作と点灯がそのまま対応します。

ここで使う始動ボタンは、手を離すと元に戻るモーメンタリ形です。a接点は操作していないとき開き、操作すると閉じる接点で、b接点は反対に、通常は閉じて操作すると開きます。

a接点とb接点の動きは、リレーシーケンスを動く図で解説した記事で入力を切り替えながら確かめられます。

図1 直接つないだランプは、手を離すと消える

押しボタンSのa接点とランプLを直列にした例です。保持用のリレーはまだありません。

制御電源・電圧の指定なし源S:a接点離して開L:消灯押すと閉 → 点灯

灰実線:配線 青:押しボタンの接点 薄灰のランプ:消灯。電源記号は概念表示です。

接点は手を離した状態で描いています。端子番号や保護機器を省いた学習用の模式図で、実機の施工図ではありません。

自己保持では、この始動接点を通る経路に加え、リレー自身のa接点を通る別の経路を作ります。始動時にコイルが励磁すると、そのa接点が閉じ、始動ボタンを離した後もコイルへの給電が続きます。[2]

大切なのは、電気を内部に蓄えて運転を続ける仕組みではないことです。保持中も電源からコイルへ電力が供給されており、その経路を開けば通常の非ラッチ形リレーは非励磁に戻ります。

図2では、リレーのコイルをR、同じリレーに属する二つのa接点をR-a1とR-a2とします。R-a1は自己保持用、R-a2はランプ用で、同じ機器記号でも別の接点を使い分けています。

図2 停止接点は、二つの枝の全体と直列に置く

Tは停止b接点、Sは始動a接点です。図はR非励磁・ボタンを離した状態で、ラダー形の記号を使っています。

左右の母線間に制御電源RT:停止b接点S:始動a接点コイルR-a1:保持R-a2L:表示ランプR-a1/R-a2は同じRの別接点

灰実線:配線 青の二本線:a接点 青の斜線付き:b接点。交点の丸印は電気的な接続点です。

Tを開くと上の始動経路と下の保持経路のどちらにも給電できません。R-a1だけを迂回しても、Tを迂回する枝はありません。

回路を書くときは、最初に停止b接点とコイルを直列に置き、その間に始動a接点を入れます。その始動接点だけをまたぐように、同じリレーの補助a接点を並列に追加すると、保持する枝を読み取りやすくなります。

停止b接点までまとめて迂回する枝を描くと、保持接点が閉じた後に停止が効かなくなります。「どこが並列か」だけでなく、「停止が両方の経路を切れるか」を、電源側からコイルまで追うのが要点です。

コイルと接点に同じRを付けるのは、別々の機器を増やす意味ではありません。同じリレーの動作に連動する接点を表しており、必要な接点数や定格を持つ実際の機器との対応は、機器表や仕様書で決まります。

図面では同じリレーの接点が別の段や別のページに描かれることもあります。接点記号だけで判断せず、機器番号をコイルへたどる読み方は、ラダー図の基本的な読み方と共通です。

接点記号は、原則として機器を操作せず、コイルも非励磁の基準状態を表します。運転中の図を読むときは、紙に描かれた隙間をそのまま現在の状態とせず、Rが励磁した結果としてa接点が閉じた状態を重ねて考えます。

図3 「離した」という同じ入力でも、結果が違う

制御電源があり、通常の非ラッチ形リレーと接点が正常な例です。動作が落ち着いた各時点を上から追います。

待機:S開・T閉R非励磁 → R-a1・R-a2開 → ランプ消灯。
始動中:S閉・T閉R励磁 → R-a1・R-a2閉 → ランプ点灯。
保持中:S開・T閉R-a1経由でR励磁を継続 → ランプ点灯。
停止中:T開R非励磁 → R-a1・R-a2開 → ランプ消灯。
待機に戻る:S開・T閉R-a1も開いており、自分では再始動しない。

最初の待機と保持中はSもTも同じ状態です。それまでにRが励磁したかどうかが、保持接点を介して次の状態に影響します。

始動を離した瞬間に消灯するのは、始動接点だけでは保持できないことを示します。一方、停止を押した後に手を離しても消灯のままなのは、すでにR-a1が開き、始動接点も開いたままだからです。

授業や自習で理解を確かめるときは、図3を見ずに説明してみてください。始動ボタンから手を離したときと停止ボタンから手を離したときで、どの接点とコイルの状態が残るかを分けて書きます。

接点の条件を式にすると、停止接点の導通と、始動または直前の保持状態の両方が必要です。次の式は接点の遅れを省いた理想的な状態の関係で、実機のミリ秒単位の応答を計算する式ではありません。

自己保持の論理関係(停止を優先する例)
Q次=C ∧(S ∨ Q前)
C=1、S=0、Q前=1 → Q次=1
C=0 → Q次=0
Q:Rの非励磁0/励磁1、C:停止b接点の開0/閉1、S:始動a接点の開0/閉1。∧は両方成立、∨はどちらか成立を表します。すべて無次元の論理値です。

始動と停止を同時に押すと、図2では停止b接点が開くため、コイルは励磁しません。ただし始動を押し続けたまま停止だけを離せば、始動経路が再び成立してRが励磁するので、押し方の条件も含めて読みます。

また、保持中に制御電源が失われて通常リレーが釈放すると、R-a1も開きます。復電しても始動ボタンが開いたままなら保持は戻りませんが、始動信号が残る回路や別の自動条件がある回路では結果が変わります。

PLCでも自己保持の論理は作れますが、プログラム中の状態を停電後に残すかは機種と設定に依存します。三菱電機のQCPUの例でも停電保持可能なデバイスが区分されており、配線式の通常リレーと同一には扱えません。[3・4]

なお、物理的な停止ボタンのb接点と、PLCプログラムに描く接点命令は同じものではありません。入力端子へどの状態で信号が入り、その信号をプログラムがどう評価するかを介するため、外部配線のb接点を機械的に転記して判断しないようにします。

リレーの接点で状態を残す方法と、PLCがプログラムで制御する方法を分けると、復電後の動きを整理できます。電源供給を継続するUPSは、状態を記憶する回路とは別の役割です。

自己保持回路の使い方

自己保持を使うかは、「入力がなくなった後も、何を残したいか」で考えます。警報なら異常が起きた事実、ポンプなら人が出した運転指令というように、保持する対象と解除条件を対にすると整理できます。

同じ「保持」でも、ランプ表示だけを残す場合と、機械の運転を続ける場合では出力の意味が違います。まず操作・検出入力、保持する状態、動かす出力を書き分け、DI・DOなどの入出力信号との対応を見ます。

制御盤では、運転条件が成立しなければ始動を許可しないインターロックも組み合わされます。保持することと運転を許すことは別の条件なので、インターロック回路を自己保持接点で迂回させない読み分けが必要です。

動作を整理する際は、機器名を先に並べるより、操作や状態ごとの出力を一つずつ決めると対応が明確になります。次の表は本記事の説明例の仕様を比べたもので、同じ自己保持という名前でも解除後の振る舞いが違います。

確認する場面手動発停の例警報の例
最初の入力始動ボタンを押す異常高水位を検出
入力が消えた後運転指令を保持発生した警報を記憶
担当者の操作停止で保持解除確認でブザーを消音
その後に残るもの図2では運転指令なし図4では表示・記録あり

警報のブザー

水位が異常に上がったときだけブザーを鳴らす回路では、水位が戻ると音も消えます。異常が短時間しか続かなかった場合に、担当者が後から気づけるよう、異常の発生を保持する考え方があります。[1]

たとえば、異常高水位の信号で警報状態を保持し、ブザーを鳴らす仕様を考えます。信号が先に正常へ戻っても、確認するまで発生の事実を残すため、入力の現在値と警報の記憶は異なる状態になります。

図4 ブザーの消音と、異常の解消を分ける

高水位警報の説明例です。音・表示・記録をそれぞれ管理する仕様を想定し、共通の実装を指定するものではありません。

タンクの異常高水位検出警報の発生を記憶現在の水位とは別の状態音:確認で消音表示・記録:残す例

青緑:タンクの液面 灰破線:情報の伝達 橙:警報音・表示。実際の電源配線は省略しています。

水位の正常復帰、担当者の確認、警報記憶の解除は別の事象です。新しい異常が起きた際の再鳴動条件も、仕様として決めます。

この場合の「ブザー停止」は、音を止めて警報を確認したことを示す操作です。タンクの水位を下げる操作ではなく、原因が残っているなら警報表示や運転制限も別に残す必要があります。

警報を覚える回路とブザー出力を一つにしてしまうと、消音と同時に発生の事実まで消える設計になり得ます。音を止めた後も何を表示するか、再び異常が起きたときに鳴らすかを、警報仕様の項目として分けます。

読み取る資料は、警報名、検出条件、復帰条件、確認操作、リセット条件を並べた一覧です。「高水位が消えたから解除」「確認を押したから解除」のどちらなのかが違うと、同じ入力でも表示結果が変わります。

さらに、原因が残ったまま確認操作をした場合と、原因が一度消えて再発した場合を分けます。最初の異常に対する確認を、新たな異常まで無条件に消音する許可として扱わないよう、警報ごとの再検出と再鳴動の条件を整理します。

水位そのものを一定範囲に保つ制御は、異常を知らせる警報とは目的が違います。液面の上限と下限でポンプを切り替える考え方は、レベル制御の方式と液位の決め方と合わせると理解しやすくなります。

ポンプの発停

手動のポンプ発停では、運転ボタンを一度押した後、停止指令まで運転要求を保つために自己保持を使います。毎回ボタンを押し続ける必要がなく、短い操作で継続運転を指示できます。

モータの電力は、一般に運転ボタンの小さな接点から直接供給するのではなく、接触器などの機器で開閉します。図5では、接触器MCのコイルを動かす制御側と、主接点がモータの電力を開閉する動力側を分けています。

図5 コイルの保持と、モータへの給電は別の経路

MCは電磁接触器、Mはポンプを回すモータです。主接点と補助接点は同じMCに連動します。

始動S停止T制御側:図2の保持回路MCコイルと補助a接点で保持同じMCの動作に連動動力側:主接点M動力電源MC主接点ポンプと配管

灰実線:動力配線・機械の軸 灰破線:制御・連動関係 青:接点 青緑:液体配管。電力の線と情報の矢印を区別しています。

主接点は非励磁の開状態を代表して1接点だけ描き、相数や保護回路を省いています。MCを保持していることは、実流量の成立を直接示すものではありません。

図2のRを接触器MCへ置き換える場合は、MCの補助a接点を保持側に使います。モータを開閉する主接点と、保持のためにコイル側へ戻す補助接点を、同じ用途の接点として取り違えないのが重要です。[2]

運転ランプが点灯していても、ポンプから必要な流量が出ているとは断定できません。運転指令、接触器の動作、モータの回転、実際の流量は違う情報なので、ランプがどの段階を表示するかを図面で読みます。

たとえば始動中だけ動き、手を離すと停止するなら、保持側が成立していない状況と整合します。しかし原因は補助接点だけとは限らず、保持枝の接続や別の直列条件も関係するため、現象だけで部品不良と決めません。

一方、停止を押しても止まらない場合は、停止接点を迂回する経路や別の運転指令などが考えられます。ここでの説明は図面の論理の読み方であり、運転中の端子短絡や保護接点の解除による確認手順ではありません。

現場と中央の両方から指令を出せる設備では、どちらの運転指令が選ばれているかも関係します。現場操作盤の操作選択と自己保持を分けて読むと、停止後に別の指令が成立する条件を追えます。

三菱電機の入門教材には、低水位で始動して補助接点で保持し、高水位で解除する給水例があります。中間水位では、給水中なら運転を続け、満水から減ってきた途中なら停止を続けるので、現在の水位だけでは動作が決まりません。[2]

この自動給水例は、低水位に戻ると再び始動する仕様です。手動押しボタンの例で「停止後は始動を押すまで動かない」と説明できても、同じ結論を自動水位運転へそのまま広げることはできません。

水位による自動運転を止めたい場合も、運転要求の記憶を一度消すことと、自動運転の許可を外すことでは意味が違います。低水位の入力が残っていると再び要求が成立する構成もあるため、停止指令がどの条件を変える仕様かを読み取ります。

制御電源の電圧や供給元も、保持が続く範囲を決める条件になります。交流から直流を作るパワーサプライと、通常リレー・接触器のコイル定格を対応させる話は、保持の論理とは別に仕様書で扱います。

電源に接続していない透明ケースのリレーとソケットのイメージ
リレー部品のイメージ。接点構成やコイル定格は機種により異なります(AI生成画像)。

よくある質問

自己保持回路とラッチングリレーは同じですか?

同じではありません。ここで説明した自己保持は、通常リレーの補助接点を使ってコイルへの給電を続ける回路です。ラッチングリレーは機器自身が状態を保持する方式なので、励磁・復帰の条件は製品の仕様に従います。

停止ボタンにはなぜb接点を使うのですか?

通常時はコイルまでの経路をつなぎ、押したときに開いて保持を切るためです。この例では直列経路の断線でも保持は切れますが、それだけで接点溶着など全故障に対応する安全回路が成立するわけではありません。

自己保持回路は停電すると必ず解除されますか?

通常の非ラッチ形リレーが電源喪失で釈放すれば、自己保持用のa接点も開きます。復電時の再始動は始動入力や自動条件により変わり、PLCの停電保持設定や機器自身のラッチ動作は別に判断します。

自己保持とインターロックは何が違いますか?

自己保持は始動入力がなくなった後も状態を保つ働きで、インターロックは許可条件によって運転を制限する働きです。保持が成立していても停止させるべき条件を、保持接点が迂回しない構成として読みます。

ブザー停止を押せば警報は解除されたことになりますか?

音を止める操作と、異常原因の解消や警報記憶の解除は別です。消音後の表示、原因復帰後のリセット、新しい異常時の再鳴動は警報仕様ごとに決まり、無音になったことだけで正常復帰とは判断できません。

まとめ

自己保持回路は、自分の補助a接点で始動接点を迂回し、コイルへの給電を続ける回路です。停止b接点を始動・保持の並列全体と直列に置くことで、どちらの経路を使っていても保持を解除できます。

警報では音と発生記憶、ポンプでは運転指令と実際の動作を分けると、保持の目的が明確になります。始動から手を離したとき、停止したとき、電源が戻ったときの三つの条件を、機器番号と経路に沿って読み取りましょう。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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