風解とは?潮解との違いと起きる物質の例|水和物の保管・結晶水の測り方

パレットに積まれたフレコンバッグと紙袋の原料が並ぶ倉庫と除湿機

風解(ふうかい)は、結晶水をもつ物質(水和物)の結晶が乾いた空気の中で結晶水を失い、白く粉をふいたり崩れたりする現象です。反対に、水酸化ナトリウムのように空気中の水蒸気を吸い込み、自分が溶けて液になる現象を潮解(ちょうかい)といい、水の出入りの向きが逆です。

どちらが起きるかは、物質の側が保とうとする水蒸気の圧力と、まわりの空気に含まれる水蒸気の量との釣り合い、つまり湿度で決まります。工場や倉庫では、炭酸ナトリウムの結晶が軽くなって配合量がずれたり、袋の中で固形の苛性ソーダが湿って固まったりと、品質と安全の両方に関わる現象です。

この記事では、風解の定義と起きるしくみ、潮解との違い、代表的な物質の例を順に整理します。後半では、受け入れから秤量までの原料の管理、医薬品と肥料の湿度管理、熱重量分析やカールフィッシャー法による結晶水の測り方を扱います。

目次

風解とは:水和物が結晶水を失って崩れる現象

塩のなかには、決まった数の水分子を結晶の中に組み込んで固まるものがあります。こうした物質を水和物、組み込まれた水を結晶水(水和水)と呼び、炭酸ナトリウム十水和物ならNa2CO3・10H2Oのように、化学式の後ろに「・nH2O」を付けて表します。

結晶水は、粒の表面にぬれて付いているだけの付着水とは違い、結晶の骨組みの一部として決まった位置に並んでいる水です。焼くと結晶水が抜け、水を加えると元に戻るセッコウと焼きセッコウも、この結晶水の出入りを利用した材料です。

透明な水和物の結晶を乾いた空気中に置くと、表面から結晶水が少しずつ抜けていきます。水を失った部分は元の結晶の形を保てずに細かい粒になるため、つやのあった結晶が白く曇り、やがて粉になっていく変化を風解と呼びます。

図1:風解と潮解は水の向きが逆

風解は結晶の中の水が空気中へ出ていき、潮解は空気中の水が固体に入ってきます。見た目も「粉になる」と「液になる」で反対です。

水和物の結晶(例:洗濯ソーダ)よく溶ける固体(例:水酸化ナトリウム)H₂OH₂OH₂OH₂OH₂OH₂O風解潮解結晶水が出ていき、粉になる空気中の水を吸い、溶けて液になる

※粉や液の形は見え方の模式です。どちらが起きるかは、次の章で説明する湿度との釣り合いで決まります。

図の右側の潮解は、同じ「空気との水のやり取り」でも向きが反対です。風解する物質は結晶水を手放して乾いていき、潮解する物質は空気中から水を集めて溶液になるので、保管で気をつける方向も「乾かしすぎない」と「湿らせない」で逆になります。

風解のしくみ:結晶水が出ていく条件

風解は、結晶の中の水分子が空気中へ移っていく現象です。どの水和物でも起きるわけではなく、移っていくかどうかは、結晶の中で水がどれだけしっかり捕まっているかと、まわりの空気がどれだけ乾いているかの2つで決まります。

水和水の結晶への取り込み

水和物の結晶は、水溶液を濃くしたり冷やしたりして固体を析出させるときにできます。共有結合の結晶や分子結晶とは違い、陽イオンと陰イオンが静電気の力で規則正しく並ぶイオン結晶で、その中に水分子もイオンと同じように決まった場所を占めて取り込まれます。

水分子は、酸素の側がわずかにマイナス、水素の側がわずかにプラスに偏った極性分子です。そのため酸素の側は陽イオンに引き寄せられて周りを取り囲み、水素の側は陰イオンと水素結合でつながり、水はイオンどうしをつなぐ部材として結晶の骨組みに組み込まれます。

図2:結晶水のつき方

水分子は酸素の側で陽イオンに寄り添い、水素の側で陰イオンとつながって、結晶の骨組みの一部になります。

+−OOOO陽イオン(Na⁺など)陰イオン(CO₃²⁻など)点線=水素結合結晶水の数は物質ごとに一定炭酸ナトリウム 10個/硫酸銅(II) 5個カリミョウバン 12個/セッコウ 2個

※大きな円は陽イオンと陰イオン、白い円は水分子の酸素、小さな円は水素を表した模式図です。実際の結晶では、1つの陽イオンを6個前後の水分子が立体的に囲むことが多くあります。

教科書の模式図でよく見る「大きさの違うイオンのすき間を水が埋める」という説明は、この組み込まれ方を単純化したものです。何個の水を抱えるかは物質ごとに決まっていて、図のとおり炭酸ナトリウムなら10個、硫酸銅(II)なら5個と、化学式の「・nH2O」のnがその数を表します。

水分子が空気中へ出ていく条件

水和物は、まわりにある程度の水蒸気があるときにだけ、そのままの形で安定していられます。結晶が水を放して水の少ない水和物に変わる反応は、空気中の水蒸気との平衡として次のように書けます。

炭酸ナトリウム十水和物の風解(水蒸気との平衡)
Na2CO3・10H2O(s) ⇄ Na2CO3・H2O(s) + 9H2O(g)
風解が進む条件
空気中の水蒸気分圧 < 水和物の解離圧
(s)は固体、(g)は気体です。右へ進むのが風解で、平衡に釣り合う水蒸気の圧力をその水和物の解離圧と呼びます。空気中の水蒸気分圧が解離圧より高ければ、反応は左へ進んで水和物のまま保たれます。

空気中の水蒸気分圧が解離圧より低いと、平衡を取り戻そうとして結晶から水が出ていき、反応は右へ進みます。解離圧が高い水和物ほど、ふつうの部屋の湿度でも風解しやすいことになり、炭酸ナトリウム十水和物や芒硝(硫酸ナトリウム十水和物)がその代表です。

空気中の水蒸気の量は、ふだん相対湿度で表します。相対湿度は、その温度で空気が含める最大の水蒸気圧(飽和水蒸気圧)に対する実際の水蒸気分圧の割合なので、湿度の数字はそのまま解離圧と比べられる圧力に直せます。

相対湿度と水蒸気分圧の関係
相対湿度(%) = pps × 100
(例)25℃・相対湿度50%の部屋
p = 3.17 kPa × 0.50 = 約1.58 kPa
p:空気中の水蒸気分圧[kPa] ps:その温度の飽和水蒸気圧[kPa](25℃で約3.17 kPa、NIST)。同じ相対湿度でも温度が上がれば水蒸気分圧は大きくなります。

芒硝は、25℃前後ではおよそ80%より乾いた空気に置くと無水物に変わるとされ、相対湿度50%の部屋では風解が進みます。反対に、水を強く抱え込む水和物は解離圧が低いので、ふつうの湿度ではほとんど変化せず、風解しやすさは「水和物かどうか」ではなく解離圧の大きさで決まります。

風解と潮解の違い:水の向きと決め手になる湿度

潮解は、水によく溶ける固体が空気中の水蒸気を吸い、その水に自分が溶けて飽和溶液になる現象です。名前は風解と似ていますが、水が結晶から出ていく風解に対し、潮解は空気から水が入ってくる変化で、起きる物質も決め手になる値も違います。

項目風解潮解
水の向き結晶から空気へ出ていく空気から固体へ入ってくる
起きる物質解離圧の高い水和物水によく溶け、飽和溶液の水蒸気圧が低い固体
起きる条件空気の水蒸気分圧が解離圧より低い(乾いている)空気の湿度が潮解湿度より高い(湿っている)
見た目の変化透明な結晶が白く曇り、粉になる表面がぬれ、溶けて液になる
代表例炭酸ナトリウム十水和物、芒硝、硫酸銅(II)五水和物、ミョウバン水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム
保管の要点密閉し、乾かしすぎない密閉し、湿気を入れない
風解と潮解の比較。条件の値は温度で変わります

潮解を理解する手がかりは、飽和溶液の水蒸気圧です。塩が溶けた水は純水より蒸発しにくいため、飽和溶液の上の水蒸気圧は純水より低く、空気中の水蒸気分圧がこれを上回ると、固体の表面にできた溶液の膜へ水が凝縮し続け、固体は溶け続けます。

この境目の湿度を潮解湿度(臨界相対湿度)と呼び、25℃の水酸化ナトリウムは約8%と低いので、ほとんどどんな部屋でも潮解します。米国標準局(現在のNIST)がまとめた飽和溶液の湿度の値では、同じ25℃で塩化マグネシウムが約33%、塩化ナトリウムが約75%です。

図3:湿度のものさしで見る潮解と風解

色の帯は、その変化が起きる湿度の範囲です。塗りの帯は潮解(左端より湿った空気で起きる)、点線の帯は芒硝の風解(80%より乾いた空気で起きる)を表します。

水酸化ナトリウム(約8%より湿ると潮解)塩化カルシウム六水和物(約28%より湿ると潮解)塩化マグネシウム(約33%より湿ると潮解)塩化ナトリウム(約75%より湿ると潮解)芒硝(約80%より乾くと風解)020406080100%

※潮解湿度はGreenspan(米国標準局、1977年)の式による25℃の値、塩化カルシウム六水和物は25℃で約28%(20℃では約31〜33%)、芒硝はSaltwiki(Gmelinの値)によります。潮解湿度は「溶けた液の側」の値、芒硝の帯は「水和物が水を手放す側」の目安で、種類の違うしきい値です。どちらも温度で変わります。

溶けやすさも潮解しやすさの目安になります。水酸化ナトリウムは1 gが水約0.9 mLに溶けるほどで、炭酸ナトリウム(25℃で水100 gに30.7 g)よりはるかによく溶けます。そのぶん飽和溶液が濃くなって水蒸気圧が大きく下がるので、乾いた日でも空気から水を集めてしまいます。

水酸化ナトリウムが風解しないのは、ふだん流通する固形品が結晶水をもたない無水物だからです。一方、塩化カルシウムは1つの物質で両方の向きを見せる例で、無水物は水を吸って六水和物になり、25℃で約28%を超える湿度では六水和物も溶けて液になっていきます。

風解する物質の例

ここからは、風解する代表的な物質を、何がどう変わるかに絞って見ていきます。いずれも工業原料や試薬として流通している物質なので、保管中の変化がそのまま原料の品質に響きます。

炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)

炭酸ナトリウム十水和物は洗濯ソーダとも呼ばれる無色透明の結晶で、乾いた空気中に置くと結晶水の大半を失い、白い粉末の一水和物になります。水を含まない無水物はソーダ灰と呼ばれ、ソルベー法などで工業的につくられて、ガラスや洗剤の原料になります。

十水和物が一水和物になる
Na2CO3・10H2O → Na2CO3・H2O + 9H2O
質量の変化(式量 十水和物 286.14、一水和物 124.00)
124.00286.14 = 0.433 → 元の約43%の重さになる
検算:Naは2=2、Cは1=1、Oは13=4+9、Hは20=2+18で釣り合います。十水和物は約32℃で自分の結晶水に溶けるので、夏場の倉庫では風解とは別に、溶けて固まる変化にも注意します。

10個あった水のうち9個が抜けるので、風解しきると重さは元の約43%まで減ります。同じ「炭酸ナトリウム」でも、十水和物・一水和物・無水物では1 kgに含まれる炭酸ナトリウムの量が大きく違うため、工場ではどの形の原料かを確かめてから使います。

硫酸銅(II)五水和物(CuSO4・5H2O)

硫酸銅(II)五水和物は、鮮やかな青色の結晶です。乾いた空気中ではゆっくり結晶水を失って表面が白っぽくなりますが、室温で起きるのは一部の水が抜ける変化で、真っ白な無水物(CuSO4)にするには加熱が必要です。

加熱すると、結晶水は五水和物→三水和物→一水和物→無水物と、2個・2個・1個の3段階で抜けていきます。最後の1個はほかの4個より高い温度まで残るので、白い無水物にするには、ふつうの乾燥器より高い温度でしっかり加熱します。

加熱して結晶水をすべて追い出す(青→白)
CuSO4・5H2O → CuSO4 + 5H2O
無水物に水を加えると五水和物に戻る(白→青)
CuSO4 + 5H2O → CuSO4・5H2O
上の式は5→3→1→0水和物の3段階をまとめて書いたものです。青い色は、銅(II)イオンに水分子が結び付いた状態に由来し、水を失うと色も消えます。

白い無水物に水を垂らすと、再び青い五水和物に戻ります。この色の変化は、水があるかどうかを確かめる簡単な目印として実験で使われ、熱を出しながら水を取り込むようすも観察できます。

工業では、硫酸銅は銅めっきや銅の電解精錬の電解液に使われ、厚生労働省のモデルSDSは農薬・顔料原料・電池電解液原料なども用途に挙げています。結晶のまま保管するときは、SDSのとおり密閉し、乾燥した室温の場所に置きます。

ミョウバン(AlK(SO4)2・12H2O)

ミョウバン(カリミョウバン)は、正式には硫酸カリウムアルミニウム十二水和物という複塩で、12個の結晶水をもちます。家庭の実験で育てた透明な結晶も、乾いた空気に長く置くと表面から結晶水が抜け、白く濁ってきます。

特に、強い乾燥剤といっしょに密閉すると容器の中の湿度が下がりすぎて風解が進みます。乾燥した空気に長く触れさせるほど結晶水は抜けやすくなるので、きれいな結晶を残したいなら乾燥剤は入れず、容器を密閉するのが正解です。

密閉した容器では、結晶から少し水が出た時点で中の水蒸気が解離圧に達し、それ以上は抜けなくなります。浄水場の凝集剤に使われる硫酸アルミニウムなど、ミョウバンの仲間の性質と用途は別の記事で詳しく扱っています。

実際の工場では:受入・保管・秤量で何を管理するか

試薬瓶ならふたを閉めれば済む話も、トン単位で原料を使う工場では、湿度による重さの変化がそのまま配合のずれや不良になります。風解する水和物と潮解する固体では、受け入れてから仕込むまでの各段階で見る点が違うので、流れに沿って整理します。

図4:水和物・潮解性の原料を受け入れてから仕込むまで

受け入れで「どの形か」を確かめ、保管で湿度と開封の履歴を残し、秤量では純分で換算します。外観が変わったら使う前に測り直します。

受け入れ
01形と純分を確かめる試験成績書で、無水物か何水和物か、純分と水分の値を確認する
02外観を見て記録する袋の破れ、固結、粉化、湿りがないかを見て、ロット番号と一緒に残す
03先入れ先出しで並べる古いロットから使えるように置き場を決め、長く置きっぱなしにしない
保管
04密閉して湿度を記録風解する物は乾かしすぎず、潮解する物は湿気を入れない。温湿度を記録する
05開封日を書き、閉じ直す使いかけの袋は口を閉じ直し、開封からの日数で管理する
06変化を見たら保留粉化・固結・液化を見つけたら使用を止め、開封履歴と保管湿度をたどる
秤量・仕込み
07測り直す保留したロットや開封後に時間のたったロットは、水分や純分を分析する
08純分で換算して量る配合表の量を、そのロットの純分で割り戻して秤量する
09手早く量って閉じる潮解する固体は量る時間を短くし、計量後すぐに容器を閉じる

※管理の例をまとめたものです。保管条件や再分析の基準は、各原料のSDSと製品規格、社内の基準に従います。

水和物の原料は「同じ1 kg」でも中身が違う

水和物の原料で最初に押さえるのは、量を「純分」で数えることです。炭酸ナトリウム十水和物1 kgに含まれる炭酸ナトリウムは約370 gで、一水和物なら約855 g、無水物なら1,000 gと、形によって3倍近く違います。

十水和物の中の炭酸ナトリウムの割合
Na2CO3 105.99Na2CO3・10H2O 286.14 = 0.3704(37.04%)
炭酸ナトリウム10.0 kg分を十水和物で量るとき
10.0 kg ÷ 0.3704 = 27.0 kg
量った27.0 kgの中身が、すべて一水和物まで風解していたら
27.0 kg × 105.99124.00 = 27.0 × 0.8548 = 23.1 kg(予定の約2.3倍)
式量はNa 22.990、C 12.011、O 15.999、H 1.008から求めました。下の例は「袋の中身がすべて一水和物になった」極端な場合で、実際には表面だけが粉化した混合物になりやすいため、そのロットの純分は分析で確かめます。

配合表が十水和物を前提にしているのに中身が風解していると、同じ重さを量っても炭酸ナトリウムを入れすぎることになります。換算に使う数字は、受け入れ時の試験成績書の値と、開封後に時間がたったロットや外観の変わったロットの再分析の値で確かめます。

記録としては、ロット番号・開封日・保管場所の温湿度・口を閉じ直したかを残しておくと、異常が出たときに原因をたどれます。受け入れ検査と記録の流れは、品質保証・品質管理の仕事の基本でもあります。

潮解する水酸化ナトリウム・塩化カルシウムの保管と使い道

固形の水酸化ナトリウム(フレークや粒)は、空気中の水だけでなく二酸化炭素も急速に吸います。厚生労働省のモデルSDSは「容器を密閉して冷乾所にて保存」としており、開封したまま置くと表面が溶けて固まるうえ、炭酸ナトリウムに変わって純度も下がります。

空気中の二酸化炭素を吸って炭酸ナトリウムに変わる
2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O
検算:Naは2=2、Oは2+2=3+1、Hは2=2、Cは1=1で釣り合います。潮解で表面にできた濃い水溶液が、二酸化炭素を吸う場になります。

こうした扱いにくさもあり、工場で使う水酸化ナトリウムは、濃度50%前後の液体(液体苛性ソーダ)で受け入れるのが主流です。固形品を使う場面では、計量を手早く済ませ、袋や缶の口をすぐに閉じ直します。

塩化カルシウムは、潮解しやすさをそのまま役立てている物質です。モデルSDSは用途に氷結防止剤や粉じん防止剤を挙げており、道路にまくと雪や空気の水を吸って溶け、凍りにくい濃い塩水になって路面の凍結を防ぎます。

乾燥剤や押し入れ用の除湿剤では、無水物が水を吸って六水和物になり、さらに溶けて容器の底に液がたまります。乾燥剤の選び方で扱うように、塩化カルシウムはアンモニアと結び付くので、乾かす相手を選んで使います。

医薬品は「風解・潮解を防ぐ容器」が定められている

医薬品の世界では、風解と潮解は保存容器の定義にまで登場します。第十八改正日本薬局方の通則は、異物が入らず、中身の損失や風解、潮解又は蒸発を防ぐことができる容器を「気密容器」と定めています。

通則にはこのほか、異物の混入と損失を防ぐ密閉容器、気体も通さない密封容器があり、原薬や製剤の性質に応じて使い分けます。原薬にも水和物の形でつくられるものがあり、結晶水が抜けたり増えたりすると含量の計算が変わるため、湿度と容器の管理が品質管理の対象になります。

肥料・粉体は「臨界相対湿度」で倉庫を考える

水に溶けやすい粒や粉を大量に扱う肥料の分野では、潮解湿度を臨界相対湿度(CRH)と呼び、倉庫の湿度を決める基準にしています。国際肥料協会の技術会議の報告によると、30℃のCRHは硝酸アンモニウムが59.5%、尿素が72.5%で、これより湿った空気に触れると吸湿が始まります。

吸湿した粒は表面が溶け、乾くときに粒どうしがつながって固まる固結(ケーキング)を起こします。溶けやすい成分を混ぜるとCRHは単独のときより下がるので、配合肥料や粉末の原料では、成分の組み合わせごとに保管できる湿度が変わることを前提に保管条件を決めます。

尿素は肥料のほか、発電所の脱硝に使う尿素水の原料にもなります。粒の尿素を受け入れて溶かす現場でも、袋のまま湿気の多い場所に置かないことが、固まった塊を砕く手間を減らす第一歩です。

結晶水を測る:熱重量分析とカールフィッシャー水分計

デシケーターの中に置いた白い結晶・粉末と青い硫酸銅の結晶

原料が風解していないかを確かめる方法は、知りたいことで2つに分かれます。袋の中が粉化・固結していないかを見るのは外観の確認で、結晶水が何個残っているか、純分が何%かを数字で知るには分析が必要です。

分析室では、純分そのものは滴定やクロマトグラフィーで、結晶水や水分は次の表の方法でと、測る量ごとに方法を分けて組み合わせます。水分の測り方には、重さの減り方を見る方法と、水だけを選んで測る方法があります。

方法何を測るか分かること気をつける点
熱重量分析(TG)加熱しながら重さの変化を連続で記録結晶水が何段階で、どの温度域で、何個分抜けるか水以外の揮発分や分解による減量も、同じ「減量」として出る
カールフィッシャー法水とヨウ素・二酸化硫黄の反応で水の量を測る水そのものの量(付着水と結晶水の合計)溶けない試料や反応を妨げる試料は、加熱して水だけを運ぶ水分気化装置を使う
乾燥減量決めた温度・時間で乾かす前後の重さの差その条件で抜ける揮発分の合計条件によっては結晶水が抜けきらず、水以外の成分も減る
結晶水・水分の測り方の使い分け。カールフィッシャー法は第十八改正日本薬局方 2.48 水分測定法による

熱重量分析(TG):水が抜ける段階を重さで追う

熱重量分析は、試料を一定の速さで加熱しながら、天びんで重さの変化を記録する方法です。結晶水は決まった温度域でまとまって抜けるので、重さが階段状に減り、段の高さから抜けた水の数が分かります。

硫酸銅(II)五水和物の結晶水の割合(式量 CuSO4・5H2O 249.68、H2O 18.015)
5 × 18.015249.68 = 36.08%
段ごとの減り方(残る重さ)
2H2O:14.43%減 → 85.57%(三水和物)
2H2O:14.43%減 → 71.14%(一水和物)
1H2O:7.22%減 → 63.92%(無水物)
式量はCu 63.546、S 32.06、O 15.999、H 1.008から求めました。無水物のCuSO4は159.60です。

図5:硫酸銅(II)五水和物のTG曲線(模式図)

温度を上げると重さが3段の階段状に減り、段の高さが抜けた水の数(2個・2個・1個)に対応します。

100%80%60%五水和物 100%三水和物 85.6%一水和物 71.1%無水物 63.9%−2H₂O−2H₂O−H₂O温度が上がる →重さ(元の五水和物を100%)

※質量は理論値から描いた模式図です。各段が現れる温度は昇温の速さや試料の量、雰囲気で変わるため目盛りを省きました。最後の1個の水は、ほかの4個より高い温度まで残ります。

熱分析装置メーカーのメトラー・トレドの測定例でも、硫酸銅(II)五水和物は最初の3段で合わせて35.58%減り、計算の約36.1%に近い値でした。理論値とのずれが大きければ、すでに風解して結晶水が減っているか、付着水を含んでいると読めるので、原料の状態の確認に使えます。

カールフィッシャー法:水だけを選んで測る

カールフィッシャー法は、メタノールなどのアルコールと有機塩基の中で、水がヨウ素・二酸化硫黄と決まった割合で反応することを利用する測り方です。日本薬局方の一般試験法(2.48 水分測定法)にも定められ、水以外の揮発分を拾わないので、医薬品や化学品の水分規格で広く使われます。

カールフィッシャー反応(日本薬局方 2.48 に示された式)
I2 + SO2 + 3C5H5N + CH3OH + H2O
→ 2(C5H5NH)I + (C5H5NH)OSO2OCH3
C5H5Nはピリジン(有機塩基)、CH3OHはメタノールです。水1 molにヨウ素1 molが使われるので、消費したヨウ素の量から水の量が決まります。検算:Cは16=16、Hは21=21、Nは3=3、Oは4=4、Sは1=1、Iは2=2で釣り合います。

ヨウ素を含む試液を滴下して消費量から水を求める容量滴定法と、電気分解でヨウ素を発生させて電気量から求める電量滴定法があり、電量滴定法はごく少ない水分の測定に向きます。溶媒に溶けない固体や反応を妨げる試料は、水分気化装置で加熱して出てきた水だけを窒素で滴定槽に運びます。

装置が正しく測れているかの確認にも、安定な水和物が使われます。日本薬局方は安定な水和物の水分を理論水分量として評価できるとしており、市販の標準物質では酒石酸ナトリウム二水和物(理論水分15.66%)が代表的です。

酒石酸ナトリウム二水和物の理論水分(式量 C4H4Na2O6・2H2O 230.08)
2 × 18.015230.08 = 15.66%
風解も潮解もしにくい水和物なので、決まった量の水を含む標準として使えます。実際の校正には、ロットごとの証明書の値を使います。

風解・潮解のよくある質問

風解と潮解は逆の現象ですか?

水の向きで見ると逆です。風解は結晶水が空気中へ出ていき、潮解は空気中の水が固体に入って溶液になります。ただし1つの物質の表と裏ではなく、風解は水和物に、潮解は水によく溶ける固体に起きる別々の現象です。

風解した原料はそのまま使えますか?

結晶水が減った分だけ、同じ重さに含まれる純分が増えているため、配合表どおりの重さで使うと入れすぎになります。純分や水分を測り直して換算するか、規格を外れていれば使用を保留するのが基本で、最終的な判断は製品規格と社内の基準に従います。

風解した結晶は元に戻りますか?

湿った空気に置いたり水を加えたりすると、水和物に戻る物質は多く、硫酸銅(II)の無水物も水で青い五水和物に戻ります。ただし一度粉になった結晶が元の大きな透明な形に戻るわけではなく、粒の大きさや流れやすさは変わったままです。

コンクリートの白華(エフロレッセンス)は風解ですか?

英語ではどちらもefflorescenceですが、別の現象です。白華は、コンクリートやモルタルに含まれる水に溶ける塩類が水に溶けて表面へしみ出し、水が蒸発したあとに白い結晶として残るものです(米国れんが協会)。結晶水が抜けて崩れる風解とは仕組みが違います。

潮解と吸湿はどう違いますか?

吸湿は、物質が空気中の水を取り込むこと全般をいい、シリカゲルのように固体のまま表面に水を吸着する場合も含みます。潮解は吸湿のうち、取り込んだ水に物質自身が溶けて液になるところまで進むものをいいます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 風解は、水和物の結晶が乾いた空気中で結晶水を失い、白く粉になる現象。潮解は、よく溶ける固体が空気中の水を吸って溶ける現象で、水の向きが逆
  • 結晶水は陽イオンと陰イオンをつなぐ骨組みの一部。空気中の水蒸気分圧が水和物の解離圧より低いと風解が進む
  • 潮解は飽和溶液の水蒸気圧で決まり、25℃の潮解湿度は水酸化ナトリウム約8%、塩化カルシウム六水和物約28%、塩化ナトリウム約75%
  • 炭酸ナトリウム十水和物は一水和物になって重さが約43%に、硫酸銅(II)五水和物は加熱で3段階に水を失い白い無水物に、ミョウバンは乾燥剤と密閉すると白く濁る
  • 工場では原料を純分で数え、開封日・保管湿度を記録し、外観が変わったロットは測り直す。医薬品は風解・潮解を防ぐ気密容器、肥料は臨界相対湿度で管理する
  • 結晶水は熱重量分析で段階ごとに、カールフィッシャー法で水だけを選んで測る

風解と潮解は、湿度という身近な条件が、結晶の重さや形を静かに変えてしまう現象です。原料が「何水和物で、何%の純分か」を意識することが、教科書の知識を工場の品質管理に生かす近道になります。

潮解性の代表である水酸化ナトリウムをつくるイオン交換膜法や、水溶液から固体を取り出す金属イオンの沈殿の解説とあわせて読むと、塩が溶けたり固まったりする化学を工場の目線で整理しやすくなります。

出典

出典・参考資料(13件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

品質保証・品質管理・化学・樹脂・ゴムの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品

週刊MONOSCOPEの見本(品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

品質保証・品質管理を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次