メカニカルシールとグランドパッキンの違いは?漏れ・保全と方式変更

メカニカルシール組立品のイメージ画像

メカニカルシールとグランドパッキンは、ポンプの回転軸が本体を貫く部分の漏れを抑える軸封装置です。メカニカルシールはリングの端面、グランドパッキンは軸の外周で密封します。

運転上の大きな違いは、グランドパッキンでは冷却と潤滑のために液を漏らして使う点です。選定では初期価格だけでなく、液の危険性、排水、点検の手間、補助配管まで比べます。

目次

メカニカルシールとグランドパッキンの違いは?

どちらも、羽根車を回す主軸の貫通部に取り付けます。配管のフランジに挟む静止したガスケットと違い、軸が回転している間も漏れを抑え、摩擦熱の処理も必要です。

図1:軸封は羽根車と軸受の間にある

本体から軸が出る境目を密封し、軸受側への液の流出を抑えます。

液側・羽根車軸封軸受軸はモーターへ

位置関係を縦向きに示す概念図です。実機の配置・寸法・シール形式は機種ごとに異なります。

観点メカニカルシールグランドパッキン
密封する場所軸に垂直なリング端面軸・スリーブの外周
運転中の漏れ少量に抑える設計潤滑・冷却に必要な漏れを管理
日常調整通常はパッキンのような増締めなし漏れと温度を見て締付け調整
費用の傾向部品・補助設備の初期費用が増えやすい構造は簡素、排水や調整の負担を含めて比較
選定条件液性・圧力・温度・補助系統漏液許容・周速・材質・封水

本体の吐出圧力だけでは、軸封が受ける条件は決まりません。シール室の圧力、液温、起動停止、軸径と回転数もそろえ、ポンプとシールのメーカーへ同じ条件を渡します。

回転数が変わる設備では、軸表面の周速も変化します。ポンプの回転数と軸径の組合せで摩擦条件を整理し、同じ口径という理由だけで軸封を選ばないようにします。

例えば軸径30mm、回転数1,500min⁻¹なら、軸外周の速さは約2.36m/sです。同じ軸径で3,000min⁻¹にすると約4.71m/sとなり、パッキンと軸の接触速度は2倍になります。

パッキン接触部の周速を求める例
v = πdn60,000
= π × 30 × 1,50060,000 = 約2.36[m/s]
d:接触部の直径[mm] n:回転数[min⁻¹] v:軸外周の周速[m/s]。60は秒への、1,000はmへの換算係数。軸スリーブ付きはその外径を使います。

この周速は製品の使用範囲と照合するための値で、寿命や発熱量そのものではありません。メカニカルシールの端面速度を調べるときは、軸径ではなくメーカーが指定するしゅう動径を用います。

メカニカルシールとは

荏原製作所の公式動画「渦巻ポンプの基礎知識」では、軸封とポンプ全体の位置関係を確認できます。図1と比べ、羽根車から軸受へ伸びる軸のどこを密封するかに注目すると構造を追いやすくなります。

メカニカルシールは、回転環と固定環の平滑な端面を近づけて密封する装置です。軸とともに回る側と本体に固定した側の間に薄い流体膜を保ち、潤滑と漏れの抑制を両立します。

スプリングなどで端面を押し付け、摩耗や軸の動きに追従します。通常はグランドパッキンのような定期的な増締めは行わず、液の供給や冷却、漏れと温度の監視で状態を管理します。

図2:メカニカルシールは端面で密封する

軸方向の押付けで二つのリングを近づけ、端面間の流体膜を保ちます。

液側ばね回転環固定環固定環は本体側で支持破線=密封端面(軸に垂直)外側主軸

一つの構成例を単純化した図です。端面間の膜は実物より強調し、二次シールや駆動部品は省略しています。

端面を強く押せば、それだけで寿命が伸びるわけではありません。流体膜を失うと摩擦と発熱が増え、異物のかみ込みや液の蒸発も端面損傷の原因になるため、使用条件に合わせた設計が必要です。

液で潤滑する形式では、空運転で端面を傷めます。始動前の呼び水とエア抜き、必要な補助液の供給を取扱説明書の手順で済ませ、流れない状態のまま回転を続けないよう管理します。

異音と漏れが同時に増えたときは、シールだけでなく吸込側も調べます。キャビテーションとエア噛みは液の供給や振動に影響するため、軸封交換だけでは原因が残ります。

構造の分類は、異なる軸に分けて読むと混同を避けられます。シングルか二重かはシールの組数、バランス形かアンバランス形かは流体圧力による端面荷重の扱いを表します。

タンデムやダブルは二重シールの配置や運用と関わる呼び名です。「シングル・アンバランス、シングル・バランス、タンデム、ダブル」だけを全製品共通の四種類とは扱いません。

バランス形では、流体圧力が端面を閉じる方向に働く面積を調整します。高圧条件での面荷重を抑える狙いがあり、適した圧力範囲は材料、速度、液性も含む製品仕様で決まります。

二重シールでは、回転環と固定環からなる密封部を二組使います。二組の間に入れる液の圧力と流れ、その液が製品側へ入ってよいか、異常時の検知方法まで決めます。

API 682は、主に石油・天然ガス・化学分野のポンプ軸封システムを扱う規格です。シール本体だけでなく補助系統の適合も含み、すべての水ポンプの運転基準として引用する規格ではありません。

漏れの許容値は、採用した仕様と試験条件で照合します。質量流量だけを見て目視の滴下量へ置き換えず、流体、温度、圧力、測定時間、液体と蒸気の扱いをそろえて判定します。

イーグル工業の公式動画は、表面テクスチャリングを用いたメカニカルシールの紹介です。特定技術の事例として、密封端面と流体膜の関係を見る補助に使えます。

グランドパッキンとは

編組パッキンと押さえ板のイメージ画像
編組パッキンを表すAI生成イメージ。実機の組立方法やリング数を示す写真ではありません。

グランドパッキンは、軸の周囲のパッキン箱にリング状の詰め物を入れる方式です。押さえで軸方向に圧縮するとパッキンが半径方向にも広がり、軸やスリーブとの隙間を狭めます。

材質には炭素繊維、PTFE系、黒鉛系などがあり、潤滑剤や充填材も組み合わされます。単に「特殊繊維に油を染み込ませたもの」と一括せず、液性、温度、速度に合う製品を選びます。

図3:ランタンリングへ封水を入れる構造例

パッキンは軸の外周で接触し、中間のリングへ通じる配管から封水を送ります。

封水液側外側・押さえ詰め物ランタンリング

構造例であり、リング数・封水位置の施工指示ではありません。流体や機種に合わせた組立図を使います。

ポンプ用では適量を漏らし、その液で接触部を潤滑・冷却します。漏れを完全に止めようと締め過ぎると、発熱、焼付き、主軸やスリーブの摩耗を招くため、漏れゼロを調整目標にしません。

川本製作所のTVS(−R)形の説明書では、軸径30mmの安定時漏れ量を10〜30mL/minとしています。これはその機種の目安であり、別のポンプにも同じ量を指定する数値ではありません。

漏れ量は受け容器で一定時間集めるなど、現場の安全な測定手順に合わせて管理します。滴の大きさは一定でないため、「毎分何滴」という観察と体積流量を無条件に換算しないようにします。

屋内では、漏れた液を受けて排水へ導く構造が必要です。床に落とすだけでは滑りや腐食の原因になるため、受け皿、ドレン、排水先、排水能力をポンプ周りの配置と一緒に設計します。

液を外へ出せない用途では、漏れを前提とした方式を選びにくくなります。有害液や高温液では漏えい時の危険も評価し、密閉回収や別方式の採用を含めて設備全体で検討します。

ランタンリングは封水を分配する部品で、注入口と位置を合わせます。スロートブッシュは液側の隙間を絞る部品であり、標準形・ランタンリング・スロートブッシュを材料の種類として並べると誤解を招きます。

摩耗やなじみで漏れが増えたときは、許容範囲で締付けを調整します。押さえは両側を均等に調整し、具体的な量と作業中の運転状態は対象の説明書に従います。

分解や交換では、停止・電源隔離・再起動防止に加えて、液圧を大気圧まで下げ、温度を安全な状態へ下げます。有害な残液は設備手順に従って除去します。回転部へ手や工具を近づける調整方法を一般手順として扱わず、現場の作業許可と設備手順を守ります。

締付け後の負荷変化を見るときは、漏れと温度を一緒に記録します。ポンプ電流の変化だけでは軸封の状態を断定できないため、運転流量や回転数もそろえて比較します。

図4:方式を選ぶ前の液と運用の比較

漏れ、補助液の混入、日常点検の三条件から候補を絞ります。

外部への漏れを許容できる水パッキンも候補。排水と点検の負担を見積もる。
外部への漏れを厳しく抑える液メカと補助系統を検討。必要な密封性能を仕様化。
固形分や結晶化のある液端面とパッキンの双方に影響。洗浄・材質・注液の可否を調べる。
補助液を製品に混ぜられない封水・バリア液の流れを確認し、方式と回収系統を決める。

「迷ったらメカ」と一律に決めず、液の性質と設備条件を優先します。

初期費用は、一般にメカニカルシールの方が高くなりやすい傾向です。一方、漏れた液の補給、排水、調整作業、停止時間まで加えると、部品価格だけの比較とは結果が変わります。

オイルシールやデフレクタは、ポンプの中で別の役割を担います。軸受油の保持や飛まつの遮断などを目的に使われ、加圧された取扱液の軸封と同じ性能の代替品として選ぶ部品ではありません。

メカニカルシールとグランドパッキンは変更できる?

方式変更の可否はポンプの型式と構造で決まり、全機種で相互に変更できるわけではありません。テラルは公式FAQで、M型ポンプのパッキン仕様をメカニカルシール仕様へ変更できないと説明しています。

まず型式、製造番号、現在の組立図をそろえ、メーカーに改造対応を照会します。シール室の内径と長さだけでなく、軸やスリーブ、カバー、固定方法、補助配管の接続口が検討対象です。

図5:方式変更の照会で渡す資料

寸法だけでなく、液の条件と施工範囲を一つの照会資料へまとめます。

現物の特定型式・製造番号・現行部品表
取付け断面軸径・スリーブ・シール室・カバー
使用条件液性・液温・シール室圧力・回転数
補助設備と施工注液・排水・計器・停止期間・試運転

メーカーの対応回答を得てから部品を手配します。現場寸法が合うだけでは改造適合の証明になりません。

改造できる機種でも、シールだけを買えば終わるとは限りません。軸の摩耗、カバーの加工、補助配管、芯出し、試運転を含め、改造費と新品更新費を同じ範囲で比較します。

見積条件は見積仕様書にそろえ、漏れ量の測定条件や補助液の責任範囲も書きます。受注後の納入仕様書と完成図では、変更後の部品番号と配管を照合します。

漏れ量を年間量に直して費用を比べる

説明用に、漏れ量20mL/min、年間運転時間4,000時間を仮定します。体積へ換算すると年間4.8m³で、補給単価と排水処理単価を掛ければ、その範囲の年間費用を比較できます。

一定の漏れ量を年間体積に換算する例
V = q × 60 × t1,000,000
= 20 × 60 × 4,0001,000,000 = 4.8[m3/年]
q:漏れ量[mL/min] t:年間運転時間[h/年] V:年間漏れ体積。1m³=1,000,000mL。仮定値による例で、推奨漏れ量ではありません。

仮に補給と排水の合計単価を500円/m³と置くと、この部分の費用は年間2,400円です。高温液なら熱の損失、薬液なら製品損失や回収処理も加わり、水の単価だけでは評価できません。

漏液の補給・排水費を求める例
C = Vc = 4.8 × 500 = 2,400[円/年]
V:年間漏れ体積[m³/年] c:補給・排水の合計単価[円/m³] C:その範囲の年間費用[円/年]。

この金額に、点検調整の作業費、交換部品、停止による損失を足します。メカニカルシール側にも補助液と保全の費用があるため、漏れ量の削減分をそのまま全額の利益とは扱いません。

補助液の使用量も同じ運転時間で集計します。仮に外部注水が0.5L/minで4,000時間続くなら年間120m³となり、先の漏れ量4.8m³とは別の収支として扱います。

これは供給量の仮定で、推奨流量ではありません。500円/m³を全量に適用する仮定なら年間60,000円ですが、製品側へ流れる分と排水へ出る分を分け、実際の課金・処理範囲を合わせて見積もります。

外部注水の年間供給量と費用の例
Va = qa × 60 × t1,000 = 0.5 × 60 × 4,0001,000 = 120[m³/年]
Ca = Vac = 120 × 500 = 60,000[円/年]
qa:外部注水流量[L/min] t:年間運転時間[h/年] Va:年間供給体積 Ca:年間費用。1m³=1,000L。単価cは先の仮定と同じで、供給した全量に適用する計算条件です。

回収して再利用する補助系統では、循環流量の全量を購入水量として計上しません。補給量、排出量、冷却の費用を分けて集計し、改造前後で同じ範囲を比べると重複計上を防げます。

改造後は軸封だけでなく、設備の運転点が従来どおりかも確認します。ポンプの性能曲線に実測流量と揚程を照らし、振動、漏れ、温度の記録を初期基準として残します。

漏れが増えたときの切り分け

漏れの場所は、最初に静止した接続部と回転軸周りに分けます。シールカバーのガスケットや配管継手から漏れているなら、端面やパッキンだけを交換しても止まりません。

運転開始直後、温度上昇後、停止中のどの時点で漏れるかも記録します。液温と圧力、封水流量、起動回数の変化を並べると、部品摩耗と運転条件の変化を分けて検討できます。

吐出圧力の低下も起きているなら、吸込状態や系統の弁開度まで調べます。発熱が続くときは、締切運転による液温上昇などの運転異常も切り分けます。

分解した部品は、傷や付着物の位置が分かる写真と向きを残します。端面の欠け、二次シールの硬化、パッキンの偏摩耗などを記録し、交換品の材質と組立条件の判断に使います。

封水を使う設備では、供給元の圧力だけでなくシール側へ実際に流れているかを見ます。ストレーナの詰まりや弁の閉止で流れが失われると、入口の圧力計が正常でも必要な冷却を得られません。

注液量を減らす変更では、節水量だけでなく端面の温度と液の清浄度を評価します。メーカー指定より少ない流量へ現場判断で絞らず、運転圧力と液性に合わせた供給条件を照合します。

シールを外して再組立する際は、ばねの取付け長さや締結部の位置も管理します。見た目の寸法が似た部品でも、押付け荷重や材質が異なるため、部品番号と組立図で同一性を確かめます。

パッキンの交換では、古いリングを奥に残したまま新しいものを足さないようにします。箱の内部を点検し、指定されたリング数と切口の位置を組立要領に合わせ、封水の通路を塞がないよう施工します。

異物を含む液では、摩耗だけでなく停止中の固化や結晶の析出も調べます。液を抜く、洗浄する、補助液を維持するなどの停止処置は液の性質で変わるため、起動手順と対にして定めます。

ポンプや設備保全の記事を毎週まとめて読みたい方は、職種と業種を選んで登録できる週刊MONOSCOPE(メルマガ)をご利用ください。

メカニカルシールとグランドパッキンのよくある質問

グランドパッキンを増締めしても漏れるのはなぜ?

パッキンの消耗だけでなく、スリーブの溝状摩耗や偏った締付けも原因です。押さえの調整代が尽きた状態で締付けを続けず、停止後にパッキン箱と軸側の摩耗を調べます。

ポンプ用とバルブ用のパッキンは同じように使える?

運動の種類や要求する密封状態が異なるため、同じ締め方で使いません。ポンプの回転軸では摩擦熱を処理する必要があり、用途の区分とメーカー指定の材質・締付け条件を合わせます。

メカニカルシールの二次シールとは?

リング端面以外の接合部を密封するOリングなどの部品です。端面が健全でも二次シールが液に侵されたり硬化したりすると漏れるため、ゴム材の適合も軸封選定に含めます。

長期間停止した予備ポンプも点検が必要?

停止中も部品の固着やシール液の状態変化を管理します。再起動前に保管・待機手順と呼び水条件を確かめ、使っていない期間をそのまま部品寿命の延長分とは数えません。

まとめ

この記事のまとめ
  • メカニカルシールはリング端面、パッキンは軸外周で密封する
  • パッキンは潤滑・冷却に必要な漏れ量を管理する
  • メカは通常の増締めが不要でも、液膜と補助系統の管理が必要
  • 価格は漏液・排水・作業・停止費用を含めて比較する
  • 方式変更は型式と構造で決まり、改造不可の機種もある

モーターの起動方式はリアクトル始動法で説明しています。関連する解説は、エネ管.comのポンプの記事一覧にも掲載しています。

出典

出典・参考資料(11件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

機械設計・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

機械設計を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次