熱容量とは?比熱との違い・大きい物体の特徴と計算方法

水槽と加熱コイルのイメージ画像

熱容量とは、物体全体の温度を1K上げるのに必要な熱量です。質量と比熱の積で表し、同じ熱量を受け取ったときは、熱容量が大きい物体ほど温度変化が小さくなります。

比熱は材料1kgあたりの性質、熱容量はその物体全体の性質です。水槽の加熱や機器の暖機では、材料名だけでなく、水や容器の質量まで含めて計算します。

目次

熱容量とは?

熱容量の記号にはCを使い、単位はJ/KまたはkJ/Kです。温度差の1Kは1℃の差と同じ大きさなので、「1℃上げる熱量」という説明でも意味は変わりません。

質量mと比熱cを掛けると、熱容量Cが出ます。同じ材料でも、大きな塊と小さな塊では熱容量が異なり、物体全体を対象にする点が比熱との違いです。

物体全体の熱容量
C = mc
C:熱容量[kJ/K] m:質量[kg] c:比熱[kJ/(kg·K)]。比熱をJ/(kg·K)で入れるとCはJ/Kになります。

たとえば水の質量が2倍なら、同じ温度差まで温める熱量も2倍です。比熱が同じでも、水の量を変えれば熱容量が変わるため、材料の比較と物体の比較は分けて考えます。

図1:同じ水でも量が変われば熱容量が変わる

どちらも比熱は4.19kJ/(kg·K)と仮定し、1K上げる熱量を比べます。

水 1kg1K上昇に4.19kJC=4.19kJ/K
水 2kg1K上昇に8.38kJC=8.38kJ/K

容器の熱容量と外部への放熱を除いた比較です。水面の高さは量の違いを表す概念図です。

比熱と熱容量の違いは単位で見分ける

水と鉄とアルミの試料のイメージ画像
材料の比較を表すAI生成イメージ。試料の質量・体積は計算例と対応しません。

仕様書の数字を読むときは、分母にkgがあるかを見ると区別できます。比熱の単位にはkgが入り、熱容量の単位には入らず、温度を変える対象の総量がすでに含まれています。

単位がJ/(mol·K)なら、物質量1molあたりのモル熱容量です。質量で計算する式へそのまま入れず、kg基準かmol基準かをそろえてから数値を代入します。

比較する点比熱c熱容量C
対象材料1kgあたり物体全体
単位の例kJ/(kg·K)kJ/K
同じ材料を2倍に増量同じ温度・状態なら不変2倍
計算で使う位置質量を掛ける前質量を掛けた後

水、鉄、アルミニウムでは比熱が異なり、室温付近なら水の値が大きいのが特徴です。比熱は温度や組成でも変わるため、材料ごとに一つの数字が全温度域で固定されるわけではありません。

図2:材料1kgの比較と、物体全体の比較

各材料の上段は比熱、下段は質量を掛けた熱容量です。値は25℃付近の参考値を丸めています。

水 約4.18kJ/(kg·K)

1kgなら約4.18kJ/K
10kgなら約41.8kJ/K

鉄 約0.45kJ/(kg·K)

1kgなら約0.45kJ/K
10kgなら約4.5kJ/K

アルミ 約0.89kJ/(kg·K)

1kgなら約0.89kJ/K
10kgなら約8.9kJ/K

参考:テキサス大学の25℃・1atmの比熱表。後の水の計算例は4.19kJ/(kg·K)で統一しています。

比熱の違いには、原子や分子の運動と相互作用が関係します。気体では並進運動に加え、分子の回転や振動にエネルギーが分かれるため、分子の種類や温度で値が変化します。

同じ体積の塊を比べるときは、密度も計算に入ります。容積に密度を掛けて質量を出し、その質量に比熱を掛けるので、「同じ大きさ」と「同じ重さ」の比較結果は一致しません。

熱容量が大きいと温まりにくく冷めにくい

同じ熱量を加えるなら、温度上昇は熱容量に反比例します。熱容量が大きい物体は、同じ熱量を失ったときの温度低下も小さく、温度を安定させたい蓄熱槽などに向きます。

ただし、時間あたりに入る熱が異なれば、温まる速さも変わります。薄い金属板と厚い水槽を直接比べる前に、加熱能力、接触面積、周囲の温度をそろえる必要があります。

同じ熱量を与えたときの温度変化
ΔT = QC
水1kg:41.94.19 = 10K
水2kg:41.98.38 = 5K
Q:与えた熱量[kJ] C:熱容量[kJ/K] ΔT:温度差[K]。相変化と放熱を除く計算例です。

熱容量と熱伝導率も別の量です。熱伝導率は材料内での熱の伝わりやすさを表し、手で触れた瞬間の冷たさや表面と内部の温度差には、熱容量に加えて熱の移動速度が関わります。

厚い塊では表面だけ先に熱くなり、中心が低温のまま残ります。物体全体を一つの温度として扱う計算と、内部の温度分布を調べる伝熱計算は、目的に応じて使い分けます。

料理に使う熱した石も、比熱の大きさだけで評価できません。石の質量、加熱温度、料理と接する面積が保温に効き、融点だけから蓄えられるエネルギーは決まりません。

熱容量の使い方

熱容量に温度差を掛けると、昇温に必要な熱量が出ます。実務ではこの積を「エムシーデルタティー」と呼び、水槽の加熱や機器の立ち上げで最初の熱量を見積もります。

100kgの水を10℃から90℃に温め、比熱を4.19kJ/(kg·K)で一定と仮定します。先に熱容量419kJ/Kを出してから80Kを掛けると、必要な熱量は33,520kJです。

100kgの水の加熱例
Q = CΔT = mcΔT
C = 100 × 4.19 = 419[kJ/K]
ΔT = 90 − 10 = 80[K]
Q = 100 × 4.19 × 80
= 33,520[kJ]= 約33.5[MJ]
Q:必要熱量 m:水の質量 c:水の比熱 ΔT:最終温度−初期温度。水だけを計算し、蒸発・容器加熱・放熱は含めていません。

図3:水100kgを温めるときに熱が向かう先

水の計算に、容器の昇温と外へ逃げる熱を加えたものが、設備側の必要量です。

水の昇温:33,520kJ100kg・10→90℃容器にも熱が入る下から加熱周囲への放熱は別に加算放熱

かき混ぜて水温が均一になる条件の概念図です。加熱源の構造や電気配線は省略しています。

熱量からヒーター能力と加熱時間を出す

熱量はエネルギーの総量で、ヒーターのkWは時間あたりの供給能力です。1kWは1kJ/sなので、必要熱量を水へ実際に渡る加熱能力で割ると、秒単位の加熱時間が出ます。

水へ10kWが一定に入る理想条件なら、先ほどの熱量を10kJ/sで割ります。計算結果は3,352秒、約55.9分で、1時間以内という目標に対する最初の目安になります。

正味加熱能力10kWの計算例
t = QP = 33,52010
= 3,352[s]= 約55.9分
t:加熱時間[s] P:水に入る正味加熱能力[kW=kJ/s]。電源からの入力電力と、対象に入る熱は分けて扱います。

逆に30分で温める目標なら、33,520kJを1,800秒で割り、正味約18.6kWが必要です。実機の定格選定では、容器と配管の加熱、放熱、制御による出力変化を加えて検討します。

正味能力と入力電力の違いは、同じ熱量でも加熱時間に表れます。入力10kWのうち対象へ届く割合を説明用に80%と仮定すると、水に入る能力は8kWとなり、加熱時間は約69.8分です。

この80%は特定のヒーターの性能値ではなく、計算方法を示す仮定です。実機では放熱量が水温や周囲温度で変わるため、全昇温区間に同じ割合を使えるか、測定値と照らして判断します。

kJとkWhを取り違えると、電力量の見積もりが大きくずれます。ワットとジュールの換算の関係で3,600kJが1kWhなので、この水だけなら約9.31kWhです。

水だけでなく容器や配管も足し合わせる

水槽全体を加熱するときは、水と容器の熱容量を足し合わせます。各部が同じ温度だけ上がる条件なら、それぞれの質量と比熱の積を求め、合計に共通の温度差を掛けます。

説明例として、鉄製容器を20kg、比熱を0.45kJ/(kg·K)と置きます。水100kgと同じ80Kだけ昇温するなら、容器分は720kJで、合計は34,240kJになります。

図4:設備をまとめた熱容量の足し算

同じ温度差で変化する部品だけを、同じまとまりに入れます。

水100kg100×4.19=419kJ/K
鉄製容器20kg20×0.45=9kJ/K
全体428kJ/K428×80=34,240kJ

配管・支持材・断熱材のうち、同じ温度まで上がる部分は追加します。周囲への放熱は熱容量の足し算には含めません。

水は90℃でも外側の架台は低温なら、両者に同じ温度差を掛けると過大評価です。部品ごとに初期温度と到達温度を分け、加熱される範囲を断面図や設備図で決めます。

水量を変える運転では、容器分の占める割合も変化します。水を10kgに減らして同じ容器を使うと、水の熱容量41.9kJ/Kに容器分9kJ/Kが加わり、全体は50.9kJ/Kです。

この条件で80K上げる熱量は4,072kJで、水だけの3,352kJより約21.5%多くなります。水100kgでは容器分の上乗せは約2.15%なので、少量試験ほど容器を除外した計算の誤差が目立ちます。

立ち上げ時のヒートバランスでは、蓄えられるエネルギーの増分も数えます。一方、温度が一定の連続運転では、流入・流出と放熱を中心に収支を取ります。

連続する流体では質量流量を使う

タンク内の水をまとめて温める計算と、流れる水を温める計算では質量の扱いが違います。連続流では1秒あたりの質量流量を使い、熱量ではなく必要な加熱能力を算出します。

比熱4.19kJ/(kg·K)の水を毎秒1kg流し、20K昇温する設計例なら83.8kWです。バッチ加熱の100kgをそのまま流量として入れないよう、単位の秒や時間を必ず残します。

相変化のない連続流の加熱能力
P = ṁcΔT
= 1 × 4.19 × 20 = 83.8[kW]
ṁ:質量流量[kg/s] c:定圧比熱[kJ/(kg·K)] ΔT:出口−入口温度[K]。定常流で運動・位置エネルギーの変化を無視します。流量をkg/hで入れた答えはkJ/hです。

熱交換器の伝熱面積計算では、この必要能力と伝熱面積側の式を結びます。熱容量の計算だけで面積は決まらず、総括伝熱係数と流体間の温度差も必要です。

加熱側の蒸気が凝縮する設備では、蒸気側を単純な比熱の式だけで扱いません。ボイラーと蒸気の利用では、状態の変化に伴うエンタルピー差で熱量を数えます。

気体は定圧と定容を区別する

気体には、圧力一定で加熱する定圧比熱と、体積一定で加熱する定容比熱があります。理想気体を圧力一定で温めると、膨張して外へ仕事をするため、体積一定より同じ温度上昇に必要な熱が多くなります。

同じ質量の気体でも、定圧熱容量はmcp、定容熱容量はmcvです。定圧比熱と定容比熱の違いを区別し、装置の加熱条件に合う方を使います。

ダクト内を流れる空気の加熱計算では、通常は定圧比熱を使います。容積流量から計算する際は、実際の温度・圧力に対応する密度で質量流量へ直します。

計算前にそろえる条件

必要熱量を見積もる前に、対象、質量、温度差、状態変化を決めます。設計値の出どころを計算書に残すと、水量が変わったときも比熱や装置全体を調べ直さずに修正できます。

図5:計算書に残す四つの欄

単位・対象範囲・相変化の有無を、数値の横に記入します。

対象の境界水のみ/水+容器/配管まで
質量と比熱kgとkJ/(kg·K)で統一
初期と到達温度差をKで計算。絶対温度と区別
状態変化と熱損失蒸発・融解・外部放熱は別枠

設備の運転条件を変える前に、材質の使用温度と加熱源の保護設定を照合します。

温度差を使う式では、10℃から90℃は80Kです。摂氏の両方に273.15を加えてから引いても差は同じで、温度差だけを絶対温度へ換算する操作は不要です。

比熱が大きく変わる温度範囲では、区間ごとの比熱で熱量を分けて足します。広い温度範囲を室温の値一つで済ませず、物性表の温度条件を計算書に添えます。

区間計算の説明例として、質量10kgの試料を20Kずつ二段階で温めます。各区間の平均比熱を0.50と0.60kJ/(kg·K)と仮定すると、必要熱量は100kJと120kJで、合計220kJです。

全40Kに最初の比熱0.50だけを使うと200kJとなり、区間計算より20kJ小さくなります。この数値は特定材料の物性値ではなく、温度範囲に応じた平均比熱を使う理由を示す計算例です。

氷の融解や水の沸騰が途中に入ると、温度上昇とは別に潜熱が必要です。液体のまま温める区間、状態が変わる区間、その後の昇温を分け、各区間の熱量を足します。

測定した加熱時間が理想計算より長いときは、直ちに比熱の誤りとは判断しません。容器の温まり、放熱、ヒーターの間欠動作、温度計の取り付け位置を切り分けて調べます。

水量が少ない状態で大きな加熱出力を入れると、温度が急に上がります。PID制御の設定だけで補わず、最低水量と空だき保護を設備仕様に合わせて管理します。

燃料使用量へ換算する際は、対象に入る熱と燃料の発熱量を分けます。ボイラー効率と発熱量の基準をそろえ、入力側のエネルギーを見積もります。

冷却の計算では、最終温度から初期温度を引くと温度差が負になります。対象が受け取る熱量を正と決めるなら冷却熱量も負で、冷却器の除去熱量はその大きさを使って表します。

たとえば熱容量419kJ/Kの水が90℃から70℃へ下がると、対象の熱量変化は−8,380kJです。冷却設備が取り去る熱量は8,380kJと書き、符号と設備能力を混同しないよう整理します。

実測から加熱能力を評価するなら、水温を時間とともに記録します。十分に混合された水の温度上昇速度に、水と容器の熱容量を掛けると、全体に蓄えられる正味の能力を推定できます。

水と容器の合計が428kJ/Kで、5分間に6K上昇した測定例なら、増えたエネルギーは2,568kJです。300秒で割った8.56kWが、その区間に水と容器へ蓄積した平均の能力になります。

この値には外へ逃げた熱が入らないため、そのままヒーターの入力電力とは比べられません。加熱源からの供給能力を推定するときは、同じ時間内の放熱や蒸発によるエネルギーも収支に加えます。

温度計がヒーターのすぐ横にあると、槽全体より高い局所温度を読むおそれがあります。センサーの位置と水の混合状態を一定に保ち、温度上昇の比較条件をそろえて測定します。

水を補給しながら温める運転では、槽内の総量が時間とともに変わります。一定の熱容量で全時間を割る計算を避け、補給前後の量と温度を時間区間ごとに追って収支を取ります。

温度管理では、液の温度と容器壁の温度を別々に見る意味もあります。壁だけが高温になる局所過熱は、全体の熱容量から出した平均温度では見えず、加熱面の設計や流れの確認が必要です。

熱容量のよくある質問

熱容量が大きい材料ほど断熱材に向く?

断熱材は主に熱伝導率と厚さで熱の通りにくさを評価します。熱容量は一時的な温度変動を緩める性質で、定常的に逃げる熱を小さくする断熱性能とは分けて考えます。

冷たい水と温かい水を混ぜた温度はどう出す?

比熱が等しく放熱と容器の影響がない水同士なら、質量を重みにした平均温度です。同じ質量の20℃と60℃の水なら40℃になり、量が違うと多い方の温度に近づきます。

熱量計の水当量とは?

容器やかき混ぜ棒の熱容量を、同じ熱容量をもつ水の質量へ換算した値です。容器の熱容量を水の比熱で割って求め、熱量計内の水の質量に足すと、容器が受け取る熱も計算に含められます。

熱容量を実験で測るには?

既知の熱量を加え、均一になった後の温度上昇で割るのが基本です。容器にも熱が入るため、容器分を差し引き、測定中に外へ逃げた熱も補正して対象だけの値を出します。

まとめ

この記事のまとめ
  • 熱容量は物体全体を1K温める熱量で、質量×比熱で計算する
  • 比熱は材料1kgあたり、熱容量は対象全体の値
  • 必要熱量はmcΔTで、加熱時間には正味の加熱能力も必要
  • 容器や配管の加熱、放熱、相変化は分けて計算する
  • 気体は定圧・定容の条件を区別する

出典

出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

機械設計・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

機械設計を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次