ファンの回転数を80%に下げると、消費電力は理論上およそ半分の51.2%まで減ります。インバータ(モータに送る電気の周波数を変えて回転数を調整する装置)が省エネの定番とされるのは、この回転数と電力の3乗の関係があるからです。
ただし51.2%は、配管やダクトの抵抗だけを相手にする理想的な条件での値で、くみ上げる高さが大きいポンプや定格近くで回り続ける設備では効果が小さくなります。読み終えると、自分の設備に効くかどうかと、電気代がおよそいくら下がるかを見積もれるようになります。
この記事では、インバータの役割、3乗則の中身と前提、ダンパやバルブで絞る方法との違い、効果が大きい設備と小さい設備、電気代の計算例、導入前に確かめることの順で整理します。
インバータとは|モータの回転数を自由に変える装置
工場のファンやポンプを回す誘導モータは、電源の周波数と極数でおおよその回転数が決まります。同期速度は「120×周波数÷極数」で求められ、4極のモータなら50Hzで毎分1,500回転、60Hzで毎分1,800回転です。
商用電源の周波数は一定なので、そのままではモータはほぼ決まった速さでしか回れません。回転数と極数の関係はモーターの極数と回転数の計算式で詳しく整理しています。
電源の周波数をいったん直流に直し、必要な周波数の交流につくり直してモータに送ります。
※内部では、交流を整流して直流にし、コンデンサで平滑したあと、半導体のスイッチで周波数と電圧を変えた交流をつくります(日本電機工業会の資料)。
インバータの中では、交流を整流して直流にし、コンデンサでならしたあと、半導体素子の高速なオン・オフで周波数を変えた交流をつくり直します。周波数を下げるときは電圧も比例して下げる「V/f一定制御」が基本で、モータ内部の磁束を保ったまま回転数だけを変えられます。
モータ自体の種類による違いは誘導・ブラシレス・サーボなどモーターの種類で比べています。この記事で扱うのは、工場で最も台数の多い三相誘導モータとインバータの組み合わせです。
モータの電力消費は大きく、日本半導体製造装置協会の資料では、日本のモータの年間消費電力量は全消費電力量の約55%、産業用モータは産業部門の約75%と推計されています。回転数を最適にするだけで工場全体の電力が動くため、インバータは省エネ対策の最初の候補に挙がります。
回転数を下げると電力が大きく減る理由|相似則と3乗則
ファンやポンプには、回転数を変えたときの性能の変わり方を示す「相似則」があります。流量は回転数に比例し、圧力は回転数の2乗、軸動力は回転数の3乗に比例するという関係です。
式で書くと、回転数をN1からN2に変えたときの流量はQ2=Q1×(N2/N1)、圧力はP2=P1×(N2/N1)²、軸動力はL2=L1×(N2/N1)³です。軸動力は流量と圧力の積に比例するため、1乗と2乗が掛け合わさって3乗になります。
回転数を80%にすると、流量は80%、圧力は64%、軸動力は51.2%になります。
※相似則が成り立つのは、同じ羽根車で流体の密度が変わらず、運転点の効率がほぼ同じとみなせ、抵抗が配管やダクトの摩擦だけ(流量ゼロで抵抗もゼロ)の系です。くみ上げる高さや押し込む圧力が一定でかかる系では、圧力が下がりきらず3乗より緩くしか電力は減りません。
環境省の対策シートも同じ関係を使い、回転数を80%に下げると風量は80%、軸動力は51.2%(0.8の3乗)になると説明しています。2割の風量減で電力がほぼ半分になるので、少し絞るだけでも効果が大きく出ます。
一方で、図2は理想条件の線です。実際の電力計の値はモータとインバータ自体の損失を含み、回転数が低い領域ほど効率も下がるため、計算値より少し大きく出ます。
2乗低減トルク負荷とは
回転数の2乗に比例してトルクが小さくなる機械を「2乗低減トルク負荷」と呼び、ファン、ポンプ、ブロワが代表例です。トルクに回転数を掛けたものが動力なので、動力は3乗で減り、三菱電機の技術資料でもこの負荷の消費電力は回転数の3乗に比例するとしています。
コンベヤや押出機のように、回転数を下げてもトルクがほぼ変わらない機械は「定トルク負荷」で、動力は回転数にほぼ比例して1乗で減るだけです。インバータの省エネ効果が大きく出るのは、2乗低減トルク負荷だと押さえておくと、候補の設備を選びやすくなります。
ダンパ・バルブで絞る方法との違い

インバータがない設備では、ファンの出口のダンパ(風量を調整する羽根板)や、ポンプの吐出側のバルブを閉めて流量を減らすのが一般的です。この方法では、モータはほぼ全速で回ったまま、抵抗を足して流量だけを減らしています。
J-Net21の解説によれば、バルブで絞った運転の消費電力には、バルブの抵抗で生じた損失の分も含まれています。インバータはポンプそのものの性能曲線を下げて目標の流量に合わせるため、抵抗を足す必要がありません。
同じ80%の風量でも、ダンパで絞ると軸動力は95%、回転数で下げると51%です。
※数値は環境省の対策シートが省エネルギーセンター「エネルギー管理のためのデータシート」の図をもとに想定した遠心ファンの値です。
ダンパで絞っても電力が少しは減るのは、遠心ファンの動力が流量とともにいくらか下がる性質を持つためです。省エネルギーセンターのデータを使った環境省の試算では、風量80%で軸動力はダンパ制御なら約95%、回転数制御なら約51%と、差は44ポイントほどになります。
同じデータシートの図には、吸込みダンパ、羽根の角度を変えるベーン制御、流体継手など、ほかの方式の曲線も並んでいます。既設の制御方式によって削減幅が変わるので、試算では現状がどの方式かを最初に確かめます。
| 比べる点 | ダンパ・バルブ制御 | インバータ制御 |
|---|---|---|
| 流量を減らす方法 | 抵抗を足して絞る | 回転数を下げる |
| モータの回転数 | ほぼ全速のまま | 必要な流量に合わせて下がる |
| 圧力 | 絞るほど上がる | 回転数の2乗で下がる |
| 風量80%の軸動力(遠心ファンの例) | 約95% | 約51% |
| 設備費 | ダンパ・弁だけで安い | インバータ本体と工事が必要 |
ポンプの運転点で見るとどう違うか
ポンプが実際に回る点(運転点)は、ポンプの性能曲線と配管の抵抗曲線が交わるところです。曲線の読み方はポンプの性能曲線と運転点の見方で詳しく扱っています。
バルブを閉めると抵抗曲線が立ち上がり、運転点は性能曲線の上を左上へ移るため、流量は減っても揚程(ポンプが出す圧力を水の高さで表した値)は上がります。回転数を下げると性能曲線そのものが下がり、同じ流量でも低い揚程の点で運転できるのが図4のポイントです。
流量を半分にしたとき、バルブ制御は揚程1.3、インバータ制御は揚程0.475の点で運転します。
※J-Net21の数値例と同じ条件で描いた模式図です(締切揚程は定格の1.4倍、実揚程は定格の0.3倍、流量を定格の半分に絞る)。
J-Net21の数値例では、この条件で必要な電力はバルブ制御が定格の65%、インバータ制御が24%となり、省エネ率は約63%です。バルブやダンパが半開き以下で使われ続けている設備ほど、インバータに置き換えたときの削減幅が大きくなります。

効果が大きい設備・小さい設備

インバータの効果は、負荷の種類、流量の変動、抵抗の中身の3点でほぼ決まります。2乗低減トルク負荷で、流量を絞って使う時間が長く、抵抗の大半が配管やダクトの摩擦という3条件がそろう設備が最も効きます。
同じファン・ポンプでも、使い方と抵抗の中身で効果が分かれます。
効果が出やすい
効果が出にくい
効果が出やすいのは、空調・換気のファンや冷却水の循環ポンプのように、季節や生産量で必要な流量が変わる設備です。環境省の対策シートでも、負荷変動の大きい工業炉やボイラの排気ファンが回転数制御の導入先として挙げられています。
逆に、常に定格近くで回る設備では回転数を下げる余地がなく、インバータ自体の変換損失の分だけ電力が増えます。環境省の対策シートでも、定格流量で使うときは商用電源に切り替えて運転すると良いとされています。
実揚程・押込み圧が大きいと3乗則からずれる
ポンプが出す揚程は、水をくみ上げる高さである「実揚程」と、配管の摩擦などの抵抗の合計です。環境省の資料によれば、実揚程は物理的な高さで決まる一方、配管の抵抗は流量の2乗に比例して変わります。
回転数を下げて減らせるのは配管抵抗の分だけで、実揚程の分はどれだけ流量を減らしても必要な圧力として残ります。送風機でも、ダクトの先で一定の静圧(押込み圧)を保つ必要がある系では同じことが起き、静圧の考え方は静圧と動圧の違いで整理しています。
流量50%で比べると、理想の3乗則では12.5%、実揚程が定格の3割ある系では約24%、バルブ制御では65%です。
※J-Net21の数値例(締切揚程1.4、実揚程0.3)と同じ条件で、ポンプ効率を一定とみなして描いた模式図です。実際は低流量ほど効率が下がり、電力はこれより大きくなります。
図6のとおり、実揚程があると電力の下がり方は3乗則より緩やかになりますが、それでもバルブ制御よりは大きく減ります。J-Net21は、回転数制御が有効なのは実揚程が小さく、流量比がおよそ30〜80%の範囲だとしています。
回転数を下げすぎると、ポンプが出せる揚程が実揚程を下回り、必要な高さまで水が届かなくなります。環境省の資料も、大きな全揚程が必要な給水系統では、回転数制御よりポンプの台数制御で流量を調整するよう勧めています。
台数制御の仕組みや省エネ計算はポンプの台数制御で詳しく解説しています。実揚程が大きい系では、台数制御で大まかに流量を合わせ、残りをインバータで細かく調整する組み合わせも検討の候補です。

電気代がいくら下がるか|計算の手順と試算例
試算は「今どれだけ電力を使っているか」から始めます。モータは定格より軽い負荷で回っていることが多く、定格kWをそのまま消費電力とみなすと削減額を大きく見積もりすぎるので、J-Net21の試算でも負荷率90%を掛けています。
現場で記録する数字を、回転数比の3乗と効率で電力量に直し、単価を掛けます。
※実揚程や一定の押込み圧がある系では、3乗則で出した値より削減量が小さくなります。
試算例1:22kWの排風機をダンパ制御からインバータへ
環境省の対策シートでは、22kWの排風機を風量80%で運転する場合を、年6,480時間(24時間×270日)の稼働で試算しています。軸動力比はダンパ制御の95%に対して回転数制御が51%で、モータ効率は95%、インバータ効率は90%という条件です。
結果は、年間の電力量が142.6千kWhから85.0千kWhへ、電気代が約324.5万円から約193.5万円へ減り、各指標で約40%の削減です。電気の単価は22.76円/kWhで計算されています。
試算例2:37kWの冷却水ポンプの流量を15%減らす
J-Net21の試算は、37kWの渦巻ポンプ(モータ効率92.5%、負荷率90%)を年310日・24時間運転し、インバータで流量を15%減らす例で、現状は流量調整用のバルブが全開という前提です。
回転数を85%として0.85の3乗をインバータ効率95%で割ると、年間の電力量は約267,800kWhから約173,100kWhに下がります。削減量は年間約94,700kWhで、単価22.0円/kWhで計算すると約208万円の削減です。
ただしこの例は実揚程を0mとした計算で、試算例1とも設備や前提が違います。削減率を単純に比べず、自分の設備の条件で計算し直すことが、見積もりを外さないための前提になります。
ポンプの軸動力そのものを流量と揚程から求める方法はポンプ軸動力の計算式で解説しています。電力計の実測値が取れる設備なら、定格からの計算よりも実測の電力量に回転数比の3乗を掛けるほうが、現実に近い見積もりになります。
導入前に確かめること

インバータは付ければ必ず得をする装置ではなく、設備の条件によっては流量不足やモータの過熱を招きます。導入前の確認は、現状のデータから始めて、制御、モータ、電気設備の順に進めると漏れが少なくなります。
現状の運転データと必要な流量・圧力
最初に、ダンパや弁の開度、流量・圧力の変動幅、運転時間を1週間から1か月ほど記録します。開度が常に全開に近い設備は回転数を下げる余地が小さく、半開き以下の時間が長い設備ほど効果が見込めます。
あわせて、工程として最低限必要な流量と圧力を確かめます。回転数を下げると圧力も2乗で下がるため、環境省の資料は流量90%で吐出圧力が19%下がる点に留意するよう書いており、末端で必要な圧力が保てる範囲が回転数の下限になります。
回転数の下限とモータの冷却
一般的な誘導モータは、軸に付いたファンで自分を冷やす構造です。低速で長時間回すと冷却風が弱まるため、メーカーの仕様で連続運転できる回転数の範囲を確かめ、必要なら別に冷却ファンを付けます。
ファンやポンプは回転数の運用範囲によって共振や不安定な運転を起こすことがあり、送風機の不安定な運転はサージングの条件と対策で触れています。インバータ側で運転してはいけない周波数帯を飛ばす設定を持つ機種も多いので、試運転で振動や音を確認します。
トップランナーモータとの組み合わせ
2015年4月から、高効率なトップランナーモータの製造・販売を求める規制が始まりました。日本半導体製造装置協会の資料によれば、トップランナーモータはすべりが小さく回転速度が上がるため、インバータを使う場合は設定の変更や確認が勧められています。
モータを更新すると同じ周波数でも回転数がわずかに上がり、ファンやポンプの動力が3乗で増える方向に働きます。モータ更新とインバータ導入を同時に進めるときは、周波数の設定を見直すところまでを作業に含めます。
高調波と受電設備
日本電機工業会の資料によれば、インバータは入力側の平滑コンデンサを充電するため、電源から流れる電流がひずみ、高調波(電源周波数の整数倍の成分)が発生します。高圧で受電する工場には、1994年に定められた「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」があります。
台数や容量が大きい場合は、ACリアクトルやDCリアクトルでひずみを抑える対策を、電気主任技術者と一緒に検討します。高調波は力率改善用のコンデンサにも影響するため、受電設備の構成は進相コンデンサの仕組みと注意点もあわせて確認すると安心です。
インバータ省エネのよくある質問
常に定格で回っているファンにインバータを付けても省エネになりますか?
回転数を下げる余地がなければ省エネにはならず、インバータ自体の変換損失の分だけ電力が増えます。環境省の対策シートでも、定格流量で使うときは商用電源に切り替えて運転すると良いとされています。
インバータ自体の損失はどれくらいですか?
機種や容量、負荷によって変わりますが、公的な試算例ではインバータ効率を90〜95%と置いて計算しています。正確な値はメーカーの仕様書の効率や損失のデータで確かめます。
インバータと台数制御はどちらを選べばよいですか?
実揚程が小さく抵抗の大半が配管の摩擦なら、インバータによる回転数制御が向いています。高い位置への給水のように大きな全揚程が必要な系統は、台数制御で流量を合わせる方法が勧められています。台数制御で大まかに合わせ、残りをインバータで調整する組み合わせも検討できます。
インバータの導入に補助金は使えますか?
省エネ設備の更新を対象とする国や自治体の補助金で、インバータやモータの更新が対象になる制度があります。公募の時期や要件は年度ごとに変わるため、製造業で使える補助金のまとめと各制度の公募要領で最新の条件を確かめてください。
まとめ
- インバータは周波数を変えてモータの回転数を調整する装置
- ファン・ポンプの軸動力は回転数の3乗に比例し、80%の回転数で51.2%になる
- ダンパ・バルブで絞る方法は抵抗を足すだけで、風量80%でも軸動力は約95%
- 実揚程や一定の押込み圧がある系、定格で回り続ける設備では効果が小さい
- 試算は実測の電力と運転時間から始め、回転数の下限・冷却・高調波を導入前に確かめる
インバータは、回転数と電力の関係を理解して設備を選べば、少ない投資で大きな削減が見込める対策です。工場全体の省エネの進め方は工場の省エネとエネルギー管理の基本で、電力の契約面の対策は工場のデマンド電力を下げる方法でまとめています。
省エネの計画と報告を担う仕事については製造業のエネルギー管理士の仕事で、設備の日常管理を担う職種は設備保全の記事一覧から読めます。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- ファンの相似則・ダンパとの比較・22kW排風機の試算:環境省「排気量可変排気ファンの導入」(省エネルギーセンター「エネルギー管理のためのデータシート(第1集)」より作成)
- ポンプの流量・圧力・動力の関係、実揚程、台数制御、商用電源への切り替え:環境省「給排水ポンプの流量・圧力の適正化」
- バルブ制御との違い・37kW冷却水ポンプの試算:J-Net21「ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?(その2)」
- 実揚程が大きいポンプの数値例と有効範囲:J-Net21「実揚程の大きなポンプにインバータを取り付けても省エネ効果が少ないのはなぜ?」
- モータの消費電力の割合・トップランナーモータ:日本半導体製造装置協会「省エネ技術について(モータの高効率化)」
- 2乗低減トルク負荷と消費電力:三菱電機「次世代省エネルギー汎用インバータ FREQROL-F800シリーズ」
- インバータの内部回路と高調波:日本電機工業会「汎用インバータ及びサーボアンプの高調波抑制対策について」(2022年4月)
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