省人化が進んでいるのは、部品の運搬や加工機への材料の出し入れ、製品の検査、日報の入力といった身近な作業で、機械やシステムを使い、こうした作業にかかる人の数を減らしていきます。
人のそばで一緒に働ける協働ロボットや、人が運転せずに物を運ぶ無人搬送車を使い、繰り返しの多い作業から少しずつ人の時間を減らしていくのが一般的です。従業員数十人規模の中小企業でも、成果を上げている例は少なくありません。
省人化の主な用途

省人化の技術が使われる場面は、大きく次の4つに分けられ、どれも、人が同じ動作を繰り返している作業や、付加価値を生まないのに時間がかかっている作業です。
繰り返しの多い作業から、機械に置き換えていくのが一般的です。
搬送・物流
工場内では、部品を倉庫から工程へ、工程から次の工程へと運ぶ作業が1日中発生しています。これをAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)に任せると、作業者が持ち場を離れずに済むようになります。
出荷前の箱詰めやパレットへの積み付け(パレタイズ)にロボットを使う例も一般的で、重い荷物を扱う作業が多いため、省人化と同時に作業者の負担軽減にもつながります。
加工機への材料の出し入れ
マシニングセンタや旋盤などの加工機では、加工そのものは機械が行っていても、材料の取り付けと取り外しは人が担っていることがよくあります。この作業をロボットに任せる使い方は「マシンテンディング」と呼ばれます。
材料をまとめて置いておけば、ロボットが1個ずつ加工機に入れていくため、夜間や休日にも無人で加工を続けられるようになり、作業者は段取りや品質の確認に集中できます。
溶接・組立・仕上げ
溶接や塗装は、昔から産業用ロボットが多く使われてきた作業です。近年は協働ロボットの登場で、ねじ締めや部品の組付け、バリ取り(加工後に残る突起の除去)など、人の手作業が中心だった工程にもロボットが使われるようになりました。
協働ロボットは設置場所を移しやすいため、午前はねじ締め、午後は箱詰めというように、1台を複数の作業に使い回す例もあります。生産量が少ない工程でも投資を回収しやすくなる使い方です。熟練者の技能に頼っていた仕上げ作業をロボットに置き換えると、品質が安定し、経験の浅い人でも工程を担当できるようになります。
検査・事務作業
外観や寸法の検査は、人の目と集中力に頼る作業の代表です。カメラと画像処理を使った検査装置に置き換えれば、判定のばらつきを抑えながら検査の人数を減らせます。詳しくはAI・画像検査の技術ページで解説しています。
受注処理や生産計画、日報の集計などの事務作業も省人化の対象で、生産管理システムやRPAを使えば、紙とパソコンへの転記に使っていた時間を大きく減らせる場合があります。
業界別の活用方法

省人化の進め方で重点が変わるのは、生産量、製品の種類の多さ、衛生や精度への要求などが業界ごとに異なるためです。
同じ省人化でも、どの作業を対象にするかは業界によって異なります。
※同じ業界でも、生産量や製品の種類によって重点は変わります。
自動車・部品
自動車業界は、日本で最も早く産業用ロボットを取り入れた業界で、車体の溶接や塗装はロボットが中心となり、最近は部品の搬送や組立、検査の自動化が進んでいます。
一方で、部品を納めるサプライヤーには中小企業も多く、多品種の部品を少人数でつくる工夫が求められています。車種ごとに部品の形が異なるため、治具の共通化や段取り替えの短縮と組み合わせた自動化が進行中です。業界の構造については自動車業界とはをご覧ください。
食品・医薬品
食品や医薬品の工場では、盛り付け、箱詰め、包装といった人手に頼る作業が多く残っており、形や大きさが一定でない食品を扱うため、自動化の難しさがある分野です。
近年は、画像で位置を確認しながらつかむロボットや、洗浄しやすい構造のロボットが使われるようになり、衛生管理と省人化を両立させることが、この業界ならではのポイントです。詳しくは食品・医薬・日用品業界とはをご覧ください。
金属加工(切削・板金・プレス)
金属加工の中小企業では、加工機への材料の出し入れや、溶接、バリ取りなどの自動化が進んでいます。1人で複数台の加工機を受け持ち、夜間は無人で運転する体制をつくる例も増えています。
受注生産で製品の種類が多いため、段取り替えの短縮と組み合わせることが欠かせません。材料や工具を自動で入れ替える装置を加えることで、少ない人数でも多くの品種に対応できるようになります。業界の特徴は金型・加工業界とはで紹介しています。
電子部品・半導体
電子部品や半導体の工場は、もともと自動化の度合いが高い分野です。クリーンルームでは人の出入りそのものが汚染の原因になるため、ウエハーなどの搬送をロボットに任せることが一般的です。
近年は、設備の稼働データを集めて異常を早く見つけるなど、設備の監視や保全の省人化にも力が入れられています。工場全体で扱う品種や工程が多いため、人が巡回して確認していた作業をデータの監視に置き換えるだけでも、大きな効果が見込めます。業界については電子部品・半導体業界とはをご覧ください。
導入事例

いずれも中小製造業の実例で、数値は事例集に記載された内容です。
読むときは、どの工程を選んだか、機械に任せた作業と人に残した作業は何か、という点に注目すると、自社に当てはめるヒントが見つけやすくなります。
対象の工程も方法も異なりますが、いずれも人数や生産性に効果が表れています。
※出典:東北経済産業局「中小製造業における省力化事例集」(2025年6月)。
協働ロボットで熟練作業を置き換える(及源鋳造)
南部鉄器を製造する及源鋳造(岩手県)では、製品にほうろうを施す工程を熟練工の手作業で担っており、多い月には2,000個に上っていました。熟練者の高齢化で技能の引き継ぎが課題となり、約2年をかけて協働ロボットを開発・導入しました。
事例集によると、2〜3名で行っていた作業を1名で行えるようになり、入社間もない社員でも担当できる工程になりました。生産量は約30%増え、労働生産性は2.64倍に改善したとされています。
検査の自動化で人数を半分以下に(小滝電機製作所)
LEDランプの基板ユニットを生産する小滝電機製作所(秋田県)は、高輝度のLEDを目視で確認する検査の難しさに直面していました。そこで、輝度や色度を数値で捉える検査装置を自社で開発し、ラインに導入しました。
その結果、5名で生産していたラインを2名で運営できるようになり、検査時間も半分に短縮されたと紹介されています。開発した装置の外販にも取り組んでおり、省人化の成果が新たな事業にもつながった例と言えます。
スマート工場で多台持ちと夜間無人化(ヤマト特殊鋼)
特殊鋼の流通・加工を手がけるヤマト特殊鋼(山形県)は、既存工場で機械の稼働状況を管理するシステムを入れた後、ロボットによる自動化を進めました。さらに新設した工場では、24時間稼働の産業用ロボットや協働ロボットを活用しています。
事例集によると、既存の第二工場が社員約50名であるのに対し、新しい第三工場は約10名の体制で、1人が複数台の設備を同時に見る運営を実現しました。日中の手離れや夜間の無人生産を含めて、700万円以上の費用対効果があると試算されています。
複数工程の自動化で増産に対応(スズミ)
医療機器や半導体製造装置向けの精密板金加工を行うスズミ(福島県)は、受注の増加と人手不足への対応が課題でした。ブランク加工、バリ取り、曲げ加工、協働ロボットによる溶接などに自動化設備を導入し、各機械をCAD/CAMと連携させています。
その結果、10%の生産量の増加に同じ人員で対応でき、熟練者以外の作業者による不良も減ったとされています。1つの工程ではなく、工程の流れ全体を見直したことが効果を高めた例です。
導入の進め方

事例を見ると、成果を上げている企業には共通した進め方があり、一般的には、構想、準備、定着の3つの段階で進めます。
構想、準備、定着の3つの段階に分かれます。
※設備の規模や社内の体制によって、工程の順番や期間は変わります。
構想:まずは工数を測る
最初に行うのは、今の作業に人の時間がどれだけ使われているかを把握することです。作業ごとの工数を測ってみると、運搬や手待ち、探す時間など、自動化する前に取り除けるムダが見つかることも多くあります。
そのうえで、効果が大きく、かつ自動化しやすい工程から着手し、最初の1台で成果を出せると、社内の理解も得やすくなります。
準備:実物で試してから決める
方式を決める段階では、ロボットメーカーやSIerと相談しながら、次のような点を整理します。
- つかむ部品の形や重さ
- 必要な速度
- 設置スペースなど
カタログの数値だけで判断せず、実際の部品を使ったテストで確かめることが大切です。
安全対策もこの段階で決めます。協働ロボットでも、リスクアセスメントの結果によっては安全装置や作業範囲の制限が必要です。
補助金を使う場合は、公募の時期や申請に必要な書類も確認しておき、国や自治体の支援策は、地域の経済産業局がまとめて案内している場合があります。
定着:使い続けられる体制をつくる
設備を据え付けて終わりではなく、現場の作業者が操作や簡単な復旧を行えるよう教育し、トラブル時の連絡の流れなども決めておきます。
立ち上げ直後は、部品の詰まりによる短い停止(チョコ停)などが起きやすい時期で、止まった原因を記録して一つずつつぶすことで、安定して動く設備に育てていきます。
導入後は、計画した工数の削減が実際に実現しているかを確かめ、効果が確認できたら、同じ考え方を他の工程にも広げていくことで、工場全体の省人化につながります。
省人化に関わる仕事と求められるスキル

省人化は1つの部署だけで完結する取り組みではなく、主に次のような職種が関わります。
生産技術・製造
中心となるのは生産技術で、工程を分析して対象を選び、設備の仕様を決め、SIerと一緒に立ち上げまでを担当します。工程設計の知識に加えて、投資対効果を説明する力も求められます。
実際に設備を使うのは製造・オペレーションの担当者で、現場の作業を一番よく知る人の意見を取り入れることで、使いやすく止まりにくい設備になります。
設備保全・電気設計
ロボットや搬送車を止めずに動かし続けるには、設備保全の役割が欠かせず、無人運転の時間が長くなるほど、故障を予防する保全の重要性は高まります。
制御盤や配線、安全回路を設計する電気・電子設計の技術者も、自動化設備には欠かせない存在で、PLC(設備を制御する専用のコンピューター)やロボットのプログラムの知識が役立ちます。
求められるスキル
省人化に関わる仕事では、機械、電気、ソフトウェアのどれか1つだけでなく、それらをまたいで理解する力が求められます。加えて、工数やタクトタイムで現状を数字にし、改善の効果を説明する力も重要です。
職種ごとの仕事内容や必要な知識は、それぞれの職種記事でも詳しく紹介しており、自分の専門に近いところから、隣の分野の知識を少しずつ広げていくのが現実的な学び方です。
ロボットの導入経験や、安全に関する知識は、どの業界でも通用するスキルで、人手不足が続く中で、省人化を進められる人材の需要は今後も高いと考えられます。
省人化の導入のよくある質問
省人化に使える補助金はありますか?
国や自治体に支援策があり、地域の経済産業局がまとめて案内していることもあります。補助金を使う場合は、公募の時期や申請に必要な書類を計画の早い段階で確かめておくと安心です。
ロボットメーカーやSIerにはいつ相談すればよいですか?
方式を検討する段階から相談し、つかむ部品の形や重さ、必要な速度、設置スペースを一緒に整理するのが一般的です。カタログの数値だけで決めず、実際の部品を使ったテストで確かめることが大切です。
中小企業でも省人化の効果は出ますか?
東北経済産業局の事例集では、中小製造業が協働ロボットや検査の自動化で人数を減らした例が紹介されています。効果が大きく自動化しやすい工程から着手し、最初の1台で成果を出すのが進め方のポイントです。
夜間の無人運転にはどんな準備が必要ですか?
材料をまとめて置き、ロボットが加工機へ1個ずつ入れていく体制をつくるのが基本の形です。部品の詰まりによる短い停止の原因を一つずつつぶし、故障を予防する保全を強めておくことも欠かせません。
まとめ
- 省人化の主な用途は、搬送・物流、加工機への出し入れ、溶接・組立・仕上げ、検査・事務作業
- 業界によって重点が異なり、衛生や精度、製品の種類の多さに合わせた方法がとられる
- 中小製造業でも、協働ロボットや検査の自動化で人数や生産性に効果を上げた例がある
- 構想、準備、定着の3段階で、工数の測定から効果測定・横展開まで進める
- 生産技術や設備保全など多くの職種が関わり、分野をまたぐ知識が求められる
省人化の考え方や方式の基本は省人化とは?仕組みと基本原理で解説しています。注目される理由や従来の自動化との違いは省人化が注目される背景と従来技術との違いで詳しく紹介しています。
ロボットの種類については産業用ロボットの技術ページも参考になります。
人手不足への技術的な対策については、人手不足・省人化の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(2件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 導入事例:東北経済産業局「中小製造業における省力化事例集~FA・ロボット等の導入による生産性向上~」(2025年6月)
- 協働ロボットの安全要件:厚生労働省「産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正について(基発1224第2号)」(2013年12月24日)
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