LNGは天然ガスを液化したもの、LPGはプロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガス、都市ガスは導管などで供給されるガスです。LNGを気化して都市ガスを製造するため、三つは同じ基準で分けた呼び名ではありません。
工場で燃料を選ぶときは、成分だけでなく、液体で受け入れるのか、気体で供給を受けるのかを確認します。貯槽や気化器の必要性、供給圧力、使える燃焼器が、その条件によって変わります。
この記事では三者の成分と供給の違いを整理し、13Aの意味、発熱量とウォッベ指数を図解します。後半では必要な熱量からガス使用量を求め、燃料転換を比較する際の条件まで確認できます。
動画の補足:13Aの組成は全国共通の固定値ではなく、13が現在のMJ単位のウォッベ指数そのものでもありません。ガス焚きでも、排ガスを冷やす際には凝縮水や腐食を考慮します。
図1:LNG・LPGは燃料と状態、都市ガスは供給されるガスの呼称
都市ガスの欄は、天然ガスを主原料とする代表的な供給を示します。
| 比較項目 | LNG | LPG | 都市ガス |
|---|---|---|---|
| 主な成分 | メタンを主体とする天然ガス | プロパン・ブタン | メタン主体が代表。供給仕様で確認 |
| 貯蔵・輸送 | 極低温の液体 | 加圧などで液体にする | 需要先へは通常、気体で導管供給 |
| 利用する状態 | 気化して燃焼器へ | 気化して燃焼器へ | 受け入れた気体を燃焼器へ |
| 設備の確認 | 貯槽・気化器・供給量 | 容器/貯槽・気化能力・調整器 | ガス種・供給圧力・契約容量 |
| 発熱量を比べる基準 | 質量か、気化後の基準体積 | 質量か、気化後の基準体積 | 温度・圧力を定めた体積 |
同じm³でも、液体と気体、実際の状態と基準状態では量が異なります。数値を比べる前に状態と単位をそろえます。
液化天然ガス(LNG)
LNGはLiquefied Natural Gasの略で、天然ガスを冷却して液体にしたものです。天然ガスはメタンを主成分とし、産地などによってエタン、プロパンなどを含む組成が異なります。
常圧付近で約−162℃まで冷却すると液化し、常温・常圧の気体に比べて体積が約600分の1になります。この小さな体積で貯蔵・輸送し、使用する場所で再び気体へ戻すことがLNG利用の基本です。
約−162℃は天然ガスの液化を説明する代表値で、実際の条件は組成と圧力によって変わります。貯槽や気化器の設計では、使用するLNGの性状と運転条件に合わせた仕様を選びます。
海外から海上輸送する場合には、低温を保つ構造のLNG船を使います。受入基地では液体を貯蔵し、需要に応じて気化して、都市ガスや発電などの用途へ供給します。
天然ガスは、気体のままパイプラインで輸送する経路もあります。距離、海の有無、必要量、既存の供給網などに応じて、輸送方法が選ばれます。
LNGの低温を保つ貯槽は、一般の常温液体タンクとは異なる構造と運用が必要です。周囲から熱が入ることで気化する分もあるため、液体の在庫とガスの圧力を合わせて管理する設備になります。
工場へ液体で届けるサテライト供給
都市ガスの導管が届かない場所でも、LNGをローリーなどで輸送して使う構成があります。工場などの敷地内に貯槽と気化器を設け、受け入れた液体を必要量に応じて気化して供給します。
このようなサテライト設備では、LNGの受入量だけでなく、気化器が処理できる量も確認します。年間使用量が足りていても、短時間の最大負荷に対する供給能力が不足すれば、必要なガスを送れません。
図2:LNGは液体で運び、気化器で熱を受けて気体へ戻す
ローリー受入と工場のサテライト供給の概念です。気化器へ供給する熱源は形式で異なります。
気化には熱が必要で、空気や水などから熱を受け取る形式が使われます。気化器の形式と周囲条件によって能力が変わるため、最も厳しい季節や連続使用の条件も仕様に含めます。
気化した後のガスは、機器に合う圧力と性状で供給します。熱量調整や付臭、整圧などの設備を、供給条件と燃焼器の仕様に合わせて組み合わせます。
敷地内で液体を持つ構成と、導管から気体を受ける構成では、需要家が保有・管理する設備も変わります。調達価格だけを比べず、受入、貯蔵、気化、保守の役割分担を確認すると比較が明確になります。
天然ガス以外の副生ガスなどを含む燃料の全体像は、気体燃料の種類と燃焼方式で整理しています。ここでは特に、液化して運ぶ燃料と、供給を受けるガスの違いを押さえます。
液化石油ガス(LPG)
LPGはLiquefied Petroleum Gasの略で、プロパンやブタンを主成分とするガスです。家庭でプロパンガスと呼ばれるものもLPGの一種で、用途によって成分の構成が異なります。
LPGの供給源には、油田や天然ガス田で産出するガスから分離・回収するものがあります。さらに製油所などで原油を精製する過程で得られるものもあり、石油精製だけで生じる燃料ではありません。
常温では気体ですが、圧力を加えるなどして液化し、液体として貯蔵・配送します。常温・常圧の気体と比べると液体の体積はおよそ250分の1となり、小さな容器や貯槽で量を確保できます。
LNGのような極低温への冷却と、LPGの常温付近での加圧液化を同じ条件として考えないことが重要です。成分と圧力、温度によって液化しやすさが異なるため、必要となる設備の方式も変わります。
気体のプロパンやブタンは、同じ温度・圧力で比べると空気より重い性質があります。メタン主体の都市ガスとの違いの一つですが、放出直後の低温ガスなどの挙動は温度や周囲条件にも左右されます。
LPGは、ボンベの交換で供給する形に加え、ローリーで貯槽へ補充するバルク供給もあります。導管の有無だけで利用を決めず、使用量、敷地、搬入経路、在庫管理の条件を組み合わせて計画します。
容器内の液体と、使用する気体を分ける
気相から取り出す容器では、内部の下側に液体、その上に蒸気があり、上部から気体を取り出します。使用によって気体が減ると液体の一部が気化し、周囲からそのための熱を受け取ります。
図3:気相取出しでは、液面から気化したガスを上部から送る
一般的な気相取出しの概念断面です。液相取出しで外部気化器を使う設備とは分けて考えます。
そのため、液体が残っていることと、必要な気体流量を連続供給できることは同じではありません。外気温や成分、液量、使用する速さによって、自然に気化できる量が変わります。
必要な量が多い設備では、所定の気化装置を組み合わせる構成が使われます。自然気化を前提とする容器と、液を送って外部で気化する設備では、取出し方法と機器構成を区別します。
燃料転換の計画では、最大負荷のガス量と、その条件で気化・調整できる能力を照合します。容量不足を自己流の加熱や弁操作で補うのではなく、供給設備として必要な仕様を確認します。
重油からLPGや都市ガスへ変える際の設備と費用は、ボイラーを重油からガス焚きへ変えるメリットでも扱っています。燃料の性質と、既存ボイラーの適合・改造の範囲を合わせて検討します。
都市ガス
都市ガスは、供給設備と導管を通じ、家庭や業務・工業用などへ供給されるガスです。日本では天然ガスを主原料とするものが広く使われ、LNGを気化して製造する供給が代表的です。
基地では、気化したガスの熱量を供給条件に合わせて調整し、付臭などを施します。LPGを加えて熱量を調整する構成もありますが、組成や工程を全国一律のものとして説明することはできません。
都市ガスの主成分がメタンでも、エタンやプロパンなどの割合によって発熱量や比重は変わります。同じ13Aというガス種でも固定の組成を意味しないため、供給者の性状表や契約条件を確認します。
例えば東京ガスネットワークは、13Aの標準熱量を総発熱量で45MJ/m³と公表しています。これは0℃、101.325kPaの乾燥ガスを基準とする値で、配管内の温度・圧力における実体積とは区別します。
燃料を比較するときは、発熱量が総発熱量か低発熱量かという基準もそろえます。水蒸気の凝縮熱を含むかどうかで値が変わるため、発熱量の測定と計算の区分を確認すると整理できます。
都市ガスを受ける設備では、熱量とガス種だけでなく、必要な流量時の圧力も重要になります。供給条件と配管の圧力損失を踏まえ、機器入口で必要な範囲に入るかを確認します。

13Aは、決まった成分の混合比ではない
13Aなどのガスグループは、燃焼性によって分類されるガスの区分です。ウォッベ指数と燃焼速度を組み合わせて適合性を扱い、13Aをメタン何%という固定のレシピとしては定義しません。
英字は燃焼速度の区分を表し、Aは区分上、比較的遅い側のグループを示します。数字の表記には従来の熱量単位を用いた分類の背景があり、現在のMJ単位の値をそのまま読んだものではありません。
したがって、13Aだからウォッベ指数が13MJ/m³、という読み方は誤りです。ガスの種類を判定する際には、供給者が示すガスグループと、使用機器の対応するガス種を照合します。
都市ガス用とLPG用の燃焼器では、同じ形の機器に見えても、必要なガス量や燃焼条件が異なります。燃料を替える際は、ノズルや調整だけを自己判断で変更せず、適合する構成を確認します。
ウォッベ指数は、熱量を比重で補正した指標
ウォッベ指数は、単位体積当たりの総発熱量を、空気に対するガスの比重の平方根で割った値です。同じ発熱量のガスでも、同じノズルから出る量は比重に左右されるため、その影響を考慮します。
同じノズルと圧力差で、ほかの条件をそろえた流れを考えると、重いガスほど体積流量は小さくなります。体積当たりの熱量だけでなく、流れてくる体積の違いも含めて熱入力を比較する考え方です。
図4:同じノズルでは、ガスの比重が流れる量に関係する
圧力差・口径などをそろえた流れの概念図です。ウォッベ指数は発熱量Hと比重aの両方を使います。
例えば総発熱量Hを45MJ/m³、空気に対する比重aを0.64と仮定します。0.64の平方根は0.8なので、ウォッベ指数は45を0.8で割った56.25になります。
図5:ウォッベ指数は、総発熱量を比重の平方根で割る
計算法を示す仮定値です。特定の供給ガスの組成・保証値を示すものではありません。
ウォッベ指数は互換性を考える指標の一つで、機器の適合には燃焼速度や供給圧力も関係します。供給者のガスグループと、燃焼器が対応するガス種を合わせて判断します。
計算書では、使った発熱量の単位と基準状態、比重の定義を残しておくと、値の違いを追いやすくなります。総発熱量と低発熱量を混ぜたり、別の基準体積の数値を代入したりしないようにします。
必要な熱量からガス使用量を求める
燃料使用量を比べるには、まず設備から取り出したい有効な熱量をそろえます。ここでは有効熱出力を1,000kW、総発熱量を基準とした効率を90%とする教材条件を考えます。
1時間に必要な有効熱は3,600MJで、燃料からの熱入力はこれを0.90で割った4,000MJです。総発熱量45MJ/m³のガスなら、4,000を45で割り、約88.9m³/hの基準体積流量になります。
LPGの総発熱量を仮に50MJ/kgとすれば、同じ4,000MJ/hに必要な量は80kg/hです。気体の体積と液体・燃料の質量で単位が異なるため、88.9と80の数字だけで消費量の優劣は決められません。
実設備では燃料や運転負荷によって効率も変わるので、両方を90%と置けるか確認が必要です。ボイラー効率の計算と発熱量基準をそろえて、同じ有効熱を得る条件へ換算します。
この基準体積流量を、そのまま高い圧力の配管を通る実体積流量として使うことはできません。配管径や計器を選ぶ際は、実際の圧力と温度、必要に応じた圧縮性の補正を含めて換算します。
価格と導入費用は、同じ熱量と範囲で比べる
都市ガスは必ずLPGより安い、という一律の比較はできません。料金は供給者や契約、使用量、設備の負担範囲で変わるため、同じ期間と同じ有効熱量に対する費用を比較します。
体積単価と質量単価を比べる場合は、それぞれの発熱量で割ると、燃料熱1MJ当たりの単価にそろえられます。さらに効率を反映すれば、設備で得られる有効熱1MJ当たりの費用へ換算できます。
燃料代以外に、基本料金、受入設備、気化器の熱源、保守、法定の検査などの費用も見積もります。導管工事と貯槽設置では費用の内容が異なるので、同じ見積もり範囲にそろえて比べます。
供給能力の比較では、年間使用量だけでなく、時間当たりの最大使用量と負荷の変動も提示します。燃焼制御に必要な調整範囲は、燃料と空気の比率制御と合わせて確認します。
ガス焚きでも、燃焼と排ガスの管理が必要
ガス燃料は、油のように噴霧して微粒化する工程を必要とせず、空気と混合して燃焼させます。混合や負荷の条件を踏まえ、不完全燃焼を抑え、窒素酸化物の発生も管理します。
空気を減らせば排ガス量による損失を抑えやすくなりますが、減らしすぎると燃焼が悪化します。空気比とO₂濃度の関係を使い、燃料と燃焼器の条件に合う範囲で管理します。
LNGやLPG、都市ガスも炭素を含む燃料なので、燃焼すれば二酸化炭素が発生します。燃料転換による削減を評価するときは、同じ有効熱量を得る条件と、対象とする排出の範囲をそろえます。
燃焼で生じる水蒸気を含めるかどうかで、排ガス量の値も変わります。乾き・湿り排ガス量の計算を区別し、燃料の組成と空気比に合う条件で熱回収設備を考えます。
ガスは硫黄分の少ない燃料ですが、排ガスをどこまでも冷やしてよいわけではありません。水蒸気が凝縮する領域では凝縮水と接する材料や排水処理が関係し、燃料の品質も確認が必要です。
顕熱だけを回収する構成と、凝縮を利用して潜熱まで回収する構成では、設計条件が異なります。エコノマイザによる熱回収も、排ガス温度と給水条件、腐食への対策を合わせて評価します。
NOxなどの排ガス濃度を比較するときも、酸素濃度の違いで単純比較できない場合があります。排ガス濃度のO₂換算をそろえ、燃料が変わった効果と測定条件の違いを分けます。
LNG・LPG・都市ガスのよくある質問
LNGと都市ガスは同じものですか?
LNGは液化した天然ガス、都市ガスは需要先へ供給されるガスの呼称です。LNGを気化し、供給条件に合わせた熱量調整や付臭などを行って都市ガスにするため、原料と供給形態の関係で考えます。
LPGはすべて石油精製で作られますか?
石油精製で得られるものに加え、油田や天然ガス田から回収するものがあります。成分はプロパン・ブタンを主体とし、天然ガスの主成分であるメタンとは性質が異なります。
LNGもLPGも、そのまま液体を燃やしますか?
一般的なガス燃焼設備では、気化して気体として燃焼器へ供給します。液体を貯蔵する段階と気体を使う段階を分け、気化に必要な熱と供給能力を確認します。
13Aなら、成分と発熱量はどこでも同じですか?
13Aは燃焼性のグループであり、全国共通の固定組成ではありません。供給されるガスの標準熱量、組成や圧力は供給者の仕様を確認し、機器の対応ガス種と合わせます。
ウォッベ指数が同じなら燃料を交換できますか?
ウォッベ指数だけでは、機器の適合や燃焼の状態をすべて判断できません。燃焼速度、供給圧力、ガス種、機器の仕様などを合わせて確認し、所定の手順で燃料転換を計画します。
LPGの体積単価が高いと、必ず割高ですか?
体積当たりの発熱量が違うため、同じm³の価格だけでは比較できません。発熱量と効率を使って同じ有効熱量へそろえ、基本料金や設備・保守の費用も含めて評価します。
まとめ
- LNGは天然ガスを極低温で液化したもの
- LPGはプロパン・ブタンを主体とする液化石油ガス
- 都市ガスはLNGなどを原料に、条件を整えて供給されるガス
- 13Aは固定組成ではなく、燃焼性のグループを示す
- 発熱量・比重・基準状態と、供給能力をそろえて比較する
三者の違いは、成分、液化する条件、需要先までの供給方法を分けると理解しやすくなります。燃料の名称だけで設備の適合や経済性を決めず、同じ熱量と運転条件へそろえて確認します。
出典
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