廃熱ボイラーとは?仕組みと5つの熱源、蒸気回収量の考え方

大型ダクトが接続された廃熱回収設備のイメージ

廃熱ボイラーとは、製造工程や焼却炉などから出る高温ガスの熱で、水を加熱して蒸気をつくる設備です。捨てていた熱を工場の加熱や発電に回し、別のボイラーで使う燃料を減らします。

熱源には、コークスの冷却熱、化学反応で生まれる熱、ごみを燃やした排ガスなどがあります。設備を理解する入口は、何を燃やすかだけでなく、どの工程から熱が届くかを見ることです。

この記事では、廃熱ボイラーの仕組みから、コークス・石油化学・硫黄・ごみ・バイオマスの熱源をたどります。後半では蒸気回収量を計算し、導入前にそろえる運転条件を整理します。

動画でも概要を紹介しています。バイオマス燃焼設備と廃熱回収部の区別、排熱・廃熱という呼称の使い方は、以下の本文で補足しています。

目次

廃熱ボイラーとは

製鉄や石油化学などの工場では、原料の加熱や反応のために高温の工程を使います。その工程を出たガスに残る熱を回収し、蒸気として取り出すのが廃熱ボイラーの役割です。

英語のWaste Heat Boilerを略してWHBとも呼びます。蒸気は構内の加熱設備へ送るほか、蒸気タービンを回して電気をつくる用途にも使われます。

廃熱ボイラーという名前が表すのは、主に熱源の性質です。煙管式や水管式といった構造とは別の分類で、ガスの性状や蒸気条件に合わせて構造と容量を決めます。

熱を蒸気に変える仕組み

高温ガスと水は、伝熱管などの金属壁を隔てて熱を受け渡します。通常運転では両者が混ざることはなく、ガスが冷える一方で、水が加熱されて蒸発します。

図1:水管・ドラム式の廃熱ボイラーの断面

高温ガスは水管の外を通り、水と蒸気はドラムと水管の間を循環します。

図は横にスクロールできます。

高温ガス冷えたガス蒸気空間ドラムの水蒸気へ給水非加熱の下降管加熱管:水+蒸気が上昇ガスは管の外側を通る

※自然循環式の概念図です。煙管式では管内をガスが通り、貫流式では水が一方向に流れるなど、実際の構造は機種で異なります。

図のドラムは、水と蒸気を分ける容器です。加熱管で発生した蒸気を水から分離し、蒸気配管へ送る一方、残った水は再び加熱管へ循環します。

必要な蒸気温度が高ければ、蒸気をさらに加熱する過熱器を組み合わせます。水側の流れによる構造の違いは、水管ボイラーの仕組みと種類で詳しく整理しています。

ガスと水の温度差が熱を移す力になるため、蒸気の圧力を高くすると回収条件も変わります。同じガスでも、低圧の蒸気をつくる場合と高圧蒸気をつくる場合では、利用できる温度範囲が異なります。

排熱ボイラー・エコノマイザとの違い

「排熱ボイラー」「廃熱ボイラー」は、いずれも工程の熱を回収する設備の名前として使われます。川崎重工の公式資料も「排熱/廃熱」と併記しており、文字だけで設備の方式を分ける必要はありません。

一方、エコノマイザ(節炭器)は、主に排ガスでボイラー給水を予熱する熱交換器です。廃熱ボイラーが蒸気を生むのに対し、エコノマイザはその手前の水を温める役割を担います。

ガスタービンの排気で蒸気をつくる設備は、排熱回収ボイラーやHRSGと呼ばれます。発電と熱利用を組み合わせる全体像は、コージェネレーションとコンバインドサイクルにもつながります。

廃熱ボイラーの熱源

熱源を整理するときは、材料の名前と、ボイラーに入るガスを分けると理解が進みます。コークスやごみそのものを管へ入れるのではなく、その熱を受けたガスから回収するためです。

コークス

コークスは、石炭を酸素の少ない状態で加熱する乾留によってつくられ、製鉄の原料に使われます。性質や石炭との違いは、コークスの作り方と用途で解説しています。

コークス乾式消火設備(CDQ)では、炉から取り出した赤熱コークスを不活性ガスで冷やします。日鉄エンジニアリングの説明では、取り出したコークスは約1000℃で、その顕熱を蒸気や電力に変えています。

顕熱とは、物の温度が変わるときに出入りする熱です。CDQではコークスを新たに燃やすのではなく、熱いコークスから循環ガスが受け取った熱を、廃熱ボイラーで水へ渡します。

図2:CDQの不活性ガスは循環して熱を運ぶ

コークスから受け取った熱をボイラーへ渡し、冷えたガスを冷却塔へ戻します。

赤熱コークス冷却後コークス冷却塔除じん器廃熱ボイラー循環送風機蒸気冷えたガスを戻す熱いガス

※主要機器だけを描いた概念図です。コークス炉で発生する燃料用の副生ガスとは別の流れを示しています。

冷却塔からボイラーへ向かうガスには粉じんが混じるため、除じんや伝熱面の清掃も重要です。単に温度を下げる装置ではなく、コークス冷却と熱回収を一体で考える設備になります。

石油化学製品

石油化学では、改質や合成などの工程で高温になったプロセスガスから熱を回収します。プロセスガスは製品をつくる工程の流体で、冷却したあとも次の反応や分離工程へ送る場合があります。

BORSIGの廃熱回収設備は、水素・アンモニア・メタノールなどのプラントを用途に挙げています。ガスを必要な温度まで冷却する機能と、蒸気をつくる機能を同時に受け持つ仕組みです。

そのため、熱を多く回収すればよいという設計にはなりません。下流工程へ渡す温度と圧力を守りながら、回収した蒸気を構内の加熱や動力源へ振り向けます。

一方、副生ガスを燃料として燃焼炉で燃やし、その燃焼排ガスから回収する系統もあります。仕様書では「ガスを燃やして使う」のか「既に熱いガスを冷やす」のかを分けると、供給範囲を整理できます。

硫黄

硫黄に関わる用途には、石油精製などで生じる硫化水素から硫黄を回収する工程や、硫酸の製造工程があります。反応炉などで生じた高温ガスを冷やす位置に、廃熱ボイラーを組み込みます。

ここでは、蒸気回収とともに次の反応段階に合うガス温度をつくることが重要です。処理するガスの成分が異なるため、一般の燃焼排ガス用ボイラーをそのまま転用する設計にはできません。

硫黄酸化物や水分を含むガスでは、冷たい伝熱面で酸が凝縮する低温腐食にも注意が必要です。酸露点と硫酸露点腐食を踏まえ、ガス成分と管の表面温度から回収範囲を決めます。

ゴミ

ごみ焼却施設では、焼却炉から出る燃焼ガスの熱をボイラーで回収します。発生した蒸気は発電に使うほか、場内の給湯や暖房、周辺施設への熱供給にも利用されます。

蒸気タービンで発電した電気は施設内で消費し、余剰分を売電する構成があります。ごみを安定して処理する目的に合わせ、熱回収も焼却や排ガス処理と一緒に設計します。

図3:ごみ焼却の熱を蒸気・電気として使う

ボイラーで熱を回収したあとのガスも、排ガス処理を経て煙突へ向かいます。

焼却炉廃熱ボイラー排ガス処理誘引送風機煙突熱利用へ蒸気タービン発電機蒸気復水・給水系を経て戻す

※熱利用の分岐は模式例です。復水器・給水タンクなどは省略しています。蒸気の利用先によって実際の系統は変わります。

ごみの水分や組成が変わると、同じ投入量でも発生する熱が変動します。ボイラーの定格蒸発量だけを見るより、季節や運転負荷に応じた実際の蒸気量をつかむことが運用の土台です。

また、灰の付着は伝熱を妨げ、塩化物などは伝熱管の高温腐食の原因になります。スートブロワによる伝熱面の清掃に加え、管の減肉を追う保全計画が欠かせません。

バイオマス

木材チップ、製紙工程の黒液、油分を含む廃液なども、熱エネルギーとして利用されます。ただし、これらを燃やす設備のすべてを、同じ意味の廃熱ボイラーとして扱うと仕組みが曖昧になります。

木材チップなどをボイラーの炉で直接燃やすなら、燃料を使うバイオマスボイラーです。別の焼却炉や処理工程で生まれた高温ガスを受けて蒸気をつくる部分が、廃熱回収に当たります。

黒液はパルプ製造で発生する液で、専用の回収ボイラーでは熱利用に加えて薬品回収も担います。熱だけを取り出す設備と同じ仕様で比べず、製造工程の中での役割を先に整理します。

食品工場の廃液などは、水分が多いほど蒸発に熱を消費します。濃縮や脱水の負担、助燃料、排ガス処理、残さ処理まで含めて、処理費と回収熱の価値を比べます。

バイオマスを燃料として利用する考え方は、資源エネルギー庁のバイオマス熱利用でも紹介されています。発電全体については、バイオマス発電のメリット・デメリットも参照できます。

廃熱ボイラーで回収できる熱と蒸気量

回収熱の概算は、ガスの量、比熱、入口と出口の温度差から求めます。次に、その熱で給水を蒸気へ変えるのに必要な熱量を割ると、蒸発量の目安になります。

ここではガス流量10000kg/h、平均比熱1.10kJ/(kg・K)、入口600℃、出口250℃と仮定します。これらは計算用の条件で、出口250℃を推奨するものではありません。

ガスが放出する顕熱
Qg = mgcp(Tin − Tout)
= 10000 × 1.10 × (600 − 250)
= 3850000 kJ/h
Qg:ガスの顕熱[kJ/h] mg:ガス質量流量[kg/h] cp:平均定圧比熱[kJ/(kg・K)] Tin・Tout:入口・出口温度[℃]。温度差の数値はKでも同じです。

放熱などを除き、その90%が給水から蒸気への加熱に使われると仮定します。さらに、蒸気と給水の比エンタルピー差を2400kJ/kgとして、蒸発量を計算します。

蒸気へ渡る熱と蒸発量
Qs = 0.90Qg = 3465000 kJ/h
ms = Qshs − hw = 34650002400
= 1443.75 kg/h ≒ 1.44 t/h
Qs:給水から蒸気への加熱に使う熱[kJ/h] ms:蒸発量[kg/h] hs・hw:蒸気・給水の比エンタルピー[kJ/kg]。差2400kJ/kgと割合90%は説明用の仮定です。

図4:ガスの熱から蒸発量までの計算手順

ガスが持つ熱、蒸気へ渡る熱、発生する蒸気を、順に分けて計算します。

① ガスが冷える10000kg/h × 1.10kJ/(kg・K) × 350K385万kJ/h
② 水へ渡る熱を求める385万kJ/h × 0.90346.5万kJ/h=962.5kW
③ 必要熱量で割る346.5万kJ/h ÷ 2400kJ/kg1443.75kg/h

※上の式と同じ仮定の概算です。実設備の保証蒸発量は、ガス組成・圧力・給水条件・ブロー等を含む熱収支から決めます。

比エンタルピーは、内部エネルギーに圧力と体積の積を加え、質量1kg当たりで表した量です。蒸発に要る熱は温度差だけでは求められないため、エンタルピーの考え方を使い、蒸気圧力や給水温度を反映します。

計算の1.44t/hは、熱源条件が続くときの発生量です。蒸気需要が1.00t/hしかなければ、その時刻に置き換えられる蒸気は最大1.00t/hであり、残りの利用先を別に考える必要があります。

導入前に見る条件

ボイラー煙道の点検蓋と金属外装で保温された配管
廃熱回収設備の点検部を表す生成イメージ

導入判断では、最高温度の測定値だけを設備メーカーへ渡すと能力を過大に見積もりやすくなります。生産量の違い、起動停止、季節変化を含めたガス条件と、蒸気の使い方を対にして整理します。

  • 熱源側:ガス流量・入口温度・許容出口温度・組成・粉じん・変動幅
  • 工程側:許容圧力損失・ガス出口条件・操業時間・停止可能時間
  • 蒸気側:圧力・温度・需要量・需要時間・給水温度と水質
  • 設備側:設置場所・清掃空間・配管経路・補機電力・予備熱源

特に重要なのは、熱が出る時刻と、蒸気を使う時刻の重なりです。昼だけ動く製造炉から回収しても、蒸気の主な需要が夜なら、そのままでは燃料削減につながりません。

図5:熱源と蒸気需要が重なる時間に使える

この例では8〜16時に廃熱を利用し、それ以外の需要は別の熱源で補います。

時間帯0〜8時8〜12時12〜16時16〜24時
高温ガス発生なしありありなし
蒸気需要ありありありあり
需要への供給別の熱源廃熱を利用廃熱を利用別の熱源

※時間帯は説明例です。「あり」の時間でも、回収量と需要量の小さい方が直接利用できる上限になります。

回収量に余裕がある時間と不足する時間が混在するなら、蒸気ヘッダー全体で調整します。既設ボイラーを残す範囲も決め、廃熱源が停止したときに生産工程へ必要な蒸気を供給できる構成にします。

ガス側の圧力損失も、もとの工程に影響します。管群を増やして熱を多く回収するときは、送風機の能力や動力増加を含め、炉や反応設備が必要な通風を保てるかを検討します。

水側では、ドラム式なら水位を保ち、貫流式なら流量を確保するなど、構造に応じた管理が必要です。スケールや腐食を防ぐ水処理の基礎は、ボイラー水の水処理と管理にまとめています。

回収熱が無料でも、設備の維持には給水・薬品・清掃・補機電力がかかります。年間の評価では、実際に減らせる燃料費からこれらの費用を差し引き、停止時の供給費も含めて採算を見ます。

効率の比較では、熱源の入口と出口、蒸気と給水を同じ範囲で計測することが大切です。熱源が変動する設備では、ある瞬間の高効率より、年間に何時間、必要な蒸気を回収できるかが判断の中心になります。

廃熱ボイラーのよくある質問

廃熱ボイラーに燃料はいらないのですか?

廃熱だけで必要な蒸気をつくれる運転では、回収部で新たに燃料を燃やす必要はありません。熱不足を補う追いだきや、起動用の燃焼設備を備える構成もあるため、補助燃料の有無は設備全体で整理します。

廃熱ボイラーは何℃のガスから使えますか?

一律の入口温度では決まりません。つくる蒸気の温度より十分に高い熱源が必要で、ガス量や腐食条件も回収量を左右します。低い温度の熱は、蒸気にするより給水予熱や温水利用が適する場合があります。

廃熱ボイラーは小さな工場でも導入できますか?

高温ガスが継続して発生し、近くに熱の使い道があれば検討対象になります。工場の規模だけで選ばず、回収量と稼働時間に対する設備費、配管費、保全費のバランスから方式を絞ります。

廃熱ボイラーならボイラーの資格は不要ですか?

燃料を使わないことだけで資格や検査の要否は決まりません。適用法令と設備の圧力・伝熱面積などで扱いが変わるため、メーカーの明細書や検査証をもとに管理区分を確定します。

廃熱を回収すれば必ず発電できますか?

蒸気をつくる設備に加え、タービンや発電機、タービンを出た蒸気の熱利用先や復水設備が必要です。少量の蒸気を遠くへ運んで発電するより、近くの加熱工程で使う方が設備と熱利用のバランスを取りやすい場合があります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 廃熱ボイラーは、他の工程の高温ガスから熱を回収し、蒸気に変える設備
  • コークス冷却、石油化学、硫黄関連工程、ごみ焼却などが熱源になる
  • バイオマスを直接燃やす設備と、その排ガスの熱を回収する部分を区別する
  • 蒸気量は回収熱と給水・蒸気のエンタルピー差から概算する
  • 導入判断ではガス性状・操業時間・蒸気需要・保全費を組み合わせる

廃熱ボイラーを見かけたら、入口のガスがどの工程で熱を受けたかと、出口の蒸気がどこへ届くかを追うと役割が見えてきます。蒸気設備全体の基礎はボイラーの仕組みと管理区分、省エネの進め方は工場のエネルギー管理も参考になります。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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