抵抗温度係数は温度による抵抗の変わり方、抵抗率は材料の電気の通しにくさを表します。前者は温度差から抵抗の変化を計算し、後者は導体の長さと太さから抵抗を計算するときに使います。
抵抗温度係数はTCRと略し、抵抗器ではppm/K、導体の計算ではK−1などで示されます。抵抗率の単位はΩ・mなので、記号だけでなく単位を見ると、どちらを使う問題なのかが分かります。
抵抗器の仕様書と電線の材料表では、同じ「抵抗」でも読んでいる条件が異なります。
抵抗温度係数とは
図1:温度を変える試験と、寸法から求める計算
TCRでは同じ部品の温度変化を追い、抵抗率では材料と形状から抵抗を求めます。
25℃の抵抗と65℃の抵抗を比べる。差を基準抵抗と温度差で割る。
温度を決めた材料に、長さLと断面積Aを組み合わせる。
※温度差による変化と、形状による違いを分けてから計算します。
抵抗温度係数は、温度が1℃変わったときの抵抗値の変化割合を示す量です。英語のTemperature Coefficient of Resistanceを略してTCRと呼び、基準温度の抵抗に対する割合で表します。
例えば温度上昇で抵抗が増える材料は正、減る材料は負の係数を持ちます。変化量そのものの単位であるΩ/℃とは異なり、もとの抵抗で割って規格化している点が、この指標の特徴です。
金属では温度が上がると原子の熱振動が強まり、電子が散乱されて抵抗が増える傾向があります。電子に働く力の入口となる電界と、材料内で電子が動きにくくなる性質は分けて捉えます。
ppm/KとK−1の換算
ppmは百万分の一を表すので、50ppm/Kは1Kあたり50×10−6の相対変化です。温度差1Kは温度差1℃と等しく、ppm/Kとppm/℃の数値は同じになります。
ただし、ppm表示の50をそのまま抵抗の式に入れると、変化割合が百万倍になります。先にK−1へ直してから温度差を掛けると、何%変わる計算なのかも途中で確かめられます。
抵抗器の仕様書には、係数を±50ppm/Kのように上下限で示すものがあります。これは個々の抵抗器が必ず正の50で変化する意味ではなく、規定条件内での変化の範囲を読む表記です。
温度差から抵抗値を求める計算例
温度変化が十分小さく、係数を一定と近似できる範囲では、抵抗は一次式で扱えます。基準温度をt1、その温度での抵抗をR1とし、温度差に対する増減を基準抵抗に足します。
25℃で10,000Ω、係数を正の50ppm/Kと仮定した抵抗器を、65℃まで温める例です。変化率を求めてから抵抗へ戻すと、40℃の上昇で20Ω増えるという結果を読み取れます。
図2:50ppm/Kを、抵抗と温度のグラフで読む
25℃の10,000Ωを出発点とし、65℃までの変化量が20Ωになる計算例です。
※縦軸は0Ωから始まっていません。実際の製品特性ではなく、正の一定係数を仮定した計算図です。
2点の測定から平均のTCRを逆算するときは、抵抗の増減を基準抵抗と温度差で割ります。始点を25℃にするか0℃にするかで分母の抵抗が変わるため、係数と基準温度は一組で記録します。
実際にTCRを測るときは、周囲の設定温度に試料自身の温度が追い付くまで待って値を記録します。加熱途中の抵抗を読むと、温度と抵抗が別の時点を表すため、係数を正しく求められません。
温度差が小さすぎる試験では抵抗の変化も小さくなり、測定器の分解能や温度測定の誤差が目立ちます。必要な温度区間を決めたうえで、抵抗変化を十分に読み取れる測定器を組み合わせます。
上下両側の温度で抵抗を測れば、基準より低い側と高い側で変化が異なるかを見分けられます。温度点を追加して曲線を追うことは、2点の平均だけでは見えない非直線性を調べる方法になります。
低TCRと抵抗精度は分けて読む
低TCRは温度変化による抵抗のずれが小さい意味で、初期抵抗が公称値に近い意味とは別です。選定では初期許容差とTCRを別々に確認し、使用温度で必要な精度を満たすか判断します。
例えば初期許容差±0.1%の10kΩ抵抗器なら、基準温度で既に±10Ωの幅があります。温度による変化をこれに重ねて見積もり、設計で許せる合計の誤差に余裕がある部品を選びます。
抵抗器へ電流を流すと、その抵抗器自身も発熱して周囲より温度が上がります。この自己加熱を考えると、計算に必要なのは室温だけではなく、抵抗体が実際に達する温度だと分かります。
温度上昇は消費電力と放熱状態で変わるため、定格電力以内でも抵抗の温度変化は生じます。基板の銅箔面積や風の影響は熱伝導率と熱伝達率に関係し、電力と実装条件を一緒に扱う必要があります。
長時間の使用による抵抗の変化や、はんだ付け前後の変化も、TCRとは異なる仕様です。温度を元へ戻しても残る変化は、温度差から計算する可逆的な変化と分けて原因を調べます。
低TCR品の効果を考えるときは、回路が温度でどれだけずれてよいかを先に決めます。例えば温度による変化を0.1%以内、温度差を40Kとすれば、必要な係数の目安を逆算できます。
同じ許容差でも使用温度範囲が広いほど、温度変化に割り当てる係数は厳しくなります。初期誤差の調整だけで解決するのか、温度によるずれも抑える必要があるのかで、選ぶ抵抗器が変わります。
温度差を計算するときは最高温度と最低温度だけでなく、仕様の基準温度を見ることも必要です。25℃を基準にした許容変化なら、使用範囲の両端を25℃から評価し、それぞれの大きさを比べます。
試験温度の範囲と、部品が壊れずに使える使用温度範囲は、仕様書の別の欄に記載されます。後者だけを根拠にTCRを延長せず、精度が規定された条件まで読むと選定の行き違いを減らせます。
温度センサーでは変化を利用する
温度を測る用途では、必要な温度範囲で安定した抵抗と温度の対応関係を持つ素子を使います。サーミスタとPt100はその代表で、抵抗の変化を温度の情報へ変換する部品です。
NTCサーミスタは温度が上がると抵抗が減り、PTCサーミスタは温度が上がると抵抗が増えます。半導体の抵抗を一律に負の係数とせず、NTCとPTCの特性を区別して使います。
白金測温抵抗体は、金属の抵抗が温度で増える性質を使った温度センサーです。測定誤差には導線抵抗や計器の誤差も加わるため、素子の温度特性だけで測定全体の精度は決まりません。
配線の影響を抑える仕組みは、測温抵抗体の2線式・3線式・4線式で扱っています。抵抗器では小さな変化を求め、センサーでは再現性のある変化を読み取るという用途の違いがあります。
抵抗率とは

抵抗率は、形状の影響を除いた材料の電気の通しにくさを表す量で、記号はρです。ここで扱う直流の体積抵抗率の単位はΩ・mで、温度や材質をそろえて材料同士を比較します。
断面積1m2、長さ1mの均一な導体を考えると、その両端の抵抗の数値が抵抗率に対応します。この大きさの試験片を実際に作る意味ではなく、寸法から切り離した比較の基準です。
同じ銅でも長い線は抵抗が大きく、太い線は抵抗が小さくなりますが、同じ温度の同じ材料なら抵抗率は共通です。抵抗Rは部品や導体の値、抵抗率ρはその材料に対応する値として区別します。
図3:抵抗率を求める長さと、四端子の位置
電流端子の内側に電圧端子を置き、その間の長さLを計算に使います。
※棒状の均一試料を想定した模式図です。薄膜を測る四探針法では、試料形状と厚さに応じた補正を使います。
銅線の抵抗を計算する
20℃の標準軟銅の値として、抵抗率1.7241×10−8Ω・mを用いる例です。長さ10m、均一な断面積1mm2の線を仮定し、面積をm2へ換算してから代入します。
ここで求めたのは1本の導体の抵抗なので、同じ長さの往復2本なら抵抗も2倍です。接続部の抵抗を加えて電圧降下を見積もるときも、電流が通る経路全体の長さから考えます。
面積1mm2は長さ1mmをmへ直すだけでは換算できず、換算係数を二乗します。抵抗率をΩ・mm2/mで示す資料ならmm2のまま使えるので、式の各単位を統一すると桁違いを防げます。
導体の温度が変わる計算では、まず寸法から基準温度の抵抗を求め、その抵抗へTCRを適用します。20℃で10mの軟銅線を60℃へ温める例なら、温度差40Kを20℃基準の係数へ掛けます。
この結果は導体の抵抗が温度で増える計算であり、電線の許容電流を決める計算とは異なります。許容電流では絶縁物や敷設方法、放熱条件も関わるため、抵抗だけから使用電流を決めることはできません。
断面積を大きくすると抵抗が下がる一方、材料を変えても抵抗率の比に応じて値が変わります。寸法の変更か材料の変更かを分けて試算すれば、必要な抵抗を得る設計の手段を具体的に比べられます。
丸線の断面積を直径から求める場合、直径が2倍なら面積は4倍になります。長さや材料が同じなら抵抗は4分の1なので、直径と抵抗を単純な反比例で結ばないことも寸法計算の要点です。
導電率は抵抗率の逆数
導電率σは、抵抗率とは反対に電気の通しやすさを表し、単位はS/mです。同じ方向・温度の材料について、抵抗率の逆数が導電率になるので、どちらの仕様でも同じ抵抗を計算できます。
軟銅の例では導電率は約5.80×107S/mであり、式へ入れると前と同じ抵抗が出ます。水溶液でも使われる導電率の単位と温度補償は、測定対象と温度条件をそろえるという点で共通します。
体積抵抗率・表面抵抗率・シート抵抗の違い
体積抵抗率は試料の内部を流れる電流を評価する量で、絶縁材料でも用いられます。板の厚さ方向に電圧を加える場合は、電極面積と板厚を使って測定抵抗を材料の値へ換算します。
絶縁材料の表面抵抗率は、表面に沿う電流を電極の配置で補正して評価する量です。単純な面積あたりの抵抗ではなく、電極間の距離と電極形状を含む測定条件が意味を持ちます。
導電性薄膜のシート抵抗は、膜の面内方向の抵抗を表し、Ω/□などで表示します。均一な膜なら体積抵抗率を膜厚で割って求まり、膜厚が半分ならシート抵抗は2倍になります。
図4:電流をどこに流すかで、評価する量が変わる
内部・絶縁物の表面・薄膜の面内を分け、電極形状と単位を対応させます。
体積抵抗率ρ
単位:Ω・m
板厚と電極面積を使う
表面抵抗率
単位:Ωなど
電極の配置で換算
シート抵抗Rs
単位:Ω/□
体積抵抗率と膜厚を使う
※赤い矢印は評価する電流経路。表面抵抗率とシート抵抗を同じ呼称で扱う資料もあるため、測定対象と式で区別します。
Ω/□の□は、1m2などの面積単位ではなく、長さと幅が等しい正方形を表す記法です。面内の長さと幅を同じ比率で変えれば、その比が変わらず抵抗も同じになることを表現しています。
表面抵抗率も慣例的にΩ/□で表す例があり、表示単位だけでは区別できません。試料内部を流すのか、表面に沿わせるのかを先に決め、使用した電極と換算式を記録します。
例えば体積抵抗率が1×10−6Ω・m、膜厚が100nmの均一な膜を仮定します。膜厚をmへ直して抵抗率を割れば、シート抵抗は10Ω/□と求まり、面内の寸法と組み合わせられます。
この膜で測定値が変わっても、直ちに材料そのものの抵抗率が変わったとは判断できません。膜厚や幅のばらつきが抵抗へ反映されるため、寸法の実測と抵抗の実測を組み合わせて評価します。
薄膜は下地や形成条件によって、同じ元素のかたまりとは異なる抵抗率になる場合もあります。バルク材料の表は出発点として使い、実際の膜で得た抵抗率と混同せずに結果を整理します。
絶縁材料の表面は汚れや水分の影響を受けるため、測定前の試料の扱いも条件になります。表面を流れる電流と内部の漏れ電流を区別し、試料の状態と電極の配置を測定記録へ残します。
小さな抵抗を測るときの注意点
一般の2端子測定では、試料に加えてリード線や接触部の抵抗も測定値に含まれます。導体の小さな抵抗を正確に求めるときは、電流を流す端子と電圧を測る端子を分ける四端子法が役立ちます。
棒状試料なら、電圧端子間の電圧を測定電流で割り、その区間の寸法から抵抗率を求めます。四探針法で薄膜を測る場合には、探針間隔、厚さ、試料の端までの距離に対応する補正も使います。
測定の前には電源を切り、残留電荷を処理して、対象を回路から適切に切り離します。一般のテスターによる抵抗測定でも、通電中の回路を抵抗レンジで測らないことが基本です。
大きな測定電流を使えば電圧が読みやすくなる一方、試料自身が発熱して抵抗が変化します。測定値の安定と試料温度を見て、自己加熱を抑えられる測定条件を選ぶと、材料を正しく評価できます。
導体の抵抗温度係数と抵抗率
材料を比較するときは、抵抗率の値を示す温度と、TCRの基準温度・測定範囲を並べます。0℃の表と20℃の表では条件が違うため、同じ材料名でも数値をそのまま混在させないことが大切です。
次の表は抵抗率を20℃でそろえ、銅には標準軟銅、ニクロムには具体的なNi-Cr合金を使っています。鉄とタングステンは純度・加工状態が特定されていない教材の代表値で、購入材料の保証値とは区別して読みます。
| 比較する項目 | 銅(標準軟銅) | 鉄(代表値) | タングステン(代表値) | ニクロムの例(Nikrothal 80) |
|---|---|---|---|---|
| 20℃の体積抵抗率[10−8Ω・m] | 1.7241 | 9.71 | 5.60 | 109 |
| 温度による変化の資料値 | 20℃基準で約3,930ppm/K | 20℃付近で約6,500ppm/K | 20℃付近で約4,500ppm/K | 20→100℃の抵抗率倍率1.01 |
| 係数を使う際の条件 | 標準軟銅の温度補正 | 室温近傍の近似 | 室温近傍の近似 | 一定TCRへ置換せずメーカーの倍率表を使う |
| 出典 | 米国標準局 Copper Wire Tables | OpenStax Table 9.1 | OpenStax Table 9.1 | Kanthal製品データシート |
図5:材料比較では「抵抗の大きさ」と「温度変化」を別の欄で読む
20℃の抵抗率が低い材料でも、温度による変化が小さいとは限りません。
※数字の条件と出典は直前の表に対応します。合金の組成や加工状態が異なる材料へ、そのまま適用しません。
基準温度が変わると係数も変わる
線形近似では温度差1Kごとの抵抗の増分は一定ですが、TCRはその増分を基準抵抗で割った値です。基準温度を変えると基準抵抗も変わるため、係数の数字も変化するという関係があります。
20℃を基準にした係数を0℃基準へ直すには、同じ直線モデルの中で基準抵抗を換算します。これは温度の単位を変える操作とは違い、相対変化を割る基準の変更に当たります。
合金や半導体では、抵抗と温度の関係に曲がりが大きいものもあります。広い温度範囲に対してはメーカーの温度特性曲線や換算表を用い、1つの係数だけで全域を計算する方法は避けます。
導線・抵抗器・電熱線で求める性質
導線は運転中の電圧降下や発熱を小さくしたいので、低い抵抗率が役立ちます。銅を選んでも温度が上がれば抵抗は増えるため、使用温度での抵抗と断面積から損失を見積もります。
抵抗器では、回路に必要な公称抵抗を部品として作り込んだうえで、温度変動を抑えます。材料の抵抗率だけで精度を判断せず、TCR、許容差、長期安定性を使用条件に合わせて選びます。
電熱線では限られた長さで必要な抵抗を作り、発熱させるために高い抵抗率を利用します。ニクロムなどを使う電気加熱では、抵抗値に加えて耐熱性と耐酸化性が材料選定の重要な条件です。
図6:目的の違いを、使う部品から整理する
必要な抵抗値を決めた後、温度変化を抑えるか利用するかで選定の軸が変わります。
温度センサーでは、使用温度範囲に合う素子を選び、その抵抗と温度の対応を計器へ設定します。熱電対と測温抵抗体の違いは別記事で解説しています。
センサーの値を別の機器へ送るときは、抵抗をそのまま読む方法と、発信器で変換する方法があります。4-20mAの信号として取り込む場合でも、元のセンサー特性と発信器の設定が一致していることが前提です。
電熱線に同じ電圧を加える場合、抵抗が増えると電流が減り、消費電力も小さくなります。同じ電流を保つ制御なら抵抗の増加で電力が増えるので、電源の制御方式と抵抗の変化を一緒に考えます。
例えば電圧を一定にして抵抗が10%増えれば、電力はもとの約90.9%になります。抵抗の増えた割合をそのまま電力から引く計算ではなく、運転時の抵抗を式へ入れ直すことで結果を求めます。
ニクロムの温度倍率表は抵抗率についての表であり、電熱線の抵抗と厳密には量が異なります。実物の運転時抵抗を計算するときは、熱膨張による寸法変化を含むかも設計資料の前提に合わせます。
室温から高温までの変化を求める場合、途中で係数が変わる材料を1つの直線で結ぶと誤差が増えます。ランプのフィラメントなどでは、冷たい状態と運転中の抵抗を分けて扱う必要があります。
抵抗温度係数と熱膨張係数は、どちらも温度差あたりの割合を持ちますが、変化する量が異なります。前者は抵抗、後者は寸法の変化なので、同じK−1でも記号の定義を読むことが材料表の読み違いを防ぎます。
選定と測定の結果を照合する手順
最初に必要なのが、導体の抵抗なのか、抵抗器の温度変動なのか、材料の比較なのかを決めます。目的を明確にすると、長さと面積を使う式か、温度差を使う式かを選びやすくなります。
- 材種、合金名、基準温度と使用温度をそろえる。
- 抵抗率とTCRを、それぞれの単位と測定範囲付きで拾う。
- 寸法から基準温度の抵抗を求め、必要に応じて温度補正する。
- 測定時の配線、接触抵抗、自己加熱と試料温度を記録する。
- 差が出たときは、材料の違いと測定条件の違いを順に切り分ける。
例えば導線の実測値が計算より大きい場合、材料が違うと決める前に往復長や端子間の長さを調べます。断面積の単位、試料温度、接触部も追えば、材料を交換する前に原因を絞れる場面があります。
抵抗器の実測値が温度と共に変わる場合は、部品周囲の温度と通電後の安定時間をそろえます。常温へ戻した値も残しておくと、温度による変化と恒久的な変化を比較しやすくなります。
測定結果を他の担当者へ渡すときは、「抵抗が増えた」だけでなく、どの温度の値かを添えます。通電直後と十分冷えた状態を混ぜると、材料の劣化と通常の温度変化を取り違える原因になります。
測定端子の位置を変えれば電流が通る区間も変わり、同じ導体でも測定値が変化します。測定位置を図面や写真で残せば、後日の比較で同じ区間を再現しやすくなり、状態の変化を追えます。
比較の表には測定した抵抗値と、そこから計算した抵抗率を別々に残しておくと便利です。後から寸法の測定値を訂正した場合でも、もとの抵抗の記録を保ったまま再計算でき、修正理由を追えます。
TCRを比較する表では基準抵抗と2点の温度を残し、係数の表示だけで比較を終えないようにします。同じppm/Kでも温度区間が違えば、使用する温度範囲での変化の大きさが違う場合があるためです。
計算に使う桁数は途中で減らしすぎず、最終結果を材料値や寸法の精度に合わせて丸めます。代表値を細かい桁で計算しても材料の保証精度は増えないので、数値の桁と測定の確かさを分けて示します。
抵抗温度係数と抵抗率のよくある質問
抵抗温度係数の単位はppm/℃とppm/Kのどちらですか?
どちらも使われ、温度差1℃と1Kは等しいため、同じ条件なら数値も等しくなります。計算式でαに使うときは、ppm表示の数値に10−6を掛けて、K−1または℃−1へ換算します。
抵抗温度係数は小さいほど良いのですか?
温度が変わっても抵抗を一定に保ちたい回路では、TCRの絶対値が小さい部品が向きます。一方、抵抗式温度センサーは抵抗と温度の対応関係を利用するので、小ささだけで優劣は決まりません。
同じ銅なのに抵抗率の表の値が違うのはなぜですか?
温度に加えて不純物の種類や量、焼なましなどの加工状態、資料の丸め方が違うためです。材料名だけで合わせず、標準軟銅か実際の製品値かを区別し、温度もそろえて計算に使います。
ニクロムの抵抗は温度が上がっても一定ですか?
一定ではなく、合金の種類と温度によって抵抗の変化が生じます。電熱線では常温の係数を高温まで伸ばすより、該当材種の温度特性表から運転時の値を求めるほうが適切です。
シート抵抗のΩ/□は1平方メートルあたりですか?
1平方メートルあたりの意味ではなく、均一な膜の正方形部分を向かい合う辺で測る記法です。長さと幅の比が1なら、正方形の一辺の長さによらず同じシート抵抗に対応します。
抵抗率を求めるならテスターで抵抗を測るだけで十分ですか?
抵抗率へ換算するには、電流の通り道に対応した長さと断面積、測定温度が必要です。特に低抵抗ではリード線や接触部の影響が大きく、四端子法と寸法の管理を組み合わせて評価します。
まとめ
- 抵抗温度係数は温度差あたりの相対変化で、基準温度と測定範囲を伴う。
- ppm/Kは10−6を掛けてK−1へ直してから抵抗の式に使う。
- 体積抵抗率は材料の電気の通しにくさで、長さと断面積から抵抗を求める。
- 体積抵抗率・表面抵抗率・シート抵抗は、電流経路と形状の条件で区別する。
- 導線・抵抗器・電熱線・温度センサーでは、求める材料特性が異なる。
抵抗の値だけを比べるより、温度、材料、寸法をそろえて読むと用途との関係が見えてきます。導体の損失や発熱を減らす検討は、工場の省エネの中でも、測定と計算を結び付ける基本になります。
出典
出典・参考資料(4件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 発熱電力の式:OpenStax, 9.5 Electrical Energy and Power
- 四端子測定と接触抵抗:HIOKI「4端子抵抗測定法について」
- RTDの温度特性と導線の影響:TE Connectivity「RTD Basics」
- 抵抗測定前の電源遮断と放電:Fluke「How to Measure Resistance」
- TCRの定義、規定温度間の係数と抵抗特性:KOA「抵抗器のよくあるご質問」
- 抵抗率・導電率・室温付近の材料代表値:OpenStax, University Physics Volume 2, 9.3
- 20℃の標準軟銅の抵抗率と温度係数:米国標準局「Copper Wire Tables」第3版
- Ni-Cr合金の抵抗率と温度倍率:Kanthal「Nikrothal 80 Wire」製品データシート
- 抵抗率・シート抵抗の式と四探針法:ナプソン「抵抗率、シート抵抗測定の原理」
- 表面抵抗率の単位:HIOKI「表面抵抗率の単位について」
- 正・負の温度特性を持つサーミスタ:村田製作所「Murata’s Thermistors」
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