コロイドの種類と違い|分子・会合・分散と疎水・親水・保護コロイド

塗料工場の分散タンクとビーズミル

コロイドの種類は、粒がどうやってコロイドの大きさになったか(分子・会合・分散コロイド)と、電解質を加えたときの沈みにくさ(疎水・親水コロイド、それを守る保護コロイド)という2つの物差しで分けられます。

2つは別々の分類なので、同じコロイドを両方の名前で呼ぶことができ、たとえばデンプンの液は分子コロイドであり親水コロイドでもあります。

牛乳、塗料、墨汁、浄水場に入ってくる川の濁りは、どれもこの言葉で説明できます。工場には、塗料やインクのように粒をいつまでも散らしておきたい現場と、排水処理のように粒を集めて沈めたい現場があり、どちらもコロイドの種類と安定性の知識がそのまま効いてきます。

この記事では、コロイドの定義と分散媒・分散質の組み合わせ、構造による3分類、粒が電荷を持つ理由と正コロイド・負コロイドの見分け方を整理し、そのうえで安定性による3分類と凝析・塩析の違いを見ます。

後半では、塗料・インク・乳化で粒を散らす技術、凝集剤で粒を沈める水処理、粒子径とゼータ電位を測る品質管理まで、工場での使われ方を見ていきます。

目次

コロイドとは?分散質と分散媒でできた混ざり方

コロイドとは、分子やイオンよりは大きく、沈んでしまうほどは大きくない粒が、別の物質の中に散らばっている状態のことです。

国際純正・応用化学連合(IUPAC)はおよそ1 nm〜1 µm の粒を目安にしています。高校の教科書では 10−9〜10−7 m 程度で、事典によっては1〜100 nm 程度や、上限を500 nm 程度とする書き方もあります。

散らばっている粒を分散質、粒を取り囲んでいる物質を分散媒と呼びます。デンプンを水に溶かした液なら、デンプンが分散質で水が分散媒です。分散媒が液体のものをコロイド溶液、気体のものをエアロゾルといい、ペンキはコロイド溶液、煙はエアロゾルの例になります。

図1:分散質(粒)と分散媒(まわり)の関係

同じ「粒が散らばった状態」でも、まわりが気体・液体・固体のどれかで呼び名と身近な例が変わります。

気体の中液体の中固体の中霧・煙(エアロゾル)牛乳・墨汁・塗料色ガラス・軽石● = 分散質(粒)  まわりの気体・液体・固体 = 分散媒

※粒の大きさの目安は IUPAC の定義でおよそ1 nm〜1 µm。日本大百科全書・百科事典マイペディア(コトバンク「コロイド」)の記述をもとに作成。

分散媒と分散質はどちらも気体・液体・固体の3通りなので、組み合わせは9通りです。ただし気体どうしは分子の大きさで均一に混ざってしまうため、コロイドになるのは残りの8通りで、それぞれに次のような呼び名があります。

分散媒(まわり)分散質(粒)呼び名身近な例・工業の例
気体液体エアロゾル(霧)霧、スプレーの噴霧、塗装時の塗料ミスト
気体固体エアロゾル(煙)煙、粉じん、溶接のヒューム
液体気体泡石けんの泡、消火用の泡
液体液体エマルション(乳濁液)牛乳、マヨネーズ、エマルション塗料
液体固体ゾル・サスペンション(懸濁液)墨汁、泥水、塗料・インク、研磨用のスラリー
固体気体固体の泡軽石、発泡スチロール、ウレタンフォーム
固体液体ゲル(液体を抱えた固体)ゼリー、豆腐
固体固体固体ゾル金の微粒子で赤く色づけたガラス
出典:百科事典マイペディア・岩石学辞典・世界大百科事典(コトバンク「コロイド」「乳濁液」)をもとに作成。エマルションの液滴やサスペンションの粒は、コロイドの上限より大きいものも含めて呼ばれます。

表の呼び名は、粒の大きさよりも「何が何に散らばっているか」で付けられています。エマルションの液滴は通常0.1〜10 µm とされ、コロイドの上限を超えるものも含むので、表は分散した状態の名前の一覧で、すべてが狭い意味のコロイドとは限りません。

液体の中で粒が流れるゾルと、網目が液体を閉じ込めたゲルの違いはゾルとゲルの違いで詳しく扱っています。

ここから先の分類は、主に液体が分散媒になる場合の話です。そのうえで、粒の「でき方」と「電解質への強さ」という2つの物差しを頭に置いておくと、6つの名前の関係が整理しやすくなります。

図2:コロイドを分ける2つの物差し

でき方の分類と、電解質への強さの分類は別の軸です。1つのコロイドに両方の名前が付きます。

物差し1:粒のでき方(構造)分子コロイド:大きな分子1個が粒
会合コロイド:小さな分子が集まった粒
分散コロイド:溶けない物質を細かくした粒
物差し2:電解質への強さ(安定性)疎水コロイド:少量の電解質で沈む(凝析)
親水コロイド:多量の電解質で沈む(塩析)
保護コロイド:疎水コロイドを守る親水コロイド
例:デンプンの液=分子コロイドかつ親水コロイド/金コロイド・水酸化鉄(III)コロイド=分散コロイドかつ疎水コロイド

※両方の分類は一対一には対応しません。組み合わせの傾向は本文で説明します。

構造による分類:粒がコロイドの大きさになる3つの道筋

1つ目の物差しは、コロイド粒子の成り立ちです。同じ1〜数百 nm の粒でも、拡大してみると1個の巨大な分子、小さな分子の集まり、細かく砕かれた固体のかけらという、まったく違うものが混じっています。

この違いで分子コロイド、会合コロイド(ミセルコロイド)、分散コロイドの3つに分けます。

図3:粒がコロイドの大きさになる3つの道筋

分子がつながって大きくなるか、分子が集まるか、大きな固まりが小さくなるかで分類します。

分子コロイド会合コロイド分散コロイド1個の巨大な分子分子が数個〜数十個集まったミセル固体を細かくした粒砕く・析出させる

※ミセルの丸い頭は水になじむ部分(親水基)、内側の線は油になじむ部分(疎水基)。世界大百科事典・化学辞典(コトバンク「コロイド」)の記述をもとに作成。

分子コロイド:1個の大きな分子がそのまま粒になる

分子コロイドは、分子1個がすでにコロイドの大きさに達しているものです。デンプンはブドウ糖が、タンパク質はアミノ酸が多数つながった高分子で、1個の分子が数 nm 以上に広がるため、水に溶かしただけでコロイド溶液になります。

寒天、ゼラチン、卵白の液が代表例で、合成樹脂のうち水に溶けるポリビニルアルコールなども同じ仲間です。タンパク質の液がコロイドとしてふるまう点は、色の変化でタンパク質を見分けるアミノ酸・タンパク質の検出反応や、食品のタンパク質を分ける操作の前提にもなっています。

会合コロイド(ミセルコロイド):界面活性剤が集まったミセル

会合コロイドとミセルコロイドは、同じものの別の呼び名です。会合は「分子どうしが集まること」を指し、石けんや洗剤の成分である界面活性剤の分子が数個から数十個集まって、ミセルと呼ぶコロイドの大きさの集合体をつくります。

界面活性剤の分子は、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(疎水基)を1つの分子の中に持っています。水の中では油になじむ部分を内側に向けて球状に集まり、ミセルの内側に油を取り込めるので(可溶化)、洗剤が油汚れを落とす働きの1つになっています。

ミセルは、界面活性剤の濃度がある値を超えたときに初めてでき、この濃度を臨界ミセル濃度(CMC)と呼びます。

ブリタニカ国際大百科事典小項目事典では多くの界面活性剤で0.1〜0.001 mol/L とされ、物質の種類で大きく異なります。CMC を境に表面張力や電気伝導率が急に変わるので、洗剤や乳化剤の性能を調べるときの基本の数字として測られています。

分散コロイド:溶けない物質を細かくした粒

分散コロイドは、金属や硫黄、金属の水酸化物のように本来は水に溶けない物質が、細かな粒になって散らばったものです。粒子コロイドとも呼ばれ、大きな固まりを砕いて細かくする方法(分散法)と、溶けている物質を反応させて小さな粒として析出させる方法(凝集法)でつくります。

金のコロイドは粒径10〜20 nm でルビー色を示し、ガラスに金を溶かし込んで微粒子として析出させると赤いガラスになります。塩化鉄(III)を沸騰水に加えてつくる赤褐色の液も分散コロイドの代表で、透析や電気泳動での確かめ方は水酸化鉄(III)コロイドの性質と実験にまとめています。

分子・会合・分散コロイドの違い

3つを分けるポイントは、どのような道筋でコロイドの大きさの粒になったかです。原子がつながって大きな分子になったものが分子コロイド、小さな分子が集まってミセルをつくったものが会合コロイドです。

溶けない大きな固まりが小さくなったものが分散コロイドで、違いを表にまとめると次のとおりです。

比べる観点分子コロイド会合コロイド(ミセルコロイド)分散コロイド
粒の正体1個の高分子界面活性剤などが数個〜数十個集まったミセル金属・硫黄・水酸化物などの微粒子
コロイドになる道筋分子がつながって大きくなる分子が集まる(CMC 以上の濃度で)固まりを砕く、または析出させる
代表例デンプン、タンパク質、ゼラチン、寒天石けん水、洗剤の水溶液金コロイド、硫黄のコロイド、水酸化鉄(III)のコロイド
水との相性の傾向親水コロイドが多い親水基が外を向き、水によくなじむ疎水コロイドが多い
工業での例増粘剤、ゲル化剤、接着剤洗浄剤、乳化剤顔料の分散液、研磨用スラリー
出典:世界大百科事典・日本大百科全書・化学辞典(コトバンク「コロイド」「保護コロイド」)をもとに作成

表の「水との相性の傾向」の行が、このあと見る安定性による分類とのつながりです。分子コロイドの多くは親水コロイドに、無機物の分散コロイドの多くは疎水コロイドになりますが、あくまで傾向で、2つの分類はそれぞれ別の性質を見ています。

コロイド粒子が電荷を持つ理由と、正コロイド・負コロイドの見分け方

コロイド粒子は多数の原子が集まった大きな粒で、塩化水素のようにばらばらに電離してイオンになるわけではありません。それでもイオンの吸着、結晶の中の原子の置き換わり(同形置換)、表面の官能基の電離という3つの理由で表面に電荷を持ち、同じ符号どうしの反発で散らばっていられます。

イオンを吸着して帯電する:水酸化鉄(III)と硫化ヒ素(III)

1つ目は、粒の表面が液中の特定のイオンを引き付けて、その電荷を身にまとう帯電です。水酸化鉄(III)の粒は、表面のヒドロキシ基が水素イオンを受け取ったり鉄(III)イオンを引き付けたりして、中性の水の中では正に帯電します。

反対に、硫化ヒ素(III)(As2S3)の粒は硫化水素イオン(HS−)を吸着し、代表的な負のゾルになります。どのイオンをどれだけ吸着するかで決まるので、つくり方や液の組成で電荷の強さは変わります。

結晶の原子が置き換わって帯電する:粘土の同形置換

2つ目は粘土に特有の帯電です。モンモリロナイトなどの粘土鉱物では、結晶の中のSi4+の一部がAl3+に、Al3+の一部がMg2+やFe2+に置き換わり、そのたびに正電荷が1つずつ足りなくなります。

こうして粘土の層は負に帯電し、この電荷は pH が変わっても変わらないので永久荷電と呼ばれます。浄水場に入る川の濁りの多くはこの負の粘土の粒で、凝集剤で電荷を打ち消す話は後半の水処理の章で扱います。

表面の官能基が電離して帯電する:シリカ・タンパク質・石けん

3つ目は、表面のヒドロキシ基やカルボキシ基が電離する帯電で、電荷の量は液の pH で大きく変わります。シリカの表面は Si−OH ⇄ Si−O− + H+ の電離で負に帯電し、石けんのミセルも表面に並んだ −COO− で負になります。

タンパク質はカルボキシ基とアミノ基を両方持ち、酸性側では −NH3+ が増えて正に、塩基性側では −COO− が増えて負に帯電します。電荷がつりあう pH を等電点と呼び、この値を境に符号が入れ替わります。

比べる観点正コロイド負コロイド
代表例(中性付近の水)水酸化鉄(III)、水酸化アルミニウム、等電点より酸性側のタンパク質粘土、シリカ、硫化ヒ素(III)、石けんのミセル
帯電の主な理由H+ の受け取り、Fe3+ などの吸着同形置換、HS− の吸着、−OH・−COOH の電離
電気泳動で集まる電極陰極(−極)陽極(+極)
凝析によく効くイオン価数の大きい陰イオン(SO42− など)価数の大きい陽イオン(Al3+ など)
出典:世界大百科事典・百科事典マイペディア(コトバンク)、石黒・岩田(1988)農業土木学会誌、長野県総合教育センターの実験プリントをもとに作成

正コロイドと負コロイドの見分け方:電気泳動と凝析に効くイオン

1つ目の見分け方は、コロイド溶液をU字管に入れて直流電圧をかける電気泳動です。正の粒は陰極へ、負の粒は陽極へ移動するので、色の付いたコロイドなら電極付近の色の濃さの変化で符号がわかります。

2つ目は凝析で、粒と反対符号で価数の大きいイオンほど少ない量で効くシュルツェ・ハーディの法則を使います。1価・2価・3価の差は水酸化鉄(III)コロイドの記事で計算しています。

長野県総合教育センターの実験プリントでは、水酸化鉄(III)コロイドに塩化ナトリウム・塩化カルシウム・硫酸ナトリウムを、塩化物イオンとナトリウムイオンの濃度をそろえて加えます。硫酸ナトリウムで最も早く凝析すれば、効いたのは2価の硫酸イオンで、粒は正だとわかります。

中性付近の水で正になる代表は鉄やアルミニウムの水酸化物と、等電点より酸性側のタンパク質で、ほかの多くは負と覚えておくと整理できます。工場でも負の粘土の濁りには正の多価イオンを含む PAC を使い、帯電の強さを後半で扱うゼータ電位で確かめます。

安定性による分類:電解質を加えたときの沈み方

2つ目の物差しは、水の中で粒が散らばったままでいられるかどうかです。コロイドはいつも安定とは限らず、塩などの電解質を加えると粒どうしが集まって沈むことがあります。沈むのに必要な電解質の量で疎水コロイドと親水コロイドに分け、疎水コロイドを守る親水コロイドを保護コロイドと呼びます。

図4:疎水・親水・保護コロイドの粒のまわり

疎水コロイドは電荷の反発で、親水コロイドはまわりに付いた水で、保護コロイドは親水コロイドの膜で散らばっています。

−−−疎水コロイド親水コロイド保護コロイド同じ符号の電荷で反発まわりに水が付く(水和)親水コロイドが包む少量の電解質で凝析多量の電解質で塩析少量の電解質では沈まない

※粒の電荷は物質と pH で正にも負にもなります(図は負の例)。化学辞典・百科事典マイペディア(コトバンク「保護コロイド」)、世界大百科事典(同「コロイド」)の記述をもとに作成。

疎水コロイド:少量の電解質で凝析する

疎水コロイドは、少量の電解質を加えただけで粒が集まって沈むコロイドで、この現象を凝析といいます。金属や金属硫化物、水酸化鉄(III)などの無機物の分散コロイドに多く、粒が水をあまり引き付けないので、散らばっていられる理由はほぼ粒の表面の電荷だけです。

同じ符号に帯電した粒は互いに反発して近づけませんが、反対符号のイオンが入ると表面の電荷が打ち消され、反発が弱まってくっつきます。

反対符号のイオンの価数が大きいほど少ない量で効くのは、前の章で見たシュルツェ・ハーディの法則のとおりで、正の粒には多価の陰イオン、負の粒には多価の陽イオンがよく効きます。

身近な例が浄水場です。川の水の濁りは細かな粘土の粒が負に帯電した疎水コロイドで、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(PAC)を加えると電荷が打ち消されて沈みます。

濁りの量を数字で表す方法は濁度の測定原理、浄水場で使う凝集剤の種類はミョウバンと浄水場の凝集剤で詳しく扱っています。

親水コロイド:多量の電解質で塩析する

親水コロイドは、少量の電解質では沈まず、多量の電解質を加えて初めて沈むコロイドで、この現象を塩析といいます。

タンパク質やデンプンなどの分子コロイドに多く、粒の表面にはヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH2)など、水と水素結合する部分がたくさんあります。そのため、まわりに水分子を強く引き付けています。

この水の層(水和)が粒どうしの接近を防ぐため、表面の電荷を少し打ち消した程度では沈みません。多量の塩を加えると、塩のイオンが水分子を奪い合って粒のまわりの水が減り、溶けていられなくなって沈みます。

研究や製造の現場で硫酸アンモニウムを加えてタンパク質を沈め、種類ごとに分けて精製する操作が、塩析の代表的な使い方です。

石けん水に食塩を多量に加えて石けんを取り出す操作も塩析です。豆乳に「にがり」を加えてつくる豆腐は、精選版日本国語大辞典が塩析の応用として挙げています。

ただ、にがりの量は多くなく、2価のマグネシウムイオンが効くので、日本大百科全書は凝析の例として説明しており、辞典によって扱いが分かれる例と覚えておくと混乱しません。

保護コロイド:親水コロイドが疎水コロイドを包む

保護コロイドは、少量の電解質で沈んでしまう疎水コロイドに加えて、凝析を防ぐ親水コロイドのことです。疎水コロイドの粒のまわりを親水コロイドの分子が取り囲むと、粒の表面が親水化され、全体として親水コロイドのようにふるまうので、少量の電解質では沈まなくなります。

代表例が書道の墨と墨汁です。墨は油や木を燃やしたときの煤(炭素の粒)を、動物の皮や骨を煮詰めてつくる膠(にかわ)で練り固めたもので、疎水コロイドの炭素の粒を、ゼラチンを主成分とするにかわが保護コロイドとして包んでいます。

インクに加えるアラビアゴムも同じ働きで、化学辞典によるとゼラチンは金コロイドに特に強い保護作用を示します。

保護作用は入れる量しだいで、世界大百科事典には、親水コロイドを少しだけ加えると逆に凝集を促すことがあり、十分な量で初めて安定化すると書かれています。

保護コロイドとして使う物質は、古くはアラビアゴムやゼラチン、いまはカルボキシメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの合成品にも広がっています。

凝析と塩析の覚え方:電解質の量と相手で区別する

名前が似ていて混同しやすい凝析と塩析は、「どのコロイドが」「どれだけの電解質で」「何を失って」沈むかの3点で区別すると覚えやすくなります。凝析は疎水コロイドが少量の電解質で電荷を失って沈む現象、塩析は親水コロイドが多量の電解質で水和の水を失って沈む現象です。

比べる観点凝析塩析
起こるコロイド疎水コロイド親水コロイド
必要な電解質の量少量多量
粒が失うもの表面の電荷(反発する力)まわりの水(水和)
効きやすいイオン粒と反対符号で、価数の大きいイオン水を強く引き付けるイオン(硫酸アンモニウムなど)
代表例浄水場の濁りと凝集剤、水酸化鉄(III)のコロイドタンパク質の硫安沈殿、石けんの塩析
扱いが分かれる例豆腐(豆乳+にがり):辞典によって塩析の応用とも凝析の例とも説明される
出典:日本大百科全書・世界大百科事典・化学辞典・精選版日本国語大辞典(コトバンク「コロイド」「塩析」)をもとに作成

疎水コロイドは電荷だけが頼りなので少しの電解質で崩れ、親水コロイドは水の鎧があるので、大量の塩で水を奪われるまで崩れません。語呂よりこの理由で覚えておくほうが、工場で凝集剤や分散剤を考えるときにもそのまま使えます。

実際の工場では:粒を散らしておく塗料・インク・乳化

コロイドの分類は、工場では「粒を散らしておきたいのか、集めて沈めたいのか」という目的の違いとして現れます。塗料・インク・化粧品・食品のように分散した状態そのものが製品の品質になる現場では、凝析を起こさない工夫として、電荷の反発や保護コロイドと同じ考え方を工程に組み込んでいます。

塗料・インク:顔料をぬらし、ほぐし、分散剤で安定させる

塗料やインクは、色のもとになる顔料の粉を樹脂の液に散らした分散液です。顔料は乾いた粉の状態では粒どうしがくっついた凝集体になっているので、そのままでは色が出ず、工場では「ぬらす」「ほぐす」「安定させる」の3段階で、凝集体を細かな粒に戻して液の中に固定します。

図5:顔料を分散させる3つの段階

粉の中の空気を液に置き換え、機械の力で凝集体を割り、分散剤で再び集まらないようにします。

STEP 1ぬらす凝集体のすき間の空気を樹脂の液に置き換える。ぬれにくい顔料には湿潤剤を使う
STEP 2ほぐすディゾルバーのせん断やビーズミルの衝撃で凝集体を割り、粒を小さくする
STEP 3安定させる分散剤が粒に吸着し、電荷の反発や高分子の鎖で粒どうしの接近を防ぐ

※UL Prospector「The Basics of Dispersion and Stabilization of Pigments and Fillers」(2025年2月)の3段階の説明をもとに作成。

ほぐす段階では、羽根を高速で回すディゾルバーがせん断の力で、細かなビーズを詰めたビーズミルが衝撃とせん断の力で凝集体を割ります。ただし割っただけの粒はすぐに集まり直すので、分散の良し悪しを決めるのは最後の安定化で、ここで分散剤の選び方が効いてきます。

安定化には、粒を同じ符号に帯電させて反発させる方法と、粒の表面に吸着させた高分子の鎖を液の中に伸ばして物理的に距離を保つ方法があります。

前者は疎水コロイドが散らばる仕組みそのもので、pH や電解質の量に左右されるのに対し、後者は保護コロイドに近い考え方で、溶剤系でも水系でも効きやすいとされています。

分散が崩れて粒が集まり直すと、色の出方や塗膜のつや、液の流れ方に影響することがあります。

工業塗装で使う塗料の違いは粉体塗装・電着塗装・溶剤塗装の違いで、半導体の研磨に使うスラリーのように粒の分散そのものが製品になる例はCMP スラリーの増産の記事で紹介しています。

乳化:界面活性剤で油と水をエマルションにする

水と油は混ぜてもすぐ2層に分かれますが、界面活性剤を加えると、油滴のまわりに分子が並んで膜をつくり、分かれにくいエマルション(乳濁液)になります。このとき加える界面活性剤を乳化剤と呼び、会合コロイドで見た「親水基と疎水基を持つ分子」が、油と水の境目に並ぶことで働きます。

図6:水中油滴(O/W)型と油中水滴(W/O)型

どちらが粒でどちらがまわりかで2つの型に分かれ、乳化剤は親水基を水の側、疎水基を油の側に向けて並びます。

O/W型(水の中に油滴)W/O型(油の中に水滴)例:牛乳、マヨネーズ、エマルション塗料例:バターなど、油っぽい感触のクリーム

※● は乳化剤の親水基、線は疎水基。化学辞典・改訂新版世界大百科事典(コトバンク「乳濁液」「HLB」)の記述をもとに作成。

エマルションには、水の中に油滴が散らばる水中油滴(O/W)型と、油の中に水滴が散らばる油中水滴(W/O)型があります。牛乳はタンパク質の膜で守られた O/W 型の代表で、置いておくと脂肪の滴が浮いてクリームの層ができるのは、粒がゆっくり分離していく様子です。

同じ油と水でも、どちらの型になるかは乳化剤と混ぜ方で決まります。乳化剤の選び方の目安は HLB(親水性と親油性の釣り合い)で、0〜20の数字で表します。日本大百科全書によると、HLB 1〜5の界面活性剤は W/O 型、7〜18は O/W 型のエマルションに向くとされています。

工業製品では、水性塗料の一種であるエマルション塗料が代表で、樹脂を水中に O/W 型で散らしておき、塗った後に水が蒸発してエマルションが壊れると樹脂分が塗膜になります。

分散媒が水なので、塗料に含まれる有機溶剤を減らせる点が溶剤系の塗料との大きな違いです。エマルションの液滴は0.1〜10 µm とされ、コロイドの上限より大きな滴も含みます。

実際の工場では:粒を集めて沈める凝集剤の水処理

塗料とは反対に、浄水場や工場の排水処理は、水に散らばったコロイドの粒をわざと集めて沈め、きれいな水と泥に分けたい現場です。ここでは疎水コロイドの凝析と、保護コロイドの裏返しにあたる「高分子で粒をつなぐ」働きの2つを組み合わせています。

図7:凝集剤と高分子凝集剤でフロックが育つ流れ

無機の凝集剤で電荷を打ち消して小さな塊をつくり、高分子凝集剤でつないで沈みやすい大きさに育てます。

−−−−濁りの粒電荷を中和高分子で架橋沈殿・分離負に帯電して反発無機凝集剤高分子凝集剤上澄みの濁りを確認マイクロフロック大きなフロック

※水道技術研究センター「水道用凝集剤の種類と特徴」(水道技術ジャーナル 2012年10月)の模式図の説明をもとに作成。

最初に加える PAC や鉄塩などの無機凝集剤は、反対符号の多価イオンで粒の電荷を打ち消し、目に見えないほどの小さな塊(マイクロフロック)をつくります。

次に加える高分子凝集剤は、長い分子が複数の粒に吸着して橋をかける働き(架橋)で、マイクロフロックを沈みやすい大きなフロックへ育てる凝集補助剤です。

高分子凝集剤には、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリルアミドの部分加水分解物のような陰イオン性、キトサンなどの陽イオン性、ポリアクリルアミドのような非イオン性があります。

化学辞典には、重合度が高いほどよく効き、入れすぎるとかえって凝集しにくくなると書かれており、保護コロイドの「量しだいで凝集を促すか、守るかが変わる」話の裏返しとして理解できます。

そのため現場では、ビーカーに原水を取って凝集剤の量を変えて試すジャーテストで、フロックの大きさ、沈む速さ、上澄みの濁りを見ながら注入量を決めます。水道用では、浄水中に残るアクリルアミドの単量体に0.00005 mg/L 以下の基準が厚生労働省令で定められています。

工場の排水では、重金属を水酸化物や硫化物の沈殿にしてから凝集剤で集める処理がよく組まれます。金属イオンを沈殿にする仕組みは硫化水素と金属イオンの沈殿で、排水の汚れを有機物の量で表す指標はCOD の測定法と排水基準で扱っています。

品質管理:粒子径とゼータ電位で分散の状態を測る

品質管理室で乳白色の分散液をセルに分注する手元

塗料・インク・化粧品・研磨剤などの分散液では、粒の大きさと、粒が集まりにくい状態かどうかを数字で確かめることが品質管理の中心になります。見た目は同じ乳白色の液でも、粒が少し大きくなっただけで色や光沢、塗りやすさが変わるので、製造ロットごとに測って記録します。

図8:分散液の品質管理で見る4つの項目

粒の大きさ、帯電の強さ、液の流れ方、時間がたったときの分離を組み合わせて判断します。

粒子径動的光散乱法やレーザ回折・散乱法で、粒の大きさとばらつきを測る
ゼータ電位粒の帯電の強さ。ゼロに近いほど反発が弱く、集まりやすい
粘度粒が集まり始めると、液の流れ方が変わることがある
沈降・分離置いておいた液の底の沈殿や上の透明な層を観察する

※JIS Z 8828(動的光散乱法)、JIS Z 8825(レーザ回折・散乱法)、ISO 13099-2(ゼータ電位の光学的測定)をもとに作成。

コロイドの大きさの粒によく使われるのが動的光散乱法(JIS Z 8828)で、液にレーザー光を当て、ブラウン運動で揺れ動く粒からの散乱光の揺らぎを読んで粒子径に換算します。

より大きな粒まで広く測るときは、粒に当たった光の散らばり方の角度から求めるレーザ回折・散乱法(JIS Z 8825)を使います。

ゼータ電位は粒の帯電の強さを表す数字で、電気泳動で粒が動く速さから求め、光学的な測り方は国際規格 ISO 13099-2 にまとめられています。

分散させたい液ではゼロから遠ざけ、水処理では凝集剤でゼロに近づけるので、同じ測定値を正反対の目的で使います。測り方の原理は水酸化鉄(III)の記事でも触れています。

ただし、どの数字も1つだけでは良否を決めきれません。粒子径は測り方によって出てくる値が変わり、ゼータ電位は高分子の鎖で守る立体的な安定化を表しきれないので、粘度の変化や、液を置いておいたときの沈殿・分離の観察と組み合わせて判断します。

測った結果をどう工程に返すかは品質保証・品質管理の仕事の流れと同じ考え方です。

コロイドの種類のよくある質問

会合コロイドとミセルコロイドは同じものですか?

同じものです。界面活性剤などの小さな分子が数個から数十個集まった粒をミセルと呼ぶので、ミセルコロイドとも、分子が会合してできたことから会合コロイドとも呼ばれます。

分子コロイドは必ず親水コロイドですか?

必ずではありません。構造の分類と安定性の分類は別の性質を見ていて、デンプンやタンパク質のように水になじむ高分子が水に散らばった場合に親水コロイドになります。一般には分子コロイドの多くが親水コロイド、無機の分散コロイドの多くが疎水コロイドという傾向として覚えておくと正確です。

コロイド溶液と普通の溶液はどう見分けますか?

横から強い光を当てると見分けられます。コロイド溶液は粒が光を散らすので光の通り道が筋になって見え(チンダル現象)、分子やイオンが溶けただけの溶液では見えません。ただし親水コロイドはチンダル現象が見えにくいことがあります。

エマルションはコロイドに含まれますか?

分散系の仲間としてコロイドの分類表に入りますが、液滴の大きさは通常0.1〜10 µm とされ、コロイドの上限を超える滴も多く含みます。大きな滴ほど浮いたり沈んだりして分離しやすいので、乳化剤と細かく砕く工程で滴を小さく保ちます。

まとめ

この記事のまとめ
  • コロイドはおよそ1 nm〜1 µm の粒(分散質)が別の物質(分散媒)に散らばった状態で、組み合わせでエアロゾル・エマルション・泡などと呼ばれる
  • 構造による分類は、1個の大きな分子の分子コロイド、ミセルの会合コロイド、溶けない物質を細かくした分散コロイドの3つ
  • コロイド粒子はイオンの吸着・粘土の同形置換・表面の官能基の電離で帯電し、電気泳動で動く向きと凝析に効くイオンの価数で正・負を見分ける。中性の水で正になるのは鉄やアルミニウムの水酸化物などに限られ、多くは負
  • 安定性による分類は、少量の電解質で凝析する疎水コロイド、多量の電解質で塩析する親水コロイド、疎水コロイドを守る保護コロイド
  • 凝析は電荷を失って、塩析は水和の水を失って沈む。墨汁のにかわは保護コロイドの代表
  • 工場では塗料・乳化で粒を散らし、凝集剤の水処理で粒を集め、粒子径とゼータ電位で状態を測る

コロイドの種類を見分ける2つの物差しは、そのまま「粒をどう散らすか、どう集めるか」という工場の判断の物差しになっています。化学メーカーと塗料・インク・水処理などの使う側のつながりは、化学業界のサプライチェーンから見渡せます。

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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