オゾンの性質と無声放電の原理|生成・検出の反応式と工場での使い道

浄水場のオゾン発生器室に並ぶステンレス製の横置き発生器

オゾンは酸素原子3個でできた分子 O3 で、フッ素に次ぐ強い酸化力を持つ淡い青色の気体です。工場や浄水場では、乾いた空気や酸素に高い電圧をかける無声放電という方法で、使う場所でその都度つくっています。

オゾンの生成は外からエネルギーを入れないと進まない吸熱反応で、できたオゾンは時間とともに酸素へ戻っていきます。ためて運べないこの性質が、発生器を現場に置き、余ったオゾンを分解してから外へ出すという、オゾン設備の形を決めています。

目次

オゾンの性質:強い酸化力・淡青色・特異臭

オゾンの性質で押さえたいのは、強い酸化剤であること、淡青色の気体であること、特有の刺激臭があることの3つです。工業で扱うときは、これに分解して酸素に戻りやすいという4つ目の性質が加わり、発生・使用・後始末の手順はすべてこの4つから組み立てられます。

図1:オゾンの4つの性質

教科書の3つの性質に、工業で効いてくる「分解しやすさ」を加えて並べました。

強い酸化力相手から電子を奪う。殺菌・漂白・脱臭・有機物の分解に効く
淡青色薄い気体ではほぼ無色。濃くなると青みが見える
特異臭鼻を刺す強いにおい。目やのどの粘膜も刺激する
分解しやすい時間・熱・触媒で酸素に戻る。ためて運べず、現場で発生させる

※NIOSH Pocket Guide、EPA「Alternative Disinfectants and Oxidants Guidance Manual」(1999年)をもとに作成。

酸化剤とは、相手の物質から電子を奪って自分は還元される物質のことです。オゾンが菌の細胞膜や色素の分子から電子を奪うと、菌は死に、色素は光を吸う構造が壊れて色が消えるため、殺菌・漂白・脱臭はどれも同じ酸化の働きとして説明できます。

酸化剤の強さは、標準酸化還元電位という数字で比べられます。電子を受け取る半反応式で書くと、酸性の水の中のオゾンは次のように働き、電子2個を受け取って酸素と水になります。

オゾンの半反応式(酸性の水溶液)
O3 + 2H+ + 2e− → O2 + H2O
中性・塩基性の水溶液では
O3 + H2O + 2e− → O2 + 2OH−
O3 の3個の酸素原子のうち1個が水(または OH−)に移り、残り2個が O2 になります。左右で O・H の数と電荷がそろっています。標準酸化還元電位は約 2.07 V です。

半反応式の組み立て方は、酸化剤と還元剤の半反応式の作り方と同じ手順で確かめられます。下の図のように、オゾンの電位は塩素より大きく、身近な酸化剤の中ではフッ素に次ぐ強さです。

図2:標準酸化還元電位の比較(フッ素・オゾン・塩素)

電位が大きいほど電子を奪う力が強く、オゾンは塩素の約1.5倍の電位を持ちます。

フッ素 F₂オゾン O₃塩素 Cl₂2.87 V2.07 V1.36 V標準酸化還元電位(25 ℃)。棒の長さは電位に比例

※Chemistry LibreTexts「Standard Reduction Potentials by Value」(Harvey、原典 Bard ほか 1985年)をもとに作成。オゾンは酸性溶液での2電子反応の値、塩素は 1.358 V(CRC Handbook などの標準値)を丸めた値。実際の処理での効き方は、pH・温度・相手の物質・接触時間でも変わります。

酸化力が強いぶん、オゾンは酸化されやすいものなら有機物でも無機物でも手当たりしだいに反応します。米国 NIOSH は「酸化されうるすべての物質」と混ぜてはいけないとしており、配管やパッキンにステンレスやフッ素樹脂などオゾンに負けない材料を選ぶのはこのためです。

塩素系の酸化剤との違いも、この強さと関係しています。塩素の酸化力の比べ方は塩素のオキソ酸の酸の強さと酸化力で、粉末の塩素剤の働きはさらし粉の化学式と反応式で詳しく扱っています。

色と においも、オゾンを見分ける手がかりです。NIOSH はオゾンを「無色〜青色で、非常に鼻を刺すにおいの気体」と説明しており、濃度の低い気体はほぼ無色、濃くなると青みを帯びます。沸点は −111.9 ℃ で、ふだんは気体として扱います。

4つ目の性質が分解のしやすさで、オゾンは放っておいても酸素に戻ります。この分解は熱や触媒(二酸化マンガンなど)、活性炭で大きく速まり、後で扱う排オゾン分解装置はまさにこの反応を利用しています。

オゾンの分解(発熱反応)
2O3 → 3O2
生成反応のちょうど逆向きで、左右とも酸素原子は6個です。分解のときは生成のときと同じ大きさの熱が出ます。

オゾンと酸素のように、同じ元素だけでできていて性質の違う物質どうしを同素体と呼びます。同素体と同位体の区別は同素体と同位体の違いに、硫黄の同素体の例は斜方硫黄と単斜硫黄の違いにまとめています。

オゾンの製法「無声放電」とは

無声放電は、ガラスなどの絶縁体(誘電体)をはさんだ2枚の電極に交流の高電圧をかけ、すき間に流した酸素や空気の中で火花を出さない静かな放電を起こす方法です。放電で生まれた電子が酸素分子を壊し、ばらばらになった酸素原子が別の酸素分子と結びついてオゾンができます。

英語ではコロナ放電や誘電体バリア放電とも呼ばれ、浄水場の大型設備から実験室の小型発生器まで、オゾンの工業生産はほぼこの方式です。

オゾンの生成反応は吸熱反応

酸素からオゾンができる反応は、反応する前より後のほうがエネルギーの高い状態になる吸熱反応です。米国 NIST の熱化学データでは、オゾン1 mol の生成熱は 142.67 kJ なので、オゾン2 mol をつくる反応では約285 kJ の熱を外から入れる必要があります。

オゾンの生成反応(エンタルピー変化で表す書き方)
3O2 → 2O3 ΔH = +285 kJ
旧来の熱化学方程式で書くと
3O2(気)= 2O3(気)− 285 kJ
ΔH:反応の前後のエンタルピー変化。+は吸熱を表します。285 kJ = 142.67 kJ/mol × 2 mol。熱化学方程式の「−」も同じ吸熱を表し、教科書によっては −284 kJ などと書かれます。

ΔH が正の吸熱反応は、ふつうの温度で酸素を置いておいても自然には進みません。そのため外からエネルギーを入れる手段が必要で、その代表が無声放電、もう一つが短い波長の紫外線を当てる方法です。エンタルピーとは何かを押さえておくと、この符号の意味が読み取りやすくなります。

図3:酸素からオゾンができるときのエネルギー図

オゾンは酸素より高いエネルギーの位置にあり、上へ押し上げるエネルギーを放電で与えます。

3O₂2O₃285 kJ吸熱放電・紫外線でエネルギーを与えるエネルギー反応の進み方 →逆向き(分解)は同じ熱を出す

※NIST Chemistry WebBook の生成熱(142.67 kJ/mol)から作成。山の高さは模式的に描いています。

この数字から、オゾン1 kg をつくるのに理論上いくらのエネルギーが要るかも計算できます。結果は1 kWh に届かず、後で見る実際の発生器の消費電力と比べると、放電で入れたエネルギーの大半が熱として逃げていることが分かります。

オゾン1 kg の物質量
1,000 g48.00 g/mol = 20.83 mol
生成に要る理論上のエネルギー
20.83 mol × 142.67 kJ/mol = 2,972 kJ = 約0.83 kWh
O3 のモル質量は 16.00 × 3 = 48.00 g/mol。1 kWh = 3,600 kJ で換算しています。

無声放電の流れ

無声放電の中では、オゾンは2つの段階を経てできます。まず電極間で加速された電子が酸素分子にぶつかって、2個の酸素原子に引き裂きます。次に、反応性の高い酸素原子がまわりの酸素分子と結合し、オゾン分子になります。

① 電子の衝突で酸素分子が原子に分かれる
O2 + e− → 2O + e−
② 酸素原子が酸素分子と結びつく
O + O2 + M → O3 + M
①+②×2 をまとめると
3O2 → 2O3
e−:放電で加速された電子(反応の前後で減らない)。M:余分なエネルギーを受け取ってオゾンを安定させる、まわりの気体分子(O2 や N2)。

米国環境保護庁(EPA)の資料も、オゾンは酸素分子がエネルギーで原子に分かれ、それが酸素分子とぶつかってできる不安定な気体だと説明しています。不安定なのでできたそばから分解も進み、発生器の中ではできる反応と壊れる反応が同時に起きています。

分解は温度が高いほど速く進むため、放電の熱をどれだけ素早く逃がすかが、取り出せるオゾンの濃度を左右します。工業用の発生器が大量の冷却水を必要とするのはこのためで、詳しくは後の「工場のオゾン発生器」の章で扱います。

乾燥した酸素や空気にオゾン発生器で電圧を加える

実際の発生器では、金属の電極の片側をガラスやセラミックの誘電体で覆い、もう一方の電極との間に狭いすき間(放電ギャップ)をつくります。そこへ乾いた酸素や空気を流しながら、EPA の資料によると 6〜20 kV の交流電圧をかけます。

図4:無声放電式オゾン発生器の仕組み(断面)

誘電体が電流を絞るので、火花にならない細かい放電がすき間全体に広がります。

高電圧電極誘電体(ガラス)接地電極冷却水放電ギャップ(ここでO₂→O₃)乾燥した酸素・空気オゾン化ガス交流 6〜20 kV

※EPA「Wastewater Technology Fact Sheet: Ozone Disinfection」「Alternative Disinfectants and Oxidants Guidance Manual」(1999年)をもとに作成。寸法は模式的です。

誘電体があると、放電が始まった場所の表面に電荷がたまって電圧が打ち消され、その放電はすぐ止まります。1か所に電流が集中して太い火花(アーク)になることがなく、ごく短い放電がすき間のあちこちで繰り返し起きるので、音も光も目立たない「無声」の放電になります。

火花が出ないことは、オゾンをつくるうえで大事な条件です。アークの高い熱はできたオゾンをすぐ分解してしまうので、誘電体で放電を細かく分散させる工夫が、オゾンを効率よく取り出す条件になっています。

原料のガスを乾かすのも同じ理由からで、EPA の指針は原料ガスの露点を −60 ℃以下にするよう求めています。ガスに水分や粒子が混じるとアークが起きて発生器を傷めるため、空気を原料にする設備では、圧縮機の後ろにフィルターと吸着式の乾燥器を必ず置きます。

教科書の実験装置は誘導コイルで高電圧をつくりますが、工業用の発生器は電源の周波数によって低周波・中周波・高周波の形式に分けられます。EPA の指針によると、周波数を上げるとオゾンの濃度は高くなる一方で熱も増えるため、冷却の能力と組み合わせて設計されます。

オゾンの検出反応:ヨウ化カリウムデンプン紙が青くなる理由

オゾンができたかどうかは、ヨウ化カリウム(KI)とデンプンを使うと確かめられます。ヨウ化カリウムデンプン紙を湿らせてオゾンを含む気体に当てると、紙が青紫色に変わればオゾンなどの酸化剤があると判断できます。

ヨウ化物イオン I− は電子を手放しやすい還元剤で、オゾンに電子を2個渡してヨウ素 I2 になります。オゾンの半反応式(中性)と組み合わせると、全体の反応式が組み立てられます。

還元剤:ヨウ化物イオンが電子を出す
2I− → I2 + 2e−
酸化剤:オゾンが電子を受け取る(中性)
O3 + H2O + 2e− → O2 + 2OH−
2式を足して e− を消し、両辺に 2K+ を加える
2KI + O3 + H2O → I2 + 2KOH + O2
左右で K 2個、I 2個、O 4個、H 2個がそろっています。できた KOH のため、反応後の液は塩基性に傾きます。

できたヨウ素は、そのままでは薄い黄褐色で見分けにくい色です。そこでデンプンを一緒に入れておくと、デンプンのらせん構造の中にヨウ素が入り込むヨウ素デンプン反応が起き、ごく少量のヨウ素でも濃い青紫色として目に見えるようになります。

図5:ヨウ化カリウムデンプン紙が青紫色になるまでの3段階

オゾンが KI を酸化してヨウ素を出し、そのヨウ素をデンプンが色で知らせます。

STEP 1湿らせた紙に気体を当てる紙には KI とデンプンがしみ込ませてある。水があると反応が進む
STEP 2I− が酸化されて I2 にオゾンが電子を2個奪い、ヨウ素が遊離する
STEP 3デンプンで青紫色にヨウ素デンプン反応で、少しのヨウ素でもはっきり色が出る

※塩素や二酸化窒素などほかの酸化剤でも同じように青くなるため、オゾンだけを見分ける試験ではありません。

注意したいのは、この反応はオゾンに特有ではないことです。塩素や二酸化窒素、過酸化水素など、ヨウ化物イオンを酸化できる物質なら同じように青くなるので、ヨウ化カリウムデンプン紙は「酸化性の気体があるか」を見る試験と考えるのが正確です。

紙の色で分かるのは「あるかないか」までで、設備の濃度管理には数字で測る方法を使います。オゾンを KI 溶液に吸収させ、出てきたヨウ素の量を滴定で求める「KI 法」が基準になる測り方です

連続して監視したい設備では、オゾンが 254 nm 付近の紫外線をよく吸う性質を利用した紫外線吸収式の濃度計を使います。茨城県工業技術センターの研究でも、KI 法と紫外線吸収法の両方で発生器の出口濃度を確かめました。

大気の分野では、この反応が光化学オキシダントの定義そのものになっています。環境省の環境基準は光化学オキシダントを、オゾンなどの光化学反応でできる酸化性物質のうち「中性ヨウ化カリウム溶液からヨウ素を遊離するもの」(二酸化窒素を除く)と定めています。

工場のオゾン発生器:無声放電式の構造と原料ガス

浄水場や工場のオゾン発生器も、原理は教科書の無声放電と同じです。違いは規模と、熱を逃がす仕組み、原料ガスの準備にあり、水道技術研究センターが全国の高度浄水処理の浄水場を調べた技術資料でも、大部分の浄水場が無声放電方式を採用していました。

前の章が「放電の中で何が起きるか」の話だったのに対し、この章は設備として何を組み合わせるかの話です。オゾン設備は、どの用途でもおおむね次の4つの装置を順につないだ形になります。

  • 原料ガス調製:空気を圧縮・ろ過・乾燥するか、酸素を用意する
  • オゾン発生器:無声放電でオゾン化ガスをつくり、冷却水で熱を除く
  • 接触槽:水や排ガスにオゾンを溶かし込み、必要な時間だけ反応させる
  • 排オゾン分解装置:使いきれなかったオゾンを酸素に戻してから大気へ出す

発生管の構造と冷却

大型の発生器では、蛍光灯に似たガラス管の内側に高電圧電極を入れた「発生管」を、ステンレスの接地電極の管の中に通します。この同心円筒の組を大きなステンレスの胴の中に多数並べ、管のまわりに冷却水を流すのが基本の形です

小型の装置では、平らな電極を重ねた平行平板形も使われ、空気で冷やせるものもあります。どちらの形でも、放電ギャップを狭く均一に保つことと、熱を素早く逃がすことが設計の要になります。

EPA の指針によると、発生器に入れた電力の約85%は熱になって失われ、温度が上がるとオゾンの分解が進んで発生効率が落ちます。前の章で計算した理論値の0.83 kWh/kg に対し、実際の消費電力は 8〜17 kWh/kg とされており、冷却の良しあしが電気代に直結します。

理論エネルギーと実際の消費電力の比
0.83 kWh/kg8〜17 kWh/kg = 約5〜10%
オゾンの化学エネルギーとして残るのは入れた電力の1割以下で、残りは主に熱になります。原料ガスの乾燥・冷却水のポンプなどの電力は含みません。

空気原料と酸素原料の違いと発生濃度

原料ガスには、乾燥させた空気と、純度の高い酸素の2種類があります。EPA の資料では、空気原料で得られるオゾン濃度は重量比で 0.5〜3.0%、純酸素ではその2〜4倍とされ、最新の発生器では酸素原料で最大15%(約200 g/m³)に達します。

比べる観点空気原料酸素原料
原料の用意大気を圧縮し、フィルターと乾燥器で露点 −60 ℃以下に液体酸素を気化する、または PSA(圧力変動吸着)で酸素80〜95%のガスをつくる
オゾン濃度の目安重量比 0.5〜3.0%(浄水場は 20〜30 g/Nm³ が多い)空気原料の2〜4倍、最大で約15%(約200 g/m³)
設備の特徴原料側は単純だが、同じ量をつくるには発生器が大きくなる発生器は小さくできるが、酸素の貯槽や供給の手配が要る
向いている用途国内の浄水場の大部分、下水処理、脱臭高濃度が要る用途(半導体のオゾン水など)
出典:EPA「Wastewater Technology Fact Sheet: Ozone Disinfection」「Alternative Disinfectants and Oxidants Guidance Manual」、水道技術研究センター「水道事業における高度浄水処理の導入実態及び導入検討等に関する技術資料」(2009年)をもとに作成

同じ技術資料のアンケートでは、国内の浄水場は大部分が空気原料で、発生オゾン濃度は 20〜30 g/Nm³ が中心でした。酸素原料は液体酸素の供給体制や貯槽が必要になることなどから、当時の導入実績は限られていたと報告されています。

濃度は g/Nm³(0 ℃・1気圧の気体 1 m³ あたりのオゾンの質量)と重量%の両方で書かれるので、換算できると資料を読み比べやすくなります。空気 1 Nm³ の質量は約 1.293 kg、酸素は約 1.429 kg として計算します。

空気原料 20〜30 g/Nm³ を重量%にする
20〜30 g1,293 g × 100 = 約1.5〜2.3%
酸素原料 200 g/Nm³ を重量%にする
200 g1,429 g × 100 = 約14%
オゾン化しても気体全体の質量はほとんど変わらないとみなした近似です。どちらも EPA の示す範囲(空気 0.5〜3.0%、酸素で最大約15%)に収まります。

オゾンの使われ方:浄水場・排水処理・半導体

オゾンの用途は、強い酸化力で「におい・色・菌・有機物を分解する」ことにほぼ集約されます。分解したあとは酸素に戻って塩素のように残らないので、処理した水や製品に薬品を残したくない場面で選ばれやすい薬剤です。

浄水場の高度浄水処理(オゾン+活性炭)

オゾンの最大の用途の一つが、水道の高度浄水処理です。ふつうの浄水処理(凝集・沈殿・ろ過・塩素消毒)だけでは取りきれない、かび臭の原因物質や、塩素と反応してトリハロメタンになる有機物を、オゾンで分解してから活性炭で取り除く組み合わせが広く使われています。

東京都水道局は、原水の水質に課題を抱える利根川水系のすべての浄水場に、平成4年(1992年)からオゾンと生物活性炭による高度浄水処理を順次導入し、平成25年度(2013年度)に完了しました。工事の着手から完了まで、20年あまりかけた整備です。

図6:高度浄水処理の流れ(後オゾン+生物活性炭の例)

オゾンで分解した物質を、微生物がすみついた活性炭が吸着・分解し、余ったオゾンは分解してから大気へ出します。

凝集沈殿砂ろ過オゾン接触池生物活性炭吸着池塩素消毒配水オゾン発生器排オゾン分解装置濁りを除くかび臭・有機物を分解吸着+微生物で分解残留塩素を保つオゾン化ガス排オゾンO₂ にして大気へ

※水道技術研究センターの技術資料(2009年)、東京都水道局「東京水道経営プラン2016」をもとに作成。オゾンを砂ろ過の前に入れる「中オゾン」など、浄水場によって順番は変わります。

オゾンの後に活性炭を置くのは、オゾンが有機物を細かく分解したときにアルデヒドなどの副生成物ができるためです。活性炭の表面にすみついた微生物がこれらを分解し、炭そのものの吸着と合わせて取り除くので、「生物活性炭」と呼ばれます。

もう一つ管理が欠かせない副生成物が臭素酸で、原水の臭化物イオンがオゾンで酸化されてできます。水道の水質基準は 0.01 mg/L 以下で、注入量を増やすほど臭素酸も増えるため、近年は水に残るオゾンの濃度を一定に保つ制御を採用する浄水場が多いと、先の技術資料は報告しています。

排水処理・脱臭・殺菌

下水や工場排水では、生物処理を終えた後の消毒や、色・においの除去にオゾンが使われます。EPA の資料は、オゾンは塩素よりウイルスや細菌を壊す力が強く、10〜30分ほどの短い接触で済み、分解が速いので処理水に有害な残留物を残さない点を利点に挙げています。

一方で、浮遊物や有機物が多い排水にはオゾンが無駄に消費されるため、EPA は BOD や COD が高い排水には経済的でないとしています。オゾンを入れる前に、COD(化学的酸素要求量)で有機物の量を見ておくと、必要な注入量と運転費の見当がつけやすくなります。

気体のまま使う用途では、下水処理場や食品工場の排気の脱臭、倉庫や製造室の殺菌にもオゾンを利用します。人のいる部屋でオゾンを高濃度にすることはできないため、運用ルールとセットにするのが前提です

食品工場ならHACCP の衛生管理の手順に組み込み、無人の時間帯に使う、濃度計で下がったことを確かめてから入室する、といった決まりを文書で残しておきます。

半導体のオゾン水洗浄

半導体工場では、純水にオゾンを溶かした「オゾン水」が、ウェーハ表面の有機物やレジストを取り除く洗浄に使われます。オゾン水は使ったあと酸素に戻るので、大量の薬液を廃棄する従来の洗浄と比べて廃液の処理と環境負荷を小さくできるのが強みです。

茨城県工業技術センターの研究報告は、フォトレジスト(回路を描くための感光性樹脂)の除去には熱濃硫酸と過酸化水素水の洗浄が使われ、廃液のコストとエネルギー、環境負荷が大きいと指摘しています

その代替として高濃度オゾン水が提唱されていますが、除去速度が遅く処理時間が長いことが実用化の課題です。

同じ研究では、無声放電式の発生器で酸素からおよそ 128 g/m³ のオゾンガスをつくり、水に溶かした 10〜20 ppm 台のオゾン水でレジストの除去を試しています。紫外光を併用して反応性の高いラジカルを増やすなど、速度を上げる工夫が研究されています。

ウェーハの洗浄は、酸化膜をフッ酸で溶かす工程などと組み合わせて何度も繰り返されます。全体の流れは半導体の前工程の流れに、フッ酸の性質と扱いはフッ化水素の性質と用途にまとめています。

オゾンを安全に扱う:許容濃度と排オゾン分解

オゾンは目や呼吸器の粘膜を強く刺激し、高い濃度を吸うと肺水腫を起こすおそれのある有害な気体です。日本産業衛生学会は作業環境の許容濃度を 0.1 ppm(0.2 mg/m³)と勧告しており、この値は1963年に提案され、2025年度の勧告でも同じ値が示されています。

ppm(体積比)を mg/m³ に換算する(25 ℃・1気圧)
0.1 ppm × 48.00 g/mol24.45 L/mol = 0.196 mg/m³ ≒ 0.2 mg/m³
24.45 L/mol:25 ℃・1気圧での気体 1 mol の体積。1 ppm は空気 1 m³ 中に 1 mL の体積で含まれる濃度です。

米国の基準も同じ水準で、OSHA は8時間平均の上限を 0.1 ppm、NIOSH は 5 ppm を「生命や健康に直ちに危険な濃度(IDLH)」としています。においの感じ方には個人差があるので、においを頼りにせず検知器で濃度を管理するのが基本です。

数字の意味も分けて読む必要があります。0.1 ppm は人が働く場所の空気の目安、5 ppm は逃げ遅れると命にかかわる濃度で、どちらも作業者が吸う空気についての値です。

これに対し、設備の中や排ガスの数百〜数千 ppm は人が触れてはいけない工程側の濃度です。排オゾン分解装置は、この工程側の濃度を作業環境の目安まで下げるための装置と考えると整理しやすくなります。

設備で最も濃いオゾンが出てくるのは、オゾン接触池や反応槽の上部から抜ける排ガス(排オゾン)です。EPA の指針は、移送効率90%でも 3% のオゾン化ガスを入れた接触槽の排ガスには 3,000 ppm ものオゾンが残る例を挙げており、そのまま大気へ出すことはできません。

そこで排オゾンは、分解装置で酸素に戻してから放出します

水道技術研究センターの調査では、浄水場の排オゾン処理は触媒分解法が最も多く、次いで活性炭吸着分解法で、加熱分解法もあります

EPA は 350 ℃を超える加熱か、水分がたまらないよう 100 ℃以上で動かす触媒で分解し、0.1 ppm まで下げる設計を示しています。

ガス検知器でオゾン配管のフランジまわりを点検する作業者の手元

触媒でガスを無害化する考え方は、半導体工場の排ガス処理とも共通しており、方式の比べ方は除害装置の仕組みと方式比較で扱っています。オゾン設備ではほかに、次のような対策を組み合わせます。

  • 発生器室・接触池まわりにオゾン検知器を置き、警報で発生器を止める(インターロック)
  • 排オゾン分解装置の出口側にブロワを置き、接触池を少し負圧に保ってオゾンを漏らさない
  • 配管・ガスケットにステンレスやフッ素樹脂など耐オゾン性の材料を使い、油や有機物を持ち込まない
  • 点検で接触池や発生器を開けるときは、オゾンを止めて換気し、濃度計で下がったことを確かめてから入る

こうした手順は、作業ごとの危険を洗い出して対策を決めるリスクアセスメントの進め方に沿って文書にしておくと、担当が替わっても守られやすくなります。職場の安全衛生の全体像は製造業の職場環境と安全衛生も参考になります。

オゾンのよくある質問

オゾン層のオゾンと工場でつくるオゾンは同じものですか?

同じ O3 です。成層圏では太陽の強い紫外線が酸素分子を原子に分け、それが酸素分子と結びついてオゾンができており、エネルギーを紫外線でもらうか放電でもらうかの違いだけで、できる反応は同じです。

オゾンと塩素の消毒はどう違いますか?

オゾンは酸化力が強く短時間で効きますが、すぐ分解して水に残りません。塩素は水道管の中でも消毒効果が続くので、高度浄水処理でもオゾンと活性炭の後に塩素を入れ、蛇口まで残留塩素を保っています。

オゾン発生器を置いた部屋に人がいても大丈夫ですか?

濃度しだいです。日本産業衛生学会の許容濃度は 0.1 ppm で、これを超えない運転が前提になります。業務用の高濃度の発生器は無人の時間に使い、入室前に濃度が下がったことを検知器で確かめます。

光化学スモッグとオゾンは関係がありますか?

あります。光化学スモッグの原因になる光化学オキシダントは主にオゾンで、窒素酸化物や揮発性有機化合物が日光で反応してできます。環境省の環境基準は2026年1月の告示で、オゾンとして8時間値 0.07 ppm 以下などの形に改められました。

まとめ

この記事のまとめ
  • オゾン O3 は淡青色・特異臭の気体で、標準酸化還元電位約 2.07 V とフッ素に次ぐ強い酸化剤。熱や触媒で酸素に戻りやすい
  • 生成反応 3O2 → 2O3 は ΔH = +285 kJ の吸熱反応で、無声放電や紫外線でエネルギーを与える
  • 無声放電は誘電体で火花を防いだ静かな放電で、乾いた原料ガスと冷却が発生効率を左右する
  • 検出は 2KI + O3 + H2O → I2 + 2KOH + O2 とヨウ素デンプン反応。ほかの酸化剤でも青くなる
  • 浄水場の高度浄水処理・排水の消毒・半導体のオゾン水洗浄に使われ、許容濃度 0.1 ppm を守るため排オゾンは触媒などで分解する

オゾンの化学は「強い酸化力」と「すぐ酸素に戻る不安定さ」の二つに集まり、それが現場で発生させて使い切り、余りは分解して捨てる設備の形につながっています。オゾンを使う側の水処理や半導体、つくる側の化学メーカーのつながりは、電子部品・半導体業界の構造からも見渡せます。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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