アルカリ金属とは?性質の傾向と水との反応式、リチウム・カリウムの工業利用

保護液の瓶から金属ナトリウムの塊をピンセットで取り出す実験台

アルカリ金属は、周期表の1族から水素を除いたリチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランシウムの6元素で、最も外側の電子が1個しかないため1価の陽イオンになりやすい金属です。単体はどれも柔らかく融点が低く、水に入れると水素を出して強い塩基の水溶液になります。

ナトリウムなら 2Na + 2H2O → 2NaOH + H2 の反応で、周期表の下の元素ほど反応が激しく、融点とイオン化エネルギーは下がっていきます。天然に単体はなく、工場では食塩・炭酸リチウム・塩化カリウムなどの化合物が、ガラス・電池・肥料の原料として大量に使われています。

後半では、リチウムを塩湖と鉱石から取り出す工程、ICP発光分析・原子吸光での測り方、消防法の危険物としての扱いまで、仕事の場面で必要になる知識をまとめます。

目次

アルカリ金属とは:水素を除く1族の6元素

周期表のいちばん左の列が1族で、そのうち水素を除いた6元素をアルカリ金属と呼びます。水素も最も外側の電子は1個ですが、K 殻は2個で満たされるので、ほかの原子と電子を共有して結合する非金属としてふるまい、アルカリ金属には含めません。

図1:周期表の中のアルカリ金属

いちばん左の1族のうち、第2周期のリチウムから下の6元素がアルカリ金属です。同じ列の水素は性質がまったく違うので含めません。

1234567891011121314151617181234567HHeLiBeBCNOFNeNaMgAlSiPSClArKCaScTiVCrMnFeCoNiCuZnGaGeAsSeBrKrRbSrYZrNbMoTcRuRhPdAgCdInSnSbTeIXeCsBaLaHfTaWReOsIrPtAuHgTlPbBiPoAtRnFrRaAcRfDbSgBhHsMtDsRgCnNhFlMcLvTsOgアルカリ金属(1族、水素を除く)水素(含めない)2族(アルカリ土類金属)

※ランタノイド・アクチノイドは3族の La・Ac の位置にまとめて省略しています。

アルカリ金属はすべて典型元素で、縦に並んだ元素どうしの性質がよく似ています。隣の2族のアルカリ土類金属とは価電子の数が違うので、横の元素とは性質が大きく変わり、この並び方の違いは典型元素と遷移元素の違いと見分け方で詳しく比べています。

単体はいずれも金属で、切り口には銀白色の金属光沢があり、電気と熱をよく通します(セシウムはわずかに金色を帯びます)。周期表のどこから金属になるかという境目の話は金属元素と非金属元素の違いにまとめています。

元素原子番号融点(℃)密度(g/cm3)第1イオン化エネルギー(kJ/mol)
リチウム Li3180.50.534520
ナトリウム Na1197.80.97496
カリウム K1963.50.89419
ルビジウム Rb3739.31.53403
セシウム Cs5528.51.87376
フランシウム Fr87放射性で寿命が短く、ほぼ測られていない
英国王立化学会(RSC)の周期表の値(イオン化エネルギーは整数に丸めた)。

フランシウムは安定な同位体がなく、いちばん長生きのフランシウム223でも半減期は約22分です。ウランやトリウムが壊れていく途中で一瞬だけでき、地殻全体でも同時に存在するのは1 kg に満たないとされるため、性質のほとんどは族の傾向から推測されているだけです。

アルカリ金属単体の共通性質

アルカリ金属の原子は、最も外側の殻に価電子を1個だけもっています。この1個の電子を手放しやすいことが、柔らかさ・反応しやすさ・炎色反応など共通する性質のもとになっています。

図2:下の元素ほど変わる物性

イオン化エネルギーと融点は、リチウムからセシウムまできれいに下がります。密度は下ほど重くなる傾向でも、カリウムがナトリウムより軽い逆転があります。

第1イオン化エネルギー(kJ/mol)520Li496Na419K403Rb376Cs融点(℃)180.5Li97.8Na63.5K39.3Rb28.5Cs密度(g/cm³)と水の1.0水0.5340.970.891.531.87LiNaKRbCs

※値は RSC の周期表。フランシウムは実測値がないため載せていません。

融点が低く、柔らかい軽い金属

融点はリチウムの180.5℃が最も高く、ナトリウム97.8℃、カリウム63.5℃と下がり、セシウムは28.5℃で、暑い日の室温でも溶けるほどです。どれもナイフで簡単に切れる柔らかさで、ナトリウムやカリウムはバターのような手応えで刃が通ります。

柔らかく融点が低いのは、原子が大きいうえに金属結合を担う自由電子が1原子あたり1個しかなく、原子どうしを結びつける力が弱いからです。鉄やクロムのような遷移元素では内側の d 軌道の電子も結合に加わるので、融点が1,000℃を超える硬い金属になります。

密度はリチウム0.534 g/cm3・ナトリウム0.97・カリウム0.89と水より小さく、この3つは水に浮きます。下へ行くほど重くなる傾向はありますが、カリウムはナトリウムより軽い逆転があり、ルビジウム(1.53)とセシウム(1.87)は水に沈みます。

1価の陽イオンになりやすい

価電子を1個失うと、すぐ前の希ガスと同じ安定な電子配置になるので、アルカリ金属は1価の陽イオン(Li+・Na+・K+ など)になりやすい元素です。

電子1個を取り去るのに要るエネルギー(第1イオン化エネルギー)は、リチウム520 kJ/mol からセシウム376 kJ/mol まで、下へ行くほど小さくなります。

下の元素ほど電子殻が増え、外側の電子が原子核から遠く、内側の電子に遮られて引きつけが弱まるためです。原子とイオンの大きさの並びはイオン半径の大小関係で数値とともに扱っています。

水溶液の中で陽イオンになろうとする強さ(標準電極電位)で比べると、リチウムが −3.04 V で最も負になり、イオン化傾向はカリウムより大きくなります。小さな Li+ が水分子を強く引きつけて安定になるためで、イオン化エネルギーの順番とは一致しません。

反応性が高く、強い還元性がある

電子を手放しやすいことは、相手に電子を与えて自分は酸化される力、つまり還元性が強いことを意味します。ナトリウムを切ると切り口は一瞬だけ銀色に光りますが、空気中の酸素とすぐ反応して表面が白く曇り、水に入れると水素を出して溶けていきます。

水との反応(どのアルカリ金属も同じ形)
2Na + 2H2O → 2NaOH + H2
2K + 2H2O → 2KOH + H2
空気中の酸素・塩素との反応
4Na + O2 → 2Na2O
2Na + Cl2 → 2NaCl
リチウムだけは窒素とも反応する
6Li + N2 → 2Li3N
水との反応でできる水溶液は NaOH・KOH などの強塩基で、フェノールフタレインを加えると赤くなります。酸素の中で燃やすと、リチウムは酸化物 Li2O、ナトリウムは過酸化物 Na2O2、カリウムから下は超酸化物 KO2 などが主にできます。

水との反応の激しさは、リチウムでは泡を出して静かに溶ける程度ですが、下の元素ほど激しくなり、カリウムでは発生した水素に火がつきます。ルビジウムとセシウムは水に沈みながら爆発的に反応するので、実験室でも扱う量はごくわずかです。

図3:水に入れたときの反応の激しさ

周期表の下の元素ほど水との反応は速く、激しくなります。どれも水素と強塩基の水溶液ができる点は同じです。

リチウム Li水に浮き、泡(水素)を出しながら静かに溶ける。下の元素と比べると反応はおだやか
ナトリウム Na反応熱で溶けて丸い玉になり、水面を走り回る。量が多いと水素に火がつくことがある
カリウム Kさらに速く反応し、発生した水素がすぐに燃えて赤紫色の炎が上がる
ルビジウム Rb・セシウム Cs水より重く沈みながら爆発的に反応する。教育の場でも水に入れる実験はしない危険

※反応の様子は塊の大きさ、水の量、表面の酸化の具合で変わります。

標準電極電位は「最後にどこまで陽イオンになりたいか」、反応の激しさは「どれだけ速く進むか」という別の物差しです。リチウムは電位では最も負でも、融点が高く固体のまま反応し、陽イオンになるまでのエネルギーの山も大きいため、カリウムより反応がゆっくり進みます。

特有の炎色反応を示す

アルカリ金属の化合物を炎に入れると、元素ごとに決まった色の光が出ます。熱で外側の電子がエネルギーの高い軌道へ押し上げられ、もとの軌道へ戻るときにそのエネルギー差に当たる波長の光を出すのが炎色反応の仕組みで、色を見れば元素の見当がつきます。

図4:アルカリ金属の炎色反応と主な発光の波長

炎の色は、元素ごとに決まった波長の光の組み合わせで決まります。分析装置はこの波長を使って元素を測ります。

リチウム Li:赤670.8 nm の赤い光が強い。リチウムの定量にもこの波長を使う
ナトリウム Na:黄589.0 nm と 589.6 nm の2本(D線)。ナトリウムランプの橙黄色もこの光
カリウム K:赤紫766.5 nm・769.9 nm の深い赤と、404 nm 付近の紫の光が混ざった色
ルビジウム Rb:赤紫/セシウム Cs:青紫セシウムは 455.5 nm・459.3 nm の青い光をもち、名前もラテン語の「空色」から

※波長は NIST の原子スペクトルデータ(空気中の値)。ナトリウムの黄色は非常に強く、少し混ざるだけでほかの色が見えにくくなります。

ルビジウムとセシウムは、1860〜1861年にブンゼンとキルヒホフが鉱泉水や鉱物の光を分光器で調べ、見たことのない赤と青の線を見つけて発見した元素です。ナトリウムの黄色い光は霧の中でも見分けやすく、トンネル照明のナトリウムランプに使われてきました。

単体は「融解塩電解」でつくる

アルカリ金属はイオン化傾向が大きいため、食塩水を電気分解しても陰極では水が先に還元されて水素が出てしまい、ナトリウムは得られません。そこで水を含まない塩化物を高温で融かし、その融液を電気分解する融解塩電解(溶融塩電解)で単体を取り出します。

ナトリウムは塩化ナトリウムに塩化カルシウムなどを混ぜて約600℃で電解するダウンズ法でつくり、陰極・陽極の反応式や電力量の計算はナトリウムの溶融塩電解(ダウンズ法)で詳しく扱っています。金属リチウムも、塩化リチウムと塩化カリウムの混合物を融かして電解します。

水溶液の電解で何が析出するかを決める考え方は電気分解の原理と各極の反応にまとめています。同じ融解塩電解は、アルミナからアルミニウムをつくる製錬にも使われています。

ナトリウム単体の性質

ナトリウムは、アルカリ金属の中で地殻に最も多く、単体としても化合物としても工業で最も多く使われる元素です。ここでは共通性質のうち、ナトリウムで具体的に確かめておきたい点と、ナトリウムならではの使われ方をまとめます。

一般的性質・名称の由来

ナトリウムは原子番号11、原子量22.99、融点97.8℃、沸点883℃の金属です。元素記号 Na はラテン語の natrium、英語名 sodium は soda から来ていて、どちらも古くから使われてきたソーダ(炭酸ナトリウムなど)の名前にさかのぼります。

金属共通の性質

単体のナトリウムは金属光沢をもち、電気と熱をよく通し、薄く延ばしたり押しつぶしたりできる展性・延性を示します。ただし空気中ではすぐに表面が酸化されるため、金属らしい性質を確かめられるのは、切ったばかりの断面か、空気を遮った容器の中だけです。

高い反応性

空気中の酸素や水蒸気とすぐ反応し、水とは激しく反応するため、灯油や流動パラフィンなどの保護液の中に、液面から出ないように沈めて保管します。取り出すときはピンセットを使い、切ったくずも保護液に戻し、法令上の扱いは後半の消防法の章でまとめています。

軽い

ナトリウムの密度は0.97 g/cm3 で、水よりわずかに軽い金属です。水に入れると浮いて反応するので、反応熱で溶けた玉が水面を走り回る様子が見られます。

柔らかい

ナトリウムはカッターナイフで簡単に切れるほど柔らかい金属です。原子が大きいうえに自由電子が1原子あたり1個しかなく、体積あたりの自由電子が少ないので原子どうしをつなぐ力が弱いことが理由で、共通性質で見た理屈がそのまま当てはまります。

融点が低い

融点は97.8℃と水の沸点より低く、それより熱いと液体の金属になります。一方で沸点は約883℃と高いので、加圧しなくても広い温度範囲で液体のまま使え、熱をよく伝える性質を生かして高速炉(高速増殖炉)の冷却材に使われています。

強い還元剤

相手に電子を与える力が強いので、ほかの金属の化合物から金属を取り出す還元剤になります。チタンは四塩化チタンをナトリウムで還元するハンター法でもつくられていましたが、現在は稼働する工場がなく、工業生産はマグネシウムを使うクロール法です。反応の形は同じです。

ナトリウムで四塩化チタンを還元する(ハンター法)
TiCl4 + 4Na → Ti + 4NaCl
ナトリウム4個が電子を1個ずつ出し、チタン(Ⅳ)が電子4個を受け取って金属チタンになります。両辺の原子の数(Ti 1・Cl 4・Na 4)はそろっています。

ナトリウムの化合物

ナトリウムの化合物は、ほとんどが海水や岩塩から取れる塩化ナトリウムを出発点にしています。食塩を電気分解して水酸化ナトリウムと塩素、ソルベー法で炭酸ナトリウムをつくるという2本の流れが化学工業の土台です。

図5:塩化ナトリウムから広がるナトリウム化合物

食塩を電気分解するか、アンモニアと二酸化炭素を使うソルベー法に通すかで、できる化合物と使い道が分かれます。

塩化ナトリウム NaCl海水・岩塩食塩水の電解融解塩電解ソルベー法水酸化ナトリウム+塩素・水素金属ナトリウム+塩素(約600℃)炭酸水素ナトリウムNaHCO₃ が沈殿焼く炭酸ナトリウムソーダ灰パルプ・せっけん・中和還元剤・冷却材ガラス・洗剤

※工業の主な流れだけを示しました。酸化ナトリウムは金属ナトリウムが空気で酸化されてできます。

塩化ナトリウム

塩化ナトリウム NaCl は式量58.44、融点約801℃の白色のイオン結晶で、食卓塩の主成分です。工業では食塩電解、ソルベー法、融解塩電解の原料で、ほぼすべてのナトリウム化合物の出発物質になっています。

水酸化ナトリウム

水酸化ナトリウム NaOH は式量40.00、融点318℃の白色の固体で、水に溶けて強い塩基性を示します。溶けるときに大量の熱を出すので、水溶液をつくるときは必ず水の中へ少しずつ水酸化ナトリウムを加え、逆に固体へ水を注ぐと局所的に沸騰して飛び散るので避けます。

20℃の水100 mL に約109 g も溶け、空気中の水分を吸って自分で溶ける潮解性があるので、容器はしっかり密閉します。

この吸湿性を生かし、酸化カルシウムと混ぜたソーダ石灰が気体の乾燥剤や二酸化炭素の吸収剤に使われ、乾燥剤の選び方は乾燥剤の種類と選び方で比べています。

ソーダ石灰の中で酸化カルシウムが水を受け取る
CaO + H2O → Ca(OH)2
食塩電解(陽極で塩素、陰極で水素と水酸化物イオン)
2NaCl + 2H2O → 2NaOH + H2 + Cl2
陽極では塩化物イオンが電子を失って塩素 Cl2 になり、陰極では水が還元されて水素 H2 と OH− ができます。陰極側に Na+ と OH− がたまり、水酸化ナトリウムの水溶液になります。

工業では濃い食塩水を電気分解してつくり、陽極で出た塩素が水酸化ナトリウムと混ざらないよう、Na+ だけを通す陽イオン交換膜で両極を仕切ります。電解槽の構造と反応はイオン交換膜法の原理と反応式、濃度ごとの危険性や工場での扱いは水酸化ナトリウムの性質と工場での扱いで解説しています。

強い塩基はたんぱく質や油脂を分解するので、水酸化ナトリウムはパイプ用洗浄剤、パルプの蒸解、せっけんの製造、排水の中和などに幅広く使われます。皮膚や目に付くと重い薬傷になるため、保護眼鏡と手袋は欠かせません。

酸化ナトリウム

酸化ナトリウム Na2O は式量61.98の白色のイオン結晶で、ナトリウムが空気中の酸素と反応するとできます。水と反応して水酸化ナトリウムになる塩基性酸化物で、二酸化炭素や酸とも反応します。

酸化ナトリウムの反応
Na2O + H2O → 2NaOH
Na2O + CO2 → Na2CO3
Na2O + 2HCl → 2NaCl + H2O
3つ目は酸と塩基性酸化物の中和で、塩(NaCl)と水ができます。ガラスの組成表では、ソーダ灰から入ったナトリウムを Na2O の量で表します。

炭酸水素ナトリウム

炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は重曹として知られる式量84.01の白色の粉末です。加熱すると分解して二酸化炭素を出すので、ベーキングパウダーの膨らし剤や粉末の消火剤に使われ、酢酸などの炭酸より強い酸を加えても二酸化炭素が出ます。

熱分解と、酸による二酸化炭素の発生
2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2
NaHCO3 + CH3COOH → CH3COONa + H2O + CO2
1つ目は加熱で進みます。2つ目は弱酸の塩に強い酸を加えると弱酸(炭酸=H2O + CO2)が追い出される反応です。

試験管で熱分解する実験では、試験管の口を少し下げて固定し、火を消す前にガラス管を水槽から出します。できた水や逆流した水が熱い底に流れて試験管が割れるのを防ぐためで、反応後の白い粉が炭酸ナトリウムに変わったことは、水溶液にフェノールフタレインを加えたときの赤の濃さで確かめます。

炭酸ナトリウム

炭酸ナトリウム Na2CO3 は式量105.99の白色の粉末で、工業ではソーダ灰と呼ばれます。水によく溶けて炭酸水素ナトリウムより強い塩基性を示し、板ガラスやびんガラスの主原料のひとつとして大量に使われるほか、洗剤や紙・パルプの工程にも入ります。

水溶液から結晶させると、水分子10個を含む十水和物 Na2CO3・10H2O の透明な結晶ができます。この結晶を乾いた空気中に置くと、結晶水を失って白い粉末の一水和物 Na2CO3・H2O になり、この現象を風解といいます。

大きさの違う Na+ と CO32− の結晶はすき間を水分子が埋めて安定になりますが、1価の Na+ は水分子を引きつける力が弱く、結晶水の蒸気圧が空気中の水蒸気より高いと抜けていきます。

3価の Al3+ は水分子を強く引きつけるので、硫酸アルミニウム十八水和物は風解しません。

比べる観点潮解風解
代表的な物質水酸化ナトリウム NaOH炭酸ナトリウム十水和物 Na2CO3・10H2O
何が起こるか空気中の水分を吸って溶け、べたべたの液になる結晶水を失って、さらさらの粉(一水和物)になる
水の出入り空気 → 物質物質 → 空気
現場で困ること計量がずれる、容器の外まで液が回る同じ質量でも中身の Na2CO3 の量が変わる
名前が似ているので、水が「入る」か「出る」かで区別します。

水和物の質量の変わり方や、原料を量るときの補正は風解と潮解の違いで計算例とともに扱っています。

工業の炭酸ナトリウムは、食塩水にアンモニアと二酸化炭素を吸収させて炭酸水素ナトリウムを沈殿させ、焼いてつくるソルベー法(アンモニアソーダ法)で生産されてきました。

副産物のアンモニアと二酸化炭素を回収して使い回すので、全体では食塩と石灰石から炭酸ナトリウムと塩化カルシウムができる形にまとまります。

ソルベー法の主な反応と全体の式
NaCl + NH3 + H2O + CO2 → NaHCO3 + NH4Cl
2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2
全体:2NaCl + CaCO3 → Na2CO3 + CaCl2
石灰石 CaCO3 を焼いて不足する CO2 を補い、できた Ca(OH)2 で塩化アンモニウムからアンモニアを回収します。

5段階の反応の流れと実際のソーダ灰工場の設備はソルベー法の反応式と工場で順を追って説明しています。

広告

ナトリウム以外のアルカリ金属の性質と用途

リチウム・カリウム・ルビジウム・セシウムは、性質の違いがそのまま用途の違いになっています。最も軽く電位の低いリチウムは電池に、植物に欠かせないカリウムは肥料に、正確な振動数をもつセシウムは時計に使われています。

リチウム(Li)

リチウムは原子番号3で、密度0.534 g/cm3 とすべての金属の中で最も軽い元素です。アルカリ金属の中では融点もイオン化エネルギーも最も大きく、窒素と直接反応して窒化リチウムをつくる珍しい性質もあります。

米国地質調査所(USGS)の2026年版の推計では、世界のリチウムの用途は電池が88%で、セラミックス・ガラス4%、潤滑グリース2%が続きます。

軽くて電位が低いので、同じ重さでたくさんの電気をためられる正極・電解質の材料になり、電気自動車や蓄電設備の普及とともに需要が伸びています。

電池の構造が変わると材料と製造工程がどう変わるかは全固体電池とリチウムイオン電池の違いで、電動化で部品の需要がどう動くかはEVシフトで増える部品・なくなる部品で扱っています。

カリウム(K)

カリウムは第1イオン化エネルギーが419 kJ/mol とナトリウムより小さく、水に入れると水素に火がつくほど激しく反応するので、ナトリウムと同じく保護液の中で保管します。生き物の体に欠かせない元素で、窒素・りん酸と並ぶ肥料の三要素のひとつです。

肥料に使うのは単体ではなく、塩化カリウム KCl や硫酸カリウムなどの化合物で、まとめてカリと呼びます。

USGS によると、2025年の世界のカリ生産は K2O 換算で約4,900万トンで、カナダ(1,500万トン)・ロシア(1,000万トン)・中国・ベラルーシが大部分を占めます。

鉱山で掘った塩化カリウムの鉱石は、塩化ナトリウムと分ける浮遊選鉱や溶解・再結晶で KCl 95%以上の製品にされます。肥料のほかには、硝酸カリウム・炭酸カリウム・塩化カリウムなどの塩が、ガラス・洗剤や液体せっけん・医薬品や点滴に使われます。

ルビジウム(Rb)

ルビジウムは第1イオン化エネルギーが403 kJ/mol とさらに小さく、水と反応すると発生した水素に自分の反応熱で火がつきます。融点は39.3℃と体温に近く、空気中では自然に燃え出すこともあるため、ガラスのアンプルに封じて扱います。

ルビジウムと水の反応
2Rb + 2H2O → 2RbOH + H2
ほかのアルカリ金属と同じ形の反応ですが、ずっと速く進みます。RbOH は NaOH より強い塩基です。

独立した鉱石はなく、セシウムやリチウムの鉱石を掘るときの副産物として得られ、USGS は2025年に世界でルビジウムの生産報告がなかったとしています。用途は光ファイバー通信向けの特殊ガラスが最も大きく、ルビジウム原子発振器は通信網の時刻合わせや GPS に使われています。

セシウム(Cs)

セシウムはイオン化エネルギーが376 kJ/mol と、実際に測れるアルカリ金属の中で最も小さく、水と爆発的に反応します。

現在の1秒は、セシウム133の原子が吸収・放出する電磁波の振動9,192,631,770回分と国際単位系(SI)で定義されていて、セシウム原子時計はその基準を実際に刻む装置です。

日本標準時も、情報通信研究機構(NICT)がセシウム原子時計と水素メーザ原子時計を組み合わせて生成しています。工場の計測器を国家標準につなぐ考え方は計測器の校正とトレーサビリティにまとめていて、時間の標準もその最上流にあります。

工業ではギ酸セシウムの濃い水溶液が高温高圧の油・ガス井を掘る掘削流体に使われ、約85%を回収して再利用しています。USGS によれば、高純度硫酸をつくる触媒の助触媒もカリウムからセシウムへの置き換えが進み、低い温度で反応を始められるようになっています。

原発事故で知られるようになったのは放射性のセシウム137(物理的半減期は約30年。環境省の基礎資料)で、天然のセシウム133は放射線を出しません。同じ元素で中性子の数が違う同位体の考え方は同素体と同位体の違いで扱っています。

フランシウム(Fr)

フランシウムは1939年にフランスのペレーが見つけた放射性元素で、最も長生きのフランシウム223でも半減期は約22分です。目に見える量を集められないので、融点や水との反応は実測されておらず、族の傾向から予想されているだけです。

アルカリ金属の水酸化物は、LiOH から CsOH へと原子番号が大きいほど塩基性が強くなります。陽イオンが大きいほど OH− を引きつける力が弱く、水中で離れやすくなるためです。

実際の工場では:リチウムを塩湖と鉱石から取り出す

用途の大半を占める電池向けのリチウムは、塩湖と鉱石の2種類の原料から取り出されます。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の2023年の解説では、供給源の約8割が南米とオーストラリアに集中していて、南米は塩湖のかん水、オーストラリアはスポジュメンという鉱石を原料にしています。

図6:リチウムの2つの生産ルートと電池材料

塩湖のかん水は天日で濃縮して炭酸リチウムに、鉱石は焼いて溶かし出してから炭酸リチウムか水酸化リチウムにします。

塩湖のかん水鉱石約1,000℃で焼く電池南米スポジュメン硫酸などで溶かす天日で蒸発・濃縮Na₂CO₃ を加える正極材炭酸リチウムLi₂CO₃水酸化リチウムLiOH炭酸リチウム → コバルト系・マンガン系・リン酸鉄系の正極材、電解質水酸化リチウム → ニッケル系・三元系の正極材

※主な流れを単純化した図です。中国では鉱石とかん水の両方から生産しています(USGS 2026)。

USGS の推計では、2025年の世界のリチウム生産(純分)は約29万トンで、前年の22.2万トンから31%増えました。

国別ではオーストラリアの9.2万トンが最も多く、中国6.2万トン、チリ5.6万トン、ジンバブエ2.8万トン、アルゼンチン2.3万トンが続きます(米国は非公表)。オーストラリア・チリ・アルゼンチンの3か国で約6割、中国が約2割にあたり、近年は中国やジンバブエなど南米・豪州以外の生産も増えています。

塩湖のかん水を蒸発させて炭酸リチウムに

チリやアルゼンチンの高地の塩湖の地下には、塩化リチウムなどの塩を含むかん水がたまっています。これをくみ上げて大きな池に広げ、天日で水を蒸発させてリチウムを濃くしてから、不純物を取り除いて炭酸化するのが基本の流れです。

濃縮して不純物を除いたかん水に炭酸ナトリウムを加えると、水に溶けにくい炭酸リチウムが白い沈殿になり、ろ過・洗浄・乾燥して粉末の製品にします。

かん水に炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を加えて炭酸リチウムを沈殿させる
2LiCl + Na2CO3 → Li2CO3 + 2NaCl
炭酸リチウムはほかのアルカリ金属の炭酸塩と違って水に溶けにくく、白い沈殿として取り出せます。ここでもソルベー法でつくったソーダ灰が使われます。

スポジュメン鉱石を焼いて溶かし出す

オーストラリアのリチウムは、ペグマタイトという岩石に含まれるスポジュメン(リチア輝石)を掘って選鉱し、酸化リチウム(Li2O)を約6%含む精鉱にしたもので、この精鉱の形で取引されます。

そのままでは酸に溶けにくいので、約1,000℃で焼いて結晶の形を変え(α型からβ型へ)、酸と反応しやすくしてから硫酸などで処理し、水に溶けるリチウムの塩として取り出します。この液を精製して、炭酸リチウムか水酸化リチウムの製品に仕上げます。

炭酸リチウムの白い粉を天秤で量り取る品質管理室

炭酸リチウムと水酸化リチウムの使い分け

JOGMEC の解説によると、炭酸リチウムはコバルト系・マンガン系・リン酸鉄系などの正極材と電解質に、水酸化リチウムはニッケルを多く含むニッケル系・三元系の正極材に主に使われます。どちらを買うかは、つくる正極材の種類で決まるので、同じリチウムでも製品の形で需要の動きが分かれます。

電池材料では、ナトリウムやカルシウム、鉄などの不純物がわずかでも電池の寿命や安全性に響くため、出荷前に ICP発光分析などで成分を確かめます。

価格の振れも大きく、USGS によると米国の電池グレード炭酸リチウムの年平均価格は2022年の1トン63,700ドルから2025年には9,000ドルまで下がりました。

鉱山から電池材料までを一つの会社でつなぐ例は住友金属鉱山の事業と強みで、化学品メーカーの全体像は化学業界の企業の種類と仕事で紹介しています。

炎色反応から ICP・原子吸光へ:アルカリ金属の分析

炎色反応で見た「元素ごとに決まった波長の光」は、品質管理や環境分析の現場では濃度を測る道具になります。

分析法測るもの向いている場面アルカリ金属で気をつけること
炎光光度法炎で光らせた元素の発光の強さナトリウム・カリウム・リチウムを手早く測る測れる元素が限られる
原子吸光法(AAS)原子が特定の波長の光を吸う量決まった1〜数元素を安く確実に測る炎の中でイオン化して感度が落ちるので、別のアルカリ金属を加えて抑える
ICP発光分析(ICP-OES)高温のプラズマで光らせた発光の強さ多くの元素を同時に、mg/L〜µg/L の広い範囲で測る共存するアルカリ金属が多いと発光の強さが変わる(イオン化干渉)
炎色反応の延長にあるのが炎光光度法で、原理の違いは光を「出させて」測るか「吸わせて」測るかです。

アルカリ金属はイオン化エネルギーが小さく、炎やプラズマの中で一部が陽イオンになるので、原子として光を出したり吸ったりする量が試料の中身で変わります。

群馬県立産業技術センターの2024年の報告では、ICP発光分析でリチウムとナトリウムを測ると、共存元素が多いときに、軸方向から見るアキシアル測光で発光が大きく強まりました。横から見るラジアル測光では影響が小さく、セシウムを加えると干渉を抑えられました。

原子吸光でも、イオン化しやすい別のアルカリ金属をわざと多めに加えて炎の中の電子を増やし、測りたい元素のイオン化を抑えます。どちらの場合も、試料と検量線用の標準液に同じ量を加えて条件をそろえるのが基本です。

アルカリ金属の取り扱いと消防法第3類

ここからは金属単体を保管・使用するときの決まりで、リチウムイオン電池や、食塩・炭酸ナトリウムのような一般的な塩は対象外です。消防法は空気中で自然に燃えたり、水と反応して燃える気体を出したりする物質を、第3類「自然発火性物質及び禁水性物質」に分けていて、アルカリ金属の単体はここに入ります。

第3類の品名(抜粋)指定数量当てはまるアルカリ金属
カリウム10 kgカリウム
ナトリウム10 kgナトリウム
アルキルリチウム10 kgブチルリチウムなどの有機リチウム試薬
アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く)及びアルカリ土類金属試験で決まる区分により 第一種 10 kg・第二種 50 kg・第三種 300 kgリチウム・ルビジウム・セシウム
神奈川県の「危険物の品名・指定数量」と、危険物の規制に関する政令の別表第三をもとに作成。指定数量以上を貯蔵・取り扱うには消防法の許可が要ります。

危険物の規制に関する政令は、保護液の中に保存する危険物を液面から露出させないこと、禁水性の物品は水との接触を避けることを定めています。ナトリウムやカリウムは灯油や流動パラフィンに沈め、黄りんのように水中に保存する物品とは同じ貯蔵所に置かない決まりもあります。

火が出たときに水や泡、二酸化炭素、ハロゲン系の消火剤を使うと、かえって反応が激しくなります。消火には乾燥砂や金属火災用の専用粉末消火剤を使い、置き場の近くに用意しておくことが現場の基本です。

アルカリ金属のよくある質問

水素はアルカリ金属に入りますか?

入りません。水素は1族に置かれていますが、常温では気体の非金属で、電子を共有して結合する性質が強いため、アルカリ金属は水素を除いた6元素を指します。

アルカリ金属で最も反応性が高いのはどれですか?

実際に確かめられている中ではセシウムで、水と爆発的に反応します。フランシウムは族の傾向からさらに激しいと予想されていますが、目に見える量を集められないので実測されていません。

ナトリウムやカリウムはなぜ石油の中に保存するのですか?

空気中の酸素や水分とすぐに反応してしまうので、反応しない灯油や流動パラフィンで空気と水を遮るためです。法令でも、保護液から露出させないことが定められています。

アルカリ金属とアルカリ土類金属の違いは何ですか?

アルカリ金属は1族で価電子1個・1価の陽イオン、アルカリ土類金属は2族で価電子2個・2価の陽イオンになります。アルカリ土類金属のほうが融点が高く硬く、水との反応もおだやかです。

まとめ

この記事のまとめ
  • アルカリ金属は水素を除く1族の Li・Na・K・Rb・Cs・Fr。価電子1個で1価の陽イオンになりやすい
  • 下の元素ほど融点とイオン化エネルギーが下がり、水との反応が激しくなる。密度は K が Na より軽い逆転がある
  • 水と反応して水素と強塩基(2Na + 2H2O → 2NaOH + H2)。Li は赤、Na は黄、K は赤紫の炎色反応
  • 単体は融解塩電解でつくり、ナトリウム化合物は食塩から食塩電解とソルベー法で広がる
  • リチウムは電池(用途の88%)、カリウムは肥料、セシウムは原子時計と掘削流体。単体は消防法の第3類で、保護液・禁水・乾燥砂が基本

アルカリ金属の性質は、価電子が1個という一点から、反応の激しさ、炎色反応、電池や肥料としての使われ方までつながっています。電池材料の背景にある資源の話はレアアースの輸出規制と調達の備え、金属をつくる側の産業は鉄鋼・非鉄金属業界の全体像から見渡せます。

出典

出典・参考資料(13件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

品質保証・品質管理・化学・樹脂・ゴムの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品

週刊MONOSCOPEの見本(品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

品質保証・品質管理を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次