FA業界とは?企業の種類・仕事の流れ・向いている人を実務目線で解説

工場の生産ラインで稼働する産業用ロボットと自動化設備

「FA業界」と聞くと、多くの方は工場で溶接や組立をこなす産業用ロボットを思い浮かべるのではないでしょうか。

実際には、ロボットだけでなく、機械を動かす制御機器やモーター、状態を読み取るセンサーをつくるメーカー、それらを組み合わせて設備に仕上げるシステムインテグレータ、機器を届ける商社まで、多くの企業が関わって成り立っている業界です。

この記事では、FA業界とは何かを、企業の分類、受注から保守までの仕事の流れ、業界特有の働き方、役立つ資格、向いている人という順で整理します。

目次

FA業界とは

制御盤の中に並ぶPLCやリレーなどのFA機器

FAとはファクトリーオートメーションの略で、FA業界とは工場の生産工程を自動化するための機器やシステムを提供する企業の総称です。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やサーボモーター、センサー、産業用ロボットなどの機器と、それらを組み込んだ生産設備が主な商材です。

日本ロボット工業会の統計によると、2025年の産業用ロボット(マニピュレータ、ロボット)の受注額は1兆456億円で、前年から25.7%増えました。同年の総出荷額9,938億円のうち輸出が7,897億円を占め、出荷の約8割が海外向けという点も特徴です。

FA業界の顧客は、自動車、電機、半導体、食品、医薬品、物流など、ものをつくる・運ぶあらゆる業界です。自らは最終製品をつくらず、他社の工場を支える「裏方」の業界と言えます。

システムを組み上げるという点ではIT業界と似た言葉も使いますが、扱う対象が現実の機械であるところが大きな違いです。

図1:IT業界とFA業界の違い

どちらも「システム」をつくりますが、相手にするものが異なります。

IT業界
FA業界
扱う対象
データや業務の仕組み
モーターやロボットなど現実の機械
主な成果物
ソフトウェア・情報システム
生産設備と制御プログラム
仕事の場
オフィスやリモートが中心
顧客の工場での立上げが多い
不具合の影響
システムの停止・データの誤り
ライン停止や設備破損、けがにつながる
必要な知識
プログラミング・ネットワーク
機械・電気・制御の組み合わせ

※近年はIoTやデータ活用が進み、両者の境界は少しずつ重なりつつあります。

FA業界の企業

作業台に並べられたサーボモーター、センサー、エアシリンダーなどのFA機器

FA業界の企業は、担う役割によって大きく次のように分けられます。

  • 制御機器メーカー(PLCやタッチパネル、インバータなど機械の頭脳をつくる)
  • サーボ・ロボットメーカー(モーターや産業用ロボットなど動きをつくる)
  • センサー・画像機器メーカー(位置や状態を計測し、製品を検査する機器をつくる)
  • 空圧・搬送機器メーカー(エアシリンダーやコンベヤ、自動倉庫などをつくる)
  • システムインテグレータ(機器を組み合わせ、設備として納める)
  • FA商社(機器の販売と技術サポートを担う)

図2:FA業界の企業の関係

1つの生産設備には、役割の異なる企業が段階的に関わります。

ユーザー企業自動車・電機・食品などの工場。自動化したい工程と予算を決める
設備を発注
システムインテグレータ(SIer)機器を選び、設計・製作・立上げまでを担う
機器を手配
FA商社複数メーカーの機器を取りまとめて納める
制御・ロボットメーカーPLC、サーボ、ロボットなど
センサー・空圧メーカーセンサー、画像機器、エア機器など
設備を納入・保守
稼働中の生産ライン改造や部品交換、保守契約で長く関わり続ける

※大手ユーザー企業が社内で設備をつくる場合や、メーカーが直接納める場合もあり、関係は案件ごとに変わります。

制御機器メーカー

制御機器メーカーは、PLCやタッチパネル(HMI)、インバータなど、機械に動作の指示を出す機器をつくる企業です。PLCは工場の設備に欠かせない専用コンピューターで、機械の頭脳にあたります。

FA機器は、状態を読み取るセンサー、判断するコントローラ、実際に動くアクチュエータの3つが組み合わさって働きます。どの機器も単体では役に立たず、組み合わせて初めて設備になるのがこの業界の前提です。

図3:自動化設備を構成する3つの要素

FA機器は、人の感覚・頭・手足の役割を分担しています。

IInput/検出センサーやカメラで、位置・有無・寸法などを読み取る
CControl/判断PLCなどのコントローラが、次に何をするかを決める
OOutput/動作モーターやロボット、エア機器が実際にものを動かす
メーカーごとに得意な要素は異なり、3つをまとめて提案できる企業ほど顧客の選択肢に入りやすくなる。

代表的な企業を挙げると、制御機器では三菱電機やオムロン、センサーではキーエンス、ロボットではファナックや安川電機、空圧機器ではSMC、搬送システムではダイフクなどが知られています。いずれも海外売上の比率が高い企業です。

サーボ・ロボットメーカー

サーボモーターは、指示どおりの位置・速度で正確に動くモーターで、ロボットや工作機械の関節を動かしています。産業用ロボットは、こうしたモーターと減速機、コントローラを組み合わせた製品です。

ロボットは構造によっていくつかの種類に分かれ、得意な作業も異なります。用途に合わない種類を選ぶと、性能を持て余したり、逆に動作範囲が足りなかったりします。

図4:産業用ロボットの主な3つの種類

構造によって、得意な作業や使われる場所が分かれています。

主な特徴
主な用途
垂直多関節
人の腕に近い6軸前後の構造
溶接、塗装、重量物の搬送
水平多関節(スカラ)
水平方向の動きが速く正確
電子部品の組立、ピッキング
協働ロボット
安全機能を備え人のそばで使える
検査、箱詰め、多品種の軽作業

※協働ロボットでも、使い方によっては安全柵やリスクアセスメントが必要です。

ロボットメーカーの技術者は、ロボット本体の開発に加え、顧客やSIerからの技術的な問い合わせに応える仕事も多く担います。

センサー・画像機器メーカー

光電センサーや近接センサー、変位計、画像センサーなど、ものの有無や位置、寸法を計測する機器をつくる企業です。検査の自動化やトレーサビリティのニーズから、画像処理やAIを組み合わせた製品が増えています。

品番が数千〜数万に及ぶことも多く、顧客の現場に合った機種を提案する技術営業が事業の中心を担う企業もあります。

空圧・搬送機器メーカー

エアシリンダーや電磁弁などの空圧機器、コンベヤや自動倉庫といった搬送機器をつくる企業です。目立たない存在ですが、工場の中でものをつかむ・押す・運ぶ動作の多くを支えています

物流センターの自動化など、工場の外にも用途が広がっている分野です。

システムインテグレータ(SIer)

SIerは、ユーザー企業の要望を聞き、複数メーカーの機器を組み合わせて生産設備をつくる企業です。機械設計・電気設計・ソフト設計を一社で担い、設備として完成させるのが役割で、専用機メーカーや装置メーカーと呼ばれる会社も含まれます。

従業員数十名規模の中小企業が多く、地域の工場と長く付き合う会社から、特定業界の設備に特化した会社までさまざまです。業界団体として日本ロボットシステムインテグレータ協会があり、人材育成や検定制度に取り組んでいます。

FA商社

FA商社は、メーカーの機器を仕入れてSIerやユーザー企業に販売する企業です。複数メーカーの機器を取りそろえ、必要なものを必要な数だけ短納期で届ける役割を担います。

単なる物流の中継ではなく、機種選定の相談や不具合時の一次対応など、技術的なサポートをする商社も多くあります。メーカーとSIerの間に立ち、双方の情報をつなぐ存在です。

なお、これらの分類はあくまで役割の目安です。メーカーが自らSIer機能を持つこともあれば、商社が設備一式を請け負うこともあります。大小さまざまな企業が関わる、裾野の広い業界といえます。

FA業界の仕事の流れ

組立中の自動化設備を調整する日本人エンジニア

FA業界の仕事は、SIerが設備を受注する場合、次のような流れで進みます。

引合い・ヒアリング → 構想設計・見積り → 受注・仕様確定 → 機械設計・電気設計 → 製作・組立 → 制御ソフト作成 → 立上げ → 保守・改善

図5:自動化設備の受注から保守までの流れ

受注まで、設計・製作、納入・保守の3つの段階に分かれます。

受注まで
01引合い・ヒアリング自動化したい工程と課題、予算を聞き取る
02構想設計・見積り設備の全体像を描き、費用と納期を示す
03受注・仕様確定能力や安全、検収条件を仕様書にまとめる
設計・製作
04機械設計・電気設計機構と制御盤・配線を図面にする
05製作・組立部品を加工・手配し、社内で組み上げる
06制御ソフト作成PLCやロボットの動作プログラムを組む
納入・保守
07立上げ試運転で調整し、顧客の工場で稼働させる
08保守・改善故障対応や改造で、稼働後も長く支える

※機器メーカーや商社は、この流れのうち機器選定や技術サポートの場面で関わります。

会社の規模や案件の大きさによって分担は変わりますが、大まかな流れはどの設備でも共通です。順に見ていきます。

引合い・ヒアリング

仕事の始まりは、ユーザー企業からの「この工程を自動化したい」という相談です。現場を見に行き、つくっている製品、生産量、今の作業内容、困っていることを聞き取ります。

顧客自身も、何をどこまで自動化すべきか決めきれていないことが少なくありません。課題を整理し、自動化の範囲を一緒に決めることが、最初の大切な仕事です。

構想設計・見積り

ヒアリングの内容をもとに、設備のレイアウトや使う機器、1個あたりの処理時間(タクトタイム)を検討し、構想図にまとめます。ロボットの動作範囲や作業スペースの確認もこの段階で行います。

構想と同時に、機器費や設計・製作の工数を積み上げて見積りを出します。ここでの読みが甘いと、受注しても赤字になるため、経験の差が出やすい工程です。

受注・仕様確定

受注が決まったら、設備の能力や対象製品、安全対策、検収の条件などを仕様書として確定させます。

あいまいなまま進めると、納入の直前になって「思っていたものと違う」という食い違いが起きます。仕様をどれだけ具体的に固められるかが、プロジェクト全体の成否を左右します。

機械設計・電気設計

機械設計では、製品をつかむハンドや治具、フレーム、搬送機構などを3D CADで設計します。電気設計では、制御盤の構成や配線、センサーやモーターの選定を行います。

機械と電気は互いの設計に影響するため、センサーの取付位置や配線の通り道など、細かな取合いを何度も調整しながら進めます。安全柵や非常停止といった安全面の設計も、この段階で織り込みます。

製作・組立

図面をもとに部品を加工・手配し、自社工場で設備を組み立てます。制御盤の製作や配線作業もこの段階で行います。

FA機器は納期が長くなることがあり、部品の手配の遅れがそのまま設備の納期に響きます。設計と並行して、長納期品を早めに押さえる段取りも欠かせません。

制御ソフト作成

PLCのラダープログラムやロボットの動作プログラム、タッチパネルの画面などを作成します。正常な動きだけでなく、異常が起きたときの停止や復帰の処理まで作り込むのが特徴です。

組み上がった設備を社内で動かし、狙ったタクトタイムや品質が出るかを確認しながら仕上げていきます。

立上げ

社内での試運転を終えた設備は、いったん分解して顧客の工場に運び、据え付けて再び動かします。現地の電源や周辺設備とつなぎ、実際の製品を流して調整を重ねます。

顧客の生産を止められる期間は限られるため、連休や休日に集中して作業することもあります。現場で問題を解決し、期限内に稼働させる力が求められる工程です。

保守・改善

設備は納入して終わりではありません。故障時の駆けつけ対応や部品交換、製品変更に合わせた改造など、稼働している限り関わりは続きます。

こうした日々の対応を通じて顧客の信頼を得ることが、次の設備の受注につながっていきます。稼働データをもとに改善を提案するのも、保守を担う技術者の役割です。

FA業界の特徴

人のそばで部品を扱う協働ロボット

FA業界には、同じものづくりでも他の業界とは異なる働き方の特徴があります。就職や転職を検討するなら、次の4点は入る前に知っておきたいところです。

図6:FA業界の4つの特徴

働き方を判断するうえで、押さえておきたい点です。

顧客の業界が幅広い自動車から食品・医薬品・物流まで、さまざまな現場に関わる
設備投資の波を受けやすい顧客の投資判断によって、受注が大きく増減する
給与水準は比較的高い大手メーカーを中心に、製造業の中でも高い水準
人手不足で需要が拡大省人化ニーズとAIの進化で、自動化の対象が広がっている

顧客の業界が幅広い

FA業界の顧客は、自動車や電機、半導体から、食品、医薬品、化粧品、物流まで多岐にわたります。案件ごとに扱う製品や現場のルールが変わるため、さまざまな業界の工場を知ることができるのは大きな魅力です。

一方で、案件のたびに顧客の製品や工程を一から理解する必要があります。同じ設備を繰り返しつくるより、一品一様の設計が多いのもこの業界の特徴です。

設備投資の波を受けやすい

FA機器や生産設備の需要は、顧客である製造業の設備投資に左右されます。景気や半導体市況、自動車の生産計画などの影響で、受注が短期間に大きく増減することがあります。

日本ロボット工業会の統計でも、2025年は輸出が前年比32.4%増えた一方、国内出荷は10.8%減っています。国内外の需要の動きを読むことが、事業の安定に直結する業界と言えます。

給与水準は比較的高い

FA業界、特に大手の機器メーカーは、製造業の中でも給与水準が高い傾向があります。業界動向サーチの集計では、FA業界の平均年収は718万円(2021〜2022年)とされています。

ただし、これは上場している主要企業の数値です。中小のSIerや商社まで含めると幅があり、会社の規模や立ち位置による差は大きい点を押さえておきたいところです。

人手不足で需要が拡大

国内外の製造現場で人手不足が深刻になるなか、自動化への期待は年々高まっています。日本ロボット工業会は、2026年のロボット受注額を1兆2,200億円(前年比16.7%増)と見込んでいます。

画像処理やAIの進化によって、これまで人に頼っていた検査や多品種の組立も自動化の対象になりつつあります。新しい技術を現場で使える形にする人材の需要は、今後も続くと考えられます。

FA業界で役立つ資格

ロボットのティーチングペンダントを操作する手元

FA業界は、資格がないと業務に就けないという場面は多くありません。ただし、ロボットの教示作業には法定の特別教育が必要なほか、専門知識の証明として評価される資格もあります。

  • 産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育
  • ロボットSI検定
  • 技能検定(電気機器組立て・シーケンス制御作業)
  • 機械保全技能士
  • 電気工事士
  • 機械設計技術者試験
  • 技術士・技術士補(機械部門・電気電子部門など)
  • TOEICなどの語学資格 など

図7:FA業界で役立つ資格の特徴

関わる仕事ごとに、評価される資格が異なります。

産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育
製造・技能ロボットのティーチング作業に就く前に受ける、法定の特別教育
ロボットSI検定
設計・技術ロボットシステムを組み上げる力を認定する業界団体の検定
技能検定(電気機器組立て・シーケンス制御作業)
製造・技能シーケンス制御の設計・配線の技能を認定する国家検定
機械保全技能士
製造・技能設備の点検や故障診断の技能を認定する国家検定。機械系・電気系など
電気工事士
工事電気設備の工事作業に必要。第一種は工場など自家用設備の一部も扱える
機械設計技術者試験
設計・技術日本機械設計工業会の検定。機械設計の知識を1級〜3級で証明する
技術士・技術士補(機械部門・電気電子部門など)
設計・技術技術系で最上位の国家資格。一次試験の合格で技術士補の登録ができる
TOEICなどの語学資格
語学・実務海外拠点や海外顧客とのやり取りで、英語力を示す目安になる

※資格の区分や必要となる条件は、職種や扱う設備によって変わります。

SIerや保全の現場ではシーケンス制御や電気工事の知識が評価されやすく、機器メーカーでは海外顧客への対応のため語学力も重視されます。

FA業界に向いている人

顧客の工場で設備の立上げについて話し合う日本人エンジニア

ここまで見てきた業界の性質から、向いているのは次のような人です。裏を返せば、この3点に抵抗がある場合は、入ってからのギャップが大きくなりやすいと言えます。

機械が動く仕組みに興味がある

FA業界の仕事は、機械・電気・ソフトウェアが組み合わさって設備が動く仕組みそのものを扱います。自分の担当分野だけでなく、隣の分野にも関心を持てる人ほど活躍の場が広がります。

自分が設計やプログラムに関わった設備が、初めて思いどおりに動いた瞬間の手応えは、この業界ならではのものです。

現場で粘り強く問題を解決できる

立上げの現場では、図面どおりにいかないことが当たり前のように起こります。センサーの反応がばらつく、部品がうまくつかめないといった問題を、原因を一つずつ切り分けながら解決していく根気が求められます。

顧客の工場に出向く機会も多いため、机に向かう仕事だけでなく現場に立つことを楽しめる人に向いています。

顧客の困りごとに向き合える

FA業界の仕事は、顧客の「人が足りない」「品質が安定しない」といった困りごとから始まります。技術そのものより、顧客の課題を解決することにやりがいを感じられるかが大切です。

要望を聞き取り、できることとできないことを正直に伝えながら落としどころを探す、コミュニケーションの力も欠かせません。

まとめ

この記事のまとめ
  • FA業界とは、工場の生産工程を自動化する機器やシステムを提供する企業全般を指す
  • 制御機器・ロボット・センサーなどのメーカー、SIer、商社など業態は幅広い
  • 仕事は引合いから設計・製作・立上げ、保守までが一連の流れになっている
  • 設備投資の波を受けやすい一方、人手不足を背景に需要は拡大している
  • 機械が動く仕組みに興味があり、現場で粘り強く問題を解決できる人に向いている

ひとくちにFA業界といっても、機器メーカーかSIerか商社かによって働き方は大きく異なります。関連する職種は機械設計電気・電子設計技術営業・FAE生産技術がこの業界と深く関わります。

業界の市場規模や主要企業については、FA・自動化システムの業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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この記事を書いた人

BtoB製造業特化のWebマーケター。プラント業界にてエンジニアを10年経験した後、マーケティングの分野へ。工業技術ブログ「エネ管.com」を2017年から運営し、月間20万PVを達成。保有資格はエネルギー管理士、第三種電気主任技術者。

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