発熱量の測定方法は?気体・液体・固体の熱量計と計算例

燃料試験室の密閉ボンベと熱量計用の水槽

燃料の発熱量は、燃料を燃やして得た熱を測る方法と、成分分析から計算する方法で求めます。気体には流水形ガス熱量計やガスクロマトグラフ、液体・固体にはボンベ型熱量計が使われます。

発熱量は燃料1kg、または決めた温度・圧力での体積当たりの熱量です。燃料の受入検査やボイラーの熱収支で比較するときは、測定法に加え、単位と水分の扱いをそろえる必要があります。

この記事では、気体・液体・固体の順に測定の原理を整理し、水の温度上昇から発熱量へ換算する計算例を示します。高位と低位、乾燥基準と受入基準の違いも、測定結果の読み方として扱います。

目次

気体燃料

気体燃料には、天然ガス、LPGを気化したガス、コークス炉ガスなどがあります。LNGとLPGは液化して貯蔵・輸送しますが、ここではガスとして供給した試料の発熱量を測る場面を考えます。

  • LNG(液化天然ガス)を気化した天然ガス
  • LPG(液化石油ガス)を気化したプロパン・ブタンなど
  • 石炭の乾留で生じるコークス炉ガスなどの副生ガス

気体は温度や圧力で体積が変わるため、発熱量をMJ/m³で表すときは基準状態も必要です。燃料の種類や供給状態は気体燃料の種類と特徴で整理しています。

ユンカース式流水形ガス熱量計

ユンカース式は、試料ガスを燃やした熱を連続して流れる水に吸収させる測定法です。水量と入口・出口の温度差から吸収熱を求め、それを燃やしたガスの量で割って発熱量を算出します。

図1:流水形ガス熱量計で追う二つの流れ

燃焼ガスの熱を流水へ移し、水量と温度差を同じ測定時間で対応させます。

図は横にスクロールできます。

水入口温度水出口温度ガス量を測る燃焼ガス出口凝縮水燃焼熱を流水へ

構造を簡略化した原理図で、実機の配管寸法や流路配置を示すものではありません。

燃焼で生じた水蒸気も冷やして凝縮させるため、凝縮するときの熱まで水へ回収します。このように水蒸気の潜熱を含めた値が、高位発熱量とも呼ぶ総発熱量です。

測定の原理を確かめるため、水100kgが20℃から30℃へ上がる例を考えます。水の比熱を4.19kJ/(kg・K)とし、熱量計の放熱や補正は省いた説明用の条件です。

水が吸収した熱量
Q = mwcw(Tout − Tin)
Q = 100 × 4.19 × (30 − 20) = 4,190kJ
Q:吸収熱量[kJ] mw:測定時間内に流れた水の質量[kg] cw:水の比熱[kJ/(kg・K)] Tin・Tout:水入口・出口温度[℃]。

ここで求めた4,190kJは、水が受け取った熱量そのもので、まだ燃料当たりの値ではありません。その間に燃やした燃料が1kgなら、質量当たりの発熱量も4,190kJ/kgとなります。

ガス体積で整理する場合は、同じ熱量を測定時間内のガス体積で割ります。例えば基準状態に直したガス量を0.100m³と仮定すれば、体積当たりでは41.9MJ/m³です。

同じ熱量を燃料の量で割る
Hm = 4,190kJ1kg = 4.19MJ/kg
HV = 4,190kJ0.100m³ = 41.9MJ/m³
Hm:質量当たりの発熱量 HV:体積当たりの発熱量。二つは異なる燃料量を仮定した単位の説明で、同じ試料の密度を示していません。

ガス流量と水流量は、同じ時間帯の測定値を組み合わせることが基本になります。温度差の読み取りが安定していても、水とガスの積算時間がずれると、算出した発熱量に偏りが生じます。

体積の基準には温度・圧力に加え、乾いたガスか水蒸気を含むガスかという条件もあります。体積換算の考え方はNm³とm³の違いと合わせると、成績書の単位を読みやすくなります。

ガスクロマトグラフ法

ガスクロマトグラフ法は、燃料を燃やした熱を測る代わりに、ガスの組成から発熱量を計算します。成分ごとの含有率と、それぞれの成分が持つ発熱量を組み合わせる方法です。

試料はヘリウムや窒素などのキャリアガスに運ばれ、カラムという分離管を通過します。成分とカラムの固定相との相互作用の違いから、各成分が検出器へ到達する時間に差が生まれます。

図2:ガスクロマトグラフは成分を分けてから熱量を計算する

標準ガスの保持時間と比べて成分を識別し、校正したピーク面積から含有率を求めます。

図は横にスクロールできます。

キャリアガス試料カラムで分離検出器保持時間 →検出器応答成分ごとのピーク濃度が既知の標準ガスで校正

ピーク位置や面積は分離の概念を示したもので、特定ガスの実測結果ではありません。

検出器から得たピークは、位置だけでなく面積も読み取って含有率へ換算します。面積の大きさをそのまま全成分共通の濃度に置き換えるのではなく、標準ガスを使った校正が必要です。

含有率が求まれば、各成分の発熱量をその割合で重み付けして足し合わせます。質量分率なら質量当たり、モル分率ならモル当たりというように、割合と成分の物性値の基準を一致させます。

理想気体のモル基準で表す混合ガスの発熱量
Hmix = Σ yiHi
Σ yi = 1
yi:成分iのモル分率[mol/mol] Hi:同じ高位・低位と温度条件での成分iのモル発熱量[kJ/mol] Hmix:混合ガスのモル発熱量[kJ/mol]。体積当たりへ換算するときは基準状態と圧縮係数も扱います。

計算例として、成分A・B・不燃成分のモル分率を0.80・0.10・0.10と仮定します。各モル発熱量も800・1,400・0kJ/molと仮定した、実在燃料の分析値とは別の練習例です。

仮定した組成の合計と重み付き和
0.80 + 0.10 + 0.10 = 1.00
Hmix = 0.80 × 800 + 0.10 × 1,400 + 0.10 × 0
Hmix = 780kJ/mol
A・Bは計算用の架空成分で、物性値も仮定です。組成全体には不燃成分を含めます。

窒素や二酸化炭素のような燃えない成分も、全体の組成に含めて整理します。可燃成分だけで割合を100%へそろえてしまうと、燃料ガス全体の発熱量を高く見積もる原因になります。

組成から求める方法では、各成分の物性値を選ぶ段階で高位・低位の基準が決まります。同じ組成から、選んだ物性値に応じて総発熱量と真発熱量の両方を計算できます。

この方法は、燃料ガスの熱量が変わった理由を成分の変化まで追える点に特徴があります。副生ガスの混合割合や希釈成分が変わる系統では、総熱量と組成を並べると変動の原因を整理できます。

カラムで成分が分かれる様子は、Thermo Fisher Scientificの解説動画でも確認できます。揮発性や固定相との相互作用による保持時間の違いを、カラム内部のアニメーションで説明しています。

液体燃料

液体燃料には、原油や石油を精製して得る燃料油が含まれます。燃料の性状が違うと、はかり取った試料の保ち方や燃やし方も変わるため、試料調製も測定法の一部です。

  • 原油
  • ガソリン
  • ナフサ
  • 灯油
  • 軽油
  • 重油

液体試料は質量を測りやすいため、発熱量をMJ/kgなどで整理することが多くあります。用途や性状による違いは液体燃料の種類、重油の分類はA重油・B重油・C重油の違いが参考になります。

ボンベ型熱量計

ボンベ型熱量計は、高圧の酸素を入れた密閉容器の中で試料を燃やす装置です。容器を囲む水の温度上昇を測り、水と容器が受け取った熱から燃料の発熱量を求めます。

図3:ボンベ型熱量計の断面と熱の行き先

試料の燃焼熱は、金属容器と周囲の水へ伝わり、水温の上昇として読み取れます。

図は横にスクロールできます。

温度計かくはん機密閉ボンベ点火線試料皿内筒の水外筒で周囲との熱交換を管理

試料や酸素の量を指示する操作図ではありません。実際の充填・点火・開放は装置の取扱手順に従います。

密閉した一定容積のボンベで水の凝縮熱も回収するため、求める値は定容総発熱量です。潜熱を含めない真発熱量との違いは、高位発熱量と低位発熱量の区別に対応します。

流水形との違いは、水を流し続ける代わりに、熱量計内の一定量の水の温度変化を見る点です。容器や付属部品も熱を受け取るため、水の質量と比熱だけで熱量計全体を表すことはできません。

そこで、発熱量が分かっている標準物質を燃やし、装置全体の実効熱容量を求めます。熱当量とも呼ぶこの係数を使うことで、測定した温度上昇を装置全体の吸収熱へ換算します。

試料以外に点火線や助燃材から生じた熱は、試料の発熱量から分けて扱います。規格に沿う測定では、温度の時間変化や酸の生成に伴う補正も含め、補正後の値を報告します。

熱当量を使う計算例

計算の形を見るため、実効熱容量を10.0kJ/K、補正後の温度上昇を2.50Kと仮定します。試料は1.00g、試料以外の燃焼による補助熱は0.10kJとした説明用の例です。

補助熱を差し引いた質量当たりの発熱量
H = CeffΔT − Qauxmf
H = 10.0 × 2.50 − 0.101.00 = 24.9kJ/g
H = 24.9MJ/kg
Ceff:水・容器等を含む実効熱容量[kJ/K] ΔT:補正後の温度上昇[K] Qaux:点火線等の補助熱[kJ] mf:試料質量[g]。実規格の補正全項を表す式ではありません。

1kJ/gは1MJ/kgに等しいため、最後の単位換算では数値が変わりません。一方、補助熱を引かずに計算すると25.0MJ/kgとなり、この例では試料の熱量を0.1MJ/kgだけ高く評価します。

揮発しやすい液体は、はかり取ってから点火するまでに成分が逃げると測定値が変わります。燃料油の性状に合う容器や封入方法を選ぶことが、試料質量と燃焼した質量を対応させるうえで重要です。

液体燃料の受入では、発熱量に加えて低温での流れやすさも評価します。配管での移送や貯蔵温度を考える際は、凝固点と流動点の違いも合わせて押さえると、性状ごとの役割を整理できます。

発熱量試験は、燃料が着火しやすい温度を調べる試験とは目的が異なります。貯蔵や取扱いで使う引火点や発火点と、燃焼で取り出せる熱量を分けて読み取ります。

固体燃料

石炭粒と粉砕試料、成形ペレットを載せた試料皿
発熱量測定に用いる試料調製を表す生成イメージ

固体燃料の代表は、石炭とコークスで、木質チップやペレットなども発熱量測定の対象になります。同じ燃料名でも水分や灰分の割合が異なるため、試料の採取と調製が結果を左右します。

燃料の成り立ちはコークスと石炭の違い、対象の広がりは固体燃料の種類で整理できます。発熱量の比較では、燃料名に加えて水分条件までそろえることが必要です。

燃研式自動熱量計

燃研式自動熱量計も、酸素を入れたボンベ内で試料を燃やし、水温上昇から熱量を求める装置です。液体用と原理が別というより、ボンベ型の測定を自動化した装置として理解すると整理できます。

自動化される範囲には、温度の読み取りや水槽の温度制御、計算などがあります。装置が自動でも、投入した小さな試料が元の燃料を代表しているかは、採取と調製の段階で決まります。

大きな塊を一つだけ取ると、燃料全体の水分や灰分の偏りをそのまま拾う可能性があります。試料を均一にしたうえで所定の量へ分け、調製中に水分や揮発分が変わらないように扱います。

測定後の完全燃焼の確認も、結果の判断に関わります。残ったすすや未燃物は、試料の化学エネルギーを十分に水温上昇として回収できなかった兆候になります。

水分と測定基準をそろえて比較する

燃料を乾かした状態の質量を基準にする値と、受け入れた状態の質量を基準にする値は異なります。乾燥基準の発熱量が同じ燃料でも、水分が多ければ受入燃料1kgに含まれる可燃部分が減ります。

図4:水分が違うと受入燃料1kgの熱量が変わる

乾燥した固形分の総発熱量を30MJ/kgと仮定した、質量基準の説明です。

図は横にスクロールできます。

乾燥基準:固形分1.0kg受入基準:固形分0.8kg+水0.2kg30MJ24MJ乾いた燃料同じ性状の固形分水分の質量割合20%。真発熱量への潜熱補正とは別の計算。

例えば乾燥固形分の総発熱量が30MJ/kgなら、水分20質量%の受入燃料では24MJ/kgになります。これは30×0.80という質量基準の換算であり、水蒸気の潜熱を引く計算とは別です。

真発熱量まで求める場合は、燃料中の水分に加え、水素が燃えて生じる水の扱いも必要です。高位か低位かという違いと、乾燥か受入かという違いを、二つの独立した条件として記録します。

木質燃料は乾燥状態の変動が大きいため、水分と発熱量を一緒に管理する意味があります。燃料受入から蒸気製造までの関係は、バイオマスボイラーの燃料管理ともつながります。

測定結果を設備の熱収支へ使うときの確認点

試験成績書では、発熱量と測定条件を一組として設備計算へ引き継ぎます。燃料使用量の積算と発熱量の質量・体積基準がそろって初めて、正しい投入熱量になります。

図5:試験成績書と設備計算でそろえる条件

測定値の大小を比べる前に、同じ意味の発熱量かを確かめます。

燃料と試料の基準試料名・採取日・採取場所。固体なら水分、乾燥基準か受入基準か。
熱量と単位の基準総発熱量か真発熱量か。MJ/kgかMJ/m³か。体積なら温度・圧力。
測定の方法燃焼による測定か組成からの計算か。適用した規格・校正・補正の内容。
設備側の入力燃料使用量の積算期間と単位。燃料密度や体積換算条件、定容・定圧と効率の基準。

液体燃料の使用量をLで記録し、発熱量をMJ/kgで受け取った場合は、密度を使って単位をつなぎます。温度で液体の体積が変わるため、密度と使用体積の温度条件も対応させます。

投入熱量は、同じ基準にした燃料使用量と発熱量の積で求められます。その値を蒸気の熱量と比較する際は、ボイラー効率の分母を高位と低位のどちらで取るかも統一します。

ガスの成分が変動する設備では、試験した時点と燃料を使った期間の違いも影響します。代表値の選び方まで含めてヒートバランスを組めば、計器の異常と燃料性状の変化を区別しやすくなります。

排ガス側の熱損失を計算するときは、排ガス量と温度も投入熱量に対応させます。排出濃度の比較で使うO₂換算は別の処理であり、燃料の発熱量そのものを換算する操作とは区別します。

発熱量の測定方法のよくある質問

ユンカース式で測るのは高位発熱量ですか?

燃焼で生じた水蒸気を凝縮させ、その熱まで流水に回収するので、総発熱量を求めます。真発熱量として使うには、水分などの条件に応じた換算が必要になります。

ガスクロマトグラフは発熱量を直接測りますか?

直接測るのはガスの成分と含有率で、発熱量は成分の物性値を使って計算します。熱量を燃焼で測る方法と違い、分析する成分の範囲や、含有率を求める校正も結果に関わります。

ボンベ型と燃研式自動熱量計は別の原理ですか?

どちらも密閉ボンベ内で燃料を燃やし、周囲の水の温度上昇を読むという原理です。燃研式自動熱量計は、温度管理や読み取りなどを自動化したボンベ型の装置として整理できます。

発熱量が高い燃料ほど着火しやすいのですか?

発熱量は燃やしたときに得られるエネルギーで、着火条件の指標とは意味が異なります。燃料の安全な取扱いでは、引火点や発火点、揮発性などの性状を発熱量とは別に調べます。

同じ燃料の測定値が資料によって違うのはなぜですか?

組成や水分の違いに加え、高位・低位や温度・圧力、乾燥・受入といった基準が違うためです。数値を比較する際は、同じ燃料名であることよりも、測定基準が一致することを先に確かめます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 気体燃料はユンカース式流水形ガス熱量計、またはガスクロマトグラフで組成を分析して求める
  • 液体・固体燃料は、ボンベ内で燃焼させ水温上昇を読む方法が基本
  • 燃焼熱を水に回収する測定では、容器の熱容量や補助熱の補正も必要
  • 水蒸気の凝縮熱を含む総発熱量と、含まない真発熱量を区別する
  • 測定値を比較・使用するときは単位、基準状態、水分基準をそろえる

発熱量の測定結果は、燃料代や設備効率を判断するための入力になります。測定値の基準をそろえる作業を、工場の省エネとエネルギー管理の基礎として押さえておくと、改善効果を比較しやすくなります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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