「製造業の資格」と聞くと、多くの方は工場で機械を動かすための免許や、難関の国家資格を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、製造業で役立つ資格は、法令で持っていないとできない仕事を担うためのもの、職場に置くことが義務づけられているもの、知識や技能のレベルを示すものなど、性格の違う資格が混在しています。同じ資格でも、職種によって役立ち方は大きく異なります。
この記事では、製造業で役立つ資格を、資格の3つのタイプ、設計・開発職、電気・設備保全職、品質管理・生産管理職、製造現場の技能職という順で整理し、最後に選び方と取り方をまとめます。
製造業で資格が評価される3つの理由

製造業で資格が評価される理由は、資格の種類によって異なります。まずは資格を3つのタイプに分けて考えると、自分に必要な資格が見えやすくなります。
資格は、法令上の位置づけによって役立ち方が変わります。
業務独占型の資格は、持っていないと担当できない作業があるため、現場での配置や業務の幅に直結します。電気工事士やフォークリフトの技能講習がその代表です。
選任・必置型の資格は、事業場の規模や設備に応じて、有資格者を選任することが法令で求められるものです。会社にとって有資格者の確保が欠かせないため、資格手当の対象になりやすく、転職市場でも評価されやすい傾向があります。
能力証明型の資格は、持っていなくても仕事はできますが、知識や技能の水準を客観的に示せます。社内の昇格要件や、異動・転職の際のアピール材料として使われます。資格の位置づけを理解したうえで、自分の職種や目指すキャリアに合うものを選ぶことが大切です。
多くのメーカーでは、会社として取得を推奨する資格を定め、受験料や講習費用の補助、合格時の報奨金、毎月の資格手当などで取得を後押ししています。対象となる資格や金額は会社ごとに異なるため、就業規則や社内の教育制度を確認しておくと、効率よく資格を取得できます。
また、資格は取得して終わりではありません。選任が必要な資格では、選任後に定期的な講習の受講が求められるものもあります。資格の維持に必要な手続きも含めて把握しておくことが大切です。

設計・開発職に役立つ資格

設計・開発職では、法令で必須となる資格は多くありません。そのため、資格は知識の体系的な習得と、設計力を客観的に示す手段として活用されます。
設計の基礎知識からCAD操作、語学まで幅広く選べます。
※技術士は文部科学省所管の国家資格。受験の要件や試験内容は公益社団法人日本技術士会で確認できます。
機械設計技術者試験
機械設計技術者試験は、一般社団法人日本機械設計工業会が実施する民間資格です。3級は機械設計の基礎知識、2級・1級は実務経験を前提とした応用力や設計の総合力を問う内容で、機械設計の知識を体系的に確認できます。
令和7年度の試験(2025年11月実施)では、3級の受験者1,678人に対し合格者898人で、合格率は53.5%でした。2級は受験者589人・合格率46.9%、1級は受験者143人・合格率42.0%です。
受験者数だけを見ると小規模な試験ですが、材料力学、機械力学、熱工学、制御、製図など、機械設計に必要な分野を横断して学べる点に価値があります。若手の設計者が知識の抜けを確認する目的でも使われています。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)が実施する試験で、2次元CADと3次元CADに分かれています。CADの基礎知識と操作技能を認定するもので、設計補助やCADオペレーターを目指す人にも向いています。
ACSPの統計によると、2025年度の2次元CAD利用技術者試験2級は受験者3,469人で合格率54.02%、3次元CAD利用技術者試験2級は受験者2,246人で合格率73.82%でした。上位の1級(2次元の機械分野)は2025年度前期の合格率が29.20%で、難易度が一段上がります。
機械設計の現場では、3次元CADで設計し、そのデータを解析や加工に活用する流れが広がっています。3次元CADの資格は、設計者だけでなく、生産技術や品質保証で3次元データを扱う人にも役立ちます。CADの資格を入り口に、解析(CAE)の知識へと学びを広げていく人もいます。
機械設計技術者試験とCAD利用技術者試験のどちらを先に受けるかは、担当業務によって決めるとよいでしょう。図面を描く作業が中心の人はCAD利用技術者試験、強度計算や部品の選定まで担う人は機械設計技術者試験が、日々の業務と結びつけやすい資格です。
CADの操作は実務で身につくことも多いため、資格は「基礎を体系的に押さえている」ことの証明として位置づけるとよいでしょう。設計の仕事の全体像は機械設計とはの記事で紹介しています。
技術士とTOEIC
技術士は、科学技術に関する高度な専門的応用能力を持つ技術者を認定する国家資格です。第一次試験と第二次試験があり、第二次試験では一定の実務経験が求められます。設計・開発職のキャリアの中盤以降で目指す資格として位置づけられています。
TOEICは、海外拠点とのやりとりや海外顧客への技術説明が多い職場で、英語力を示す指標として使われます。昇格の要件にスコアを定めている企業もあるため、自社の基準を確認しておくと目標が立てやすくなります。
電気・設備保全職に役立つ資格

電気・設備保全の分野は、製造業の中でも資格の重要性が特に高い領域です。電気設備の工事や保安には法令上の資格が必要な場面が多く、有資格者は社内外で評価されやすい傾向があります。
また、電気と機械の両方の知識を持つ保全担当者は、設備の故障原因を幅広く切り分けられるため、現場で重宝されます。電気系の資格と機械保全技能士を組み合わせて取得するのも有効な方法です。
法令で求められる資格と、技能を証明する資格があります。
※選任の要否や範囲は、事業場の設備やエネルギー使用量によって異なります。
電気主任技術者(電験三種)
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する国家資格です。受変電設備を持つ工場では、電気主任技術者の選任が必要になるため、工場の電気設備を担う人にとって代表的な資格です。
一般財団法人電気技術者試験センターの発表によると、令和7年度の第三種電気主任技術者試験は、上期と下期の合計で受験者48,942人、合格者6,365人でした。合格率は約13%で、難関の資格といえます。
試験は理論、電力、機械、法規の4科目で、科目ごとの合格には一定期間の持ち越し制度があります。数年かけて計画的に合格を目指す人も多く、働きながら取り組む前提で学習計画を立てることが大切です。
第三種電気主任技術者が保安を監督できる範囲は、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)です。さらに大規模な設備を扱うには、第二種・第一種の電気主任技術者が必要になります。
電気工事士
電気工事士は、電気工事の欠陥による災害を防ぐため、一定の電気工事に従事する人に必要な国家資格です。第二種は住宅や小規模な店舗などの一般用電気工作物、第一種はさらに自家用電気工作物(最大電力500kW未満)の工事も扱えます。
令和7年度の第二種電気工事士試験は、学科試験の受験者が139,087人で合格率56.6%、技能試験の受験者が99,610人で合格率71.8%でした。受験者数が多く、設備保全職の入り口として選ばれることが多い資格です。
工場の設備保全では、制御盤の配線変更やモーターの交換など、電気工事を伴う作業が日常的に発生します。電気工事士の資格があれば、外部の業者に頼らず自社で対応できる範囲が広がり、設備の停止時間の短縮にもつながります。
エネルギー管理士
エネルギー管理士は、省エネ法に基づき、エネルギー使用量の多い工場で選任が求められる国家資格です。熱分野と電気分野があり、工場の省エネや設備の効率化を担う人に適しています。
一般財団法人省エネルギーセンターの発表では、令和8年度(2026年8月実施)のエネルギー管理士試験で、受験者8,783人に対し合格者3,019人でした。脱炭素への関心が高まるなか、工場のエネルギー管理を担う人材の需要は続いています。省エネの基本は省エネの基礎の記事で解説しています。
機械保全技能士
機械保全技能士は、国家検定である技能検定のうち「機械保全」職種の合格者に与えられる称号です。機械系保全作業、電気系保全作業、設備診断作業に分かれ、特級から3級までの等級があります。
公益社団法人日本プラントメンテナンス協会の公表資料によると、2025年度の機械保全技能検定は受検申請者29,219人、合格者14,733人で、全作業・全等級の合格率は50.4%でした。設備保全の仕事は設備保全とはで詳しく紹介しています。
機械保全技能検定は、学科試験と実技試験で構成されています。機械系保全作業では、機械要素や潤滑、故障の診断などの知識が問われ、日常の保全業務で身につけた知識を体系的に整理する機会になります。
品質管理・生産管理職に役立つ資格

品質管理や生産管理の分野では、法令で必須となる資格は多くありませんが、品質管理の考え方や手法を体系的に学べる資格が広く活用されています。代表的なのがQC検定です。
品質の手法から安全衛生、危険物まで職場に応じて選びます。
※危険物取扱者は甲種・乙種・丙種に分かれ、扱える危険物の範囲が異なります。
QC検定(品質管理検定)
QC検定は、一般財団法人日本規格協会が実施する品質管理の知識を認定する検定です。4級は品質管理の入門、3級は現場で問題解決を進めるための基本的な手法、2級は品質管理の実践、1級は組織全体の品質管理を推進するレベルとされています。
第41回(2026年3月実施)では、2級の受検者6,644人に対し合格者1,804人で合格率は27.15%、3級は受検者18,457人に対し合格者9,318人で合格率50.48%でした。第40回(2025年9月実施)でも2級の合格率は31.33%で、2級から難易度が上がります。
QC検定は、社内の昇格要件や、品質保証部門への配属の条件として活用している企業もあります。製造現場のリーダーには3級、品質保証や生産技術の担当者には2級を目標とするなど、職位に応じて目標の級を定めている例も見られます。
QC検定は、品質保証部門だけでなく、製造現場の班長や生産技術者にも役立ちます。QC七つ道具などの手法はQC七つ道具の基礎で紹介しています。
生産管理職のための学び方
生産管理の分野では、特定の資格よりも、需要予測、在庫管理、工程管理などの知識を実務で使えることが重視されます。QC検定で品質の基礎を押さえたうえで、生産管理システムやデータの扱いを学ぶと、仕事の幅が広がります。
品質保証で求められる規格の知識
品質保証の仕事では、ISO 9001などの品質マネジメントシステムの規格に関する知識も求められます。社内の内部監査員として活動するための研修は、多くの審査機関や研修機関が実施しており、品質保証部門への異動を考える人の最初の一歩になります。
自動車業界ではIATF 16949、医療機器ではISO 13485など、業界ごとの規格もあります。自分が関わる業界でどの規格が使われているかを確認しておくと、学ぶべき内容が明確になります。品質保証の仕事は品質保証とはで紹介しています。
製造現場の技能職に役立つ資格

製造現場では、作業そのものに資格や講習の修了が必要なものと、技能のレベルを証明するものがあります。配属先の作業内容に合わせて、必要な資格から順に取得していくのが基本です。
製造現場の資格は、未経験で入社した人でも入社後に取得できるものが多いのが特徴です。会社の指示で講習を受けて資格を取り、経験を積みながら技能検定などの上位の資格に挑戦していく、というのが一般的なステップです。
技能検定(機械加工、溶接など)
技能検定は、働く人の技能を一定の基準で検定し、国として証明する制度です。合格すると「技能士」と名乗ることができ、機械加工、金型製作、仕上げ、電子機器組立て、機械保全など、製造業に関わる職種が数多くあります。
厚生労働省の公表によると、令和6年度の技能検定は受検申請者が720,130人、合格者が325,560人で、合格率は45.2%でした。技能検定は職種と等級によって難易度が大きく異なるため、自分の職種の過去の実績を確認することが大切です。
技能検定の等級は、職種によって特級、1級、2級、3級などに分かれています。等級が上がるほど、求められる技能の水準が高くなり、受検に必要な実務経験も長くなります。多くの職種は都道府県の職業能力開発協会が試験を実施しているため、日程や実施職種は各協会の案内で確認できます。
溶接については、技能検定とは別に、一般社団法人日本溶接協会が実施するJIS溶接技能者評価試験が広く使われています。溶接の方法や材料、板厚などの区分ごとに資格があり、取引先から有資格者による施工を求められる場面もあります。
危険物取扱者
危険物取扱者は、消防法で定める危険物を一定量以上扱う施設で必要な国家資格です。製造業では、塗料や溶剤、潤滑油などを扱う工場で求められることが多く、特に引火性液体を扱える乙種第4類(乙4)が広く取得されています。
一般財団法人消防試験研究センターによると、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の乙種第4類は受験者222,545人、合格者71,059人で、合格率は31.9%でした。受験資格の制限がなく、学生や未経験者でも挑戦できます。
フォークリフト運転技能講習
最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転するには、労働安全衛生法に基づく技能講習の修了が必要です。1トン未満の場合は特別教育の受講が必要になります。講習は登録教習機関で受けることができ、保有している運転免許などによって講習時間が異なります。
フォークリフトは、材料の搬入から製品の出荷まで工場内の物流に欠かせないため、製造現場で働く多くの人にとって基本となる資格です。
玉掛け・クレーン関連
重量物を扱う工場では、クレーンで荷をつり上げる作業に関わる資格も必要です。つり上げ荷重1トン以上のクレーンで玉掛け作業を行うには玉掛け技能講習の修了が必要で、クレーンの運転にも荷重や種類に応じた免許や技能講習が求められます。
これらはフォークリフトと同様に、配属先の作業に応じて会社の指示で取得することが多い資格です。安全に直結するため、講習で学んだ手順を現場で確実に守ることが何より大切です。
衛生管理者
衛生管理者は、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が求められる国家資格です。製造業などの業種では、第一種衛生管理者の免許を持つ人から選任する必要があります。
公益財団法人安全衛生技術試験協会の統計では、令和7年度の第一種衛生管理者試験は受験者66,401人、合格者31,046人で、合格率は46.8%でした。職場の安全衛生の取り組みは製造業の安全衛生の記事で解説しています。

資格の選び方と取り方

資格は数が多く、すべてを取る必要はありません。自分の職種と今後のキャリアに合う資格を、優先順位をつけて取得していくことが大切です。
各試験の実施機関が公表している直近の合格率を比べたものです。
※合格率は受験者層によって変わるため、難易度の目安として参照してください。電験三種は上期・下期の合計から算出。
合格率は難易度の目安になりますが、受験者の層によって大きく左右されます。たとえば、実務経験者が多く受ける試験は、合格率が高くても内容が易しいとは限りません。学習時間や試験の範囲とあわせて判断することが大切です。
職種と目標から逆算して、取得の順番を決めます。
※試験日程や受験資格は変更されることがあるため、各実施機関の公式サイトで最新情報を確認してください。
まずは必須の資格から
製造現場で働く場合、フォークリフトや危険物取扱者など、配属先の作業に必要な資格を最優先で取得します。これらは会社が費用を負担して取得させることも多いため、上司や人事部門に確認しましょう。
次にキャリアの方向に合う資格を
必須の資格を押さえたら、目指すキャリアに合う資格に進みます。設備保全に進みたいなら電気工事士や機械保全技能士、品質保証に進みたいならQC検定、設計に進みたいなら機械設計技術者試験やCAD利用技術者試験が候補になります。
学習時間を確保する工夫
働きながら資格を取るうえで最大の課題は、学習時間の確保です。交替勤務や残業がある職場では、まとまった時間を取りにくいため、通勤時間や休憩時間に過去問を解くなど、短い時間を積み重ねる工夫が必要になります。
職場に同じ資格を目指す仲間がいれば、勉強会を開いたり、合格者に学習方法を聞いたりするのも効果的です。先輩が使った参考書や、社内で蓄積された対策資料を活用できることもあります。
取得した資格を仕事に生かす
資格は取得した後の使い方で価値が変わります。QC検定で学んだ手法を使って職場の不良を減らす、電気工事士の知識で設備のトラブルに素早く対応するなど、資格の知識を実務の成果につなげることで、社内での評価が高まります。
取得した資格と、それを使って上げた成果をセットで記録しておくと、昇格の面談や転職の際に、自分の実力を具体的に説明する材料になります。
資格の学習は、仕事で使う知識の整理にもなります。資格の勉強を通じて、日々の業務で「なぜそうするのか」を説明できるようになることも、資格取得の大きな効果です。
まとめ
- 製造業の資格は、業務独占型、選任・必置型、能力証明型の3つに分けて考えると整理しやすい
- 設計・開発職は機械設計技術者試験やCAD利用技術者試験で知識と技能を示せる
- 電気・設備保全職は電験三種、電気工事士、エネルギー管理士、機械保全技能士の評価が高い
- 品質管理にはQC検定、現場には技能検定、危険物取扱者、フォークリフト、衛生管理者が役立つ
- まず配属先で必須の資格を取り、次にキャリアの方向に合う資格へ進むのが基本
資格はキャリアを広げるための手段の一つです。資格が年収にどう関わるかは製造業の年収ランキングで、職種ごとの仕事内容は製造業の職種一覧で確認できます。
出典
- 機械設計技術者試験の受験者数・合格率:一般社団法人日本機械設計工業会「令和7年度 機械設計技術者試験 受験者数・合格者数、合格率」
- CAD利用技術者試験の受験者数・合格率:一般社団法人コンピュータ教育振興協会「CAD利用技術者試験 統計情報」
- 第三種電気主任技術者試験の結果:一般財団法人電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験 試験結果」
- 第二種電気工事士試験の結果:一般財団法人電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験の試験結果と推移」
- エネルギー管理士試験の合格者発表:一般財団法人省エネルギーセンター「エネルギー管理士試験 合格者発表」
- 機械保全技能検定の受検者数・合格率:公益社団法人日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定 情報開示」
- QC検定の受検者数・合格率:一般財団法人日本規格協会「第41回QC検定 受検者データ」
- 技能検定の実施状況:厚生労働省「令和6年度『技能検定』の実施状況」
- 危険物取扱者試験の実施状況:一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況(令和7年度)」
- 衛生管理者試験の受験者数・合格率:公益財団法人安全衛生技術試験協会「統計」

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