電力原単位とは?計算方法・固定電力と改善効果の見方

生産ラインと配電盤を備えた工場の一般イメージ

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電力原単位は、一定期間の使用電力量を、その期間に対応する生産量などで割った指標です。製品1個当たり何kWh使ったかを表し、生産規模が違う月の比較や、改善活動の評価に使います。

ただし、原単位が下がった理由は省エネだけではありません。増産によって待機中の消費が多くの製品へ配分された場合も、製品当たりの値は下がります。総使用量と操業条件を合わせて読むことが大切です。

現場で使う良品1個当たりなどの指標と、電気料金やCO2の指標も区別します。

目次

電力原単位とは

電力原単位は、工場や工程が使った電気を、製品の個数や重量などの活動量と結び付けるものです。例えばkWh/個、kWh/tのように表し、値が小さいほど、その定義では製品当たりの使用電力量が少なくなります。

分子に使うのは、瞬間の電力kWではなく、期間中に消費した電力量kWhです。一定の電力であれば、電力に運転時間を掛けると電力量になります。負荷が変動する場合は、一時点の測定値だけで代表させず、時間ごとの変化を積算します。

電力量と電力原単位
E = P × t
I = EQ
E:使用電力量[kWh] P:一定と仮定した電力[kW] t:時間[h] Q:生産量[個] I:電力原単位[kWh/個]。Qの単位をtとする場合、IはkWh/tです。

電気料金の管理では、最大需要電力や単価も重要になります。しかし、原単位が同じでも料金単価が上がれば費用は増えます。kWh/個、円/個、最大需要電力のkWは、別の項目として管理します。

電気だけを対象にした現場指標と、燃料や熱も含むエネルギー消費原単位も区別します。工程を電化すると電気が増えて燃料が減る場合があるため、工場の省エネの考え方に沿って全体を見ます。

同じ品質の製品を同じ条件で作るなら、電力原単位の低減は使用量と費用の抑制に役立ちます。CO2排出量については、使った電気の排出係数や制度上の扱いも関わるため、原単位の数値だけで決めません。

電力原単位の把握方法

最初に決めるのは、どの範囲の電気と、どの生産量を対応させるかです。工場全体を評価するなら受電・発電などの収支を整理し、工程の改善を見るなら対象工程の使用電力量を計測します。

工場全体の電力量を、一つのラインの生産量だけで割ると、別ラインや事務所の変化が混ざります。分子の計測範囲と分母の活動範囲をそろえ、その定義を担当者が替わっても追えるように残します。

図1:電力量と生産量を同じ境界でそろえる

ラインAだけの改善を追う場合の計測境界。単線結線図ではありません。

子メータ 工場の受電計測ラインBAの電力量・Aの良品数ラインA

共用設備の電気を含める場合は配分方法も定義します。親メータと子メータを単純合算して二重計上しません。

期間もそろえます。月末の締め時刻が電力側と生産側でずれると、夜勤や月をまたぐロットが別の期間へ入ります。日報、検針値、製造実績の時刻基準を合わせてから計算します。

生産量を投入数にするか良品数にするかも、評価目的によって決めます。良品当たりで見れば、不良や再加工に使った電気の影響を含めて評価できます。途中で分母を変えるときは、比較できる形で過去値も整理します。

計測は、積算電力量の差分や、電力計から収集した時系列データを使います。既存設備への後付け収集は既存設備のIoT化も参考になります。通信欠損やメータ交換の扱いも先に決めます。

閉鎖された電力計測盤外観の一般イメージ
工場の計測盤を表す一般イメージ。表示値や実設備の測定結果を示す写真ではありません。

例えば、ある月の使用電力量が12,000kWh、同じ範囲の良品数が6,000個だったとします。以下の値は説明用の仮定です。実際の工程では、良品の定義や共用設備を含む範囲も併記します。

良品1個当たりの計算例
I = EQ = 12,0006,000 = 2.0 kWh/個
E:対象月・対象範囲の電力量12,000kWh Q:同じ月・範囲の良品6,000個。実設備の実績値ではありません。

月ごとの原単位を年平均にするときは、各月の数値を単純平均せず、年間電力量の合計を年間生産量の合計で割ります。生産量が違う月を同じ重みで平均すると、年間の製品当たり消費とずれてしまいます。

例えば、1,000個に4,000kWhを使った月と、2,000個に6,000kWhを使った月を合わせます。合計は3,000個と10,000kWhなので、2か月の原単位は約3.33kWh/個です。月別4.0と3.0の単純平均3.5とは異なります。

一つのロットが複数月へまたがる工程では、完成数と消費した時期にもずれが生じます。製造の進捗や仕掛品を記録し、短い期間の値を読む際には、同じロットの仕事がどこまで含まれるかを合わせます。

品種構成、稼働時間、外気温、不良率も同じ表へ残します。電気と生産の対応は工場のKPI管理の一部として扱い、数値の悪化を見つけた後に原因をたどれるようにします。

電力の分類

使用電力量を、生産量に比例する部分、固定的な部分、その中間の部分に分けると改善先を探しやすくなります。これは分析上の見方であり、設備名だけで三つの分類へ永久に固定するものではありません。

分類するときは、比較する期間と運転条件をそろえます。月間の電力量が生産量とどう変わるかと、瞬間の電力が負荷でどう変わるかを区別し、測定データから関係を確かめます。

比例電力

比例的な部分は、生産量が増えるとそれに応じて増える消費です。例えば、同じ材料を同じ条件で加工する際の仕事が製品数にほぼ比例するなら、その範囲で製品数と電力量に比例関係を近似できます。

ラインの速度を上げれば必ず比例する、という意味ではありません。速度変更で待機時間や効率、良品率が変わる場合もあるため、製品当たりの加工条件と運転状態を調べて関係を読みます。

固定電力

固定的な部分は、同じ期間と条件では生産量にあまり依存せず発生する消費です。制御盤の待機や停止中も残る補機などが対象になり、生産ゼロの時間帯を測ると、その存在を探しやすくなります。

照明や空調も、生産数量に直接比例しない負荷の例です。ただし、照明は点灯時間や調光、空調は外気温や設定、在室状況などで変わります。稼働に関係なくいつも同じ電力を使う、という意味ではありません。

図2:生産が止まっても残る消費を見つける

一部の負荷を描いた待機時間帯の場面。設備を一括で停止する指示ではありません。

点灯時間で変わる加工機は停止中制御盤は待機中待機分を計測

安全・品質・凍結防止などに必要な負荷を区別したうえで、不要な待機や点灯を減らします。

固定的な消費は、生産量が少ない月ほど製品1個への負担が大きくなります。照明の更新などを検討する場合も、工場照明のLED化と点灯時間の見直しを分け、実際の電力量で効果を測ります。

中間電力

中間的な部分は、固定分と変動分が混ざる消費です。空気圧縮機なら、空気を作る負荷に加えて、アンロード(空気を送り出さない無負荷運転)中の消費や漏れへの供給もあり、生産数と単純な比例にならない場合があります。

ポンプも、必要流量、揚程、台数、回転数や弁の絞り方で消費が変わります。ポンプ効率を踏まえ、製品数だけでなく、設備が実際に供給した量と運転条件を調べます。

図3:共用ユーティリティは生産以外の消費も分ける

空気圧縮機と分岐先の概念。エア漏れの場所を示す実測図ではありません。

圧縮機生産側の使用漏れへの供給負荷・待機を測り分ける

供給圧力、運転台数、負荷/アンロード、漏れ量などを合わせて評価します。漏れを生産量の増加と取り違えません。

インバータで速度を変えられる設備では、低負荷時の運転方法が改善につながる場合があります。インバータによる省エネの仕組みを参考に、対象負荷と必要な流量・圧力に合わせて検討します。

図4:増産だけでも原単位が下がる仮定例

同じ月間固定分bと、製品当たり比例分aが変わらないモデルです。

項目月A月B
生産量Q1,000個2,000個
比例分aQ2,000kWh4,000kWh
固定分b2,000kWh2,000kWh
合計E4,000kWh6,000kWh
原単位I4.0kWh/個3.0kWh/個

原単位は25%低下しますが、総電力量は50%増えています。実設備の測定値や削減保証ではありません。

固定分を持つ単純モデル
E = aQ + b
I = EQ = a + bQ
月B:2 + 2,0002,000 = 3.0 kWh/個
a:比例分2kWh/個 b:同じ月間条件の固定分2,000kWh Q:月間生産量[個]。Qは正。単純化した説明モデルで、全操業範囲へ外挿しません。

この例では、機器の効率や待機消費は改善していません。増産して固定分が多くの製品へ分かれた結果、原単位だけが下がっています。改善を評価するには、同じ生産条件へそろえた比較が必要です。

実データでは、生産量に対する電力量の散布図から関係を調べます。品種や気温の影響が大きければ、別々に層別したり、複数の要因を含むモデルで補正したりして、操業条件の変化と改善を分けます。

改善後の生産量が2,000個だった場合、同じ条件を仮定する基準モデルの予測は6,000kWhです。そのときの実測が5,400kWhなら、モデルとの差は600kWhとなります。比較対象の条件をそろえることで、増産だけによる変化から一歩進んだ評価ができます。

同じ生産量へそろえた説明用の比較
E基準 = 2 × 2,000 + 2,000 = 6,000 kWh
ΔE = E基準 − E実測 = 6,000 − 5,400 = 600 kWh
削減割合 = 6006,000 × 100 = 10%
E基準:同じ生産量でのモデル予測[kWh] E実測:仮定の改善後実測5,400kWh ΔE:その差[kWh]。生産以外の条件が同じで、基準モデルが妥当という説明上の仮定です。

この差を評価する際も、基準期間と改善後で品種や測定範囲が変わっていないかを調べます。モデルのばらつきや計測誤差に比べて差が小さい場合は、短期間の数字だけで効果を断定せず、データを重ねます。

特に、設備の増設や外注工程の内製化があると、工場が受け持つ仕事そのものが変わります。境界を変更した時点を記録し、比較の基準を見直すことで、実態と合わない目標を引き継ぐことを防げます。

電力原単位の改善方法

対策は、消費量の大きい工程や、停止時間に残る負荷から優先順位を付けます。改善前の基準と測定方法を決め、実施後に生産量や品質をそろえて効果を評価すると、次の改善へつなげやすくなります。

運転方法の改善

運転の見直しでは、不要な待機の短縮、立上げの順序、まとめ生産、負荷に合う台数運転などを調べます。安全機能や品質に必要な保温・換気を区別し、止められる部分と維持する部分を明確にします。

ピーク時の同時稼働をずらす対策は、最大需要電力の抑制に役立ちます。ただし、別の時間帯へ同じ消費を移すだけなら、期間全体のkWhは減りません。原単位を改善したかは、積算電力量で判断します。

図5:ピーク低下と電力量削減を区別する

一定負荷に単純化した仮定例。4時間の合計電力量はどちらも200kWhです。

1005050100kWkW024h024h100kW × 2h=200kWh50kW × 4h=200kWh

同じ生産量なら、この2条件の電力原単位も同じです。実際は運転時間の延長に伴う補機や空調の消費も加えて評価します。

デマンド対策と省エネの両方を狙うなら、時間をずらす部分と、電力量そのものを減らす部分を分けて記録します。工場のデマンド削減と原単位を並べると、効果の取り違えを防げます。

管理の強化

計測データを集めるだけでは、削減量は生まれません。誰が、どの頻度で、どの範囲の値を見て、どの変化を調べるかを決めます。異常を見つけたら、運転記録や設備の状態と照合します。

例えば同じ製品数でも、暖機が長かった日や再加工が多かった日は消費が増えます。工場データの分析では、欠損や外れ値を記録で確かめ、都合のよいデータだけを残さないことが大切です。

教育では、原単位の目標だけでなく、停止できる設備、必要な復旧手順、記録方法まで共有します。現場が生産量を増やしただけの変化と、無駄な運転を減らした成果を分けて評価できるようにします。

プロセスの高効率化

高効率化では、必要な仕事を少ない入力で達成する方法を探します。機器の更新だけでなく、漏れの低減、摩擦や目詰まりの改善、温度・圧力・流量の適正化も対象になります。

自動化は、停止や不良を減らして原単位改善につながる一方、新たな駆動機や待機負荷も増やします。装置単体の定格電力だけを比べず、良品を作る一連の工程に必要な電力量で効果を見ます。

投資前には、削減できる運転時間、負荷、年間の使用条件を整理します。実施後は同じ境界で測り直し、原単位だけでなく、総電力量、品質、生産能力、保全負担の変化も記録します。

プロセスの転換

工程そのものを変える場合は、加熱方式や加工方式、工程の統合などを検討します。工程数や処理条件が変わるため、電気の削減だけでなく、燃料や用水、歩留まりまで含めて全体を比較します。

再生可能エネルギーの導入は、電気の調達やCO2排出の評価に関わる取組です。同じ設備が同じkWhを使って同じ個数を作るなら、調達先を変えるだけでは、消費電力量で定義した原単位は変わりません。

自家発電で買電量が減った場合も、工場が消費した電力量と分けます。買電量だけを分子にすると、発電分が増えた変化を設備の省エネと取り違えます。指標に含める電気の収支を明示します。

改善策を入れる前と後で原単位を比べるときは、数値の差を効果として説明する前に、次の条件がそろっているかを確かめます。生産量が減った月は固定的な消費の負担が増えるため、条件をそろえずに比べると、改善の効果が数値に表れにくくなるためです。

項目確かめる理由記入例
比べる期間季節で空調や照明の電力が変わる改善前は前年10月、改善後は今年10月
生産量の数え方個数・重量・金額で原単位が変わる良品の出荷重量(トン)で統一
品種の構成品種ごとに使う電力が違う大型品の割合が4割から2割に低下
稼働日数と稼働時間待機や立上げの電力が混ざる稼働20日・2交替は前後とも同じ
計測の範囲対象外の設備が混ざると差が読めない第2工場の受電点のみ、事務所棟は除く
設備の増設・停止改善策以外の変化を分ける8月に乾燥炉を1台追加
※架空の工場を想定した記入例です。

よくある質問

原単位が下がれば総電力量も減っていますか?

原単位は製品当たりの値なので、増産時には総電力量が増えても下がることがあります。原単位と総電力量の両方を見て、生産条件をそろえた比較で改善を評価します。

生産ゼロの日の原単位はどう扱いますか?

分母がゼロなので、kWh/個としては計算できません。ゼロと表示せず、原単位は算出対象外とし、停止中の使用電力量を別に記録します。待機消費を探すための重要なデータです。

製品の種類が違う月も比較できますか?

品種ごとの消費が違えば、単純比較には構成変化が混ざります。品種別に分ける、適切な換算生産量を使う、条件を含めたモデルで補正するなど、目的に合う方法を定義します。

ピークシフトだけで原単位は改善しますか?

同じ電力量を別の時間へ移すだけで、同じ生産量なら消費原単位は同じです。実際の省エネ効果は、運転時間や補機を含む合計kWhで確かめます。契約電力や費用の効果とは分けます。

再エネ電気へ切り替えると原単位は下がりますか?

同じ使用電力量と生産量なら、kWh/個は変わりません。CO2の評価は排出係数や証書などの条件に従って別に算定します。買電量、消費量、排出量のどれを測る指標かを明確にします。

まとめ

電力原単位は、同じ期間と範囲の使用電力量を、生産量などの活動量で割って求めます。比例分、固定分、両者が混ざる消費を分けると、改善する場所と、増減の理由を考えやすくなります。

原単位の低下をそのまま省エネ成果とせず、生産量、品種、気温や良品率も合わせて評価します。ピーク、電気料金、CO2も別の指標で追い、運転改善から工程転換までの効果を確かめます。

電力原単位を使うときの確認項目
  • kWとkWhを区別し、分子と分母の期間・範囲をそろえる
  • 生産量・品種・良品率・稼働時間を一緒に残す
  • 固定分の配分と実際の省エネ効果を分ける
  • ピーク低減・料金低減・CO2削減を別に評価する
  • 必要な安全・品質機能を維持し、改善後も同じ境界で測る

電力原単位の管理をエネルギー管理士の試験につなげたい方は、受講料と学び方を通信講座 SAT の紹介ページで比べられます。

参考資料・出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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