センサー・計測の主な用途と導入事例|業界別の活用方法を解説

センサーで生産ラインを監視する日本の工場

「センサーを導入する」と聞くと、多くの方は大がかりなIoTシステムや、高価な検査装置を思い浮かべるのではないでしょうか。

実際には、既存の設備に小さなセンサーを1つ取り付けるだけの取り組みから、生産ライン全体の品質をデータで管理する仕組みまで、使い方の幅はとても広い技術です。規模の小さな工場でも、身近なところから成果を上げている例が少なくありません。

この記事では、センサー・計測の主な用途、業界別の活用方法、実際に公開されている導入事例、導入の進め方、関わる仕事と求められるスキルという順で整理します。

目次

センサー・計測の主な用途

レーザー測定器で金属部品を検査する作業員

製造現場でのセンサー・計測の使い道は、目的によって大きく4つに分けられます。まずは全体像をつかんでおきましょう。1つのセンサーが複数の用途を兼ねることもあります。

図1:センサー・計測の4つの主な用途

目的によって、使うセンサーも求められる性能も変わります。

有無・位置の検出ワークの到着や部品の欠品を検出し、設備を正しく動かす
寸法・形状の測定製品の長さや厚み、形を測り、品質を確かめる
設備の状態監視振動・温度・稼働状況を見張り、停止や故障を防ぐ
環境・エネルギーの計測電力や温湿度を測り、省エネや品質条件の管理に使う

有無・位置の検出

もっとも身近な用途が、物があるかどうか、決まった位置に来たかどうかの検出です。コンベヤーの上を流れるワークの到着を知らせたり、組立前に部品がそろっているかを確かめたりします。

使われるのは主に光電センサーや近接センサーで、自動化設備の動作を支えるいわば設備の「目」にあたる存在です。ロボットがワークをつかむ前の位置確認にも欠かせません。

寸法・形状の測定

製品の長さや厚み、穴の位置などを測り、規格どおりにできているかを確かめる用途です。レーザー変位センサーや画像センサー、三次元測定機などが使われます。

以前は抜き取りで人が測るのが一般的でしたが、ラインの中に測定を組み込んで全数を自動で測る「インライン計測」が広がっています。測定結果を加工条件の補正に使う例もあります。

設備の状態監視

モーターやポンプの振動、軸受の温度、設備の稼働と停止の状況などを測り、設備が正常に動いているかを見張る用途です。故障の前ぶれを捉える予知保全の基礎にもなります。

設備が止まっている時間や理由を記録するだけでも、改善すべき点が見えてきます。後から取り付けられる安価なセンサーが増え、中小企業でも取り組みやすくなりました。

環境・エネルギーの計測

工場の電力や圧縮空気の使用量、室内の温度・湿度などを測る用途です。省エネの対策を考えるための現状把握や、温湿度の影響を受けやすい製品の品質管理に使われます。

食品や医薬品の工場では、保管や製造時の温度記録そのものが品質を証明する大切な記録になります。

電力の計測では、設備ごとや時間帯ごとの使用量を細かく分けて見ることがポイントです。休憩中や休日に止め忘れた設備など、数字にして初めて気づく無駄も少なくありません。

業界別の活用方法

複数業界向けセンサー試作品を検討する技術者

センサー・計測はあらゆる業界で使われていますが、何を測り、何を重視するかは業界によって異なります。代表的な5つの業界の特徴を比べてみましょう。

図2:業界別に見たセンサー・計測の使われ方

測る対象と、計測に求められる役割が業界ごとに違います。

主な計測対象
重視されること
自動車
部品の寸法、締付トルク、溶接条件
全数の品質保証とトレーサビリティ
電子部品・半導体
膜厚、微細な寸法、クリーン度
ナノレベルの精度と環境管理
食品・医薬品
温度、重量、異物の有無
衛生管理と記録の確実さ
プラント・化学
圧力、流量、液位、ガス濃度
安全と安定した連続運転
鉄鋼
高温材料の温度、厚み、形状
過酷な環境下での非接触計測

※代表的な例です。同じ業界でも、工程や製品によって計測の対象は変わります。

自動車業界

自動車業界では、部品の寸法測定や、ボルトの締付トルクの管理、溶接の電流・電圧の監視など、品質に関わる計測が多くの工程に組み込まれています。人命に関わる製品のため、どの部品をどんな条件でつくったかを記録する仕組みが重視されます。

車そのものにも多くのセンサーが搭載されており、JEITAの調査では、2024年の自動車・輸送向けのセンサー出荷金額は3,200億円にのぼります。

電子部品・半導体業界

電子部品・半導体業界では、ウェーハ上の膜の厚みや回路パターンの寸法を、ナノメートル単位で測る計測技術が欠かせません。製造装置の中にも、温度や圧力、ガス流量を精密に制御するためのセンサーが数多く組み込まれています。

クリーンルームの微粒子や温湿度の管理も、歩留まりを左右する重要な計測です。計測の精度がそのまま製品の性能と歩留まりに直結する業界と言えます。

食品・医薬品業界

食品・医薬品業界では、加熱や冷却の温度管理、充填量を確かめる重量計測、異物を見つける検査などにセンサーが使われます。衛生管理の手法であるHACCPでも、温度などの管理点を測って記録することが基本になります。

医薬品では、製造記録の正確さと改ざんされないことが強く求められるため、計測データの管理方法まで含めて仕組みを整える必要があります。

プラント・化学業界

プラント業界や化学工場では、配管の圧力や流量、タンクの液位、ガスの濃度などを常時測りながら運転しています。計測値をもとに弁の開閉を自動で調整する制御が、安全で安定した運転を支えます。

設備が広い範囲に点在するため、見回り点検の負担を減らす目的で、振動や温度を測る無線センサーを取り付ける動きも広がっています。

鉄鋼業界

鉄鋼業界では、高温で流れる鋼材の温度や厚み、幅を、触れずに測る技術が使われます。放射温度計やX線・レーザーを使った計測器が代表的です。

熱や粉じん、振動が激しい環境で安定して測り続けるため、センサーの保護や冷却にも工夫が凝らされています。

このように、どの業界でも「何を測れば品質や安全を守れるか」という考え方は共通しています。業界の特徴を知ることは、センサー選びの前提を知ることでもあります。

導入事例

導入したセンサー設備をタブレットで確認する現場

ここでは、公的機関や企業が公開している情報から、中小製造業でのセンサー・計測の活用事例を3つ紹介します。数値は出典で確認できた範囲で記載しています。

旭鉄工:安価なセンサーを後付けして稼働を見える化

エンジンやトランスミッションなどの自動車部品を手がける旭鉄工は、秋葉原で購入したセンサーを既存の機械に自ら取り付け、設備を入れ替えずに改善に必要なデータを集める仕組みをつくりました。中小機構のJ-GoodTechでは、近づく2つの部品にそれぞれ磁気センサーを付け、近づく間隔を測る方法が紹介されています。

情報処理推進機構(IPA)のDX SQUAREによると、同社は2015年から2018年にかけて100の製造ラインで平均43%の生産性向上を実現しました。2021年の労働時間は2015年と比べて年間4万時間減り、年間31億円だった労務費が27億円に減少しています。

武州工業:スマートフォンの加速度センサーで稼働を収集

自動車や医療機器向けの金属加工部品をつくる武州工業は、スマートフォンに内蔵された加速度センサーを使って、機械設備の稼働状況を集めて可視化するアプリを自社で開発しました。専用の機器をそろえなくても、身近な道具でデータ収集を始めた例です。

IPAのDX SQUAREのインタビューでは、集めたデータから生産性がばらつく理由を分析して改善した結果、生産性が2割改善したこともあったと紹介されています。

山本金属製作所:切削中の工具の温度と振動を無線で計測

大阪市の山本金属製作所は、切削加工中の工具の温度と振動をリアルタイムに測れるツールホルダ「MULTI INTELLIGENCE」を開発しています。熱電対と加速度センサーに加え、増幅器やA/D変換器、無線送受信機をホルダの中に内蔵しているのが特徴です。

同社の製品ページでは、工具寿命の予測や最適な切削条件の選定、工具の折損検知、切削油の効果の確認などが用途として挙げられています。これまで見えなかった加工中の現象を数値で捉える取り組みと言えます。

加工中の工具の状態は、これまで熟練者が音や切りくずの様子から判断してきた領域です。こうした計測は、熟練者の感覚をデータで補う手段にもなります。

図3:3つの事例に共通するポイント

規模の大小にかかわらず、成果につながる進め方には共通点があります。

SSmall start/小さく始める安価なセンサーや手元の機器で、まず測ってみる
VVisualize/見える化する数値を現場で共有し、止まる理由や変化に気づく
IImprove/改善につなげるデータで原因を絞り込み、対策と効果確認を回す
センサーの導入そのものではなく、測ったデータを改善に使い続けることが成果を生んでいる。

導入の進め方

工場設備へのセンサー設置位置を検討する技術者

センサー・計測の導入は、次のような流れで進めるのが一般的です。いきなり大規模に導入せず、小さく試してから広げるのが失敗を減らすコツです。

図4:センサー・計測の導入の進め方

計画、試行、展開の3つの段階に分かれます。

計画
01課題の明確化不良・停止・省エネなど、解決したい課題を決める
02計測項目の決定課題に関係する量と、測る場所を決める
03方式・機種の選定環境や精度、予算に合うセンサーを選ぶ
試行
04試験設置一部の設備に取り付け、測れるかを確かめる
05データの確認値の妥当性とノイズ、欠損をチェックする
06効果の検証課題が改善したか、費用に見合うかを評価する
展開
07本格導入対象の設備やラインを広げて設置する
08運用ルールづくり校正・点検の周期と担当、データの扱いを決める
09継続的な改善データを見て対策を打ち、測る項目も見直す

※規模の小さな導入では、試行と本格導入の区切りがないこともあります。

計画の段階

最初に、何のために測るのかをはっきりさせます。「設備の停止時間を減らしたい」「特定の不良を減らしたい」といった課題が決まれば、測るべき量と場所が自然と絞り込まれます。

方式や機種を選ぶときは、必要な精度や応答速度だけでなく、油や粉じん、温度といった設置環境にも目を向けます。技術営業・FAEとしてセンサーメーカーで働く担当者に相談するのも近道です。

試行の段階

候補のセンサーを一部の設備に取り付け、実際の現場で狙った値が測れるかを確かめます。カタログの条件と現場の条件は異なるため、この確認を省くと後で大きな手戻りが生じます。

集めたデータは、手で測った値と比べて妥当性をチェックします。そのうえで課題がどれだけ改善したかを評価し、広げる価値があるかを判断します。

展開の段階

効果が確認できたら、対象を広げて本格的に導入します。このとき、校正や点検の周期、データの保管方法、異常値が出たときの連絡手順などの運用ルールを決めておくことが大切です。

導入後も、データを見ながら対策を打ち、必要に応じて測る項目を増やしたり見直したりします。測る仕組みを育てていくという意識が、長く成果を出し続ける条件です。

センサー・計測に関わる仕事と求められるスキル

計測機器を調整し測定結果を確認する技術者

センサー・計測は、特定の部署だけでなく、ものづくりに関わる多くの職種と結びついています。代表的な仕事と、それぞれに求められるスキルを見ていきます。

図5:センサー・計測に関わる主な職種

つくる側、使う側、守る側で求められる知識が変わります。

センサーとの関わり
求められるスキル
電気・電子設計/組込み
センサーや計測回路、処理ソフトを開発する
アナログ回路、信号処理、プログラミング
生産技術
設備にセンサーを組み込み、工程を設計する
センサーの選定、PLC制御、工程設計
設備保全
センサーで設備の状態を監視・診断する
振動・温度の診断、データの読み取り
品質保証
測定器で製品を測り、品質を証明する
測定の知識、校正管理、統計的な分析

※技術営業・FAEとして、顧客の課題に合うセンサーを提案する仕事もあります。

センサーをつくる仕事

センサーそのものや計測機器を開発するのが、電気・電子設計ソフトウェア・組込みの技術者です。微弱な信号を扱うアナログ回路や、ノイズを取り除く信号処理、データを扱うソフトウェアの知識が求められます。

検出素子の開発では、材料や物理の知識も必要です。電機・精密機器業界や電子部品メーカーが主な活躍の場になります。

センサーを使って設備をつくる仕事

生産技術の技術者は、生産設備にどのセンサーをどこに付けるかを決め、PLCと組み合わせて自動化の仕組みをつくります。FA業界の設備メーカーでも、同じようなスキルが求められます。

さまざまな方式の得意・不得意を知り、現場の条件に合わせて選べる力が重要です。

センサーの信号をPLCに取り込み、設備の動きと組み合わせて判断させるには、電気と制御の両方の知識が必要です。現場で実際に取り付けて調整した経験が、そのまま力になる仕事でもあります。

センサーで設備と品質を守る仕事

設備保全の担当者は、振動や温度のデータから設備の異常を見つけ、故障を未然に防ぎます。品質保証・品質管理の担当者は、測定器の校正を管理し、測った結果で製品の品質を証明します。

どちらの仕事でも、今後はデータを読み解いて判断する力の重要性が増していきます。計測の基本とデータ分析の両方がわかる人材は、どの職場でも頼りにされる存在です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 主な用途は、有無・位置の検出、寸法・形状の測定、設備の状態監視、環境・エネルギーの計測
  • 自動車、半導体、食品・医薬品、プラント、鉄鋼など、業界ごとに測る対象と重視点が異なる
  • 中小製造業でも、安価なセンサーの後付けやスマートフォンの活用で成果を上げた例がある
  • 導入は計画・試行・展開の順に、小さく試してから広げるのが基本
  • 設計、生産技術、設備保全、品質保証など、多くの職種がセンサー・計測と関わっている

センサーの基本的な仕組みや原理はセンサー・計測とは?仕組みと基本原理で、注目される理由や従来技術との違いはセンサー・計測が注目される背景と従来技術との違いで詳しく解説しています。データの活用については予知保全スマートファクトリー・IoTの技術ページも参考になります。

センサー・計測の最新動向や関連する技術については、センサー・計測の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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この記事を書いた人

BtoB製造業特化のWebマーケター。プラント業界にてエンジニアを10年経験した後、マーケティングの分野へ。工業技術ブログ「エネ管.com」を2017年から運営し、月間20万PVを達成。保有資格はエネルギー管理士、第三種電気主任技術者。

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