原子半径は原子1個の大きさを表す目安で、隣り合う原子の中心どうしの距離の半分として決めます。周期表では同じ周期なら右ほど小さく、同じ族なら下ほど大きいので、左下の元素ほど大きく、右上の元素ほど小さくなります。
ただし原子には決まった境目がないため、どんな結びつき方をしている原子の距離を測るかで値が変わります。同じナトリウムでも金属の結晶では186 pm(1 pm は1兆分の1メートル)、共有結合では166 pm です。希ガスの原子半径が大きく見えるのも、この測り方の違いが原因です。
後半では、合金の固溶やドーパント選び、ジルコニウムとハフニウムの分離、X線回折の格子定数まで、材料の現場での使われ方を扱います。
原子半径とは?測り方で変わる3つの半径
原子は、中心の原子核のまわりに電子が電子殻と呼ばれる層をつくって広がった構造をしています。原子半径は、原子核の中心から最も外側の電子殻(最外殻)までの広がりを表す値と考えると、大きさの感覚をつかみやすくなります。
ところが電子の雲は外へ行くほど薄くなるだけで、ここで終わりという面がありません。そこで実際には、X線回折などで隣り合う2つの原子核の距離(核間距離)を測り、その半分を原子半径とします。どの相手と、どんな状態で隣り合っているかによって、次の3種類に分かれます。
共有結合半径・金属結合半径・ファンデルワールス半径
共有結合半径は、同じ原子どうしが電子を出し合って結合した分子や結晶の結合距離の半分です。塩素分子 Cl2 の結合距離は約199 pm なので、塩素の共有結合半径は約99 pm になります。
金属結合半径は、金属の結晶で隣り合う原子の中心間距離の半分です。ナトリウムの結晶は1辺429 pm の体心立方格子で、最も近い原子との距離は約372 pm なので、ナトリウムの金属結合半径は約186 pmと求まります。
ファンデルワールス半径は、結合していない原子どうしが、分子の間に働く弱い引力(ファンデルワールス力)で接したときの中心間距離の半分です。電子を共有していないぶん距離は長く、アルゴンの値は約188 pm なので、接した2つの原子の中心は約376 pm 離れている計算になります。
どれも「中心間距離の半分」ですが、測る相手が共有結合・金属結合・接触だけの原子で違います。
※円は模式図で、3つのパネルの縮尺はそろえていません。Cl₂ は NIST、Na は格子定数(WebElements)、Ar は Bondi(1964)の値。
3つの半径の違いを一覧にすると次のとおりです。周期表の原子半径の表は、金属元素には金属結合半径、非金属元素には共有結合半径を使うのが一般的で、結合をつくりにくい希ガスにはファンデルワールス半径が当てられてきました。
| 種類 | どの距離の半分か | 主に使う元素 | 例(pm) |
|---|---|---|---|
| 共有結合半径 | 同じ原子どうしの共有結合の結合距離 | 非金属(H、C、N、O、ハロゲンなど) | C 76、Cl 99〜102 |
| 金属結合半径 | 金属の結晶で隣り合う原子の中心間距離 | 金属(Na、Fe、Cu など) | Na 186、Cu 128 |
| ファンデルワールス半径 | 結合せずに接している原子・分子の中心間距離 | 希ガス、分子の外側の大きさ | Ar 188、Cl 175 |
単位は pm(ピコメートル)かオングストローム(Å、1 Å=100 pm)が使われます。原子半径の基本的な傾向は次の2つで、続く2つの章で理由を説明します。
- 同じ族では、原子番号が大きいほど原子半径は大きい
- 同じ周期では、原子番号が大きいほど原子半径は小さい(希ガスは測り方の違いで例外のように見える)
原子半径は「同じ族」では原子番号が大きいほど大きい
周期表の周期の番号は、電子が入っている電子殻の数と一致します。第1周期の H と He は K 殻だけを使い、第2周期の Li から Ne は L 殻、第3周期の Na から Ar は M 殻まで使います。
このため同じ族で下へ進むほど電子殻が1つずつ外へ増えて、原子は大きくなります。
Cordero らの共有結合半径(2008年)で見ると、1族は Li 128 pm から Cs 244 pm まで下ほど大きくなります。17族のハロゲンも F 57 pm から I 139 pm へと同じ並びで、どの族でもこの傾向は変わりません。
周期が1つ下がるごとに電子殻が1つ増え、原子がひと回り大きくなります。
※円は同じ縮尺。値は Cordero ほか(2008)の共有結合半径。
下の元素ほど陽子が増えるので、原子核の引きつけが強まって小さくなりそうにも見えます。しかし陽子と同じ数だけ電子も増え、その多くは内側の殻に入って核の正電荷を打ち消すため、最外殻の電子が感じる引きつけはほとんど強くならず、殻が増える効果が勝ちます。
この「内側の電子による打ち消し(遮へい)」の大きさは、次の章で扱う有効核電荷で見積もれます。1族の金属の性質と原子の大きさの関係は、アルカリ金属の性質と用途の記事でも扱っています。
原子半径は「同じ周期」では原子番号が大きいほど小さい
第2周期の Li から F までは、どれも K 殻が電子で満たされ、L 殻が最外殻です。最外殻は同じなのに、共有結合半径は Li 128 pm、Be 96 pm、B 84 pm、C 76 pm、N 71 pm、O 66 pm、F 57 pm と、右へ進むほど小さくなります。
右へ1つ進むごとに陽子が1個増え、増えた電子は同じ L 殻に入ります。同じ殻の電子どうしは互いをあまり遮らないので、最外殻の電子を引きつける正味の力が強まり、電子の雲が内側へ縮みます。
有効核電荷で引きつけの強さを見積もる
最外殻の電子が実際に感じる原子核の正電荷を、有効核電荷と呼びます。陽子の数 Z から、内側や同じ殻の電子が打ち消す分 S を差し引いた値で、Slater の規則(1930年)を使うと手計算で目安を出せます。
第2周期では右へ1つ進むたびに有効核電荷が0.65ずつ増え、Li の1.30から F の5.20まで4倍になります。一方、1族を下へ見ると Li 1.30、Na 2.20、K 2.20 とほとんど変わらないので、族では殻の数、周期では有効核電荷が大きさを決めていると整理できます。
最外殻が同じ L 殻のまま有効核電荷が増えるので、右へ進むほど原子は縮みます。
※半径は Cordero ほか(2008)の共有結合半径、有効核電荷は Slater の規則で計算した 2s・2p 電子の値。
「Li は+1、Be は+2の電荷で最外殻の電子を引く」という説明は、内側の K 殻の電子2個が正電荷を2つ分ちょうど打ち消すと考えた単純化です。実際の打ち消しは1個あたり0.85ほどで、同じ殻の電子どうしも少し遮り合うため、Slater の規則ではこの2点を補正しています。
遷移元素では縮み方がゆるやか
第4周期の Sc から Zn までの遷移元素では、増えた電子が最外殻の 4s ではなく1つ内側の 3d 軌道に入ります。内側に入った電子は最外殻の電子をよく遮るので、有効核電荷が増えにくく、原子半径は右へ進んでもあまり変わりません。
金属結合半径は Cr 128 pm、Fe 126 pm、Ni 124 pm、Cu 128 pm と、ほぼ同じ大きさに並びます。鉄に Cr や Ni を多く溶かし込んだステンレス鋼がつくれるのも、この大きさのそろい方と関係しています。
典型元素との電子配置の違いは典型元素と遷移元素の違いで、d 軌道に電子が入る元素に共通する性質とあわせて整理しています。
希ガスの原子半径はなぜ大きく見える?
原子半径のグラフを周期ごとに描くと、ハロゲンで最小になったあと、希ガスで急に最大になる形になりがちです。これはハロゲンまでを共有結合半径、希ガスだけをファンデルワールス半径で並べた結果で、希ガスの原子そのものが飛び抜けて大きいわけではありません。
希ガスは最外殻が電子で満たされた安定な電子配置をもち、単原子分子として存在して、ほかの原子と共有結合をほとんどつくりません。共有結合の結合距離を測れないので、低温で固体にしたときの原子どうしの接触距離から求めたファンデルワールス半径が、古くから原子半径として使われてきました。
希ガスの点だけ定義の違う値を使うと、グラフに大きな段差が生まれます。
※単位は pm。共有結合半径は Cordero ほか(2008)、ファンデルワールス半径は Bondi(1964)。
共有結合も金属結合も、最外殻の電子を隣の原子と共有して原子どうしが重なり合うので、核間距離は短くなります。
結合せずに接しているだけのファンデルワールス半径は、多くの非金属元素で共有結合半径の1.5〜2.5倍ほどあり、塩素では共有結合半径99〜102 pm に対して175 pm です。
同じ物差しで比べると希ガスはハロゲンとほぼ同じ
近年は希ガスにも、計算と化合物の結合距離から求めた共有結合半径が示されています。同じ周期のハロゲンと希ガスを、4つの物差しで並べると次のとおりです。
| 物差し | F | Ne | Cl | Ar |
|---|---|---|---|---|
| 共有結合半径(Cordero 2008) | 57 | 58 | 102 | 106 |
| 共有結合半径(Pyykkö 2009) | 64 | 67 | 99 | 96 |
| 自由原子の計算値(Clementi 1967) | 42 | 38 | 79 | 71 |
| ファンデルワールス半径(Bondi 1964) | 147 | 154 | 175 | 188 |
共有結合半径どうしでは、Ne と F、Ar と Cl の差は数 pm で、どちらが大きいかも表によって入れ替わります。孤立した原子の計算値では Ne 38 pm が F 42 pm より小さく、同じ周期で右ほど小さいという傾向が希ガスまで続いています。
ファンデルワールス半径どうしで比べても、Ne と F の差は1割弱です。共有結合半径の F 57 pm と、ファンデルワールス半径の Ne 154 pm を同じグラフに並べたときの2.7倍という差は、原子の大きさではなく定義の違いから生じています。
数値表を使うときは、どの種類の半径かを見出しや注記で確かめてから比べるのが基本です。結晶の種類による結合の違いは、共有結合の結晶と分子結晶の違いで比べています。
実際の工場では:合金の固溶とドーパント選び

材料の開発や製造では、原子半径は「ある原子が別の原子の結晶にどれだけ溶け込めるか」を最初に見積もる物差しになります。ただし原子の大きさは判断材料の1つにすぎず、結晶構造や電子の状態も効くので、半径で分かることと分からないことを分けて使います。
どの現場でも、半径は候補を絞る段階の目安で、最後は実測で確かめます。
ヒューム=ロザリーの15%則:合金で溶け込める大きさ
金属に別の金属を溶かし込んで1つの結晶にしたものを固溶体と呼び、溶け込んだ原子が元の原子の席を置き換える形を置換型固溶といいます。
英国の冶金学者ヒューム=ロザリーが1926年に整理した経験則では、溶け込む原子と母体の原子の大きさの差がおよそ15%を超えると、溶け込める量は小さくなります。
銅とニッケルは大きさの差が2.5%で結晶構造も同じ面心立方なので、どんな割合でも溶け合い、海水に強い白銅(キュプロニッケル)やモネルとして使われます。
鉛は銅より約37%大きく、黄銅に入れても溶け込まずに小さな粒として散らばるため、削りくずを細かく分断する快削黄銅に利用されてきました。
銀は差が13.0%と15%以内なのに、銅とは一部しか溶け合わず共晶をつくります。15%則は「超えると溶けにくい」という必要条件の目安で、ケンブリッジ大学の解説も電気陰性度の差や原子価の違いを別の条件として挙げており、差が小さいだけでは溶けると言い切れません。
固溶させた原子は、大きさの違いで母体の結晶を少しゆがめ、変形を担う転位の動きを妨げて金属を硬くします(固溶強化)。合金ごとの組成と性質は合金の種類と組成・用途で、鉄にクロムとニッケルを溶かした材料の選び方はステンレスの種類と違いでまとめています。
小さな原子はすき間に入る:鋼の中の炭素
炭素の共有結合半径76 pm は鉄の約124 pm の6割ほどしかなく、鉄の原子の席を置き換えるのではなく、原子どうしのすき間に入り込みます。この形を侵入型固溶と呼び、目安としては溶け込む原子の半径が母体の約59%より小さいと侵入型になりやすいとされます。
炭素は半径比が約61%で境目のすぐ上にありますが、実際には侵入型として溶けるので、半径比はあくまで目安です。
すき間の大きさは結晶構造で変わり、面心立方のオーステナイトは1,147℃付近で約2.1 mass%まで炭素を溶かせます。体心立方のフェライトはすき間が小さく、727℃でも約0.02 mass%しか溶かせません。
鋼を高温でオーステナイトにして炭素を溶かし、急に冷やしてフェライトに戻る時間を与えないのが焼入れで、溶けきれない炭素が結晶をゆがめて硬いマルテンサイトになります。温度と冷やし方の使い分けは焼入れ・焼戻し・焼なまし・焼ならしの違いで解説しています。
シリコンのドーパントは大きさで格子のひずみが変わる
半導体のシリコンには、電気を流す役のホウ素(B)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などをごく少量加えます(ドーピング)。
Cordero の共有結合半径で Si 111 pm と比べると、B 84 pm は24%小さく、P 107 pm は4%小さく、As 119 pm は7%、Sb 139 pm は25%大きい値です。
Infineon の特許では、Si より小さい B・P は結晶の格子定数を縮め、大きい As・Sb・Ge は広げると整理しています。そのうえで、B のひずみを大きなゲルマニウム(Ge)で打ち消すような共ドープが提案されていて、原子半径の差が設計の材料になっています。
大きさの差が大きい Sb は、B・P・As より溶け込める量が少ないドーパントです。IBM の測定では、1,200〜1,300℃で電気的に働く量(キャリア密度)が4.4〜5.3×1019 cm−3 にとどまります。ドーパントを入れる工程の流れは、半導体の前工程の流れで紹介しています。
ランタノイド収縮:ZrとHfはなぜ分けにくいか
原子の大きさがそろいすぎると、今度は分けたい元素が分けられないという問題が起きます。その代表が、原子炉の材料で欠かせないジルコニウム(Zr)とハフニウム(Hf)で、背景にはランタノイド収縮と呼ばれる現象があります。
ランタノイドは La から Lu までの15元素で、原子番号が増えるにつれて電子は内側の 4f 軌道に入ります。
4f 電子は核の正電荷をうまく遮れないため、有効核電荷がじわじわ増え、3価のイオンの6配位の半径は La3+ 103 pm から Lu3+ 86.1 pm まで縮みます。
その結果、ランタノイドのすぐ後ろの Hf は、1周期上の Zr と金属結合半径がほぼ同じ(Zr 160 pm、Hf 159 pm)です。4価のイオンも8配位で Zr4+ 84 pm、Hf4+ 83 pm で、Nb と Ta、Mo と W の組も同じように大きさがそろっています。
大きさに加えて最外殻の電子配置と価数も同じなので、2つの元素は化合物の溶けやすさや反応のしかたがよく似ています。Hf が発見されたのは1923年で Zr の134年後と遅く、それまで Zr の鉱石の中に気づかれずに混ざっていました。
原子炉用ジルコニウムからハフニウムを除く
米国地質調査所(USGS)によると、ZrとHfは鉱物のジルコンに約50対1の割合で含まれています。
ジルコニウム合金は原子炉の燃料被覆管に使われますが、2,200 m/s の中性子に対する吸収断面積は Zr 0.185 バーン、Hf 104.1 バーンで、Hf は約560倍も中性子を吸います。
核分裂を続けるための中性子を被覆管が吸ってしまうと困るので、原子炉用のジルコニウムでは Hf を Hf/(Hf+Zr) で100 ppm 未満まで減らします。反対に中性子をよく吸う Hf は、原子炉の出力を調整する制御棒や、ニッケル基の超合金の添加元素に使われます。
大きさも化学的な性質もそっくりな2つの元素を、溶媒抽出をくり返して分けます。
※Westinghouse の特許 US6737030 に記載の MIBK–チオシアン酸法の流れを簡略化したもの。ほかにリン酸トリブチル(TBP)による抽出や、四塩化物の抽出蒸留も使われています。
Westinghouse の特許では、抽出の途中で酸と金属の比率が下がると Hf の残り方がすぐに悪くなったと報告されていて、分離の難しさが運転管理の難しさに直結します。
希土類どうしの分離も同じ理由で手間がかかり、その供給のもろさはレアアース輸出規制の磁石への影響で扱っています。
品質管理では:XRD で格子定数を測ると何が分かるか
金属結合半径の値は、もとをたどると X線回折(XRD)で測った結晶の格子定数から計算されています。XRD では結晶の面の間隔が分かり、そこから単位格子の1辺の長さ a が求まるので、結晶構造ごとの幾何学の関係を使えば原子半径に換算できます。
合金では、溶け込んだ原子の大きさに応じて格子定数が少しずれます。成分の割合に対して格子定数がほぼ直線的に変わる経験則をベガード則と呼び、格子定数の変化から、固溶した量や析出で抜けた量の見当がつけられます。
ただし格子定数は熱処理によるひずみや温度でも動くので、組成は蛍光X線分析などの元素分析で別に確かめるのが基本です。六方最密構造の金属での計算や XRD の読み方は、六方最密構造の密度・充填率・配位数で詳しく扱っています。
アルミニウム合金の Mg のように、母体より大きな原子が溶け込む合金では格子定数が広がり、溶け込む量で強さや加工のしやすさが変わります。番手ごとの成分と性質の違いはアルミ合金の種類と番手の見方にまとめています。
原子半径のよくある質問
原子半径とイオン半径はどちらが大きいですか?
陽イオンは元の原子より小さく、陰イオンは元の原子より大きくなります。Na は金属結合半径186 pm に対して Na+ が102 pm、Cl は共有結合半径約99 pm に対して Cl− が181 pm で、理由と法則はイオン半径の大小関係で解説しています。
原子半径が最も大きい元素と小さい元素は、どの表で見ればよいですか?
同じ種類の半径でそろえた表で比べ、Cordero の共有結合半径の表では、放射性の Fr を除くと最大は Cs の244 pm、最小は He の28 pm で、周期表の左下と右上の端にあたります。表の種類が変わると値も順位も少し変わるので、出典と半径の種類を書き添えて使います。
原子半径の単位は何ですか?
pm(ピコメートル、10−12 m)か Å(オングストローム、10−10 m)が使われ、1 Å は100 pm です。古い教科書や結晶学の資料には Å、最近のデータ表には pm で書かれているものが多く、炭素の共有結合半径なら0.76 Å と76 pm は同じ値です。
原子半径の表によって値が違うのはなぜですか?
原子には境目がなく、どの結合のどんな化合物の距離を基準にするかが表ごとに違うからです。共有結合半径でも、元にした化合物の数や平均のとり方で、Cordero と Pyykkö の表では塩素が102 pm と99 pm のように数 pm ずれます。
まとめ
- 原子半径は核間距離の半分で決め、共有結合半径・金属結合半径・ファンデルワールス半径の3種類がある
- 同じ族では下ほど電子殻が増えて大きく、同じ周期では右ほど有効核電荷が増えて小さい
- 希ガスが大きく見えるのは、希ガスだけファンデルワールス半径で比べるためで、同じ物差しではハロゲンとほぼ同じか小さい
- 合金の15%則、鋼の侵入型固溶、シリコンのドーパントは、どれも原子の大きさで候補を絞る考え方
- ランタノイド収縮で Zr と Hf は大きさがそろい、原子炉用ジルコニウムでは溶媒抽出で Hf を100 ppm 未満まで除く
原子半径は元素ごとに1つに決まった定数ではなく、どの結びつき方の距離かを添えて使う値です。この見方を持っておくと、周期表の傾向も、合金や半導体の技術資料に出てくる「大きさの差」の数字も、同じ理屈で読めるようになります。
元素を金属と非金属に分ける考え方は金属元素と非金属元素の違い、分子の電子の偏りは極性分子と無極性分子の違いで解説しています。

出典
出典・参考資料(15件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 共有結合半径:B. Cordero ほか「Covalent radii revisited」Dalton Transactions 2008, 2832–2838、doi:10.1039/B801115J/P. Pyykkö, M. Atsumi「Molecular Single-Bond Covalent Radii for Elements 1–118」Chemistry – A European Journal 15, 186–197(2009)、doi:10.1002/chem.200800987
- ファンデルワールス半径:A. Bondi「van der Waals Volumes and Radii」Journal of Physical Chemistry 68, 441–451(1964)、doi:10.1021/j100785a001
- 原子半径の計算値:E. Clementi, D. L. Raimondi, W. P. Reinhardt「Atomic Screening Constants from SCF Functions. II」Journal of Chemical Physics 47, 1300(1967)、doi:10.1063/1.1712084
- 各種原子半径の値の照合:Wikipedia「Atomic radii of the elements (data page)」(金属結合半径は Greenwood & Earnshaw『Chemistry of the Elements』第2版による)、Wikipedia「Covalent radius」
- 有効核電荷:J. C. Slater「Atomic Shielding Constants」Physical Review 36, 57(1930)、doi:10.1103/PhysRev.36.57
- Cl2 の結合距離:NIST Computational Chemistry Comparison and Benchmark Database「Cl2」
- 格子定数:WebElements「Copper: crystal structure」(Ni・Ag・Pb・Fe・Na・Si の各ページも同様に参照)
- ヒューム=ロザリーの規則:Wikipedia「Hume-Rothery rules」(侵入型の59%の目安)、H. K. D. H. Bhadeshia(University of Cambridge)「Solid Solutions: The Hume-Rothery Rules」
- 鉄中の炭素の固溶:H. K. D. H. Bhadeshia(University of Cambridge)「Solubility」
- シリコンのドーパントと格子定数:米国特許 US9306010B2「Semiconductor arrangement」(Infineon Technologies)
- アンチモンの固溶度:IBM Research「Equilibrium carrier density and solubility of antimony in silicon」
- ランタノイド収縮:Wikipedia「Lanthanide contraction」(イオン半径は R. D. Shannon, Acta Crystallographica A32, 751, 1976 の値)
- ジルコニウムとハフニウムの資源・用途:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2026: Zirconium and Hafnium」
- 中性子の吸収断面積:NIST Center for Neutron Research「Neutron scattering lengths and cross sections」
- ジルコニウムとハフニウムの分離:米国特許 US6737030「Method for separating hafnium from zirconium」
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