有効核電荷は、原子の中の電子1個が実際に感じている原子核の正電荷のことで、陽子の数から内側の電子が打ち消す分を差し引いた値です。この打ち消しを遮蔽と呼び、ナトリウムなら原子核の+11のうち、最外殻の電子に効くのは+1〜2.5ほどの大きさしかありません。
見積もり方は2通りあり、内側の電子を1個=1と数える単純なモデルではナトリウムが+1、遮蔽の効き方を細かく補正するスレーターの規則では2.20になります。同じ周期で右ほどイオン化エネルギーが大きく、原子やイオンが小さくなる理由は、どちらの見方でもこの1語で説明できます。
後半では、蛍光X線分析や EDS で元素が見分けられる理由と、イオンの大きさやリチウムの電位が材料選びで効く場面を扱います。
有効核電荷とは?内側の電子が核の電荷を打ち消す「遮蔽」
有効核電荷は「原子核の正電荷のうち、注目する電子に有効に働くとみなせる電荷」で、記号では Zeff や Z* と書きます。原子番号 Z(陽子の数)から、内側にいる電子などが打ち消す分 S(遮蔽定数)を引いた Z − S が基本の形です。
ナトリウムで考える:+11のうち最外殻に効くのは+1
ナトリウム原子は陽子11個の原子核のまわりに、K 殻に2個、L 殻に8個、外側の M 殻に1個の電子をもちます。最外殻の電子は原子核に引かれますが、間にいる10個の電子が負の電荷で原子核の+11の大部分を打ち消すため、+11の力をそのまま受けるわけではありません。
内側の電子が正電荷1個分ずつを完全に打ち消すと考えると、最外殻の電子は+11 − 10 = +1 の芯に引かれていることになります。原子核と内側の電子をひとまとめの「+1の芯」とみなすこの見方が、有効核電荷のいちばん単純な形です。
内側の電子10個が原子核の正電荷を打ち消し、最外殻の電子1個は+1の芯に引かれているとみなせます。
※内側の電子1個が正電荷1個分をちょうど打ち消すと考えた単純なモデル。実際の打ち消しは1個あたり1より少し小さく、スレーターの規則では2.20になる。
リチウムと塩素の有効核電荷
同じ数え方をすると、リチウムは陽子3個から K 殻の電子2個を引いて+1、塩素は陽子17個から K 殻と L 殻の電子10個を引いて+7になります。リチウムとナトリウムがどちらも+1になるように、単純なモデルでは同じ族の元素の有効核電荷は族番号の下1桁と同じ値にそろいます。
+7の芯に引かれるハロゲンの最外殻電子は、+1の芯に引かれるアルカリ金属の電子より強く結びついています。その電子を引き離して陽イオンにするのに要るエネルギーがイオン化エネルギーで、ナトリウムの 496 kJ/mol に対して塩素は 1,251 kJ/mol と2.5倍あります。
陽イオンになりやすい1族の性質はアルカリ金属の性質と工業利用、電子を受け取りやすい17族はハロゲン単体の性質で詳しく扱っています。
スレーターの規則で有効核電荷を求める(計算例)
単純なモデルは、内側の電子が正電荷をちょうど1個分ずつ打ち消し、同じ殻の電子どうしはまったく遮らないと仮定しています。実際には内側の電子の雲も一部は外へ広がり、同じ殻の電子も互いを少し遮るため、J. C. スレーターが1930年に遮蔽定数を手計算で見積もる規則をまとめました。
計算の前に、どの電子が感じる有効核電荷かを決めるのが最初の手順です。周期表の傾向を考えるときは最外殻の電子を選び、遷移金属では 4s と 3d のように軌道ごとに値が変わるので、電子配置を書いてから下の順に数えます。
注目する電子より内側の電子ほど、1個あたり大きく遮ると数えます。
※外側のグループの電子は遮蔽に数えない。J. C. Slater, Physical Review 36, 57(1930)の規則による。
単純なモデルではナトリウムが+1でしたが、規則で数えると2.20になり、内側の L 殻の電子が正電荷を完全には打ち消していないことが数字に表れます。塩素も+7ではなく6.10で、最外殻のほかの電子6個が互いを少し遮る分だけ小さくなります。
3つの求め方で値が違う:単純モデル・スレーター・計算値
有効核電荷は実測値ではなく、どのモデルで遮蔽を見積もるかで値が変わります。Clementi と Raimondi は1963年に量子力学の計算(ハートリー・フォック法)で値を求めていて、スレーターの規則とよく合う元素もあれば、カリウムのように大きく離れる元素もあります。
| 元素(最外殻) | 単純モデル(Z − 内殻電子数) | スレーターの規則 | Clementi–Raimondi の計算値 |
|---|---|---|---|
| Li(2s) | 1 | 1.30 | 1.28 |
| F(2p) | 7 | 5.20 | 5.10 |
| Na(3s) | 1 | 2.20 | 2.51 |
| Cl(3p) | 7 | 6.10 | 6.12 |
| K(4s) | 1 | 2.20 | 3.50 |
使い分けの目安は、傾向を言葉で説明するなら単純モデル、元素どうしを数字で比べるならスレーターの規則、研究や計算に使うなら計算値です。同じ族で有効核電荷が同じになるのは単純モデルの性質で、計算値では Li 1.28、Na 2.51、K 3.50 と下の周期ほど大きくなります。
それでも下の元素ほど陽イオンになりやすいのは、電子殻が1つ外へ増えて、最外殻の電子が原子核から遠くなる効果のほうが大きいからです。族の中の大きさの変化は原子半径の大小関係で、殻の数と有効核電荷の両方から説明しています。
有効核電荷で周期表の傾向を説明する
有効核電荷が役に立つのは、「なぜその順番になるのか」を一言で説明できる点です。よく問われるのは、同じ周期のイオン化エネルギーの変化と、同じ電子配置をもつイオンの大きさの順番の2つで、どちらも陽子の数と遮蔽の差から答えられます。
同じ周期でイオン化エネルギーが大きくなる理由
同じ周期では、右へ1つ進むごとに陽子が1個増え、電子も1個増えます。増えた電子は最外殻、つまり同じ殻に入るため遮蔽の効きは0.35しかなく、増えた陽子の+1を同じ殻の電子が打ち消しきれないので、有効核電荷はスレーターの規則で0.65ずつ増えていきます。
最外殻の電子を引く力が強まると、電子は原子核の近くに引き寄せられ、引き離すのに要るエネルギーも大きくなります。第2周期では Li の 520 kJ/mol から Ne の 2,081 kJ/mol まで4倍、第3周期では Na から Ar まで3倍に増えます。
右へ進むと有効核電荷が増え、イオン化エネルギーもおおむね大きくなります。
※イオン化エネルギーは NIST Atomic Spectra Database の値(eV)を kJ/mol に換算。有効核電荷との関係は比例ではなく、増え方の向きがそろうことを示す図。Be→B、N→O の小さな下がりは次の章で扱う。
グラフをよく見ると、Be から B、N から O で値がわずかに下がります。有効核電荷が増えるという大きな流れの中に、電子が入る軌道の違いによる小さな凹凸が重なっているためで、理由は「説明できること・できないこと」の章で整理します。
同じ電子配置のイオンは陽子が多いほど小さい
S2−、Cl−、K+、Ca2+ は、どれも電子を18個もちアルゴンと同じ電子配置です。電子の数と並び方が同じなので遮蔽の大きさも同じになり、陽子の数が多いイオンほど有効核電荷が大きく、電子の雲を内側へ強く引き寄せて小さくなります。
電子の数が同じなら、陽子が多いイオンほど小さくなります。
※イオン半径は R. D. Shannon, Acta Crystallographica A32, 751(1976)の6配位の有効イオン半径。配位数が変わると値も変わるので、比べるときは配位数をそろえる。
半径は S2− 184 pm、Cl− 181 pm、K+ 138 pm、Ca2+ 100 pm の順に小さくなり、有効核電荷の順番とちょうど逆です。
陽イオンが元の原子より小さく、陰イオンが大きくなる理由も含め、イオンの大きさの決まり方はイオン半径の大小関係を決める2つの法則にまとめています。
原子半径と電気陰性度も同じ理屈で読める
同じ周期で右ほど原子が小さくなるのも、有効核電荷が増えて最外殻の電子の雲が縮むためです。電気陰性度にもこの考え方は使われ、Allred と Rochow は1958年に、有効核電荷を原子の大きさの2乗で割った値から求める式を示しました。
有効核電荷が大きく、原子が小さいほど、結合の相手から電子を強く引きつけることが式の形から読み取れます。フッ素が最大になる理由やポーリングの尺度との違いは電気陰性度の大小関係と使い方で、結合の電子の偏りがもたらす性質は極性分子と無極性分子の見分け方で扱っています。
理由を一言で説明するときの書き方
傾向の理由は「有効核電荷が大きく、最外殻の電子をより強く引きつけるため」と書けば、陽子の数と遮蔽の両方を含めて短くまとめられます。同じ電子配置のイオンなら「陽子の数が多いため」でも通じますが、電子の数も増える同じ周期の原子では「陽子が多い」だけでは理由が足りません。
陽子と一緒に電子も増えるなら、引く力と打ち消す力が両方増えることになるからです。「増えた陽子の正電荷を、同じ殻に入った電子が打ち消しきれない」という一文を足すか、有効核電荷という1語でまとめると、説明の筋が通ります。
有効核電荷で説明できること・できないこと
有効核電荷は、知識として覚えるより実際のデータと並べて使うと効き目が分かる考え方です。周期表の大きな流れはよく説明できる一方で、軌道ごとの細かな差や、溶液の中での反応のしやすさは、別の要因と合わせないと説明できません。
Be(900 kJ/mol)より B(801 kJ/mol)が小さいのは、B の最外殻の電子が 2s より外へ広がる 2p 軌道に入り、2s の電子に遮られるためです。有効核電荷は増えていても、軌道が変わる分だけ取り出しやすくなります。
N(1,402 kJ/mol)より O(1,314 kJ/mol)が小さいのは、O では 2p 軌道の1つに電子が2個入り、互いに反発するためです。どちらも有効核電荷の大きな流れに、軌道ごとの小さな凹凸が重なった例です。
遷移金属では、電子が最後に入るのは 3d 軌道なのに、陽イオンになるときは 4s の電子から抜けます。鉄でスレーターの規則を使うと、4s の電子の有効核電荷は3.75、3d の電子は6.25で、外側の 4s の電子のほうが弱く引かれていることが数字で確かめられます。
d 軌道に電子が入る元素に共通する性質は典型元素と遷移元素の違いで整理しています。表1のカリウムのように、スレーターの規則と計算値が大きく離れる元素もあるので、数字を引用するときはどの求め方の値かを添えると誤解がありません。
分析の現場では:モーズリーの法則と蛍光X線・EDS

遮蔽の考え方は、原子核のすぐそばの K 殻の電子にも当てはまります。内側の電子が感じる有効核電荷は原子番号とともに規則正しく増えるので、内側の殻から出る X 線のエネルギーは元素ごとに決まった値になり、これが金属や部品の成分を調べる分析装置の土台になっています。
モーズリーの法則:X 線のエネルギーは(Z − 1)2 に比例する
英国のモーズリーは1913〜1914年に、カルシウムから亜鉛、続いてアルミニウムから金までの元素の X 線を測りました。L 殻の電子が K 殻の空きに落ちるときの Kα 線について、振動数の平方根が原子番号にほぼ比例することを見つけています。
式の中の「Z − 1」は、K 殻に残ったもう1個の電子が原子核の電荷を1つ分遮る、という有効核電荷の考え方で説明されます。
簡単な式でも、Mg から Mo までの Kα 線の実測値と1〜2%の差で重なります。
※実測値は X-ray Data Booklet(Lawrence Berkeley National Laboratory)Table 1-2 の Kα1。式との差は Mg −1.5%、Fe −0.4%、Cu −0.6%、Mo −1.9%。
この発見で元素を並べる基準が原子量から原子番号に置き換わり、未発見の元素の席もはっきりしました。モーズリーは1914年の論文で、アルミニウムと金の間に原子番号43・61・72・75の空席が残っていることを示しました。
原子の考え方が積み上がってきた流れはドルトンの原子説から分子説・同位体まででたどれます。
蛍光X線分析(XRF)と EDS で元素が分かる理由
蛍光X線分析(XRF)は試料に X 線を、EDS(エネルギー分散型 X 線分光)は電子顕微鏡の中で電子線を当てて、内側の殻の電子をはじき出します。空いた席に外側の電子が落ちるときの X 線のエネルギーで元素が分かり、強さから量も見積もれます。
内殻の空きに電子が落ちるときの X 線は、元素ごとにエネルギーが決まっています。
※炎色反応も電子が外の軌道から落ちるときの光だが、こちらは最外殻の電子の移り変わりで、エネルギーは数 eV と X 線よりずっと小さい。
同じしくみを可視光の範囲で見ているのが、炎色反応です。最外殻の電子の移り変わりは化学結合の影響を受けますが、内殻の X 線はほとんど受けないので、XRF は金属・樹脂・粉末などの形を問わず元素を調べられます。
工場で使われる場面は大きく3つあり、どれも「元素が分かれば合否が決まる」検査です。
- 電気電子製品の有害物質のスクリーニング:IEC 62321-3-1 が、鉛・水銀・カドミウム・全クロム・全臭素を XRF でふるい分ける方法を定めている(2026年の第2版でリン・塩素・スズ・アンチモンを追加)
- 配管・機器の材料確認(PMI):API RP 578 の材料確認プログラムで、携帯型の XRF などを使い、取り付ける部材が指定の合金かを現場で確かめる
- めっきの膜厚測定:ISO 3497 に X 線で金属被膜の厚さを測る方法があり、下地とめっきの元素の X 線の強さから厚さを求める
XRF は数 mm〜数十 mm の範囲をまとめて非破壊で測るのに向き、EDS は電子顕微鏡で見ている μm 単位の点や粒子の成分を調べるのに向きます。異物の正体を突き止めるなら EDS、受け入れた材料をまとめて確かめるなら XRF と、見たい範囲の大きさで装置を選ぶのが基本です。
合金の種類と成分の見方はアルミ合金の種類と番手の見方、膜の種類ごとの違いはめっきの種類と選び方にまとめています。
軽い元素が測りにくい理由と、線の重なり
XRF と EDS の弱点は、原子番号の小さい元素ほど測りにくいことです。X 線のエネルギーは(Z − 1)2 に比例するので、Li の Kα 線は 54 eV、炭素は 277 eV しかなく、試料や空気、検出器の窓に吸収されてしまいます。
内殻に穴が空いたとき X 線を出す割合(蛍光収率)も軽い元素ではごくわずかです。Krause(1979年)の K 殻の値は炭素 0.0028、ナトリウム 0.023 に対し、鉄 0.34、銅 0.44 です。残りはオージェ電子という別の電子の放出に回ってしまいます。
このため、ステンレスの 304 と 304L のように炭素量で区別する鋼種は、XRF ではなく燃焼法(JIS G 1211)や発光分光分析など別の方法で調べます。
もう1つの注意は、別の元素の線が近いエネルギーに重なることです。硫黄の Kα 線 2.308 keV とモリブデンの Lα 線 2.293 keV、鉛の Mα 線 2.346 keV は数十 eV しか離れておらず、ピークを1本だけ見て元素を決めると取り違えます。
同じ元素のほかの線(Mo の Kα 線 17.48 keV など)があるかを必ず確かめるのが、分析の現場の基本です。
材料・電池では:イオンの大きさとリチウムの電位
材料の設計では、イオンの大きさが「その元素を結晶に入れられるか」を左右します。同じ電荷なら周期の下ほど大きく、同じ電子配置なら陽子が多いほど小さいという2つの傾向は、どちらも有効核電荷と電子殻の数から読めるので、候補の元素を絞り込む最初の物差しになります。
ドーパント選びと固溶はイオンの大きさで絞る
結晶の中の原子やイオンを別の元素に置き換えるとき、大きさが近いほどひずみが小さく、多く溶け込みます。セラミックスに添加物を入れて性質を変えるときも、半導体に微量の元素を入れるときも、まず電荷と大きさの近い元素から候補を選ぶのは、この理由からです。
ジルコニアの安定化やリチウムイオン電池の正極で起こる陽イオンの入れ替わりなど、イオン半径で考える具体例は前に紹介したイオン半径の記事の後半で扱っています。
金属どうしの合金で溶け込める大きさの目安(15%則)や、半導体のドーパントの大きさは、原子半径の記事に数値つきでまとめました。
リチウムの電位は有効核電荷だけでは決まらない
リチウムの第1イオン化エネルギーは 520 kJ/mol で、ナトリウムの 496 kJ/mol やカリウムの 419 kJ/mol より大きくなっています。気体の原子どうしでは、アルカリ金属で最も電子を手放しにくい元素です。
ところが水溶液中の標準電極電位は Li+/Li が −3.04 V で、Na+/Na の −2.71 V、K+/K の −2.93 V より低く、溶液の中ではいちばん陽イオンになりやすい側に並びます。
逆転の主な理由は、小さな Li+(6配位で 76 pm)がまわりの水分子を強く引きつけ、水和で大きなエネルギーを放出することです。電池や電解で効く「取り出しやすさ」は、有効核電荷だけでなくイオンのまわりの環境でも決まるので、水和のしくみとセットで考えます。
電位が低く、原子1個が軽いことが、リチウムを電池の材料に向く元素にしています。Li は XRF や EDS ではほぼ測れないため、電池材料のリチウム量は溶液にして測る ICP 発光分光分析などで確かめます。
電池の構造と材料の違いは全固体電池とリチウムイオン電池の違いで整理しています。
有効核電荷のよくある質問
有効核電荷に単位はありますか?
単位はなく、陽子1個の電荷(電気素量)を1としたときに何個分にあたるかを表す数です。+1や2.20のように書き、クーロンなどの単位に直して使うことはほとんどありません。
有効核電荷が大きい元素はどこにありますか?
最外殻の電子で比べると、同じ周期の右側ほど大きく、各周期では希ガスが最大です。希ガスは有効核電荷が大きいうえ最外殻が電子で満たされているので、イオン化エネルギーが大きく、ほかの原子とほとんど反応しません。
有効核電荷とイオン化傾向は同じ順番ですか?
同じ順番にはなりません。イオン化傾向は水溶液中での陽イオンへのなりやすさで、イオン化エネルギーのほかに金属の結合の強さや水和のエネルギーも効くため、リチウムのようにイオン化エネルギーの順と逆転する元素があります。
内側の電子が感じる有効核電荷はどれくらいですか?
内側の電子ほど遮る電子が少ないので、原子番号に近い大きな値になります。スレーターの規則では鉄の 1s 電子が25.70で、原子番号26とほぼ同じ強さで引かれており、この強い引力が X 線という高いエネルギーの光を生みます。
まとめ
- 有効核電荷は、陽子の数から内側の電子などが打ち消す分(遮蔽)を引いた、電子が実際に感じる原子核の正電荷
- 単純モデルでは Na・Li が+1、Cl が+7。スレーターの規則では Na 2.20、Cl 6.10 と、遮蔽の効き方を補正した値になる
- 同じ周期で右ほどイオン化エネルギーが大きく原子が小さいのは、増えた陽子を同じ殻の電子が打ち消しきれず、有効核電荷が増えるため
- 同じ電子配置のイオンは陽子が多いほど小さく、S2−>Cl−>K+>Ca2+ の順になる
- 内殻の X 線のエネルギーは(Z − 1)2 に比例し(モーズリーの法則)、XRF・EDS で元素が分かる土台になる。軽い元素と線の重なりには注意する
有効核電荷は、周期表の傾向の理由を一言で説明する道具であると同時に、分析装置が元素を見分けるしくみや、材料に入れる元素の選び方にもつながる考え方です。どのモデルの値かを意識して使えば、教科書の説明と現場の数字を同じ理屈で読めるようになります。
元素を金属と非金属に分ける境目は金属元素と非金属元素の違いで、分析結果を合否判定や不具合対応につなげる仕事の流れは品質保証・品質管理の仕事の流れで紹介しています。

出典
出典・参考資料(12件)を開く出典・参考資料を閉じる
- スレーターの規則:J. C. Slater「Atomic Shielding Constants」Physical Review 36, 57(1930)、doi:10.1103/PhysRev.36.57
- 有効核電荷の計算値:E. Clementi, D. L. Raimondi「Atomic Screening Constants from SCF Functions」Journal of Chemical Physics 38, 2686(1963)、doi:10.1063/1.1733573
- イオン化エネルギー:NIST Atomic Spectra Database「Ionization Energies」
- イオン半径:R. D. Shannon「Revised effective ionic radii and systematic studies of interatomic distances in halides and chalcogenides」Acta Crystallographica A32, 751(1976)、doi:10.1107/S0567739476001551
- 電気陰性度:A. L. Allred, E. G. Rochow「A scale of electronegativity based on electrostatic force」Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry 5, 264(1958)、doi:10.1016/0022-1902(58)80003-2
- モーズリーの法則:H. G. J. Moseley「The High-Frequency Spectra of the Elements」Philosophical Magazine 26, 1024(1913)、doi:10.1080/14786441308635052、同 Part II, Philosophical Magazine 27, 703(1914)
- X 線のエネルギー:Lawrence Berkeley National Laboratory「X-Ray Data Booklet」Table 1-2、Section 1.3 Fluorescence Yields
- 蛍光収率:M. O. Krause「Atomic Radiative and Radiationless Yields for K and L Shells」Journal of Physical and Chemical Reference Data 8, 307(1979)、ESRF DABAX の数値データ
- 標準電極電位:P. Vanýsek「Electrochemical Series」CRC Handbook of Chemistry and Physics, 92nd ed.(W. M. Haynes 編、2011)。Li+/Li −3.0401 V、Na+/Na −2.71 V、K+/K −2.931 V
- RoHS のスクリーニング:IEC 62321-3-1:2013「Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 3-1: Screening」(鉛・水銀・カドミウム・全クロム・全臭素の5元素)。2026年5月発行の第2版(IEC 62321-3-1:2026)で対象元素が9つに増えた
- 材料確認(PMI):API RP 578, 4th ed.(2023)「Material Verification Program for New and Existing Assets」(American Petroleum Institute)
- めっきの膜厚:ISO 3497:2000「Metallic coatings — Measurement of coating thickness — X-ray spectrometric methods」/鉄鋼の炭素定量:JIS G 1211 鉄及び鋼-炭素定量方法(日本産業標準調査会)
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