アルカリ土類金属とは|Be・Mgの扱い、性質の違いと工業での使い道

検査台に並ぶマグネシウム合金のダイカスト部品とノギス

アルカリ土類金属は、周期表の2族に並ぶベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウムの6元素をまとめた呼び名です。国際的な命名の基準も6元素ですが、以前の日本の高校化学ではベリリウムとマグネシウムを除き、カルシウム以下の4元素として扱っていました。

2つが外されてきたのは、水との反応や水酸化物・硫酸塩の溶けやすさ、炎色反応がカルシウム以下と違うためです。違いは工場での使われ方にも表れ、軽いマグネシウムは自動車部品の合金に、水に溶けない硫酸バリウムは胃の検査の造影剤になります。

この記事では定義が分かれた経緯を確かめ、性質の違いを反応式と表で比べて、原子番号に沿った傾向で覚え方を整理します。後半は元素ごとの化合物と炎色反応、マグネシウム合金の製錬、石灰・セメント、フェライト磁石、MLCC、ベリリウム銅の健康リスクを扱います。

目次

アルカリ土類金属とは:周期表2族の6元素

IUPAC(国際純正・応用化学連合)の2005年勧告は、2族の Be・Mg・Ca・Sr・Ba・Ra の6元素をアルカリ土類金属と呼ぶとしています。一方、辞典にはカルシウム以下の4元素だけをこの名前で呼ぶ記述もあり、Be と Mg を含めるかは資料で分かれてきました。

日本の高校化学は長く4元素で教えてきましたが、日本化学会が2015年に「2族のすべてをアルカリ土類金属と呼ぶ」よう提案しました。2022年度以降用の教科書の解説資料(啓林館の化学基礎)にも、IUPAC に合わせて2族すべてに改めたとあります。

図1:アルカリ土類金属に入る元素の範囲

周期表2族の6元素のうち、どこまでを含めるかが資料によって違います。

第2周期第3周期第4周期第5周期第6周期第7周期BeMgCaSrBaRaベリリウム 4マグネシウム 12カルシウム 20ストロンチウム 38バリウム 56ラジウム 882族(数字は原子番号)6元素IUPAC 20052022年度以降の教科書(例)4元素以前の高校化学一部の辞典

※教科書の例は啓林館「化学基礎」2022年度以降用の内容解説資料によります。どちらの数え方でも、2族の6元素がすべて金属であることは変わりません。

読む資料によって範囲が違うので、国際的な文献と今の教科書では6元素、古い参考書や辞典の一部では4元素と覚えておくと迷いません。この記事も6元素をアルカリ土類金属と呼び、カルシウム以下だけを指すときは「カルシウム〜ラジウム」と書き分けます。

名前は、水酸化物が強い塩基になる「アルカリ」と、水に溶けず火に強い酸化物を呼んだ「土類」の中間の性質から付きました。1808年にデービーが電気分解で金属を取り出すまで石灰などの酸化物が「土」と呼ばれ、同じ年にはドルトンが原子説の本を出しています。

6元素に共通するのは、いちばん外側の電子殻に価電子を2個もち、それを手放して2価の陽イオン M2+ になりやすいことです。周期表では1・2族と13〜18族を合わせた典型元素に入り、遷移元素と典型元素の違いでいえば、族ごとに性質がそろいやすい側の元素です。

  • 単体は銀白色の軽い金属で、空気中ではしだいに酸化されて光沢を失う
  • 2価の陽イオンになりやすく、反応性は1族のアルカリ金属に次いで大きい
  • 酸化物は塩基性酸化物(BeO だけは両性)で、水と反応すると水酸化物になる
  • 原子番号が大きいほど電子を手放しやすく、水との反応が激しくなる

同じく反応しやすい1族と比べると、2族は価電子が1個多いぶん原子核に引きつけられる力が強く、反応は一段穏やかです。1族の6元素の性質と水との反応はアルカリ金属の性質と水との反応式で整理しているので、並べて読むと違いがつかみやすくなります。

カルシウム・ストロンチウム・バリウムは常温の水と反応して水素を出し、水酸化物になります。マグネシウムは表面の酸化被膜に守られて冷水とはほとんど反応せず熱水で初めて反応し、ベリリウムは水とほとんど反応しません。

カルシウム以下は常温の水と反応する(M=Ca・Sr・Ba・Ra)
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
Sr + 2H2O → Sr(OH)2 + H2
Ba + 2H2O → Ba(OH)2 + H2
マグネシウムは熱水(粉末)や水蒸気と反応する
Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2
Mg + H2O → MgO + H2
どの式も両辺の原子の数がそろっています(水2個を使う式は、H 4個・O 2個)。ラジウムも同じ形の式で反応します。ベリリウムは表面の酸化被膜が強く、水とはほとんど反応しません。

2族の元素が金属であることは定義の違いにかかわらず変わらず、金属結合をつくって電気をよく通します。金属元素と非金属元素の境目や、周期表での2族の位置づけは金属元素と非金属元素の違いと見分け方で詳しく扱っています。

BeとMgがアルカリ土類金属から外されてきた理由

ベリリウムとマグネシウムが同じ2族なのに別扱いされてきたのは、水との反応、水酸化物と硫酸塩の溶けやすさ、炎色反応がカルシウム以下と逆になるからです。違いを表にすると次のようになります。

比べる性質ベリリウム(Be)・マグネシウム(Mg)カルシウム(Ca)〜バリウム(Ba)
水との反応Be はほとんど反応しない。Mg は熱水と反応する常温の水と反応して水素を出す(Ba>Sr>Ca の順に激しい)
水酸化物の溶けやすさBe(OH)2・Mg(OH)2 は水に溶けにくいCa(OH)2 は少し溶け、Sr・Ba の順に溶けやすくなる
水酸化物の塩基性Be(OH)2 は両性、Mg(OH)2 は弱い塩基強い塩基(Ba(OH)2 がいちばん強い)
硫酸塩の溶けやすさBeSO4・MgSO4 は水に溶けるCaSO4 は少し溶け、SrSO4・BaSO4 は溶けない
炎色反応色がつかないCa 橙赤色、Sr 深紅色、Ba 黄緑色
2族の性質の比較(日本大百科全書・世界大百科事典・化学辞典の記述から作成)。ラジウムは放射性で測定例が少ないため表から外しています。

性質が分かれる根っこには原子の小ささがあります。ベリリウムとマグネシウムは原子半径とイオン半径が小さく、原子核が価電子を強く引きつけているため、電子を手放してイオンになりにくく、化合物も共有結合の性格を帯びやすくなります。

小さな陽イオンは周りの陰イオンや水分子を強く引き寄せるので、結晶の壊れやすさや水への溶け方もイオンの大きさで変わります。周期表の上下でイオンの大きさがどう変わるかはイオン半径の大きさの順番で数値とともに比べています。

ベリリウムはむしろ斜め右下の13族のアルミニウムに似ていて、水酸化物が酸にも強い塩基にも溶ける両性を示します。マグネシウムはイオン半径が 72 pm と亜鉛イオンの 74 pm にほぼ等しく、硫酸塩が溶けて水酸化物が溶けにくい点で亜鉛に似ます。

硫酸塩:カルシウム以下は硫酸イオンと沈殿をつくる
Ba2+ + SO42− → BaSO4↓(白色)
Ca2+ + SO42− → CaSO4↓(濃いときだけ沈殿)
水酸化物:マグネシウムは水酸化物イオンと沈殿をつくる
Mg2+ + 2OH− → Mg(OH)2↓(白色)
ベリリウムの水酸化物は強い塩基にも溶ける(両性)
Be(OH)2 + 2NaOH → Na2[Be(OH)4]
どの式も両辺の原子の数と電荷がそろっています。Na2[Be(OH)4] はテトラヒドロキシドベリリウム酸ナトリウムです。

両性を示すのはベリリウムのほかアルミニウム・亜鉛・スズ・鉛で、見分け方は酸性・塩基性・両性酸化物の違いで扱っています。硫酸イオンでバリウムを沈殿させる操作は、系統分析で硫化水素による沈殿とあわせて使われます。

アルカリ土類金属の覚え方:周期と性質の傾向で整理する

2族の6元素は周期表の上からBe(4)・Mg(12)・Ca(20)・Sr(38)・Ba(56)・Ra(88)と、第2〜第7周期に1つずつ並びます。第2・第3周期の2つと第4周期から下の4つ、と周期で区切って覚えると、定義の違いも一緒に整理できます。

性質は、原子番号が大きくなるほど同じ向きに変わるものと、逆向きに変わるものに分けると覚えやすくなります。水との反応の激しさと水酸化物の溶けやすさは下へいくほど大きくなり、硫酸塩の溶けやすさだけは下へいくほど小さくなります。

図2:原子番号に沿って変わる3つの性質

反応の激しさと水酸化物の溶けやすさは Ba に向かって大きくなり、硫酸塩の溶けやすさだけが逆に小さくなります。

BeMgCaSrBa水との反応(激しさ)水酸化物の溶けやすさ硫酸塩の溶けやすさほぼなし激しい溶けにくい溶けやすい溶ける溶けない

※大まかな傾向を示した模式図で、くさびの太さは量を表しません。ラジウムは放射性で測定例が少ないため省きました。

水酸化物と硫酸塩で向きが逆になることは、現場の操作にもそのまま使われます。水酸化物が溶けにくいマグネシウムは塩基を加えて沈殿させ、硫酸塩が溶けにくいバリウムは硫酸イオンで沈殿させる、というように沈殿させたいイオンに合わせて相手の陰イオンを選ぶのが分析や排水処理の基本です。

炎色反応も同じ並びで、色がつかない Be・Mg と、橙赤・深紅・黄緑と色がつく Ca・Sr・Ba に分かれます。上の2つと下の4つを分ける線が、そのまま以前の4元素の数え方の線になっていると覚えておくと、性質と定義を結びつけて思い出せます。

アルカリ土類金属の主な元素

ベリリウムとマグネシウムは工業材料としての出番が大きいので、後半の「実際の工場では」の章でまとめて扱います。

図3:カルシウム〜ラジウムの代表的な化合物

単体は反応しやすいので、身の回りや工場で出会うのはほとんどが化合物です。

カルシウム炭酸カルシウム(石灰石)、生石灰 CaO、消石灰 Ca(OH)2、せっこう CaSO4・2H2O
ストロンチウム天青石 SrSO4、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム(赤い炎)
バリウム重晶石(バライト)BaSO4、炭酸バリウム、チタン酸バリウム
ラジウム放射性。ウラン鉱石にごく微量。壊れて気体のラドンになる

カルシウム(Ca)

石灰工場の構内に積まれた石灰石の山とベルトコンベヤ

カルシウムの単体は銀白色の柔らかい金属で、常温の水とゆるやかに、熱すると激しく反応して水素を出します。食品の栄養表示でいう「カルシウム」は単体ではなく化合物のことで、骨や歯の主成分はリン酸カルシウムの一種のヒドロキシアパタイトです。

地球上でいちばん多いカルシウムの化合物は、サンゴや貝殻、それらが積もってできた石灰岩の主成分の炭酸カルシウム CaCO3 です。石灰石を焼くと二酸化炭素が抜けて生石灰(酸化カルシウム)になり、生石灰に水を加えると強く発熱して消石灰(水酸化カルシウム)になります。

石灰石 → 生石灰 → 消石灰 → 炭酸カルシウム(石灰のサイクル)
CaCO3 → CaO + CO2
CaO + H2O → Ca(OH)2
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
1本目は高温で焼く反応(吸熱)、2本目は消和と呼ばれる発熱反応、3本目は石灰水が二酸化炭素で白くにごる反応です。どの式も両辺の原子の数がそろっています。

水酸化カルシウムは水1 Lに1.73 g(20 ℃)しか溶けません。水100 gでは0 ℃の0.18 gから100 ℃の0.077 gへ減るなど、温度が高いほど溶けにくい珍しい物質です。飽和水溶液が石灰水で、二酸化炭素を通すと白くにごり、さらに通すと透明に戻る理由は石灰水と二酸化炭素の反応で式とともに説明しています。

塩化カルシウムは水をよく吸うので気体や溶媒の乾燥剤に使われますが、アンモニアとは結びついてしまうため、乾かす相手を選びます。どの乾燥剤をどの気体に使えるかは乾燥剤の選び方と組み合わせ表にまとめています。

硫酸カルシウムの二水和物がせっこうで、焼いて半水和物にした焼きせっこうは水を加えると再び固まります。せっこうボードや型取り、セメントの固まる速さの調整に使われる性質はせっこうと焼きせっこうの違いで詳しく扱っています。

ストロンチウム(Sr)

ストロンチウムはカルシウムとよく似た性質をもちますが、原子が大きいぶん価電子を手放しやすく、水や酸素との反応はカルシウムより激しくなります。2族では1族と同じく、原子番号が大きくなるほど最外殻の電子が原子核から離れ、反応しやすくなるのが特徴です。

天然には硫酸塩の天青石(セレスタイト)として産出し、これを原料に炭酸ストロンチウムや硝酸ストロンチウムがつくられます。深紅色の炎色反応を示すため、硝酸ストロンチウムは花火や発炎筒の赤い色を出すのに欠かせません。

カルシウムと化学的によく似ているので、体内に取り込まれると骨に集まりやすい性質もあります。原子力発電所の事故で問題になる放射性のストロンチウム90が注目されるのはこのためで、工業で使う天然のストロンチウムは放射性ではありません。

バリウム(Ba)

胃のX線検査で「バリウムを飲む」と言いますが、飲んでいるのは反応しやすいバリウムの単体ではなく、水にも酸にもほとんど溶けない硫酸バリウム BaSO4 です。胃酸にも溶けないので体に吸収されず、そのまま排出されるため造影剤として使えます。

X線を通さないのは金属だからではなく、バリウムが原子番号56の重い元素で、X線を強く吸収するからです。逆に、水や胃酸に溶ける塩化バリウムや炭酸バリウムは体に吸収されてバリウムイオンが中毒を起こすため、同じバリウム化合物でも扱いはまったく違います。

天然には硫酸塩の重晶石(バライト)として産出し、比重が4.0〜4.5と鉱物の粉としては重く、空気や熱、硫化水素にも安定です。この「重くて変質しない」性質が、後で見る石油の掘削や塗料・ゴムの充填材での使い道につながっています。

ラジウム(Ra)

ラジウムは2族で唯一の放射性元素で、1898年にキュリー夫妻がウラン鉱石から発見しました。夫妻は放射能の研究でベクレルとともに1903年のノーベル物理学賞を受け、マリーはラジウムとポロニウムの発見で1911年のノーベル化学賞も受けています。

自ら光を出す性質から、20世紀前半には時計の文字盤や航空機の計器の夜光塗料、医療に使われましたが、放射線による健康被害が明らかになり、夜光塗料としては使われなくなりました。ラジウムは壊れると気体のラドンになり、ラジウム温泉の名で知られる温泉は、このラドンを含む湯です。

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アルカリ土類金属の炎色反応

カルシウム・ストロンチウム・バリウムの化合物をバーナーの炎に入れると、カルシウムは橙赤色、ストロンチウムは深紅色、バリウムは黄緑色の炎になります。ベリリウムとマグネシウムは色がつかず、ここでも2族は上の2つと下の4つに分かれます。

図4:アルカリ土類金属の炎色反応

カルシウム以下は元素ごとに決まった色の光を出し、ベリリウムとマグネシウムは炎の色を変えません。

CaSrBaBe・Mg橙赤色深紅色黄緑色色なし

※色の名前は辞典によって表し方が違い、カルシウムは「橙色」「赤黄色」、バリウムは「緑色」と書かれることもあります。

炎の熱で原子の電子がエネルギーの高い状態に押し上げられ、元に戻るときに元素ごとに決まった波長の光を出すのが炎色反応です。ベリリウムとマグネシウムは電子を押し上げるのに大きなエネルギーが要り、出る光も目に見えない紫外線の側に寄るため、炎の色は変わりません。

熱で光る温度放射と、決まった波長で光るルミネセンスの違いは温度放射とルミネセンスの違いで扱っています。花火の色は、ストロンチウムの赤、バリウムの緑、ナトリウムの黄、銅の青のように、炎色反応を示す元素の化合物を火薬に混ぜて出しています。

炎色反応の原理を装置にしたのが炎光光度法や原子吸光分析、ICP 発光分析で、水や材料中のカルシウム・マグネシウムを ppm 以下まで測れます。工場の用水では両者の合計を「硬度」として EDTA の滴定で測り、ボイラー水の水処理でスケールを防ぎます。

実際の工場では:マグネシウム合金とベリリウム銅

以前は「アルカリ土類金属に入らない」とされたベリリウムとマグネシウムは、工業では軽さと強さを売りにする金属材料として、カルシウム以下とは違う活躍をしています。

マグネシウム合金:軽量化とピジョン法・電解法

マグネシウムの密度は約1.74 g/cm3とアルミニウムの3分の2ほどで、実用金属でいちばん軽い金属です。アルミニウムや亜鉛を加えた合金は密度1.7〜2.0 g/cm3で、自動車部品やノートパソコン・カメラの筐体、航空機の部品に使われます。

米国地質調査所(USGS)の2026年版資料では、米国の一次マグネシウムの用途(2025年推定)は自動車向けを中心とする鋳物が69%、アルミ合金への添加が15%、鉄鋼の脱硫が9%です。マグネシウムを加えた5000系の番手はアルミ合金の種類と番手の見方で整理しています。

マグネシウムは原子が六方最密構造に並ぶため、常温ではすべる面が少なく、板を曲げたり打ち抜いたりする冷間加工が苦手です。そこで溶かして金型に押し込むダイカストでつくる部品が多く、加工のしにくさの理由は六方最密構造と hcp 金属の加工性で説明しています。

現場で気をつけるのは、さびやすさと燃えやすさです。マグネシウム合金は耐食性が低いので化成処理や塗装で防食して使い、細かい切りくずが燃えたときは水をかけると水素が出て危険なので、乾燥砂などで消せるよう備えます。

金属マグネシウムは、酸化マグネシウムをケイ素で熱還元するピジョン法か、塩化マグネシウムの電解法でつくります。ピジョン法は焼いたドロマイト(Ca と Mg の炭酸塩の複塩)にフェロシリコンを混ぜ、真空のレトルトで約1,200 ℃に加熱して出る蒸気を集めます。

ピジョン法(ケイ素による熱還元)
2MgO + Si → 2Mg + SiO2
2(CaO・MgO) + Si → 2Mg + Ca2SiO4
電解法(塩化マグネシウムの溶融塩電解)
MgCl2 → Mg + Cl2
陰極:Mg2+ + 2e− → Mg 陽極:2Cl− → Cl2 + 2e−
ピジョン法で原料にドロマイトを使うと、酸化カルシウムが二酸化ケイ素を受け取ってケイ酸カルシウム Ca2SiO4 になり、反応が進みやすくなります(2本目)。電解法の浴は MgCl2 に NaCl・KCl を混ぜ、660〜750 ℃で電解します。どの式も原子の数と電荷がそろっています。

図5:金属マグネシウムの2つの製錬法

原料・反応の進め方・出てくるものが違い、二酸化炭素の出方にも大きな差があります。

ピジョン法(熱還元)原料:焼いたドロマイト+フェロシリコン処理:真空のレトルトで約1,200 ℃に加熱し、マグネシウムの蒸気を冷やして集めるCO2:約20〜27 t/t-Mg(石炭などで加熱するため)世界の主流(主に中国)
電解法(溶融塩電解)原料:かん水や海水からとる無水の塩化マグネシウム処理:660〜750 ℃の溶融塩を電気分解し、陰極に液体のマグネシウム、陽極に塩素CO2:約5〜7 t/t-Mg塩素は回収して再利用

※CO2 の値は原料から製錬までの排出量の見積もり(Frontiers in Chemistry, 2023)。条件で幅があります。

いまの世界では、中国のピジョン法が一次マグネシウムの大半を占めています。USGS の推定では2025年の世界の製錬量約110万トンのうち中国が約95万トンで、米国ユタ州にあった電解法の製錬所は2022年に生産を止めました。

図6:世界の一次マグネシウム製錬に占める中国

地金1個を約10%として、2025年の世界の製錬量を10個に分けて示しています。

10個中9個が中国(約95万t/約110万t=約86%、2025年推定)

※USGS「Mineral Commodity Summaries 2026」の一次マグネシウム(スクラップから回収した二次マグネシウムを除く)の製錬量。2位以下はロシア(約6万t)、ブラジル・イスラエル(各約2万t)など。

マグネシウムは、チタンのクロール法で四塩化チタンを還元する材料や、鋳鉄の黒鉛を球状にする添加剤にもなります。日本は全量を輸入に頼り、海水由来の原料を高周波加熱で還元する「グリーン・ピジョン法」の試験に東北大学などが2024年に成功しました。

融けた塩を電気分解して軽金属を取り出す考え方は、ナトリウムやアルミニウムの製錬と共通で、ナトリウムの溶融塩電解で電極の反応とともに説明しています。軽金属を混ぜて性質を変える合金の基本は合金の組成と用途のまとめも参考になります。

ベリリウム銅とベリリウムの健康リスク

ベリリウムは軽く硬い金属で、少量を銅に加えたベリリウム銅は、銅合金の中で最も強く、ばねとしての性質に優れた合金です。標準的な組成はベリリウム1.9%・コバルト0.3%で、板に加工したあと熱処理(溶体化と時効硬化)をすると、特殊鋼に近い強さになります。

銅の電気の通しやすさを保ちながら強くて疲れにくいので、スマートフォンや車載機器のコネクターの接点ばね、スイッチ、電池の端子などに使われます。たたいても火花が出にくい性質から、油田や化学工場など可燃性のガスがある場所の防爆工具にも、ベリリウム銅の工具が選ばれています。

USGS の推定では、2025年の世界のベリリウム生産は約430トンと小さく、うち約230トンが米国です。米国の売上の内訳は民生電子機器29%、航空宇宙・防衛24%、産業部品17%、車載電子9%で、高価なので性質がどうしても要る部品に絞って使います。

注意が要るのは健康への影響で、ベリリウムやその化合物の粉じん・ヒュームを吸い込むと、肺に肉芽ができて呼吸が苦しくなる慢性ベリリウム症を起こすことがわかっています。国際がん研究機関(IARC)もベリリウムとその化合物を「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に分類しています。

日本ではベリリウムとその化合物は特定化学物質障害予防規則の第一類物質で、製造には厚生労働大臣の許可が要ります。

合金はベリリウムが重量の3%を超えるものだけが対象なので、標準的なベリリウム銅(1.9%)は規則の対象外です。それでも、完成部品に触れるだけなら粉じんは出ませんが、研削・溶接・切断で粉じんが出る作業は局所排気と保護具をそろえ、加工屑は分けて回収します。

実際の工場では:石灰・セメント、フェライト磁石、バリウム化合物

カルシウム以下の3元素は、金属としてより化合物として大量に使われます。どれも「どの性質がその工程で役に立っているか」を押さえると、元素の性質と工場の使い道がつながります。

図7:性質から工場での使い道へ

元素 → 材料・化合物 → 役立つ性質 → 製品・工程の順に並べると、使われる理由が見えます。

Ca:石灰・セメントCaO・Ca(OH)2 は安い強塩基、CaO は鉄の不純物と結びつく製鋼の造さい材、排ガス・排水の中和、セメント
Sr:フェライト磁石SrFe12O19 は錆びず安価な永久磁石モーター、スピーカー。硝酸塩は赤い花火
Ba:重晶石BaSO4 は重く、水・酸に溶けない石油・ガス井の掘削泥水、X線造影剤、充填材
Ba:チタン酸バリウムBaTiO3 は誘電率が非常に高い積層セラミックコンデンサー(MLCC)

カルシウム:石灰・セメント・鉄鋼の脱酸剤

石灰石を焼いた生石灰と消石灰は、最も安いアルカリ源として工業で大量に使われています。USGS の推定では2025年の世界の石灰生産は約4億2,000万トンで、うち中国が約3億1,000万トン、日本は生石灰だけで約590万トンです。

米国の石灰の用途は多い順に製鋼、化学工業、排ガス処理、建設、水処理です。製鋼では生石灰を造さい材として入れ、リンや硫黄、ケイ素の酸化物をスラグに取り込んで除き、その役割は高炉・転炉の反応式で扱っています。

セメントは石灰石と粘土などを焼いたクリンカーに、せっこうを加えて粉砕したものです。2025年の世界生産は約38億トン、日本は約4,400万トン(USGS 推定)で、石灰石の分解で出る二酸化炭素は燃料を替えても減らず、脱炭素の大きな課題です。

金属のカルシウムは還元力が強く、比較的蒸発しにくいので、融けた鋼の脱酸剤・脱硫剤として使われます。鉛にカルシウムを0.5〜1.5%加えた鉛-カルシウム合金は析出硬化で硬くなり、鉛蓄電池の電極の材料に使われています。

ストロンチウム:フェライト磁石と花火

炭酸ストロンチウムを酸化鉄と混ぜて焼き固めると、ストロンチウムフェライト SrFe12O19 の永久磁石になります。酸化物なので錆びず、原料が安いのが強みで、自動車の電装モーターや家電のモーター、スピーカーなどに大量に使われています。

ストロンチウムフェライトとチタン酸バリウムをつくる固相反応
SrCO3 + 6Fe2O3 → SrFe12O19 + CO2
BaCO3 + TiO2 → BaTiO3 + CO2
どちらも粉を混ぜて高温で焼き、炭酸塩から二酸化炭素を追い出して複合酸化物をつくります。1本目は O が21個(3+18 = 19+2)、2本目は O が5個(3+2 = 3+2)で両辺がそろいます。

磁力はネオジム磁石に及びませんが、レアアースを含まないので調達の心配が少なく、レアアース磁石の調達リスクを考えるときの比較相手になります。バリウムでも同じ構造の磁石をつくれますが、最高使用温度は下がります(USGS)。

USGS の推定では2025年の世界のストロンチウム鉱石(天青石)の生産は約45万トンで、イラン・スペイン・中国が主な産出国です。米国での用途は、石油・ガス井の掘削流体が65%、フェライト磁石と花火・信号炎がそれぞれ14%と、重い鉱物の粉としての使い道も大きな割合を占めます。

バリウム:掘削泥水・造影剤とチタン酸バリウム

重晶石(バライト)の最大の使い道は、石油・天然ガスの井戸を掘るときの泥水を重くする加重材です。泥水を重くして地下の高い圧力を押さえ込み、ガスや油が噴き出すのを防ぐもので、米国で売られる重晶石の90%以上がこの用途に使われています。

2025年の世界の重晶石の生産(米国を除く)は約870万トンで、インド・中国・モロッコが主な産出国です(USGS 推定)。X線をよく吸収するので放射線遮へい用コンクリートの骨材にもなり、塗料やゴムの充填材、超高純度品は造影剤に使われます。

チタン酸バリウム BaTiO3 はペロブスカイト型の結晶で、約120 ℃以下で強誘電性を示し、誘電率(電気をためる力の目安)がけた違いに大きい材料です。スズやマグネシウムを少し加え、室温の誘電率を3,000〜7,000にそろえたものがコンデンサーになります。

炭酸バリウムと酸化チタンを反応させた粉を薄いシートにし、内部電極を印刷して何百層も重ね、高温で焼き固めたものが積層セラミックコンデンサー(MLCC)です。原料粉の細かさや純度が性能を左右し、製造の流れはMLCC の製造工程10ステップで追えます。

アルカリ土類金属のよくある質問

マグネシウムはアルカリ土類金属ですか?

IUPAC の勧告と2022年度以降に使われる教科書では、マグネシウムは2族の元素なのでアルカリ土類金属に入ります。以前の高校化学や一部の辞典では、性質がカルシウム以下と違うことからベリリウムとともに除かれていました。

アルカリ土類金属とアルカリ金属の違いは何ですか?

アルカリ金属は1族で価電子が1個、アルカリ土類金属は2族で価電子が2個という違いがあり、それぞれ1価と2価の陽イオンになります。2族のほうが原子核に電子を強く引きつけているため、融点が高く硬めで、水との反応はアルカリ金属より穏やかです。

胃の検査でバリウムを飲んでも大丈夫なのはなぜですか?

検査で飲むのは、水にも胃酸にもほとんど溶けない硫酸バリウムで、体に吸収されずに排出されるからです。水や酸に溶ける塩化バリウムや炭酸バリウムは有毒なので、「バリウム」という名前が同じでも別の物質として扱います。

マグネシウムは燃えると明るく光るのに、炎色反応はなぜ色がないのですか?

マグネシウムが燃えるときの白い強い光は、反応熱で高温になった酸化マグネシウムの粒が出す光で、炎色反応とは仕組みが違います。炎色反応ではマグネシウム原子の出す光が紫外線の側にあるため、炎に入れても目に見える色はつきません。

まとめ

この記事のまとめ
  • アルカリ土類金属は周期表2族の Be・Mg・Ca・Sr・Ba・Ra の6元素(IUPAC、2022年度以降の教科書)。以前の高校化学や一部の辞典は Ca 以下の4元素としていた
  • Be・Mg は水とほとんど反応せず、水酸化物が溶けにくく、硫酸塩が溶け、炎色反応を示さない点で Ca 以下と逆の性質をもつ
  • 原子番号が大きいほど水との反応と水酸化物の溶けやすさは増し、硫酸塩の溶けやすさだけが減る
  • 炎色反応は Ca 橙赤色・Sr 深紅色・Ba 黄緑色で、花火や分析に使われる
  • 工業では Mg 合金(ピジョン法・電解法)、石灰・セメント、Sr フェライト磁石、BaSO4 の掘削泥水と造影剤、BaTiO3 の MLCC、ベリリウム銅が代表で、ベリリウムは粉じん対策が欠かせない

アルカリ土類金属の性質の違いは、原子の大きさから溶けやすさの傾向、定義の分かれ方、工場での使い分けまでつながっています。素材側は鉄鋼・非鉄金属業界とは、使う側は自動車業界の仕事の流れで解説しています。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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