金属元素と非金属元素の違いと見分け方|周期表の境界・半金属と工業での使い道

非鉄金属の倉庫に積まれたアルミニウムの地金と銅線のコイル

金属元素は、単体が金属結合をつくり、電気や熱をよく通して光沢をもつ元素です。非金属元素は、単体が共有結合で分子や結晶をつくる元素と、どの原子とも結びつかずに1個の原子で存在する希ガスを合わせた呼び名で、ナトリウムや鉄は金属元素、酸素や塩素は非金属元素にあたります。

周期表に並ぶ118種の元素のうち8割以上は金属元素で、非金属元素は右上の一角に集まり、両者の境目は13〜17族を斜めに下る階段のような線になります。境目の近くには金属と非金属の中間の性質をもつ半金属があり、ケイ素やゲルマニウムのように半導体の材料として電子部品を支えています。

目次

金属と非金属の違い:自由電子があるかどうか

金属と非金属の違いを一言でいえば、原子どうしをつなぐ電子が、物質の中を自由に動けるかどうかです。金属では電子の一部が特定の原子から離れて全体に広がり、非金属では電子が隣り合う原子の間にとどまって結合をつくるため、電気の通しやすさから見た目まで違いが出ます。

次の表は単体(1種類の元素だけでできた物質)で見られる性質の傾向をまとめたもので、すべての元素に当てはまる定義ではありません。例外になりやすい元素も右端の列に並べました。

比べる観点金属元素の単体非金属元素の単体例外・注意
結合金属結合(自由電子が全体に広がる)共有結合で分子・結晶をつくる。希ガスは単原子半金属は中間的
電気・熱よく通すほとんど通さない黒鉛(炭素)は電気を通す
見た目金属光沢がある光沢のないものが多いヨウ素・ケイ素は光沢がある
たたく・引っぱる薄く広がる(展性)、細く伸びる(延性)固体はもろく割れやすい水銀は常温で液体
常温での状態ほとんどが固体気体・液体・固体がある臭素は液体
イオン電子を失って陽イオンになりやすい電子を受け取って陰イオンになりやすい(希ガスを除く)水素は H+ にもなる
酸化物水と反応すると塩基性(Na2O・CaO)水と反応すると酸性(SO3・CO2)Al2O3・ZnO は両性
代表例Na・Mg・Al・Fe・Cu・Zn・AuH・C・N・O・F・Cl・He・ArB・Si・Ge・As・Sb・Te は半金属
単体で見られる一般的な傾向。例外の欄は代表的なものだけを挙げています。

性質の違いが分かっても、手元の元素が金属か非金属かを毎回実験で確かめるわけではありません。まず周期表の位置で候補を絞り、次に単体の性質で裏付け、境目の元素だけ個別に確かめるのが実際の手順です。

図1:元素が金属か非金属かを見分ける手順

周期表の位置で大まかに分け、単体の性質で確かめ、境目の元素と化合物は別に扱います。

STEP 1周期表の位置を見る階段状の境目より左下なら金属、右上なら非金属。水素は左上でも非金属
STEP 2単体の性質で確かめる電気を通すか、光沢があるか、たたいて広がるか、酸化物が塩基性か
STEP 3境目と化合物は別に扱うB・Si・Ge・As・Sb・Te は半金属。合金や化合物は元素分析で中身を調べる

※STEP 3 の「化合物」は、金属元素と非金属元素が結びついた物質(酸化物・塩など)や合金のことです。部品や材料の見た目だけでは、含まれる元素は判定できません。

金属:自由電子が電気・熱・光沢・展延性を生む

金属の単体では、それぞれの原子が外側の電子(価電子)を手放し、手放された電子が原子全体に共有されて自由に動き回る自由電子になります。電子を手放した原子は陽イオンのように規則正しく並び、そのすき間を満たす自由電子がまとめてつなぎ留める結合を金属結合と呼びます。

図2:金属結合と、非金属の3つの姿

金属は陽イオンの並びを自由電子がつなぎ、非金属は電子を隣の原子と出し合って分子・結晶をつくるか、希ガスのように1個の原子でいます。

金属:金属結合非金属:分子非金属:共有結合の結晶非金属:希ガス(単原子)●が自由に動く自由電子2つの原子が電子を出し合う原子が網目につながり続けるほかの原子と結びつかないH₂ などCl₂ などHeNeAr

※模式図です。金属の「+」は電子を手放した原子(陽イオン)、青い点は電子を表します。共有結合の結晶の例はダイヤモンドやケイ素の単体です。

自由電子は電圧をかけると一斉に流れるので金属は電気をよく通し、熱も自由電子が運ぶため電気を通しやすい金属ほど熱も伝えやすい傾向があります。表面では自由電子が当たった光をほぼそのまま跳ね返すので、磨いた金属は鏡のような金属光沢を示します。

たたくと薄く広がる展性と、引っぱると細く伸びる延性も自由電子から説明できます。原子の層が横にずれても、自由電子が新しい位置でそのまま原子をつなぎ直すので、イオン結晶のように割れずに形だけが変わり、この性質が板・線・箔への加工を可能にしています。

金属原子がどう並ぶかは金属ごとに違い、マグネシウムや亜鉛のような六方最密構造の金属は、すべる面が限られるため常温での加工が難しくなります。並び方と加工のしやすさの関係は六方最密構造の密度・充填率と hcp 金属の加工性で詳しく扱っています。

非金属:分子・共有結合の結晶・単原子分子

非金属の単体では、隣り合う原子が価電子を出し合って共有結合をつくり、結合に使われた電子は2つの原子の間に引きつけられて自由には動けません。そのため電気をほとんど通さず、つながる原子の数によって単体の姿は3つに分かれます。

  • 分子をつくる:水素 H2・窒素 N2・酸素 O2・塩素 Cl2 のように、数個の原子が結合したところで止まる
  • 共有結合の結晶をつくる:14族の炭素(ダイヤモンド)やケイ素のように、原子が共有結合で網目状につながり続け、巨大な1つの結晶になる
  • 単原子分子のまま:18族の希ガス(ヘリウム・ネオン・アルゴンなど)は反応しにくく、原子1個のまま存在する

分子でできた単体は分子どうしを弱い分子間力が集めているだけなので、融点が低く常温で気体のものが多くなります。網目状の結晶との融点や硬さの差は共有結合の結晶と分子結晶の違いで比べています。

希ガスは金属結合も共有結合もしないので、「金属ではない」という意味で非金属に入ります。炭素のダイヤモンドと黒鉛のように同じ元素でもつながり方で性質が変わる例は同素体と同位体の違いで扱っており、黒鉛は非金属の単体なのに電気を通す代表的な例外です。

金属と非金属の違いは、酸素と結びついた酸化物にもはっきり表れます。金属の酸化物は水と反応して塩基を、非金属の酸化物は水と反応して酸をつくるのが一般的で、前者を塩基性酸化物、後者を酸性酸化物と呼びます。

金属の酸化物(塩基性酸化物)が水と反応する
Na2O + H2O → 2NaOH
CaO + H2O → Ca(OH)2
非金属の酸化物(酸性酸化物)が水と反応する
SO3 + H2O → H2SO4
CO2 + H2O ⇄ H2CO3
両性酸化物(酸とも強い塩基とも反応する)
Al2O3 + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2O
Al2O3 + 2NaOH + 3H2O → 2Na[Al(OH)4]
どの式も両辺の原子の数と電荷がそろっています。CO2 が水に溶けてできる炭酸 H2CO3 はごく一部で、多くは CO2 のまま溶けています。Na[Al(OH)4] はテトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムです。

酸化カルシウム(生石灰)が水と反応して水酸化カルシウムになる性質は、石灰水と二酸化炭素の反応や工場での石灰の使い方につながります。アルミニウムや亜鉛のように境目に近い金属の酸化物が両性を示すことは、アルミ製錬で原料のボーキサイトを水酸化ナトリウムで溶かす工程にも生かされています。

金属元素と非金属元素の分類:周期表のどこにあるか

周期表の上で金属元素と非金属元素を色分けすると、非金属元素は右上に集まり、それ以外の大部分を金属元素が占めます。現在までに名前が付いた元素は118種あり、この記事で使う一般的な区分では、非金属元素は22種、残る96種、つまり8割以上が金属元素です。

性質が確かめられていないニホニウム以降の6種も、数の上では96種に入れています。

図3:周期表で見る金属・半金属・非金属

13〜17族を斜めに下る境目の左下が金属、右上が非金属で、境目に沿って半金属が並びます(3〜12族はすべて金属なので1列にまとめています)。

123〜121314151617181234567HHeLiBeBCNOFNeNaMgAlSiPSClArKCaGaGeAsSeBrKrRbSrInSnSbTeIXeCsBaTlPbBiPoAtRnFrRaNhFlMcLvTsOg遷移元素すべて金属金属半金属非金属性質が未確認金属と非金属の境目(目安)

※半金属に入れる元素は資料によって違い、ここではよく挙がる B・Si・Ge・As・Sb・Te を示しました。日本の高校化学では B・Si・As・Te を非金属、Ge・Sb を金属として数えることが多く、本文の「非金属22種」もこの数え方です。At(アスタチン)は量が極めて少なく、性質はよく分かっていません。

金属元素はさらに周期表の位置でいくつかの仲間に分かれ、同じ族の元素は価電子の数が同じなので性質もよく似ます。ここからは1族から順に、代表的な元素と工業での意味を押さえます。

アルカリ金属

周期表のいちばん左、1族から水素を除いたリチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランシウムがアルカリ金属です。どれも融点が低くナイフで切れるほど柔らかく、価電子1個を手放しやすいので水や酸素と激しく反応し、実験室では灯油などの中に沈めて保存します。

水素が同じ1族なのに金属に入らないのは、常温・常圧では2個の原子が共有結合した H2 分子として存在し、自由電子をもたないからです。

ただし極めて高い圧力のもとでは水素も金属の状態になると考えられており、NASA の木星探査機ジュノーの観測をもとにした木星内部のモデルでも、分子の水素の層の下に金属水素の層が描かれています。

工業ではナトリウムの化合物が基礎化学品の柱で、食塩水の電気分解でつくる水酸化ナトリウムの性質と工場での扱いは、アルカリ金属が陽イオンになりやすい性質を最もよく表す例です。リチウムは軽く電位の低い金属として、リチウムイオン電池の材料に欠かせません。

アルカリ土類金属

その隣の2族がアルカリ土類金属です。IUPAC(国際純正・応用化学連合)の2005年勧告は、ベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウムの6元素をこの名前で呼ぶとしています。

一方、辞典にはカルシウム以下の4元素だけをアルカリ土類金属とする記述もあります。

ベリリウムとマグネシウムは水との反応がカルシウム以下より穏やかで、水酸化物の性質も違うことが、仲間から外されてきた理由です。どちらの数え方でも2族の元素がすべて金属であることは変わらないので、「ベリリウムは金属か」と聞かれたら金属と答えて構いません。

マグネシウムのリボンを空気中で燃やすとまぶしい白い光を出して酸化マグネシウムになり、この反応しやすさは花火や照明弾に使われてきました。材料としては実用金属の中で最も軽い部類で、アルミニウムや亜鉛を加えたマグネシウム合金が自動車部品やノートパソコンの筐体に使われています。

遷移元素

3〜11族の遷移元素はすべて金属元素で、鉄・銅・ニッケル・クロム・チタン・金・銀など、構造材や電線、めっき、触媒として工業の中心にある金属の多くがここに入ります。融点が高く硬いものが多く、私たちが「金属」と聞いて思い描く重くて丈夫な性質は、主にこのグループの性質です。

金属か非金属かとは別に、元素は1・2族と13〜18族の典型元素、3〜12族の遷移元素という分け方もあり、2つの分け方は軸が違います。典型元素には金属も非金属もあるのに対し、遷移元素はすべて金属なので、「遷移元素なら金属」とは言えても「金属なら遷移元素」とは言えません。

亜鉛族元素

12族の亜鉛・カドミウム・水銀は、遷移元素に含めるかどうかが定義によって分かれるグループです。IUPAC の2005年勧告は3〜12族を d ブロック元素とし、遷移元素とも呼ぶが12族は含めないこともある、と書いています。

IUPAC の用語集(Gold Book)は遷移元素を「d 軌道の電子が満たされていない原子、またはそうした陽イオンをつくる元素」と定め、d 軌道が満たされた亜鉛はこの定義では外れます。教科書で扱いが違うのはこのためですが、どちらでも12族が金属元素であることは変わりません。

12族の金属は遷移元素の多くより柔らかく、融点も低めです。水銀は常温で液体の唯一の金属で、亜鉛は鉄より酸化されやすい性質を生かして鋼板を守るめっきに使われ、トタンとブリキの違いはこの犠牲防食の考え方で説明できます。

13〜18族元素の金属

金属元素と非金属元素が混ざっているのが13〜18族で、両者の境目はホウ素からアスタチンへ斜めに下る階段状の線になります。境目がこの形になる理由は、電子を引きつける強さを表す電気陰性度が、周期表の右へ行くほど、また上へ行くほど大きくなることで説明できます。

図4:第2・第3周期の電気陰性度

右へ行くほど電子を引きつける力が強くなり、値の大きいほうから非金属になります。同じ族では上の周期ほど大きくなります。

第2周期第3周期LiBeBCNOFNaMgAlSiPSCl0.981.572.042.553.043.443.980.931.311.611.902.192.583.16

※ポーリングの電気陰性度(PubChem Periodic Table の値)。棒の色は図3と同じで、青が金属、橙が半金属、白が非金属です。

電気陰性度が最も大きいのはフッ素で、電子を強く引きつけて手放さないので、自由電子を出して金属結合をつくることはありません。フッ素の単体 F2 は電子を出し合う共有結合でできた分子になり、電気陰性度の大きい元素ほど非金属になりやすいという関係がここから読み取れます。

ただし境目は電気陰性度だけで引かれるのではなく、電気の通しやすさ・結晶の構造・酸化物の性質などを総合して決まるため、正確な位置は資料によって少し違います。境目に位置するケイ素やゲルマニウムは金属と非金属の中間の性質をもち、半金属(メタロイド)と呼ばれます。

周期表のいちばん下の列にあるニホニウム(113番)からオガネソン(118番)は、加速器で数個の原子をごく短い時間つくれただけの人工元素です。性質を測るだけの量がつくれないため、金属か非金属かは理論計算による予想にとどまり、図3のように「不明」として色を分けない資料もあります。

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金属元素と非金属元素の見分け方と覚え方

周期表を見られないときに手がかりになるのが元素の名前で、日本語名の語尾や漢字を見るだけで大半の元素を見分けられます。ただし名前で分かるのは元素の分類までで、手元の部品が何の金属でできているかは名前からは分かりません。

金属

金属元素には、名前が「〜ウム(-ium)」で終わるものと、漢字の名前に「金」や金へんが付くものが多くあります。リチウム・ナトリウム・マグネシウム・アルミニウム・カリウム・カルシウム・ガリウムなどが前者で、「〜ウム」で終わるのに非金属なのは希ガスのヘリウムだけです。

金へんの元素には鉄・銅・銀・鉛・錫(スズ)があり、金・白金・亜鉛・水銀も「金」の字を含みます。漢字の名前をもつ元素は古くから知られた金属がほとんどなので、金へんがあれば金属と判断して外れることはありません。

どちらにも当てはまらない金属元素には、チタン・クロム・マンガン・コバルト・ニッケル・タングステン・ウランなど、材料として聞く機会の多いものが並びます。名前に規則がない分、ステンレスの成分(クロム・ニッケル)や電池材料(コバルト・マンガン)のように用途とセットで覚えると定着します。

非金属

非金属元素には、名前が「〜素」で終わるものと「〜オン(-on)」で終わるものが多くあります。水素・ホウ素・炭素・窒素・酸素・フッ素・ケイ素・塩素・ヒ素・臭素・ヨウ素の11種が「〜素」で、非金属元素22種のちょうど半分にあたります。

「〜オン」で終わるのはネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドンで、どれも18族の希ガスです。残る非金属元素はヘリウム・リン・硫黄・セレン・テルル・アスタチンの6種で、なかでもヘリウム・リン・硫黄は身近な物質として目にする機会が多く、どれも金属光沢をもちません。

図5:名前で見分ける金属元素と非金属元素

語尾の「〜ウム」と金へんは金属、「〜素」と「〜オン」は非金属の目印です。ヘリウムだけが例外になります。

金属:「〜ウム(-ium)」リチウム・ベリリウム・ナトリウム・マグネシウム・アルミニウム・カリウム・カルシウム・スカンジウム・バナジウム・ガリウム・ゲルマニウムなど例外:ヘリウム
金属:「金」・金へん鉄・銅・亜鉛・銀・錫(スズ)・白金・金・水銀・鉛例外なし
非金属:「〜素」水素・ホウ素・炭素・窒素・酸素・フッ素・ケイ素・塩素・ヒ素・臭素・ヨウ素の11種22種の半分
非金属:「〜オン(-on)」ほかネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドン(希ガス)。名前に規則がないのはヘリウム・リン・硫黄・セレン・テルル・アスタチンほかに6種

※「〜素」のうちホウ素・ケイ素・ヒ素は半金属にも数えられる元素です。名前で分かるのは元素の分類で、合金や化合物の成分は分析で確かめます。

名前のルールで迷いやすいのは、「〜素」なのに半金属でもあるホウ素・ケイ素・ヒ素と、金属なのに名前の規則がないチタンやクロムです。前者は次の章で扱う半導体材料、後者は合金の主要な成分なので、仕事で出会うときは用途と一緒に覚えておくと取り違えません。

半金属(メタロイド)とは:分類の揺れと半導体材料の関係

半金属(メタロイド)は、金属と非金属の中間の性質をもち、周期表の境目に沿って並ぶ元素の呼び名です。どの元素を入れるかに国際的な決まりはなく、辞典によってはポロニウムやビスマスまで含めますが、ホウ素・ケイ素・ゲルマニウム・ヒ素・アンチモン・テルルの6種はどの資料でもよく挙がります。

半金属の単体は常温で固体で、ケイ素のように金属に似た光沢をもちながら、電気の通しやすさは金属よりずっと小さいものが多くあります。

なお物理学で「半金属(semimetal)」と呼ぶのは、ビスマスやアンチモン、黒鉛のように電子の状態がわずかに重なって電気を通す物質のことで、元素の分類としての半金属とは意味が違います。

半金属という分類と半導体という性質は別の話ですが、半導体材料の主役であるケイ素とゲルマニウムは、どちらも境目に位置する元素です。純粋なケイ素は電気をわずかしか通しませんが、ごく微量の不純物を加えると電気の通り方を細かく制御でき、これが集積回路を成り立たせています。

  • p 型半導体:14族のケイ素に13族のホウ素をわずかに加えると、電子が1個足りない場所(正孔)ができ、正孔が電気を運ぶ
  • n 型半導体:15族のリンやヒ素を加えると電子が1個余り、その電子が電気を運ぶ
  • 化合物半導体:13族のガリウムと15族のヒ素・窒素を組み合わせた GaAs や GaN は、発光ダイオードや高周波・パワー素子に使われる

ここに挙がるホウ素・リン・ヒ素・ガリウムは、いずれも境目の両側に並ぶ元素です。周期表の境目は分類のための線であるだけでなく、電子部品の材料を選ぶ地図にもなっていることが分かります。

半導体に使うケイ素は、ケイ石(二酸化ケイ素)を炭素で還元した工業用のケイ素を出発点に、いったん液体の化合物にして蒸留で精製し、再びケイ素に戻してつくります。不純物を蒸留で取り除けるように、固体のケイ素を沸点の低いトリクロロシランに変えるのが要点です。

ケイ石を炭素で還元して工業用のケイ素をつくる
SiO2 + 2C → Si + 2CO
塩化水素と反応させてトリクロロシランにし、蒸留で精製する
Si + 3HCl → SiHCl3 + H2
精製したトリクロロシランを水素で還元し、高純度のケイ素を析出させる
SiHCl3 + H2 → Si + 3HCl
SiHCl3:トリクロロシラン(常温で無色の液体)。最後の式は2番目の式の逆向きで、精製したあとの反応で HCl が戻ります。得られた多結晶のケイ素は、引上げ法などで単結晶にしてからウエハーに加工します。

ウエハーから回路をつくる工程は半導体の前工程の流れでまとめています。ケイ素より電気を通しにくい性質を高い電圧に生かした炭化ケイ素や窒化ガリウムは、パワー半導体 SiC と GaN の違いで比べています。

金属・非金属元素は工業材料でどう使われるか

工場で材料を選ぶときは、金属か非金属かという分類そのものより、電気の通しやすさ・密度・強さ・加工のしやすさ・腐食への強さを比べて決めます。金属元素は主に構造材や電線として形を保ち電気を運ぶ役を、非金属元素は主に原料や反応の相手として化学工業の流れを支える役を担っています。

図6:金属元素と非金属元素の工場での主な役割

金属は形と電気を受け持ち、非金属は原料・ガス・反応の相手として化学工業の流れを支えます。

鉄・アルミ建物・車体・機械の構造材。強さと軽さで使い分け
銅・アルミ電線・送電線・モーター巻線。導電率と重さで使い分け
N・O・Hアンモニア・硝酸の原料、製鋼の酸素、不活性ガスの窒素
ハロゲン・C・Si塩素は塩ビ・消毒、フッ素はフッ素樹脂、炭素は電極、ケイ素は半導体

※代表的な使われ方の例で、本文の各項の記事・出典で詳しく扱っています。

鉄とアルミ:構造材の金属

構造材の中心にある鉄は、鉄鉱石(酸化鉄)をコークスの炭素と一酸化炭素で還元してつくり、炭素の量を調整した鋼として建物・船・自動車に使われます。

鉄鉱石から鋼ができるまでの反応と設備は鉄の製錬と高炉・転炉のしくみで扱っており、そこで使う転炉では非金属元素の酸素を吹き込んで余分な炭素を燃やします。

アルミニウムは鉄の約3分の1の密度で軽く、表面にできる緻密な酸化皮膜で腐食にも強いので、車体や缶、建材に使われます。酸素と強く結びついているため還元が難しく、アルミナを溶かして電気で分解するアルミニウムの融解塩電解で大量の電力を使ってつくられます。

純粋な金属は柔らかすぎることが多く、実際の構造材の多くはほかの元素を混ぜた合金です。ステンレスやジュラルミンなどの組成は合金の種類と用途のまとめに、アルミ合金の番手の選び方はアルミ合金の種類と番手の見方にまとめています。

銅とアルミ:電気を運ぶ金属

銅は銀に次いで電気を通しやすく、加工しやすいうえに強さや腐食への強さも備えるため、導電材料として最も多く使われている金属です。電線用の銅は電気分解で純度を高めた電気銅からつくり、その工程は銅の電解精錬の原理と製錬所のしくみで扱っています。

アルミニウムの導電率は銅の約60%にとどまりますが、密度が約3分の1なので、同じ電気抵抗の電線にすると直径は約1.3倍に増える一方で質量はほぼ半分になります。この軽さを生かし、中心に鋼のより線を入れて強さを補った鋼心アルミより線が、高圧の架空送電線のほとんどに使われています。

屋内配線や機器の中の配線に銅が多いのは、細い線で同じ電流を流せて、端子での接続も安定しやすいからです。電線のコストは銅の値段に大きく左右され、相場の見方は銅価格の高騰が電線・伸銅品に与える影響で解説しています。

C・Si・N・O・ハロゲン:化学工業を支える非金属

非金属元素は形を保つ材料になることは少ないものの、化学工業では原料・ガス・反応の相手として欠かせません。空気の約8割を占める窒素は、水素と反応させてアンモニアにするハーバー・ボッシュ法で肥料や硝酸の原料になり、反応しにくい性質から製品を酸化から守る不活性ガスにもなります。

ハロゲンのうち塩素は、食塩水を電気分解するイオン交換膜法で水酸化ナトリウムと同時につくられ、塩化ビニル樹脂や水道の消毒に使われます。最も電気陰性度の大きいフッ素は、蛍石からつくるフッ化水素を出発点にフッ素樹脂や半導体のエッチングに使われます。

炭素は鉄の製錬の還元剤になるほか、黒鉛として電気炉や電気分解の電極に使われ、電極で起きる反応の基本は電気分解の陰極・陽極の反応式で整理しています。素材から化学品までの会社の顔ぶれと仕事の流れは、化学業界の企業の種類と仕事や鉄鋼・非鉄金属業界の全体像から見渡せます。

元素分析では金属と非金属で測り方が変わる

材料が規格どおりの成分か、製品に有害な元素が入っていないかを確かめるのが元素分析です。分析の方法は、何を知りたいか(含まれる元素の確認か、量の測定か)、試料の形と量、必要な精度で選びますが、測る元素が金属か非金属かによっても得意な方法がはっきり分かれます。

分析の方法試料の扱い得意な元素苦手・対象外の元素
ICP 発光分光分析酸などで溶かして溶液にする金属元素の多く、リン・硫黄・ホウ素・ケイ素など水素・炭素・窒素・酸素・ハロゲン・希ガス
蛍光X線分析固体・粉体・液体のまま、壊さずに測れるナトリウム前後からウランまで(波長分散型はホウ素から)水素・リチウムなどの軽い元素。軽元素は空気に吸収されやすい
スパーク放電発光分析金属のかたまりの平らな面を放電させる鉄鋼などの金属材料に含まれる多くの元素きれいな平面がとれない小さな試料
炭素・硫黄分析切粉などを燃やして出たガスを測る鉄鋼中の炭素・硫黄金属元素の測定には使わない
出典:大阪産業技術研究所 テクニカルシート No.13003・No.26-15、静岡県工業技術研究所、広島県立総合技術研究所 西部工業技術センターの資料をもとに作成。測れる範囲は装置と測定条件で変わります。

ICP 発光分析と蛍光X線分析で測れる元素

ICP 発光分光分析は、溶かした試料をアルゴンのプラズマに吹き込み、元素ごとに決まった波長の光を測る方法です。多くの元素を一度に測れますが、静岡県工業技術研究所の装置の説明では、水素・炭素・窒素・酸素・ハロゲン・希ガスを除く元素が対象とされ、外れる元素の多くは非金属元素です。

これらの元素は、溶媒の酸や水、アルゴン、空気に大量に含まれていたり、溶かす途中で気体になって逃げたり、光る波長が測りにくい領域にあったりするため、通常の装置では測れません。

金属は溶液にしやすく強い光を出すものが多いので、ICP 発光分析は金属成分の定量に向いており、鉄鋼の JIS にも分析方法として定められています。

蛍光X線分析は、試料にX線を当てて元素ごとに決まったエネルギーのX線(蛍光X線)を測る方法で、固体のまま壊さずに素早く調べられます。

エネルギー分散型の装置の多くはナトリウム前後からウランまでを検出でき、軽い元素ほど出てくるX線が弱く空気にも吸収されやすいので、軽元素を測るときは試料室を真空にするかヘリウムに置き換えます。

波長分散型にはホウ素から測れる装置もありますが、水素やリチウムは測れません。電気・電子機器の有害物質の試験方法 IEC 62321 には、蛍光X線で鉛・水銀・カドミウム・全クロム・全臭素をふるい分ける方法(62321-3-1)があり、部品の受入検査に使われます。

炭素・硫黄やハロゲンは燃やして測る

鉄鋼では炭素・ケイ素・マンガン・リン・硫黄が「鉄鋼の5元素」と呼ばれ、ほとんどの鋼種で量の範囲が決められています。このうち炭素とリン・硫黄は非金属、ケイ素は半金属で、金属材料の性質を決める成分の多くが非金属元素であることが分かります。

炭素と硫黄は、ドリルで削った切粉を酸素の中で燃やし、出てきた二酸化炭素や二酸化硫黄の量から求める炭素・硫黄分析で精度よく測ります。

電子機器の「ハロゲンフリー」の確認でも、試料を燃やして出たガスを測る燃焼イオンクロマトグラフ法(IEC 62321-3-2)で塩素・臭素を定量します。JPCA・IEC・IPC の定義では、塩素・臭素がそれぞれ900 ppm 以下、合計1,500 ppm 以下が基準です。

分析結果を受け取る品質保証や購買の担当者にとっては、どの元素をどの方法で測ったかを読み取れることが、規格への適合を判断する出発点になります。分析の依頼から判定までを含む仕事の全体は品質保証・品質管理の仕事内容で紹介しています。

金属元素と非金属元素のよくある質問

水素は1族なのに、なぜ非金属なのですか?

水素は価電子が1個で1族に置かれますが、常温・常圧では2個の原子が共有結合した H2 分子として存在し、自由電子をもたないため非金属に分類されます。極めて高い圧力のもとでは金属の状態になると考えられており、木星の内部には金属水素の層があるとされています。

ケイ素は金属ですか、非金属ですか?

ケイ素は金属のような光沢をもちますが、電気を通しにくく共有結合の結晶をつくるので、日本の高校化学では非金属元素として扱います。金属と非金属の中間の性質から、国際的には半金属(メタロイド)の代表例として挙げられます。

いちばん電気を通しやすい金属は何ですか?

常温でいちばん電気を通しやすい金属は銀で、2番目が銅です。銀は値段が高いため、電線にはほぼ同じくらい電気を通して安い銅が使われ、軽さが求められる送電線にはアルミニウムが使われます。

常温で液体の元素はどれですか?

常温・常圧で液体の単体は、金属の水銀と非金属の臭素の2つです。どちらも液体ですが、水銀は金属光沢があり電気を通し、臭素は赤褐色で電気をほとんど通さないという違いがあります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 金属元素は自由電子による金属結合をつくり、電気・熱を通し、光沢と展延性をもつ。非金属元素は共有結合で分子・結晶をつくるか、希ガスのように単原子で存在する
  • 金属の酸化物は塩基性、非金属の酸化物は酸性で、境目に近いアルミニウムや亜鉛の酸化物は両性を示す
  • 周期表では非金属元素が右上に集まり、境目は13〜17族を斜めに下る階段状。118種の8割以上が金属元素
  • 名前の「〜ウム」・金へんは金属、「〜素」・「〜オン」は非金属の目印で、例外はヘリウム。アルカリ土類金属や12族の範囲は定義によって分かれる
  • 境目の半金属ケイ素・ゲルマニウムは半導体材料になり、元素分析では金属は ICP・蛍光X線、炭素・硫黄・ハロゲンは燃やす方法と、測り方が分かれる

金属元素と非金属元素の違いは、自由電子があるかどうかという1点から、電気の通しやすさ、材料としての使われ方、分析の方法までつながっています。周期表の境目を地図のように使えると、新しい材料や分析結果に出会ったときにも、その元素がどんな性質をもつかの見当を早くつけられます。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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