カルボニル基は、炭素と酸素の二重結合(C=O)をもつ官能基の総称で、ケトン基はそのうちC=Oの炭素の両側に炭素が付いたものの呼び名です。アルデヒド基・カルボキシ基・エステル結合・アミド結合も、同じC=Oを中に含んだカルボニル基の仲間にあたります。
C=Oは酸素の側に電子が偏った極性の強い結合で、反応のしやすさや沸点の高さ、赤外分光(IR)で強く見えることは、どれもこの偏りから説明できます。工場や分析室では、IRのC=Oのピークでプラスチックの酸化劣化を測り、アセトンなどのケトンを溶剤に使っています。
カルボニル基とは?C=Oをもつ官能基の総称
カルボニル基は、炭素原子が酸素原子と二重結合でつながった「>C=O」の部分を指します。左側の「>」は炭素の残り2本の結合手が空いていることを表し、その2本に何が付くかで、アルデヒド・ケトン・カルボン酸などの名前が分かれます。
いちばん単純なアルデヒドはホルムアルデヒド(HCHO)で、C=Oの炭素に水素原子が2つ付いています。この水素2つを外して結合手だけにした形がカルボニル基で、旧来の説明でいう「ホルムアルデヒドからHを抜いたもの」は、この関係を言い表したものです。
C=Oの炭素に付く相手で名前が変わり、ケトン基はカルボニル基の中の1つにあたります。
※枠の中の5つはどれもC=Oを含みます。カルボニル基と名前の付いた個々の官能基は「全体と部分」の関係です。
IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、カルボニル化合物を「カルボニル基C=Oを含む化合物」と定義しています。そのうえで、この言葉は狭い意味でアルデヒドとケトンだけを指すことが多いが、本来はカルボン酸とその誘導体も含むと注記しています。
教科書や論文で「カルボニル化合物の反応」と書かれていれば、たいていはアルデヒドとケトンの話です。一方で「カルボン酸はカルボニル基をもつか」と問われれば、答えは「もつ」になるので、文脈で広い意味か狭い意味かを読み分けます。
カルボニル基を含む官能基の違い
C=Oの炭素にもう2つ何が付くかで、代表的な5つの官能基に分かれます。名前だけでなく、身近な物質と工業での使われ方を並べると、同じC=Oでも性質がかなり違うことが見えてきます。
| 官能基 | C=Oの炭素に付くもの | 代表的な物質 | 工業での使われ方の例 |
|---|---|---|---|
| アルデヒド基(−CHO) | 水素1つ+炭素(ホルムアルデヒドは水素2つ) | ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド | フェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂の原料 |
| ケトン基(C−CO−C) | 炭素2つ | アセトン、メチルエチルケトン(MEK) | 塗料・接着剤・洗浄の溶剤、ビスフェノールAの原料 |
| カルボキシ基(−COOH) | ヒドロキシ基(−OH)+炭素か水素 | 酢酸、テレフタル酸 | PET・酢酸ビニルの原料 |
| エステル結合(−COO−) | 酸素を介した炭素+炭素か水素 | 酢酸エチル、サリチル酸メチル | 溶剤、香料、ポリエステル(PET)の骨格 |
| アミド結合(−CONH−) | 窒素+炭素か水素 | アセトアニリド、タンパク質 | ナイロン、アラミド繊維の骨格 |
カルボン酸とアルコールが脱水してできるのがエステルで、サリチル酸メチルはその代表です。カルボン酸の仲間がアミンと結び付くとアミド結合になり、アニリンと無水酢酸からできるアセトアニリドや、アミノ酸がつながったタンパク質のペプチド結合がこれにあたります。
ケトン基とは:C=Oの両側が炭素のときの呼び名
ケトン基は、カルボニル基の炭素の両側に炭素原子が付いたものです。IUPACはケトンを「カルボニル基が2つの炭素原子と結合した化合物R2C=O(どちらのRも水素ではない)」と定義しており、C=Oだけではケトンとは呼ばず、両側が炭素であることが条件になります。
両側の炭素はメチル基やエチル基などのアルキル基に限らず、ベンゼン環でもかまいません。アセトフェノン(C6H5COCH3)は片側がベンゼン環、ベンゾフェノン((C6H5)2CO)は両側がベンゼン環のケトンです。
C=Oの炭素に水素が1つでも付けばアルデヒド、両側とも炭素ならケトンです。
※ホルムアルデヒドだけは、C=Oの炭素に水素が2つ付いたアルデヒドです。
代表的なケトンは、両側がメチル基のアセトン(CH3COCH3)と、メチル基とエチル基のメチルエチルケトン(MEK、CH3COC2H5)です。旧来の例に挙がっていたジエチルケトン(C2H5COC2H5)は、両側がエチル基のケトンにあたります。
「ケトン基」という呼び方の整理
「ケトン基」は日本の教科書や参考書で広く使われる呼び方ですが、IUPACの用語では官能基の名前ではなく、ケトンという化合物の分類として定義されています。体系名ではケトンを語尾の「-one(オン)」で表し、置換基として示すときは接頭語「オキソ」を使います。
そのためアセトンはプロパン-2-オン、MEKはブタン-2-オンが体系名です。英語の文献で「ketone group」より「carbonyl group」や「oxo」が多く出てくるのはこのためで、「ケトン基」は「ケトンのC=O」と読み替えれば迷いません。
アルデヒド基(−CHO)にも別名があり、置換基としてはホルミル基と呼ばれます。どちらもカルボニル基の一種で、C=Oの炭素に付く相手が水素か炭素かという違いが、次に見る反応のしやすさや見分け方の差につながります。
カルボニル基で大事なこと:電気陰性度の差が生む極性
カルボニル基では、酸素の側がわずかにマイナス(δ−)、炭素の側がわずかにプラス(δ+)に偏っています。原子が電子を引き寄せる強さを表す電気陰性度は酸素が3.44、炭素が2.55で、差の0.89だけ共有電子が酸素へ引かれるためです。
二重結合のうち2本目のπ結合の電子は動きやすく、この偏りをさらに大きくします。結合の偏りと分子の形から極性を判断する方法は、極性分子と無極性分子の見分け方で詳しく整理しています。
電子が酸素側に寄るため、プラスに偏った炭素に電子の豊富な分子(求核剤)が近づき、酸素側には水素イオンが付きやすくなります。
※Nuは求核剤(nucleophile)の略で、非共有電子対をもつアルコール・水・アミンなどを指します。
極性が沸点を押し上げる
分子量がほぼ同じ物質の沸点を並べると、C=Oの極性の効き方がよく分かります。分子量58のブタンは−0.5℃で沸騰するのに対し、同じ分子量58のアセトンは56℃まで液体のままで、極性をもつ分子どうしが静電気的に引き合う分だけ沸点が上がります。
極性のないブタンから、C=Oをもつアルデヒド・ケトン、水素結合するアルコールの順に沸点が上がります。
※沸点は1気圧(760 mmHg)の値(PubChem)。
それでもアセトンの沸点がアルコールより40℃ほど低いのは、カルボニル化合物がO−H結合をもたず、同じ分子どうしで水素結合をつくれないからです。一方で酸素の非共有電子対は水の水素を受け止められるため、アセトンは水とどんな割合でも混ざり、油ともなじむ溶剤になります。
プラスに偏った炭素に分子が付く
δ+の炭素には、非共有電子対をもつ分子が近づいて結合をつくります。これを求核付加といい、アルデヒドにアルコールが付いてヘミアセタールができる反応はその代表で、ヘミアセタールとアセタールの記事で糖の環状構造やポリアセタール樹脂まで扱っています。
同じC=Oでも、エステルやアミドは付加が起こりにくくなります。隣の酸素や窒素の非共有電子対がC=Oのほうへ広がり(共鳴)、炭素のδ+を弱めるためで、アミド結合でできたナイロンやタンパク質が水の中でも簡単には壊れないのはこの性質によります。
つまり:ケトン基はカルボニル基の1つ
ここまでをまとめると、カルボニル基はC=Oをもつ部分すべての総称で、ケトン基はそのうちC=Oの両側が炭素のものを指す、全体と部分の関係です。「同じC=Oなのに名前が2つある」のは、全体の名前と、付く相手まで決めた個別の名前が並んでいるからです。
C=Oが共通なので、極性が強い・δ+の炭素に分子が付くという性質はどの仲間にも共通します。違いが出るのは、アルデヒドの水素が酸化されやすいか、隣の原子が共鳴でC=Oを安定にするかといった「付く相手」の部分で、次の章で見る見分け方もこの差を使っています。
実験での見分け方:銀鏡反応・フェーリング・ヨードホルム・2,4-DNPH
試験管の反応で調べられるのは、主に「C=Oをもつアルデヒドかケトンがあるか」「それはアルデヒドか」「CH3CO−の形をもつか」という3つの問いです。どの反応も官能基の有無をふるい分けるもので、陽性だけで物質名まで決まるわけではありません。
広くふるい分ける反応から、アルデヒド、メチルケトンへと範囲を絞っていきます。
※いまの分析室では、物質の特定はIRやNMR、クロマトグラフィーで行うのが普通です。試験管の反応は原理の確認や簡易なスクリーニングに使います。
2,4-DNPHでアルデヒドかケトンかをふるい分ける
2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNPH)をメタノールと硫酸に溶かした液はブレディ試薬と呼ばれ、アルデヒドやケトンを加えると明るい黄色から橙色の沈殿ができます。C=Oの炭素にヒドラジンの窒素が付き、水が1分子抜けてつながる縮合反応です。
かつては、沈殿を再結晶して融点を測り、文献の融点表と照らし合わせて元のアルデヒドやケトンを決めていました。
この反応はいまも分析法として生きており、空気中のアルデヒドをDNPHを含ませた捕集管でつかまえ、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で量る方法があります。環境省の大気の測定マニュアルに載っているほか、建物の室内空気の測定にも使われています。
銀鏡反応・フェーリング反応でアルデヒドを確かめる
アルデヒドはC=Oの炭素に水素をもつため酸化されやすく、相手の金属イオンを還元します。アンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)では銀が析出して試験管の内側が鏡のようになり、フェーリング液では青い液から赤い酸化銅(I)の沈殿ができます。
ケトンは酸化されにくく、どちらの試薬でも色が変わりません。反応式の組み立て方や鏡づくりへの応用は銀鏡反応の反応式の作り方にまとめており、ギ酸やブドウ糖のように、アルデヒドの形を一部にもつ物質も陽性になる点も同じ記事で扱っています。
ヨードホルム反応でメチルケトンを見つける
ヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加えて温めると、CH3CO−の形をもつケトンやアルデヒドから、特有のにおいがある黄色のヨードホルム(CHI3)が沈殿します。アセトンやMEK、アセトアルデヒドは陽性で、ジエチルケトンはメチル基がC=Oに付いていないので陰性です。
酸化されてCH3CO−になるエタノールや2-プロパノールも陽性になるので、この反応だけでケトンと決めることはできません。しくみと反応式はヨードホルム反応の記事で手順を追って説明しています。
実際の現場では:赤外分光(IR)でC=Oを見る

工場の品質管理や分析室で、試料にC=Oがあるかを確かめるいちばん手早い方法が赤外分光(IR)です。赤外線を当てると、結合ごとに決まった波数の光が吸収され、C=Oは1700 cm−1付近に強く鋭い吸収として現れます。
いまの装置はほとんどがフーリエ変換型(FT-IR)で、試料を結晶に押し当てて表面を測るATR法なら、樹脂片やフィルムをそのまま数分で測れます。異物の正体を調べる、受け入れた原料が仕様どおりかを確かめるといった場面で、クロマトグラフィーと並んで使われる基本の分析です。
C=Oの位置は官能基でずれる
C=Oの吸収はどれも強く出ますが、隣に何が付くかで位置が少しずつずれます。エステルは高めの1750〜1730 cm−1、ケトンは1725〜1705 cm−1、アミドは窒素の共鳴でC=Oの二重結合性が弱まるため1670〜1640 cm−1と低めに出ます。
C=Oの吸収は1810〜1640 cm−1に集まり、官能基ごとの範囲は一部が重なります。
※範囲は代表値(NIU 赤外吸収の一覧)。酸無水物は1810と1760の2本、酸塩化物は1800付近に出ます。ベンゼン環や二重結合と共役するとおよそ20 cm−1低くなります。
範囲が重なるので、C=Oの位置だけで官能基を言い切らず、ほかの吸収と組み合わせて判断します。アルデヒドなら2850と2750 cm−1付近に弱いC−Hの吸収が、カルボン酸なら3300〜2400 cm−1に幅の広いO−Hの吸収が一緒に出るので、これが決め手になります。
カルボニルインデックスでプラスチックの酸化劣化を測る
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は炭素と水素だけでできているので、新品ならC=Oの吸収はほぼありません。紫外線や熱で酸化が進むと、鎖の一部がケトン・アルデヒド・カルボン酸・エステルに変わり、本来なかったC=Oのピークが育っていくことが劣化の印になります。
このピークの大きさを、劣化してもほとんど変わらない別の吸収と比べた値がカルボニルインデックス(CI)です。Almondらの2020年の論文は、計算方法がばらばらで比べにくかった従来のやり方を整理し、ATR-FTIRで決まった範囲の面積どうしを割るSAUB法を勧めています。
CIは、同じ材料を同じ測定条件で比べたときに意味をもつ指標です。屋外暴露や促進耐候試験の時間ごとにCIを追えば、劣化の速さを材料や安定剤の処方で比べられますが、基準の帯や計算法が違うデータどうしを数字だけで並べることはできません。
逆に、ポリカーボネートやPET、ナイロンはもともと骨格にC=Oをもつので、C=Oのピークがあること自体は劣化を意味しません。こうした樹脂では、ピークの形の変化や新しく出る吸収を見ることになり、生分解性ポリマーのように分解の進み方を追う研究でも、同じ考え方でIRが使われています。
工業での使われ方:溶剤・樹脂・プラスチックのカルボニル
カルボニル化合物は、工場では大きく3つの形で登場します。
同じC=Oが、溶剤・樹脂原料・プラスチックの骨格と、違う役目で使われています。
アセトン・MEKなどケトン溶剤とSDSで見る項目
アセトンとMEKは、樹脂をよく溶かし、乾きが速いケトン溶剤の代表です。厚生労働省のモデルSDSでは、アセトンの用途は工業用の溶剤とビスフェノールA・MMA(メタクリル酸メチル)の原料、MEKは合成樹脂やラッカーの溶剤、接着剤、印刷インキ、洗浄剤とされています。
アセトンはクメン法でフェノールと一緒にできる物質で、そのフェノールとアセトンを反応させたビスフェノールAがポリカーボネートの原料になります。溶剤として使うときに確かめたい数字を、両者のSDSから並べると次のとおりです。
| 項目 | アセトン | メチルエチルケトン(MEK) |
|---|---|---|
| 化学式 | CH3COCH3 | CH3COC2H5 |
| 沸点 | 56℃ | 80℃ |
| 引火点 | −20℃(密閉式) | −9℃(密閉式) |
| 爆発範囲 | 2.2〜13 vol% | 1.8〜11.5 vol% |
| 水への溶け方 | よく溶ける(消防法では水溶性) | 一部溶ける(消防法では非水溶性) |
| 管理濃度 | 500 ppm | 200 ppm |
| 消防法 | 第4類 第一石油類 | 第4類 第一石油類 |
どちらも引火点が室温よりずっと低いので、蒸気がたまらない換気、静電気の除去、防爆型の電気機器が取り扱いの前提になります。作業場の濃度は有機溶剤の規則にもとづいて管理し、ばく露の見積もりは工場のリスクアセスメントの手順に沿って進めます。
樹脂との相性も現場で効いてくる点です。アセトンのSDSは容器について「種々なプラスチックを侵す」としており、極性が高く樹脂をよく溶かす性質は、洗浄や溶剤塗装では利点に、樹脂部品の拭き取りや容器・ホースの選定では割れや膨潤の原因になります。
ホルムアルデヒドを原料にする樹脂
いちばん小さなアルデヒドであるホルムアルデヒドは、δ+の炭素がむき出しで反応しやすく、フェノールや尿素、メラミンと次々に結び付いて網目状の樹脂をつくります。フェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂は、どれもホルムアルデヒドのC=Oが反応してできた熱硬化性樹脂です。
モデルSDSでは、ホルムアルデヒドの用途としてポリアセタール樹脂、ユリア樹脂とメラミン樹脂の接着剤、フェノール樹脂などが挙がっています。合板や家具の接着剤から放散すると室内空気を汚すため、厚生労働省は室内濃度の指針値を100 μg/m3(0.08 ppm)と定めています。
作業環境ではさらに厳しく、ホルムアルデヒドの管理濃度は0.1 ppmです。もともと気体(沸点−20℃)で水によく溶けるため、工業的にはホルマリンと呼ぶ水溶液として運ばれ、樹脂工場では反応槽への投入や乾燥工程の局所排気が管理の要になります。
ポリカーボネート・ポリエステル・ナイロンの骨格にあるC=O
プラスチックの中には、C=Oを鎖のつなぎ目として組み込んだものがあります。ポリカーボネート(PC)は炭酸のエステルにあたるカーボネート結合(−O−CO−O−)、PETはエステル結合(−CO−O−)、ナイロンはアミド結合(−CO−NH−)で、それぞれの単位がつながっています。
PCの製法では、このC=Oをどこから持ってくるかが大きな論点です。旭化成は2017年の発表で、従来の製法ではPCの骨格のカルボニル基は毒性の高いホスゲン(COCl2)に由来するが、新しい製法ではCO2に由来すると説明しています。
この製法では、CO2とアルコールからジアルキルカーボネートを、さらにフェノールと反応させてジフェニルカーボネートをつくり、ビスフェノールAと溶融重合してPCにします。原料の段階からC=Oの出どころを変えることで、ホスゲンを使わずに同じ骨格の樹脂を得るという考え方です。
PET・ナイロン・PCは強度や耐熱性に優れ、選び方はエンプラの種類と選び方で比べています。エステル結合は水で切れることがあるので、PETやPCは成形前に乾燥させて加水分解を防ぐのが基本で、ペットボトルの製造工程でもこの乾燥が出発点になります。
一方で、エステル結合やアミド結合が切れる性質は、使い終わった樹脂を原料に戻す技術の足がかりにもなります。PETを分解して原料のモノマーに戻す方法はプラスチックのケミカルリサイクルの代表例で、光で反応させて固める感光性高分子にもC=Oをもつ材料が多く使われています。
カルボニル基のよくある質問
カルボキシ基はカルボニル基を含みますか?
含みます。カルボキシ基(−COOH)はカルボニル基(C=O)にヒドロキシ基(−OH)が付いた形で、名前もカルボニルとヒドロキシを合わせたものです。ただしOHの影響で性質は大きく変わり、酸性を示す一方、ギ酸を除いて銀鏡反応やフェーリング反応は示しません。
アセトンはなぜ水にも油にも溶けるのですか?
C=Oの酸素が水の水素と引き合える一方、両側のメチル基は油となじむからです。小さな分子の中に極性の部分と無極性の部分が両方あるので、水とは任意の割合で混ざり、油脂や多くの樹脂も溶かします。
ケトンとアルデヒドはIRで区別できますか?
C=Oの位置だけでは範囲が重なるので難しいですが、アルデヒドには2850と2750 cm−1付近にC−Hの弱い吸収が出るため、これがあればアルデヒドと判断できます。確実に決めるときは、NMRなどほかの分析と組み合わせます。
カルボニル基をもつ物質は体に悪いのですか?
カルボニル基をもつこと自体で有害かどうかは決まりません。糖やタンパク質、香料の多くもカルボニル基をもちますが、ホルムアルデヒドのように管理濃度0.1 ppmと厳しく管理される物質もあるので、扱うときは物質ごとのSDSで確かめます。
まとめ
- カルボニル基はC=Oをもつ部分の総称で、アルデヒド基・ケトン基・カルボキシ基・エステル結合・アミド結合を含む
- ケトン基はC=Oの両側が炭素のものの呼び名で、IUPACではケトン(R2C=O)という化合物の分類にあたる
- 酸素の電気陰性度が大きいため炭素がδ+、酸素がδ−に偏り、沸点の高さや求核付加の起こりやすさにつながる
- 2,4-DNPHでアルデヒド・ケトンを、銀鏡・フェーリングでアルデヒドを、ヨードホルム反応でCH3CO−をふるい分ける
- IRではC=Oが1700 cm−1付近に強く出て、PE・PPの酸化劣化はカルボニルインデックスで追える。工業ではケトン溶剤、ホルムアルデヒド樹脂、PC・PET・ナイロンの骨格に使われる
カルボニル基は、C=Oという1つの結合の偏りが、反応・見分け方・分析・材料の性質までを一続きに説明してくれる官能基です。ケトン基との違いは「全体と部分」と押さえ、現場ではIRのピークや溶剤のSDSと結び付けて使います。
アセトンのような溶剤を工場で精製するしくみは蒸留と蒸留塔の記事で、化学業界の全体像は次の記事でまとめています。

出典
出典・参考資料(11件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 定義(carbonyl compounds・aldehydes・ketones):IUPAC「Aldehydes, Ketones, Quinones and Derivatives」(Glossary of class names, PAC 1995, 67, 1307 による)、IUPAC Gold Book「carbonyl compounds」
- 電気陰性度:Royal Society of Chemistry「Periodic Table: Carbon」、「Oxygen」
- 沸点:PubChem「Butane」、「Propanal」、「Acetone」、「1-Propanol」
- 2,4-DNPH(ブレディ試薬):chemguide「Addition-elimination reactions of aldehydes and ketones」(Jim Clark)
- トレンス試薬・フェーリング液:chemguide「Oxidation of aldehydes and ketones」(Jim Clark)
- IRの吸収位置:Northern Illinois University, Department of Chemistry and Biochemistry「Typical IR Absorption Frequencies For Common Functional Groups」、LibreTexts「16.4 Spectroscopic Properties」(Roberts and Caserio)
- カルボニルインデックス:Almond J. ほか「Determination of the carbonyl index of polyethylene and polypropylene using specified area under band methodology with ATR-FTIR spectroscopy」e-Polymers 20, 369–381(2020年)
- アセトン・MEK・ホルムアルデヒドの物性・用途・管理濃度:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「アセトン」モデルSDS、「メチルエチルケトン」モデルSDS、「ホルムアルデヒド」モデルSDS
- DNPH捕集管とHPLCによる測定:環境省「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」第3章 大気中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの測定方法
- 室内濃度指針値:大阪府「室内濃度指針値(厚生労働省)」
- ポリカーボネートのカルボニル源:旭化成ニュースリリース「ポリカーボネート樹脂原料の新製法を実証プラントで検証」(2017年8月7日)
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